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【黒ウィズ】ARES THE VANGUARD RAGNAROK Story1

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最終更新者:にゃん

目次


Story1 DESPAIR

Story2 LETTER

Story3 STSND UP






ARES THE VANGUARD RAGNAROK
~SUCCESSOR~




story1 DESPAIR



 オリュンポリス上空に突如としてあらわれた巨大な神殿、絶望はそこから始まった。

 神殿から放たれた膨大な量の神の布、都市に舞い降りたそれは、ヒーローたちに巻きつき、意思を奪った。


wなんだ……これは……!身体が……勝手に……!

wみんな……逃げて……!


 己の意思に関係なく肉体が動き、共に戦う仲間や守るべき市民を襲いはじめたのだ。

 オリュンポリスは組織化されたヒーローにより守られた街。

 であるがゆえに、無数のヒーローが敵に回った時、その防衛機能はたやすく奪われた。

 混乱は、中枢である英雄庁本部をも襲った。


n5操られたヒーローが、無事なフォースを次々と襲撃しています!本部もいつまで保つか……。

n8我がいる限り、ここは落ちぬ。それよりⅥとは連絡がつかぬのか?

n5連絡がつくのはとⅨだけです、彼女たちも現在は立て直しに手ー杯で、身動きが取れないようです。

せめて零やⅥの状況がわかれば、対策も打てるのですが……。

n3……仕方ないね。僕の神器を使う。

n5良いのですか?

n3嫌に決まってるだろ。けど、市民の命が懸かってるなら、贅沢は言ってられ……。

n8ふたりとも、下がりおれ。どうやら手強いのが来おるようだ。

神器、目覚めの時ぞ。

 神器〈射掛ける月神〉を油断なく構え、アルテミスⅥは敵を待ち受ける。

 やがてあらわれたのは――

n8ゼウスⅠ!操られおったか!


n1逃げろ……!手加減はできない……!


 ***


 静かだった。

 冷たくなっていくヴァッカリオの肉体を抱いたまま、アレイシアはうつむき、沈黙していた。

 その背を見つめるエウブレナもまた、立て続けに襲った衝撃に、混乱を隠せなかった。

 と、上空に機影が浮かんだ。ヴァンガード隊の垂直離着陸機(VTOL)だ。

ゾエいやがったな!ここは危ねえ!ー度ベースに戻んぞ!さっさと乗りやがれ!!

Eボス!隊長が……!

ゾエわあってる!コリーヌ!ヴァッカを回収してくんな!

コリアイサー!アレイシア先輩、隊長の遺体をこちらに!

A遺体じゃない!

ディオニソスⅫはだれにも負けない、最強のヒーローなんだ……。死んでなんか、いるもんか……。

E……そうね。でも、隊長はすこし疲れているから、しばらく眠らせてあげましょう。ね?

 アレイシアはしばらく黙っていたが、小さくうなずき、ヴァッカリオの身体をコリーヌヘと託した。

ゾエよし、お前らもさっきと乗れ!ー度ベースに戻って状況を立て直すぞ!






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story2 LETTER



 状況は最悪だった。


ゾエアレイシアは変身できなくなり、エウブレナは神器を奪われ、挙句にヴァッカはくたばった。

絵に描いたようなお手上げだな、おい。いっそ笑えてくらあな。

ハルへ、ヘヘ……じゃ、も1個お笑い追加な。オリュンポリス全区域のネットワークがダウンしたぜえ。

 ネットワークはデメテルVの管理下にあるそして彼女は英雄庁本部にいる、つまり――

ゾエ本部が落ちたってかあ?早すぎだろうが!

 ゾエルはデスクに拳を叩きつけ、頭を掻きむしりながら叫ぶ。

ゾエⅥかⅨに連絡はつかねえのか!?ネーレイスでもいい!無事なナンバーズと連携をとるしかねえ!

ハルわかってるよぉ。けどオレ、クラッキングは専門じゃないから、なかなかなあ。

ゾエできるできないじゃねえ!やるしかねえんだよ!

 ふたりが全力で事態に対応している部屋の片隅で、アレイシアは膝を抱え、静かにうずくまっていた。

E……アレイシア。ショックだったのはわかるわ。けど、いまは前を向きましょう。

A……エウさんは知ってたの?隊長が、ディオニソスⅫだって。

E……ええ、あのアトランティスでの戦いの時に。

Aそっか……知ってたんだ……。

 いつも前向きで、うるさくて、まぶしかったアレイシアが、いまは力なくうなだれている。

 そんな彼女に何を言えばいいのか、エウブレナはわからなかった。


コリボス!ヤバいっす!操られたヒーローの集団が、このベースに向かってきてるっす!!

ゾエ×××××××!逃げるにも場所がねえんだぞ!どうしろってんだよ!!

 その声にも、アレイシアは反応しない。

 エウブレナはそんなアレイシアになにか声をかけようとし、首をふって、背を向けた。

Eボス、私が時間を稼ぎます。その間に次の手を考えてください。

ゾエわかってんじゃねえか。よし、行きな!

Eハルディス。人造神器を用意して。

ハルへへ、こんなこともあろうかと、ちゃんとオレ流魔改造ばっちりだぜえ。ほら!

Eありがとう。それじゃみんな。行ってくるわね。



Eアレイシア。私をヒーローにしたのは貴方よ。乗り越えてくれるって信じてる。だから……。

メタモルフォシス・ソーテイラー!

 ヘカテーの救世主の側面を引き出す奥義、メタモルフォシス・ソーテイラー。

 救うための力を身に宿したエウブレナは、拳を握り、構える。

Eさあ、かかって来なさい!




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story1-2



ゾエで、アレイシア。アンタはまだそうしてんのかい?

A……守れなかったんだ、ボクは……。大切なときに、なにもできず、失っちゃいけない人を……。

ボクが戦えさえすれば、守れたはずなんだ……。いつもそうだ……。守らなきゃいけないものを、ボクはいつも……。

ボクに力があれば、お父さんもお母さんも、守れた。なにがヒーローだ……。ボクは……。

ゾエふん、そうかい。んじゃ、いつまでもそうしてな。コリーヌ、ハルディス、奥で作戦会議だ。

コリちょっ、いいんすか?もうちょっと、なんか言うことが……。

ゾエアタシやな、時間の無駄が大っ嫌いなんだよ。その時間で守れる命があらあな。オラ、さっさと来い!

 そういってゾエルは奥の部屋へと姿を消す。

 ――その寸前、足を止め、小さなデータチップをアレイシアの足元に投げて寄越した。

ゾエアンタヘの預かりもんだ。中にビデオが入ってる。どうせヒマなんだ。時間つぶしでもしてな。

 そうして、今度こそアレイシアは室内にひとりきりになった。


 足元に落ちたデータチップを拾い上げ、しばらくのあいだ、ぼんやりと眺める。

 中に入っているビデオを流そうと思ったのは、中身が気になったからではない、ただ、そうしていることに耐えられなかったからだ。

 そして流れはしめた映像を見て、アレイシアは息を止めた。


「よう、これを観てるってことは、ディオニソスⅫの正体はバレちまったってことだな。

悪いねえ。憧れのヒーローがこんな酒飲みのおっさんでさ。ガッカリしたろ?

にしてもずっと疑問だったんだが、お前さん、なんでまたおいらなんかに憧れてたんだ?もっとほかにいるだろ?アポロンⅥとか。

ま、いいけどね。おいらもいまいち売れないパワフルワンが好きでたまらないしさ。あるよねえ、そういうのって。

だからまあ、その、なんだ。

おいらがどんな死に方したか知らないけど、あんまり気にするなよ?そう長くないってのはわかってたんだ。

おいらの身体はさ、とっくに壊れてたんだ。騙し騙し使ってただけ。これまでが奇跡だったんだよ。

けど、その奇跡のおかげで未練はなくなった。うまい酒をたらふく飲めたし、お兄ちゃんとも仲直りできた。

なにより、お前たちの成長を見届けられた。

胸を張って言えるよ。いまのオリュンポリスにディオニソスⅫは必要ない。

新しいポセイドンⅡがいる。襲名を待つ次代のハデスⅣがいる。そして――アレス零がいる。

なにも心配はない。お前たちになら、安心して任せられる。

あ、でも、あれ、おいらも言ってみたかったかも。「だっしゃしょかぁ」ってやつ。おっさんには辛いか?ま、とにかくそんなわけだ。

――笑ってくれ、アレイシア。

俺は、お前の笑顔が好きだ。お前の笑顔はみんなを元気にする。この世界に勇気をくれる。

こんな立派な後輩を育てられたんだ。俺ほど幸せなヒーローは他にいない。後は任せたぞ、アレス零。

俺はお前が笑顔にした世界を肴に、冥府でうまい酒でも飲むとするさ。じゃあな。」



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story3 STSND UP


A……おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 気がつくと、叫んでいた拳を握っていた、全身が震えていた。

Aなにやっとんじゃワシは……!あん人の生き方ば侮辱するっちゅうんか!

やめることなんていつでもできた!立ち止まってもだれも文句を言わんかった!

けんど隊長は駆け抜けた!やり抜いたんじゃ!ヒーローの道を!ヒーローの生き方を!

ワシを助け、ワシを導き、ワシに託した!じゃったら、この生命(いのち)を嘆くのは、あん人に対する侮辱じゃろうが!

変身できんからなんじゃ!ディオニソスⅫの残したもんは、ここにある!せやろが、アレイシア!!

 己の胸を叩き、アレイシアは立ち上がる。その瞳に、炎を宿して。


ゾエおー、やっと目が覚めやがったか。んじゃ、こっちに来な。渡すもんがある。

Aこ、これは……。

ゾエ神剣ザグレウス。あのバカがネクタルの力で具現化したもんだ。託されたんだろう?

普通は死んだら消えちまうもんだけどな。よっぽどなんか残したかったんだろうよ。で、持てるか?

 アレイシアは巨大な剣の柄に手をかけ、いまの全力を両手に込める。

Aうおおぉぉぉぉっっっっもい!けんどぉ!

 いまのアレイシアに、神の力はほとんどない。かつて100戦100敗を喫した、ヒーロー見習い時代と変わらない。

 だが、あのころ胸にくすぶっていた種火は、いまや大きく燃え盛っている。

A心地よか重さじゃあぁぁぁぁぁぁい!

 神話の時代から受け継がれてきた正義の意思。だれかを助けたいという理屈のない炎、それをここで絶やすわけにはいかない。

Aボス!いまのボクは弱い!行ったら負ける!めちゃくちゃ負ける!負けて負けて負けて――

そんで最後に勝つ!じゃからワシもぉ!行っていいですかぁぁぁぁぁぁ!

ゾエハッ!まだ寝ぼけてやがんな。テメエが命令を待ってたことがあるのかよ。

Aそうじゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ!いってきまぁぁぁぁぁぁぁぁす!




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story3-2



Eはぁ……はぁ……。さすがに、きついわね……。

 ベースに迫る敵の数は多い。だが、単純に数の問題ではない。

 操られていても、相手はおなじヒーローまさか命を奪うわけにはいかない、気絶させ、無力化するにとどめている。

 ただでさえメタモルフォシス・ソーテイラーは、消耗の激しい技だ、その力を精妙にコントロールするのは、心身を摩耗させた。

Eけど……ー歩も引くわけにはいかないわ!いまは、私しかいないんだから!

 エウブレナが敵の前にー歩を踏み出そうとした、その時!

z……ぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……。

Eえ……?こ、この声……!


Aうぉっ待たせしましたぁぁぁぁぁ!

Eアレイシア!戦えるの!?変身は!?

A変身はできん!できんが戦えんっちゅうことはなかとぉ!いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

Aおぉぉぉぉぉぉおおおおお負けたぁぁぁぁぁぁ!

けど負けとらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!

Eちょっ、すごいふっ飛ばされてたけど、大丈夫なの!?怪我はない!?

Aある!でも大丈夫!こういうんは慣れとるけんのぉ!

 足はふらつき、全身は土埃にまみれ、目を回し、巨大な剣を引きずりながら。

 それでもアレイシアは力強く次のー歩を踏み出すただ前を見据えて進んでいく。

E……そうね。貴方はそうだったわね。

 なにも力がなくて毎日のようにエウブレナに負けて、それでも諦めることはー度もなかった。

 その勇気がエウブレナを変えた。その胸の炎がエウブレナに燃え移った。


Aいけるのぉ、エウさん!ヒーローは、ここからじゃ!

Eもちろんよ!私たちは、ヴァンガードなんだから!


 そう、そんなふたりだから――

 その胸の炎は、君にも燃え広がったのだ。


アレイシア!魔力を受け取るにゃ!

 君の放った魔力が、吸い込まれていく、アレイシアの肉体にそして――

Aうおおぉぉぉぉぉぉ来たぞぉぉぉぉぉぉぉ!変・身・だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

Aさあ、かかって来んかぁ!いますぐ正気に戻しちゃるけんのぉ!




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story3-3



 アレイシアの構える神剣ザグレウスが、炎を纏う。

Aジャスティス・ファイア・スラァァッシュ!


 それが振るわれると剣閃は渦巻く炎と化し、眼前に群がるヒーローを包み込む。

 だが、焼かれる者の悲鳴はあがらない。あがったのは歓喜の声だった。


wう、動く……身体が思った通りに!

 アレイシアの放った炎は、ヒーローたちの両目を覆っていた奇妙な布だけを焼き払っていた。

Aやっはアレが原因だったんだね!うまくいってよかった!

wありがとうございます、アレス零。おかげで守るべき市民を傷つけずに済みます。

Aよぉぉぉし、そうと決まれば、あとは実行あるのみじゃあ!行くぞぉ、エウさん!魔法使いさん!


 君は飛び出していくアレイシアについていき、彼女に魔力を供給しつづけた。

 その甲斐あって、わずかな後には、周囲のヒーローはみんな正気に戻った。


A魔法使いさん、ありがっとぉう!おかげでみんなを助けられたぞ!

Eでも、いつの間に来ていたの?

ついさっきにゃ。

 異界の歪みに飲み込まれた君たちが、混乱に陥るオリュンポリスにたどり着いたのは、アレイシアがベースを飛び出した直後らしい。

 すぐに君を発見したゾエルからの連絡を受け、君たちはあわててアレイシアの後を追い、そうしてなんとか間に合ったというわけだ。

Eでも、アレイシアを変身させる方法が、よくわかったわね。どういうことなの?

にゃはは!簡単なことにゃ。

 かつてのアレイシアは、戦っているとすぐに神の力が切れていた、そこで君が魔力を供給することで長期戦闘を可能とした。

 アレイシアがアレス神と合体することで、エネルギー供給は安定し、カーニバルのころには君の手助けを必要とすることはなくなった。

 おそらく、なんらかの方法でそのエネルギー供給が断たれたため、変身ができなくなったのだろう。

Eそうか。アレイシアのパワーは最初に変身したころより何倍もあがってる。

だからエネルギーの供給なしに変身すると、すぐに使い果たしてしまっていたのね。

そういうことにゃ。だから私の弟子が魔力を与えることで、変身できるようになったにゃ。

A……この剣だ。自分の力で創る槍じゃなくて、隊長の遺してくれた剣を使ってるから、力の消耗を抑えて戦えてる。

魔法使いさん、ありがとう。君と隊長のおかげで、ボクはまだ、ヒーローでいられるみたいだ。

先輩として、当然のことをしたまでにゃ。とりあえずの危機は脱したみたいだし、状況が知りたいから、ベースに戻るにゃ。

A魔法使いさんとキャット先輩がいるなら、怖いもんなし!さあ、神さんたちに反撃開始じゃあ!




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