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【黒ウィズ】喰牙RIZE2 Story1

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最終更新者:にゃん

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story



「こりゃだめだ。押し切れねェ。奇襲で仕留め損なったのが痛ェなァ。」

「そうだな。このあたりで退くとしよう。」


3「逃すか!」

武器を引き、距離を取ろうとするふたりへ、ミハネが果敢に斬り込んでいく。

その眼前に、いくつもの火柱が立った。

3「怪炎ッ……!?」

火柱の群れが、両者の間をさえぎる。その向こう側一一戦士の傍らに、怪炎の魔神の姿があった。

ミハネは水の呪装符を使った一閃で、邪魔な火柱を叩き斬る。

しかし、そのときにはもう、彼らは杖ごと、場を後にしてしまっていた。


1「どうも妙なことになってるな。

敵陣を蹴散らし終わったラディウスは、ぶんと剣を振って血のりを飛ばし、縮こまっているアスピナの方を見やった。

1「よう。おまえ、変わった術を使ってたな。ありゃなんだ?」

5「ひっ――」

牙むく獣の笑みを向けられて、アスピナは、すばやく近くの木の裏に隠れた。

虎を目にした野ウサギのような動きだった。

追撃を諦めて戻ってきたミハネが、じろりとラディウスを見やる。

2「アスピナは感覚が鋭い。おまえの呪装符に怯えている。」

3「ラディウスさん、竜とか吸血鬼とか使ってるもんね一。」

ふたりはどうしてここに? と君は尋ねる。

1「西の方で、怪物が人を襲うって話があってな。その原因を探ってたんだ。」

3「そしたら、禁具の気配を感じて。それを追ってきたの。」

神と交信する力を持つ杖。それが、怪物を生み出していたということは、あの怪物たちは……。

5「ただの怪物じゃない……。」

君の視線を受けて、アスピナは、おどおどと告げる。

5「どこかの異界の、神の化身。あるいは、もっと小さな眷属たち……だと思う。」

1「あんな見た目の化身だか眷属だかがいるなんざ、ろくな神様じゃなさそうだな。いわゆる邪神か。」

2「神を降ろす、と奴は言った。」

ミハネは、じっとアスピナを見つめた。

「できるのか。アスピナ。」

「あの杖があれば、たぶん……。」

うつむいたまま、アスピナは答える。

「賛となる魂を捧げれば。あの杖には、もう半分くらい、儀式に必要な魂がたまってる……。

それを聞いて、ラディウスとシューラが顔を見合わせる。


「なんか、思った以上に物騒な話になってんな。」

「だねー。」

「それに、なんで魔法使いとウィズがいるんだ?」

「例によって、いきなり飛ばされたにゃ。」

「またかよ。おまえらも大変だな。」

まあね、と苦笑しながら、君は、ミハネとユウェルが道の脇へ歩いていくのを見た。

そこでは、あの運び屋の男が、腰を抜かしてへたり込んだまま、震えて動けずにいる。


4「正規の運び屋ではないな。金次第で、どんなブツでも運ぶ――いわゆる、裏の運び屋か。」

2「それなら、このあたりの地理には明るいだろう。」

刃の双眸で男を見下ろし、彼は言う。

2「報酬はくれてやる。奴らを見つけ出すのを、手伝え。」

男は、無言でがくがくとうなずいた。


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story 魂すらも失せた村



「誰もいねーな……。」

ファルクは、ぽつりとつぶやいた。

そのつぶやきすら、虚ろにこだましてしまいそうな静けさが、小さな村を隅々まで支配しきっている。


「ところどころ、戦いの跡があるわね。」

無人の村の検分を進めながら、イルーシャが痛ましげに言った。


「例の”怪物”に襲われたのかしら。」

「それにしちゃ、魂が見当たらねーのはおかしい。」


村の片隅に置かれた墓場を見やり、フアルクは怪厨げに眉をひそめる。


「こんな不気味なところ、初めてだ。墓場にすら、霊魂ひとつ残ってね一なんて。


死者の魂は、どこにでも当たり前にいるものだ。

死者と触れ合う〈死焔族〉にとって、”死者の魂が見当たらない”というのは、なんとも侘しく、ぞっとしない光景だった。


「まるでここだけ、きれいに掃除されちまったみてーだ。」

「だけど、”掃き清められた”って感じでもない。」

「”喰われた”ってのが、ありそうなところか。」

苦々しく言って、手にした鎌の柄を強く握る。

魂は、それ自体がひとつのエネルギーだ。人の想い、人の自我、そうしたものを形作る、根源的な力を秘めている。

だからこそ、何かしらの方法でこれを喰らえば、己の力として利用することも可能となる。

無論まっとうな手段ではない。外道にして外法。この世界においては禁術と呼ばれるべきもの。


「どこかの誰かが、怪物を操っている。そいつらを使って村を襲わせ、人の魂を喰らわせている。

とすれば当然、何か目的がある。何百人もの魂を使わなきゃならないような、途方もなく大それた目的が。

それが何かはー―」


イルーシャは、スッと目を細めた。

「訊いてみた方が、早そうね!」


言うなり、携えていた銃を背後に向け、狙いをつけたとも思えぬ速度で発砲した。

魔力の弾丸が、家壁を穿つ。

同時に、その家の陰から、何かがサッと飛び出すのが見えた。


ファルクは、駆け出しながら鎌に呪装符を喰らわせた。

「ライズー―〈凶騒の支配者〉!」


するりと敵影に肉薄し、禍々しい咆嘩を上げる鎌を振り抜く。


「ふっ!」

白刃が閃く。なめらかに抜き放たれた長剣が、うまく鎌のー撃を受け流していた。


旋回し、相手の側面に移動。いくつもの円弧を刻むようにして、すばやく鎌を撃ち込んでいく。

相手は踊るように後退して鎌をさばきつつ、細身の剣の柄に生えた口へ、呪装符を突っ込んだ。


「ライズ――〈冥闇騎士〉!」


剣から鋭い間色の魔力が放たれ、両者の間の空間を裂く。

それで一瞬を稼いだ相手は、大きく飛びすさり、距離を取った。


背の高い、女だ。どことなく、針を思わせる鋭さがある。隙を見せれば即座に貫かれるような一一


「この状況と無関係……なんて、まさか、おっしゃらないでしょう?」

女に銃を向けながら、イルーシヤが隣に並ぶ。

「事情を。聞かせていただきますわ。なんなら、魂になってからでもね。

”死人に口なし”は、〈死焔族〉には通じませんことよ!」

「姉ちゃん、それ悪役のセリフ。」

「勝てば官軍!」

「それもな。」

ぶつくさ文句を言いつつも、ファルクは姉とタイミングを合わせ、女戦士に向かっていった。


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story その名はスタード



「あれ? なんか、めっちゃ増えてる。

今後の手はずを確認したところで、レイルとフレーグが合流してきた。


「レイルたちもー緒にいたんだにゃ。」

「シューラさまが禁具の気配を感じたとのことで、二手に分かれておりましてな。」

「ていうか、むしろなんであんたがここにいんの?魔法使い。しゅぱーって光って消えたのに。」


レイルとフレークとラディウスは、〈號食み〉の聖地で正式に、シューラの護衛として雇われた、ということだった。


「私がためてきたトーテムの力、だいぶなくしちゃったから。」

「だから、また各地を巡って、十分に力をたくわえるまでの護衛ってわけだ。」

意外だ、と君は率直な感想を口に出す。レイルたちはともかく、ラディウスは、一人旅を続けるものだと思っていた。

「たまにはいいかと思ったのさ。〈號食み〉の一族は、金払いも良かったしな。

あと、まだシューラに勝ってねえ。


「無理でしょ。永久に。」

「るせーな。俺だって大食いには自信あんだよ。〈號食み〉相手でも、勝てねえこたねえ。はずだ。」

「ハハハハハハハハ。」

「てめ。顔。」


合流したレイルたちにも事情を説明し、今わかっていることをまとめると――

4「奴らは〈奪魂杖〉で怪物を生み出し、人々を襲わせ、魂を集めていた……ということだな。」

2「そして、その魂を費として捧げ、邪神を降ろそうとしている。」

ミハネは、ちらりとアスピナに視線をやった。

2「あの男も、〈怪炎の魔神〉を呼んだ。同じ〈奪魂族〉か?」

問いに、アスピナは悄然とうなずく。

「あの人……スタードは、〈奪魂族〉の戦士なの。

2年前……族長が、邪神に魅入られて、それを降ろそうとして――

スタードは、他の氏族の戦士たちとも協力して、族長を止めるために戦ったの。

邪神の降臨は止められたけど……その戦いで、村は人の住めない場所になって……トーテムも、吹き飛んじゃった。

だから……〈奪魂族〉はみんなに嫌われてる。゛邪神を降ろそうとした民。って……そう言われて。」


故郷を失い、流浪の身となり、さすらう各地で忌み嫌われる氏族――

アスピナのおどおどした態度は、他の氏族の嫌悪や畏怖の視線にさらされてきたせいなのかもしれない。


「また神を降ろしたら……今よりもっと、嫌われちゃうのに。なのに、どうして――」

「止めるしかないだろう。」

その場のすべてを断ち切るように、ミハネが断じた。

「スタードが何を企んでいるにせよ――外れた道は、断つしかない。」

「そうだな。わざわざ”神を降ろす”と告げたのは、アスピナを混乱させるためだろう。

逆に言えば、それだけアスピナの力を警戒しているんだ。化身を呼べる〈奪魂族〉は少ないからな。」

「悩んでも答えが出ないときは、とにかく今やるべきことをやれ。」

「うん……。」


1「そうそう。連中が何をやろうとしてるかなんざ、ブッ飛ばしてから訊きゃあいい。」

「ひいっ。」


『バリアー!』

ペンデュラムが、ひとりでに展開し、ラディウスの前に障壁を張った。


「しゃべったにゃ。」

3「珍しい呪具だね一。」

1「なんでバリアー?」

L「怖いんじゃないの? 顔が。」

「なんか釈然としねえな……なんでミハネは大丈夫で、笑顔の俺はだめなんだ。」

「ハハハハハハハハ。」

「だから顔!」


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story 中級 聖仙川



しばしの休憩を挟んだ後、アスピナのダウジングとシューラの感覚を併用し、禁具のある方向を絞り込んだ。


3「〈聖仙川〉の方だね。トーテム〈流水華聖神〉の影響を受けた、神聖な川だよ。

不浄の存在とは反発する性質があるから川の流れの乱れている方に行けば、追いつけるはず。」


「よし。んじゃ、頼むぜ、おっさん。」

ジャビーと名乗った運び屋の背中を、ラディウスが力強く叩いた。ジャビーは、げほげほとむせる。

「近道を探すのはいいけどよ、あんなのとの戦いに巻き込まれるのは勘弁だぜ。」

「いざとなりゃ、腰の剣で叩っ斬っちまえよ。」

ラディウスは、ジャビーが腰に佩いている長剣を指差した。なかなか立派そうな代物だ。

「こいつは、単なる飾りだよ。別に使えるわけじゃねえ。」

「ふうん。にしちゃ、手入れはしてるようだがな。」

さらりと目ざといことを言ってから、ラディウスは後ろを指し示した。

「戦わなくてもいいけどな。多少の危険は覚悟しとけ。アスピナだって、がんばってんだからな。」

言われて、ジャビーは、ちらりとアスピナの方を見た。

少女は、震える唇をきゅっと結び、涙目のまま、前を見据えている。

「……わかったよ。けど、やべえと思ったら、とんずらさせてもらうからな、俺は。」

ため息を吐いて、川を先導し始める。猫背気味の背中に、なんとも言えない哀愁が漂っていた。

ミハネとラディウスが、その両脇に並んだ。


「あのふたりが前衛なら、安心だな。スタードたちとも渡り合える。

しかし、見知った面々が、こうも続々と集まってくるとはな。」

「みんな、禁具を追いかけてたからじゃない?」

「その手の話に首を突っ込む面々が、―堂に会しやすいのは確かだがー―」

ユウェルは、困ったように君を見た。

何かに引き寄せられたのかもしれないね、と君は言う。

「その”何か”が、災いの類でなければいいんだが。」


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story



アスピナとシューラの示す方角を目指し、ジャビーが導く近道を通っていくと、やがて、川が震えるような感覚があった。


3「あっち!禁具があるんだ。近いよ!」

L「よーし、フレーク、ラストスハート!ライズ――〈神威の幻獣〉!」

 「それ、疲れるんですけどねえ。」

3「ライズー―〈震撃の突貫公女〉!」

5「〈命の御柱〉、〈光の礎〉――〈大いなる翼蛇神〉!」


レイルとシューラが加速の呪装符を使い、アスピナが翼ある蛇神を呼び出した。

君たちは、それに乗ってー気に距離を詰める。


しかし、飛んでいった先にいたのは、スタードではなかった。


「おっ。いい具合に釣れたねェ。」


L「あれっ、あいつだけ!?」

「悪いなァ、フェイクさ。ここにあるのは、禁具は禁具でも、〈奪魂杖〉じゃねエ。俺の個人的なコレクションよ。」

4「コレクションだと?」

「そうよ。俺は〈優麗都雅なる凛黒竜〉をトーテムとする、〈凛竜族〉のバルチャス。禁具の収集が趣味なのさ!」

バルチャスが、バッと巻物を広げた。

するとそこから例の怪物が――邪神の眷属たちが次々と現れる。

5「なんで!?杖もないのに!」

「これなるは〈写秘捺(しゃひな)〉!魚拓取るみてェに何かをベターッとやると、中に封じておけるってェ面白禁具よ!

人間を入れると狂っちまうんだが、邪神の誉属にゃ関係ねェようだなァ!」

4「軽々しく禁具を使ってくれるものだな!」

「そりゃおめェ、禁具ってなァ使うが華だからよ!

”芸術を愛し、芸術を生み出す礎を愛す”!それが我が氏族の使命つてヤツだ。んで俺ァ、なかでも禁具に目がねェのさ!

禁具はよう、こうなってくれたならなァってェ根源的な欲望の具現化よ! つまりこれにゃあ、生々しい人の本質ってもんが詰まってる!

好きなんだよなァ~それが!倫理も道徳も飛び越えたとこにあるギラッギラの感情!

〈写秘捺〉もよォ、愛する人とー緒に入って、閉じた世界で暮らすために作られたんだぜェ。入ったら狂うってのにゃっちまうんだよなぁ!」


喜々として語るバルチャス。〈翼蛇神〉の背に乗っていたミハネが、珍しく嫌悪をあらわにする。

「禁具は、邪な欲望が生み出す外道の産物だ。おまえの使命は、そんなものを愛するためのものではあるまい。

「冷めたこと言うなよセンパーイ!俺ァ、あんたのこと尊敬してたんだぜ?〈呪具盗り〉ミハネ!

強くなりてェ一心で、呪いの刀に手を出した。すっかり心を魅入られて堕ちたは血塗れ羅刹道(らせつどう)命もろとも呪具を盗る、非情の烈刀ここにあり!」


ミハネの顔色が変わった。刃の双眸に炯々(けいけい)たる怒気が満ち、すさまじいまでの殺気がほとばしる。


「黙れ!」

「いーいじゃねェの俺ァ好きだぜそういうの!殺人コレクター同士、仲良くしようやセンパーイ!」

「戯れるなッ!」


〈翼蛇神〉の背を蹴り、ミハネが跳んだ。刀を抜き放ち、眷族の群れへ身を躍らせる。


4「あの馬鹿、あっさり挑発に乗って!

1「しょうがねえだろ。そういう奴だ。


ラディウスも、シューラの作り出した角獣型の魔力から跳び下りた。



1「ライズ――〈屠竜の剛双刃〉!」

左手に炎の大剣を生み出すや、双の剛剣で眷属どもを薙ぎ払い、強引にバルチャスヘの道を切り拓く。

「おおっと、竜族相手に〈屠竜の〉とは、洒落た真似してくれんねェ!」

2「ライズ――〈白銀の竜騎士〉!」

ラディウスの剣撃から転がって逃れたところへ、高々と跳躍したミハネが高速で落下してくる。

「のわっ、とと、こいつは予想外――」

「「はあっ!」」

呼吸を合わせ、ふたりが同時に斬りつける。

バルチャスは、意外と細やかな槍遣いでふたりの連撃をいなし、大きく後退した。



3「まったくあいつらときたら、作戦ももなしに前に出る!」

4「文句は後で。今はとにかく後方援護!」


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「ロード――〈優麗都雅なる凛黒竜〉!

そゥら!”凛黒竜の極印”とくらァ!」


トーテムの力を引き出したバルチャスが、大きく開いた口から、漆黒の霧を吐き出した。

ラディウスとミハネは即座に後退した。しかし、わずかに霧を吸い込んでしまい、苦悶に顔を歪める。

1「毒か……!いやらしい真似しやがって!」

「ブハハハハハハハハッ!ちィィィィかづけまいッ!」


5「〈翼蛇神〉!」

怪物たちを蹴散らしていた〈翼蛇神〉が、濃々たる毒霧の渦中へ飛び込んでいく。

輝ける翼のはばたきが、魔性の毒を吹き払った。


その奥に見えるバルチャスは、歪んだ鏡を両手に構えている。

「あいにく、そいつを待っていたァ!」

蛇身が、鏡に映る。

チカッと鏡が光を反射した瞬間、〈翼蛇神〉が身悶えし、でたらめに暴れ始めた。 


1「うおっ、と、いきなりなんだ!?」

「これなるは〈狂神鏡〉!神の在りようを捻じ曲げる禁具!こういうときでもなきゃ使いようのねえガラクタよ!」

〈翼蛇神〉が、ぐるりとこちらに反転した。爛々と光る瞳が、アスピナを見つめている。


4「まずいぞ、アスピナ!制御を!」

5「む、無理!声に応えてくれないよぉ!」


〈翼蛇神〉の翼が空を撃つ。

飛び上がった蛇身が、烈風を巻き起こしながら、アスピナめがけて急降下した。

「ひっ……!」


君は縮こまるアスピナの前に飛び出した。即座に呪文を唱え、防御障壁を展開する。

賭けだった。荒ぶる神の一撃を止められるか否か、その確信はまるでない。

それでも、やらないよりはマシだった。君はとにかく、すべての魔力を障壁に注ぐ。

「ロード――」

そのとき、とん、と軽い感触が障壁を打った。


2「〈不動なる剛烈刀〉!」

後退してきたミハネが、君の障壁を踏み台に、〈翼蛇神〉めがけて跳び上かっていた。

吹き荒ぶ烈風が、その身を鋭く切り刻む。血の華にまみれながら、ミハネは構えを崩さない。

決死の一刀を、神に浴びせるー―ただそのために。


4「渇せし者に、うたかたの杯を!」

3「ライズ――〈鮮血の貴公子〉!」


ユウェルの魔法とシューラのライズが、〈翼蛇神〉の動きをわずかに遅滞させる。

それで、ミハネの刃が先んじた。


「”剣閃嵐舞「サカサクラ」”!!」


蒼刃が、幾度、閃いたのか。君に数えられたのは、4つがせいぜいだった。

実際には――〈翼蛇神〉の頭部は、10を超える新線に断ち割られ、魔力の飛沫を散らして消えた。


「嘘だろマジかよ神斬るかァ!?だったらお次はこの禁具――」

「うっさい、竜の恥さらしッ!」

バルチャスが取り出した新たな禁具を、レイルの鎖鉄球が的確に捉え、手元から吹っ飛ばした。

1「いい一撃だ、レイル!」

滑り込むように、ラディウスが双剣で斬りつける。バルチャスは槍で防御しようとするが、その反応は明らかに遅かった。

1「”龍滅十字斬”!」

双剣が、その名の通りに十字を刻む。

竜頭の槍戦士は、よく回る舌ごと、その頭部を十字に断ち割られ、どさりと仰向けに倒れた。


「あきれた野郎だ。」

炎の剣を消しながら、ラディウスがつぶやく。

「俺が斬る前に、死んでやがった。」

「禁具を使った反動かなぁ。神様を歪めるなんて無茶するから。

とてとてと近づいてきたシューラが、バルチャスの使った禁具を〈號食み〉の槍に仮封印していく。


一方、君とアスピナとユウェルは、血だらけになって膝をつくミハネのもとへと駆け寄っていた。

「ミハネさん、だいじょうぶ……!?」

「ああ。生きている。魔法使い、足場を作ってくれて助かった。」

そういうつもりじゃなかったんだけど、と苦笑しながら、君は治癒の魔法を施していく。

「まったくおまえは……俺とシューラ師の援護がなかったら、良くて相打ちだったぞ。」

「おまえの魔法が届く距離だ。五分五分と踏んだが、シューラ師のおかげで勝ち目が増えた。」

「相談もなく人をあてにするな!」

「それより、問題は〈奪魂杖〉だ。」


仮封印を終えたシューラが、ふるふると首を横に振る。

「やっぱり〈奪魂杖〉はなかったよ。それに、さんざん禁具が使われたせいで、〈聖仙川〉の気が乱れちゃってる。

これじゃ、近くに禁具があっても、気配を感じるどころじゃなさそう……。」

1「それも、ここで足止めする理由のひとつか。命を懸けてスタートを逃がそうなんて、そんなタマには見えなかったがな。」

4「ご自慢のコレクションを使い倒したかっただけかもな。」

「アスピナのダウジングならどうにゃ?」

5「たぶん、無理。それでつかめるなら、こんな罠に引っかかってないから……。」

4「あちらも〈奪魂族〉だ。ダウジングを使われるとわかっていて手を打ったんだろう。あるいは、何かの禁具で隠匿しているか……。」

L「つまりー……あいつらがどこに行ったか、わかんなくなっちゃったってこと?」

君たちは、思わず沈黙した。明確な打開策は、誰の頭にもなかった。


「あのよ。」

そこで声を上げたのは、意外な人物だった。

離れて様子を見ていたらしいジャビーが、ひょこひょこと近づいてきて、自信のなさそうな顔で告げる。


「ひょっとしたらだけどよ……奴ら、北の街に向かったかもしれねえ。

大きな街だからよ。人もブツもまぎれこめるし、逃げる手段もたくさんある。ブツを受け取った奴は、だいたいそこから高飛びしてんだ。

そこで受け渡しをすることも多いからよ。近道は知ってる。金をもらえりゃ、案内するぜ。」


みな、じいっとジャビーを見つめた。ジャビーは、情けない顔で縮こまった。

「な、なんだよ。やめろよ、そういうの、なんか、こ、怖えじゃねえかよ……。」


3「ああ、ごめんごめん、ちょっと驚いちゃって。」

2「騙すつもりとわかれば、即座に斬る。」

「か、金さえちゃんと払ってもらえりゃ、そんなことしねえよ!

それによ……俺だって、その、ちょっとは責任感じてんだよ……あんなやベェ奴らの片棒担いだと思うとよ……。」

どこかしょんぼりと、ジャビーは言った。


「いいんじゃねえか。他にあてもねえしな。」

あっさりと言って、ラディウスはジャビーの肩を叩いた。

奴らに追いついて、邪神の降臨を止められるかどうか。ひとつ、おっさんに世界を託してみようじゃねえか。」

「そういうプレッシャーのかけ方やめろよ!」

ジャビーの悲鳴が、せせらぎのなかにこだました。


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