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【白猫】ワールドエンド Story3

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目次


Story11 特異点

Story12 使命

Story13 新たな光

Story

Story

Story



story11 特異点




 たとえ、それが手遅れだとしても、私はあらがわねばならない。

 絶望の未来に――


 これは出会いの物語でも、約束と再生の物語でもない。

 そう、これは――



「姫様……

目を開けてくだされ、姫様!」



…………

……



「姫様!おお、やっと……やっとお目覚めに……爺は心配しましたぞ!」

「……あなたは?」

「まさか私をお忘れですか?グラハムです。姫様の近衛隊長グラハム・オウガスタです!」

「頭が……」

「大丈夫ですか!?あまり無理はなさらず……」

「…………」

「姫様?」

「……な……も、お……い……ない。」

なにも思い出せない。

……私は?ここは……

「…………辛いことがありましたからな。全てを忘れたくなるのは、無理もございません。

ゆっくり……ゆっくりと思い出していきましょう。」

「…………」

「なに、安心なさってください。ガリウスの護剣の名にかけて、姫様のことはワシがお守りいたします。」

「………………ありがとう、ございます。」


…………

……


「姫様、ただいま戻りました。」

「グラハムさん、おかえりなさい。」

「今日の土産はこちらです。クジョウ名物、あんころ餅ですぞ。」

「これは……なんですか?」

「モチをあんこでつつんだ菓子です。緑茶という飲み物にあいましてな……

ささ、姫様、どうぞ。」

「いただき……ます。」

「ひ、姫様どうなさったのですか!?その涙は……」

「ごめんなさい……

こんなに、おいしいもの、食べたの、はじめてで……」

「そこまで喜ばれるとなると土産を買ってきた甲斐があります。

お一人での生活は大丈夫でしたかな?」

「はい、エマさんが、いろいろと助けてくれたので……」

「それはよかった。後で礼を言いに行かねばなりませんな。

さて、久しぶりに爺が、姫様のために手料理を……」

「それは、その……」

「むっ……土産で充分でしたかな?」

「いえ、そうではなく、なにもせずにお世話になるのも、心苦しいので。私が作ろうかと思います。

グラハムさんがよければなのですが……

グラハムさん!?」

「まさか、姫様の手料理をいただけるとは……」

「お、おおげさですよ。」

「おおげさではありません。ずっと姫様を探しておりました。きっと、どこかにいらっしゃると……

こうして、姫様の元気な姿を見れるだけで、ワシは……申し訳ございません。言葉に……なりません。」

「…………」

「しめっぽくなってしまいましたな。姫様の手料理、心して待っておりますぞ。」

「はい。任せてください!」



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story12 使命



――最初は小さな胸の痛みだった。

だが、日々の生活のなかで、違和感は無視できないほど大きくなっていった。


――私は本当にグラハムさんがさがしていた姫様なのだろうか?

――私は、どうしてここにいるのだろうか?



「また光って……なに、これ……?

四魔幻獣……ロイド・イングラム……?」

「おじさんのこと、知ってるんですか!?」

「頭のなかに、その言葉が……

私は……その人を止めないと……

ロイド・イングラムを……止めるために……私は……」

「姫様!大丈夫ですか、姫様!!」


この時、違和感は確信に変わった。

――私はグラハムさんのさがしていた姫様ではない。


「約束……そう、約束です!大切な誰かと交わした約束があるんです!」

「…………」

「……そんな悲しそうな顔をしないでください。」


グラハムさんは私にとって恩人だ。傷つけたくない。

取り戻せない過去を理由に私は自分をごまかし続けた。


「頭が……」


でも、それはきっと罪なのだ。だから、これはきっと――

――逃げ続けてきた私への罰なのだろう。


「これは……」

「姫様っ!!」


 エレノア……


「アイ……リス……様……?

……私は間に合わなかった?そんな……どうして?」

「姫様、大丈夫ですか?」

「……ごめんなさい、グラハムさん。すべて思い出しました。」

「…………」

「私には、やらなければならないことがあるんです!

…………」

「お待ちくだされ、姫様……」


全てを思い出した時、私は失敗したのだと理解した。

魔幻獣が全て破壊された時点で世界の破滅は決定する。

それでも――




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story13 新たな光


フハハハハハ!!

いい!実にいい!!これが魔幻獣の力か!!

そんな、この力は……<闇>の……

<――王――>


おじさん、どうして!?

いい加減、くだらん問答には飽きたよ、エマ……

――!

主人公さん……すみません……

<…………>

怒らないでほしい。君たちとは、仲良くやってきたじゃないか?

善良な考古学者として君たちに情報を与えたこともあったし……

時には、こうして自ら赴き、君たちを振り回してもやった。

あるいは友情を、共感を、仲間意識を私に感じたのではないかな?

私も楽しかったよ。嘘じゃない、本当さ。君たちを欺いてる瞬間、私は生きていることを感じられた!

……というのも、嘘だ。実はなにも感じていない。今、この瞬間も、私の心は穏やかだ。

<>

主人公……

いい加減、飽きてきたよ。自分にも、この世界にも……


まずい!!防壁展開!!

<ルーファスの持つ武器が光の壁を展開し、ロイドの放つ光線を遮る。

だが――>

くっ……限界か……?

<光の壁にヒビが――>


「させないっ!!
<*×○■!&%$…………>」


!? <光線がかき消えた――?>

今の……

アイリスの呪文と同じ!?

――七つの力がうちの一つ、<運命>の歯車よ――

我はその巡りに異を唱える……

周囲のソウルが……集まってる……?

……歯車は仮初めの姿……その巡りを逆巻かせ、あるべき真実を示せ!

くっ……力を……貸してください!アイリス様!!

それは……

――七つの力がうちの一つ、<流動>の導きよ――

我はその流れに異を唱える……――新たな道を開き、運命を覆せ――

(――空間が歪んでいる!?)

闇の王子……私はあなたを倒します。必ず……

あなたは……

ごめんなさい…………私は、あなたの敵になります。

さようなら……アイリス様……

!!

ぎにゃー!!



姫様!なにが……

ロイド……なぜ、お前さんが?

他は消えた……か?なるほどなるほど、これは想定外。完全なイレギュラーだ。

わかるぞ、この感覚……嫌というほどわかる……実に興味深い。

だが、ありえない!絶対にあってはならない!!

…………

なぜ<光の王>が二人もいる?

光の王……?

…………

ロイド・イングラム……この世界は終わらせません。

<光の王> エレノア

それが、あの方との約束だから。



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story14 幾ばくかの夢



君の存在は非常に困る。イレギュラー、想定外……計画の修正が必要だな。

ロイド、これはいったい……姫様、なにがどうなってるのですか?

グラハム・オウガスタ……いい加減、現実を直視したまえ。君の姫、マルグリットは既に死んでいる。

なにを……

民の蜂起により。ガリウス家の人間はみな殺しにされただろ。君も吊るされた姫君を見たはずだ。

傑作なことに、その民衆もまた嵐の国の軍により一蹴されたではないか。

なにを…………言っている?マルグリット様はここに……

……グラハムさん、私はあなたの姫様ではありません。私はエレノアです。

……違う。ありえない……あってはならない。

復讐もできず、忘却もできず、ただただまつろう哀れな老兵。いい加減、君の存在にも飽きた。そろそろ退場したまえ。

グラハムさん!しっかりしてくださいっ!!

……姫様。あなたは姫様ではないのか?ワシの姫様はどこに?

だから言ったろ?死んだよ。

<――>

はあ、はあ、はあ……

これを防ぐか……なるほど。だが、力を使いこなせてないのか?

……まあ、いいさ。消えてくれ。

このままでは……グラハムさん!しっかりしてください!!グラハムさん!!

私を守ってくれると言ったではないですか!グラハムさん!!

!!


 ――約束だよ。絶対に守ってね。


エレノア殿、お逃げくだされ。

グラハムさん……

……幾ばくかの夢を見せてくれたあなた様のために、この剣を使いましょう。

ダメです!死んでしまいます!!

……かまいません。お逃げくだされ、エレノア殿!



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story15 虚無の従僕



ぐっ……これ以上は……エレノア殿!なにをしている!早く!

……ダメです!

――七つの力がうちの一つ、<流動>の導きよ――

我はその流れに異を唱える……――新たな道を開き、運命を覆せ――



「なるほど、逃げたか……」

(二人の光の王……本来ならば、ありえないはずだ……

彼女がなんであれ、私の目的を察しているような言動があった。

現状、私の計画は完璧のはず。誰が、どうあがこうと四魔幻獣の力を手にいれた時点で終わりだ。

それを知った上で、あがくか?どんな手段で?)

「あ~なるほど、そうか。そういう手はありえるな。」

(闇の王子の力を彼女が奪えば、私の計画は失敗する)

「……やはり彼女の存在で私の計画は盤石ではなくなったか。」

(しばらく計画を練り直す時間が必要だ。が、その間に主人公を殺されては元も子もない)

「少し遊んでやるか。彼らなら、すぐに食いつくだろう。

<◆※…○!●=>」

「私の軍団にして一部よ。私の望みがわかるはずだ。

どうせ壊れる世界だ!お前の力で、派手に遊んでやれ!

破壊の翼よ。全力で壊せ!殺せ!滅ぼせ!!

私の心を人々の苦しみと嘆きで満たしてくれ!」


「――さて……」

「きょ、教主様が!!貴様がやったのか!?」

「そうだよ。文字どおりヒマつぶしにつぶしてあげた。

<◆※…○!●=>」

「な、なんだ……これは……」

「焼き尽くせ!」

「!!」

<>

「ハッハッハッハ!これだ!これが見たかった!ああ、いい!実にいい!!」

「街が……」

「うんうん、いい!すばらしい!!その顔!!絶望と恐怖に満ち、かすかな希望が惨んでいる!

まだ自分が死なないと思ってるんだろ?うん、わかる。理解できる。自らの生存を信じなければ人は生きていけない。その楽観は正当な生存本能だ。

だが!残念なことに!君たちは、ここで死ぬ!意味もなく理由も尊厳もなく!!」

「た、たすけ……」

「いい、実にいい!もしかしたら助かるかもしれないと、最後まであがく姿!実に人間的だ!!

でも、死ね。」

<――>

「……リンツ島を焼いた時を思い出す。お前もそうではないか?」



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story16 たくさんの謎


ぎにゃにゃ!ここ、どこ!?

……あの子に飛ばされたみたいね。

でも、あの呪文、アイリスと一緒だったわね。

ええ、それに<運命のルーン>。どうして大いなるルーンをあの人が持ってたのか……

みなさん!

みんなも無事だったみたいね。

いったい、なにが起きたんですか?ロイド博士は死んだはずでは?

アタシたちにもわかんないわよ。わかんないことが多すぎるわ。

それにマント着てた子、あの子、何者なの!?

……エレノアさんです。幻獣様の事件のあと、リンツの森でグラハムさんが保護したんです。

グラハムさんは姫様と呼んでいましたが、本人にも記憶がなくて……

でも、おじさんを止めると言ってました。まさか、おじさんが、本当に生きてたなんて……

ほかに、なにか知ってることはありませんか?

ほかには……


 ***


アイリスの呪文と不思議なルーンね。まさか<運命のルーン>を持ってるなんて。

もしかして盗まれたとか!?

それはないと思う。それに、あれは違う気がする。感覚でしかないのだけど……

みなさんの話をまとめると――ロイド・イングラムは変装をして、すべての魔幻獣破壊の場にいた。

そして、魔幻獣のソウルをなんらかの方法で取り込んでいた可能性がある。

そうね。

だとしたら、かなり厄介ですね。あまりに膨大な力を有している……

なにをしようとしてるのか、見当はつきますか?

僕たちを攻撃してきましたし、ろくでもないことを考えているのはわかるんですが……

エマは心当たりとかないの?

ごめんなさい。死んでしまったとばかり思ってたしもともとよく知らない人だから……

私よりルーファスさんのほうが、詳しいかもしれません。知り合いだったんですよね?

……僕の知るロイド博士は危険な人でした。

どう危険だったの?

こんな話があります。

ロイド博士は何人かの助手とともにとある島に移住したそうです。名目はフィールドワークでした。

当初、その島はとこにでもある普通の島でした。島民同士に不和はなく、穏やかだったそうです。

ですが、数ヶ月たつと、島民同士が疑心暗鬼になっていった。

それから更に数ヶ月後、その島はなくなりました。島民同士が殺し合いをはじめ、誰もいなくなったからです。

…………

醜聞程度の噂話だと思って、直接、真相を尋ねたことがあります。そしたら、博士は笑いながら答えました。

実験をしただけだ、と。集団ヒステリーを起こしたら、友人知人同士でも殺しあうのか知りたかった、と。

リンツ島でも街の人を煽っていました。嵐の国でも似たようなことを……

めっちゃ悪い奴じゃん!社長さん!倒さないとダメだよ!!

いや、僕は社長じゃ……いや、まあ、とにかくですね。

目的がわからないですが、ろくでもないことを考えてるのはまちがいないはずです。

…………

どうしたの?

なんでもない。ただ、少し……嫌な予感がしただけ……

彼がなにを考えてるのかわからないけど、いろいろと知らなくちゃいけない。

エレノアさんのことも含めて。

アンタたちはどうする?危険なことだし、首をつっこむ必要ないわよ。

私はあの人の親類として止める責任があります。

社長道その十九!しゃかいこーけんはちょーだいじ!!

ここで僕だけ降りるなんて言えませんよ。冒険家としてできる限りのことをやらせてください。

ありがとうございます。

それじゃあ、行くわよ!!アタシのお尻について……ハッ!!

ここ、どこ?

まずは人のいるところに出ないといけないね。


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story17 騎士の誓い




「ここは……

この森は……マルグリット様を……

…………」


グラハムの目の前にはコケむした石があった。


「……わかっていたのです。姫様がどこにいるのか……わかっておりました。

姫様……」

「グラハムさん……」

「エレノア……殿……」

「……それはお墓ですか?」

「ワシが姫様を埋葬いたしました。その事実を、ずっと忘れようとあがいていたのです。

人を斬ることしか能のない鬼に人としての感情を与えてくれた。生きる縁(よすが)だったのです。」

「…………

どうなさるおつもりですか?」

「……エレノア殿、ご迷惑をおかけしました。短い間でしたが、夢のような日々でした。

ですが、もう夢を見ることはできません。」

「今のグラハムさんのような表情、私、見たことがあります。絶望して覚悟を決めた顔……でも、それはなんの救いにもなりません。」

「……救いも希望も、とうの昔に失われていたのです。」

「……私では、あなたの希望になれませんか?」

「……姫様はもういないのです。もう……」

「…………

……グラハムさん、信じることはできないかもしれませんが、私は未来から来ました。」

「…………

「世界の理の一端を担う光の王。破滅が約束された未来を変えるために、ここに来たのです。

私には世界を救う使命があります。

もし……

……もし、世界の運命を変えることができて、その時、まだ私が生きていたのなら……

あなたの過去を変えることだってできるかもしれない。」

「……荒唐無稽すぎます。」

「かもしれません。自分の力を証明することも今の私にはできません。

それでも可能性はゼロではありません。だから、希望を捨てないでください。

生きようとあがいてください。お願いですから……」

「……涙をお拭きくだされ。」

「すみません。知っている人とグラハムさんの姿がかぶってしまったので……」

「……泣かれてしまっては、無下にはできませんな。姫様に叱られてしまう。

それに、あなた様には夢を、優しい夢を見させていただきました。その恩義も返さねばなりません。

全てが終わった時、その時は亡きマルグリット様のためお暇をいただきたく存じます。

それでよければ、仮初めとはいえ、ワシの剣を取ってはいただけませぬか?」

「……わかりました。」

「では、これよりグラハム・オウガスタ。エレノア様の騎士となりましょう。

我が剣はエレノア様の剣。我が身はエレノア様の盾。進む道を遮るものがあれば、尽くを斬り伏せましょう。」

「そ、そこまでは大丈夫です。」

「なぁに、ただの口上ですよ。深く考えなされますな。では、よろしくお願いいたします。エレノア様。」

「よろしくお願いします。グラハムさん……」


(姫様、申し訳ございません。長く生きると斬れぬ縁もできるもの……

もうしばらくお待ちくだされ。もうしばらく……)



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story18 ひとやすみ



疲れた……ふぁあ……なむい……じゃなくて……ねむ……

あらあら、シェリルはおねむの時間ね。

暗くなる前に休む場所を見つけたほうがいいかもしれない。

エマさんに見に行ってもらってるけど、近くに街があると決まったわけじゃないし。

それもそうね。アタシも疲れたわ。

では、キャンプファイヤーの準備をしましょう!

アンタ、キャンプの度に薪、燃やしすぎなのよ。明るいし暑いし、寝苦しいわ!

ですが、冒険家と言ったらキャンプファイヤーでしょう?

はじめて聞いたわよ、それ。

みなさん、ありました!もう少し歩けば、小さな村があります!!

やったー!お腹すいてたんだー!

もう少し、がんばりましょうか。

そうだね。

キャンプファイヤー……したかったな……


 ***


おなかすいたわー!さっそく食べましょう!

ダメだよ、キャトラ。まだルーファスさん、戻ってきてないんだから。

え~! いいじゃない。ルーファスは先に食べてていいって言ってたんだし。

肉、肉、肉、パン、パン、パン、スープ、スープ、スープ、……社長、社長、社長? 我慢、我慢、我慢……

みなさん、おそくなってすみま……

いただきます!

はむはむ!!んん! おいしー!!

カニカマがないのは残念だけど、おいしいわね!

あはは、待っていてくれて。ありがとうございます。

みなさんも食べてください。僕もいただきますので。


 ***


ごちそうさまでした!ぐー……

食べ終わった瞬間、寝た!?

シェリルはおこちゃまね~。ふぁあ……あら、アタシも眠く……

寝ちゃってもいいよ。

Zzz……


……それで、ルーファスさん、ギルドでなにかわかりましたか?

いろいろわかりましたよ。僕らが思ってる以上に深刻かもしれません。

カペレ教団のあった島ですが、焼け野原になったそうです。

被害者の話によると、巨大な怪物が光線で島を焼いたとか……

それって……

断言はできませんが、魔幻獣の仕業である可能性は高いと思われます。

ほかにも空を飛ぶ巨大な鳥の話。全てを凍らせる巨大な馬のような怪物……

どれも全部、私たちの知る魔幻獣と似てます。

すべて破壊したはずなのに……

魔幻獣を破壊した時、粉々に砕け散って、消失しましたよね?

予想でしかないのですが、魔幻獣はソウルを物質化したものなのかもしれません。

必要な量のソウルがあれば、魔幻獣として再構築することも可能だと思います。

魔幻獣は放っておけません。私たちも動かないと。

そうですね。被害が広がる前にどうにかしないといけません。

主人公、まず飛行島に戻ろう。

私もアンジェラに手紙を書きます。力になってくれるかもしれないので。

ありがとうございます。でも、エマさんは大丈夫なんですか?

幻獣様だったら、ですか?

私の友達だった幻獣様は、あの時、消えてしまった幻獣様だけです。

だから、大丈夫ですよ。忘れることはできないけど、前は向くようにしています。

おじさんがなにを考えてるかわからないけど、もし全て仕組んでたのなら……

許せないし、止めなければいけません。その覚悟はできています。

わかりました。

とにかく今日はしっかり休みましょう。久しぶりのベッドですからね。

そうですね。


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story19 備えねば!



エマ、飛行艇の件は?







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story20 信じる意味



「それで、向かう方角はこちらでよろしいですかな?

「はい。

……まだ信じられませんか?

「先ほど聞いた話のことですかな?たしかに荒唐無稽ではあります。

おとぎ話に聞く白と黒の王国。光と闇の王。そしてロイド・イングラムの野望……

このままでは世界が滅ぶなどという話。普通に考えれば、信じろと言われても、無理がありましょう。

「…………

「ですが、エレノア様の目にはたしかな覚悟と決意があった。

そして、あなた様はたとえ記憶を失っていようと、まっすぐ行動なされていた。

それだけで信じるに値します。

「ありがとうございます。

「なに、お気になさりますな。騎士が主人の言葉に従うのは当然のことです。

それで、どうなさるおつもりですか?

ロイド・イングラムを斬ったところで、この世界の破滅は免れないように思えましたが……

「はい。彼はすでに取り込んだ魔幻獣の力に細工を仕込んでいるはずです。

虚無のソウル……世界を無へと誘うシステムです。

ただ、まだ不完全なはずなんです。闇の王子が持つ力を得ることで虚無のソウルは完成します。

ロイドが闇の王子を倒しても、闇の王子がロイドを倒しても、世界の破滅は食い止められません。

「両方、生かしておくには、ロイド・イングラムは邪悪すぎますな……どうなされますか?

「……ロイドに力を奪われる前に闇の王子を倒します。

「ロイド・イングラム。そして闇の王はどうしますか?

「……わかりません。

本当は、もっと早くに止めなければいけなかったんです。

魔幻獣が持つ闇の力を取り込まれる前だったら、まだ選択肢はあった。

ロイド・イングラムを倒すだけですんでいたのに……

「……すぎたことを悔やんでいてもしかたがありません。

今、できることを片付けていきましょう。この老兵も力を貸します。

「ありがとう……ございます……


(にわかに信じられる話ではない。が、嘘をついているようにも見えない。

まあ、よい。もとより真偽などどうでもよいのだ。騎士として主に従うのみ……それだけの話ではないか)


「……それで、闇の王子とは何者ですか?」

「主人公……飛行島の冒険家で有名な人だそうです。」

「……そう、ですか。」

「お知り合いですか?」

「以前、一緒に仕事をしたことがあります。まっすぐな少年でした。」

「…………」

「……エレノア様、お気になさりますな。友人と戦場で刃を交えることは珍しくありません。

あなた様が、必要とされるなら、ワシが斬り捨てましょう。」

「いえ、それは私の役割です。私が負うべき罪です。グラハムさんはいてくれるだけでいいですから。」

「……わかりました。」




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