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【白猫】ワールドエンド Story4

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story21 クロスライン



おそーい!!

もう二日も経ってるわ!!ふんとにもう!シェリルとルーファスはなにをしてるのかしら!

こうしてる間もロイドは大暴れしてるのよ!

キャトラ、落ち着いて。天気の影響とかで、飛行艇が遅れることはよくあることなんだし。

焦る気持ちはわかるけど、ルーファスさんとシェリルちゃんを信じるしかないよ。

アンタはアンジェラから返事来たりした?

まだ来てないわ。

そわそわするわ!そわそわするの!!

見て、キャトラ。あれ、飛行艇じゃないかな?

きっとルーファスたちよ!海岸に急ぎましょう!!キャトラさんのお尻についてきなさい!

待って、キャトラちゃん!


…………

……


いそげ、そげー!

キャトラ、待って!

待つわ!だって、疲れたもの!!

……<キャトラのテンションが高い――>


はあっ!!

!!


エレノアさん!グラハムさん!?

逃がしませんっ!

なんなの!? あの子、どうして!!

アイ……リス様……

いきなり、どういうつもりですか?

…………

……どいてください。その人を倒さなければ、ならないんです。

エレノアさん!いったいなにを言ってるんですか!?グラハムさん、やめてください!

……エマ、ワシは今、エレノア様の騎士だ。主の邪魔をするならば、君とて容赦はせん。

ちょっと! いったい、どういうことなの!

……その人が生きている限り、この世界が滅びるからです。

ロイド・イングラムの野望を止めるため、私はあなたを倒さなければなりません。

それが、あの方との約束……

……私の王としての使命だから!


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story22 剣舞と幻翼



はあっ!

やめてください!

くっ!

エレノア様、おさがりくだされ。

大丈夫です。

迷いがあっては剣は鈍ります。アイリスを傷つけたくないのは理解できますが、それでは甘すぎる。

…………

あなた様は手を汚さなくてもいい。それはワシの役割です。

ですが……

グラハムさん!待ってくださ――

――遅い。

しばらく寝ていなさい。立てば、今度は斬らねばならん。


主人公……ワシは貴殿を斬る。

許しは乞わん。好きに恨め。

!!<速い――>

アイリス様!

ただの当身です。邪魔されては、斬ってしまうかもしれませんからな。

どうしてよ!グラハム、アンタ、こんなことする人じゃあ……

キャトラ、お前さんはワシのなにを知っとると言うんだね?

戦場で数え切れぬ命を奪ってきた。そんな鬼の顔まで知っておるのかね?

でも、アンタはいい奴でしょ!

……仲間にはな。だが、敵には残酷になれる。人とは、そういうものだよ、キャトラ。

……

……腹は据わったか。

二人ともやめて!!

<強い――

――斬撃をかわし、受ける。逃げるだけで精一杯だ。>

(今ので首が飛ぶはずだったが、逃げたか……いや、無意識のうちにワシが手心を加えたか?)

……度し難い。ここまで鈍ったか。

(穏やかな生活。島民たちとの交流……悪くなかった。だが、違う。ワシは本来、そういうものではない。

今、必要なのは、殺しをひさぐ一匹の鬼。感情も逡巡も過去も未来も鬼には不要)

――謝罪するよ。少し手を抜いていた。

主人公、あぶない!


(くっ……浅いが……まさか一矢報いてくるとはな……)

グラハムさん!

おさがりくだされ!まだ決着はついておらん!!

 (死をいとわぬ老人と、守らねばならないものがある若者、伸び代の差が出たか……

まあ、よい。次の一太刀に命を乗せるだけ――

 …………

二人とも……やめて……

<……やられるわけにはいかない!>



なんだ、あれは……

あれって……

……倒したはずの魔幻獣。

ぎにゃー!撃ってきたー!!

これが魔幻獣……?

エレノア様、今は、あの怪物をどうにかするのが先決かと……

はい。魔幻獣に闇の王子を倒されるわけにはいきません。

あれを墜とします。手伝ってください。

御意。


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story23 大空の絆



ぎにゃー!やっぱり、相手が空じゃあ、どうしようもないわ!

七つの力がうちの一つ、<慈愛>の檻――!

今の……

招来せよ!七つの力がうちの一つ、<破壊>の雷――

ぐっ……

エレノア様、無理をなさっては……

ここで無理をしないで……どこで……

このままじゃあ……みんな……

<*×○■!&%$…………>

!<傷が癒えていく。>

アイリス様……

あなたがたの目的はわかりません。でも、ここは力を合わせましょう。

……礼を言う。

でも、どうするの!?このままだと……

あれは飛行艇!?


あいつら迎えに来たら、フレスベルグとまた会うとはな!

どうして!?壊したはずなのに!

わからん。とにかく油断はするな。

(おなごの気配がする――!)

すっごくでっかいよ!なにあれ!?かっこよくない!?

僕たちがフレスベルグって呼んでた兵器。空飛ぶ魔幻獣だよ。

魔幻獣なのかー……かっこいいけど、これは倒さないけないね!

みんなが危ない。空にいる僕らでどうにかしないと!

ときにルーファス、下におなごはいるか?

え? おなご?アイリスさんとエマさんのことですか?

全力で行くぞ!ディラン!ノエル!!

やる気出すのはいいけどよ……

なんか不純な感じがする。



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story24 王として



やったの!?

どうにか倒せたみたい。

…………

ディラン!?アンタたち、どうしたの?

飛行島に寄ってたら、ルーファスたちが来てな。

困ってるみたいだったし、迎えに来たってわけだよ。

ありがとうございます。助かりました。

(知らないおなごが二人……ここが楽園か?……否、超楽園だ!

――

(強い……)

グラハムさんにエレノアさん!?なぜ、ここに!?

くっ……

エレノア様っ!!


 ***


「……アイリス様。」

「…………

「ごめんなさい、私……失敗してしまいました……

魔幻獣を起動前に破壊できませんでした……申し訳ありません……

「  」

「……そんな悲しそうな顔をしないでください。

でも、この世界だけは、絶対に救ってみせます。必ず……


 ***


大丈夫ですか?

アイリス……様……?ここは……!

近くの街です。エレノア様が倒れてしまったので、ワシが運びました。

……私は、また失敗してしまったのですね。

…………

あなたは、どうして主人公を狙っているの?

それに、どうしてその力を?

…………

信じてもらえないかもしれないのですが……

……私もまた光の王だからです。

二人の王は存在しえない。それは理を崩します。

……そうですね。おっしゃるとおりです。

でも、理を壊してでも、私に希望を託した人がいました。

それは、あなたですよ。アイリス様。

最初からすべて話させてください。


 ***


――だから、私は、この時代にやってきました。

……信じていただけませんよね?

…………

……あなたの話が本当だとしても、私はあなたのやり方を認めるわけにはいかない。

それは、きっと未来の私だって同じだと思う。

……でも、ほかに方法がないんです。主人公さんを倒さない限り、この世界は滅びます。

……私も一緒に考える。ほかの選択だって、必ずあるはずだから。

…………

それに、暴れている魔幻獣は放っておけない。

先に魔幻獣を倒しましょう。そのあと、この問題について考えましょう。

一時休戦ということですか……どうなさりますか? 姫様。

……アイリス様が問題なければ。

……ワシからは一つだけ提案があります。このことは、ここにいる者以外には黙っておいてもらいたい。

それは、どうしてですか?

荒唐無稽な話になります。信じてもらえなければ、ワシらは異物として排除されることになるでしょう。

…………

……わかりました。


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story25 供宴



アイリスたち、降りてこないわね。

いろいろと話すことがあるのでしょう。

はあ~……めちゃんこ疲れた~……

シェリルも、がんばったわね。ご苦労さま。

ご苦労だったよー。社長さんを持ちながら飛ぶのは、大変だったよ。暴れるし。

それは謝るけど、着の身着のままで高速で飛ばれた僕の身にもなってほしい。呼吸もままならなかったよ。

だからスピード落としたんだよ。

そっか。それでも死ぬかと思ったよ。

お前もいろいろ大変そうだな。とりあえず、飲めよ。

ありがとうございます。……って、酒じゃないか!しかも強っ!!

もしかして飲めないのか?

いや、飲めないわけじゃありません。ただ、過去にいろいろありまして……

せっかくできた縁なんだ。軽くつきあってくれよ。

まあ、軽くなら……

あら、ヴィシャス、そんなしかめっ面してどうしたの?

……マグリンが男だったというのは本当か?

本当よ。ロイドっていう奴だったわ。

信じない。信じるわけにはいかない。信じたら俺の負けだ!

男相手に鼻血流してたとはな……ぷっ……くく……

誰か、俺の記憶を消してくれ。むしろ俺ごと消してくれ。

泣くなよ。

僕の記憶も消してくれぇぇぇっ!!過去が! 過去の記憶が!!僕を苛む!!

社長さん、いい酔いっぷりだな。大丈夫か?

ヘッドバンギングしてるよ?大丈夫じゃないんじゃない?


……男は酒で涙を忘れる生き物だ。俺も例外じゃない。

……そう、なんですか?でも、飲みすぎは体に毒だと思います。

毒を飲み干したい夜もある。

フッ――

鼻血出てますよ!?もしかして、毒を本当に飲んだんじゃあ……薬草ならあるので、毒消し、作ってきますね!

フッ――毒のくだりを本気にされるとはな。俺のなにが悪かったんだ?

鼻血だろ。

フッ――

僕は本当にダメな奴なんだよ。僕は君を導く資格なんて……ないことはないっ!そう思わないか、シェリル!!

社長さん、酒は飲んでも飲まれちゃダメだって母ちゃん、言うてたよ?

飲まれなきゃやってらんないんだよ!

この男どもは……まったくいい歳して!


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story26 休戦協定



さあ、魔幻獣をどうにかしにいくわよ!

行こう!

頭が……痛い……

社長さん、昨日はけっこう飲んでたからな……

魔幻獣に関する情報は?なにか新しいものはあったか?

一個あったよ。地図はこれ。

よし、目的地は決まったな。それで……

昨日、いろいろ話は聞いたが、あんたたちも一緒に来るってことでいいのか?

目的は同じだからね。現状、休戦状態だ。

正直、俺は反対だ。

どして?

おなごもいるのに?

主義主張でわかりあえない相手はいるもんだからな。世界はそれほど単純じゃない。

ま、決定権は俺にはない。あんたらが決めてくれ。

大丈夫です。

詳しくは言えないけどわかりあえると思うし、手を取り合える方法もあるはずだから。

…………

主人公、勝手に決めてごめんなさい。でも、こうするのが一番いいと思ったの。

命を狙われてる本人がいいって言うなら、外野からはこれ以上、なにも言うことはないよ。

さて、行くか。

おー!


 ***


おおっ!やっは、飛行艇はいいね!

そうだね、風が気持ちいい……でも、ちょっと高いからドキドキするね。

…………俺もドキドキが止まらぬぞ。

エマさんやエレノアさんを見てから、ヴィシャス兄はそわそわしっぱなしだね。

――気のせいだ。

鼻血出しながら言っても説得力ないからな。


……エレノア様、よろしいですか?

なんでしょうか?

主人公を倒さずこの世界を救う方法、見当はつきますか?

…………

休戦は、こちらにとって枷でしかありませんぞ。

わかっています。ですが……

……変なことを言いましたな。忘れてくだされ。

甘いのは理解しています。でも、もう少し時間をください。必ず覚悟を決めます。

……よいのです。あなた様との生活で、どういう性格か存じ上げております。

(あなた様は鬼にならずともよいのです、エレノア様……)


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story27 老騎士の剣



主人公、異常はないかね?

ああ、交代の時間には、まだ少々早い。

ここから先はワシが勝手にやることだ。

エレノア様は、お前さんが生きてる限り、この世界は滅ぶと言った。嘘か真か、ワシにはわからん。

主人公、ワシはもはや、生きる希望を失っている。

だが、自分の人生を振り返った時、姫様と一緒にいた時間とエレノア様と一緒にいた時間、二つとも同じように輝いていた。

それだけで、もうよい。

己の信念を曲げられん。その優しさ故に悩み、傷つき、自らその手を汚そうとさえしている。

だが、あの子に血は似合わんよ。

――剣を取れ。それが最大の譲歩だ。

…………


 ***


「キャトラ~……

「ふぁあ……なに、シェリル……

「トイレ……

「あらら、怖いの?

「ううん。どこにあるか忘れた。

「もう、しかたがないわね。ついてってあげるわ。ほら、行くわよ。


 ***


ちょっと!なにやってるの!?

 キャトラ――

うおおおおおっ!!

 まさか、自分ごと……

悪いな。もとより生きるつもりもないのだよ。


落ちちゃった!!

そんなんダメだー!!

待てぇぇぇぇっ!あ、変形すんの忘れてたー!!

ぎにゃー!放してぇぇぇぇぇっ!!


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story28 混乱と閃光




主人公、おーい、どこにいるんだ?

おかしいな。グラハムさんも見当たらないよ。どこ行ったんだろ?

大変です!!

どうした?

シェリルちゃんとキャトラちゃんがいません!

なんだって!?


 ***


…………

飛行艇のなかを探しても見当たらないとなれば、昨日の夜のうちにどこかで落ちたんだと思います。

…………

あんたは、なにか知らないか?

……わかりません。

でも、グラハムさんが私のために主人公さんを襲うことはありえると思います。

……そうか。だったら、これ以上、あんたと一緒に行動はできないな。

ディラン兄!

詳しく知らないが、約束を破ったんだろ?それで信用しろというのが、無理な話だ。

待ってください!まだグラハムさんが主人公さんを襲ったって決まったわけじゃありません。

そうだな。否定はしない。……アイリス、決めてくれ。この飛行艇はあんたの持ち物だ。

……エマさんの言うとおり、グラハムさんがやったという証拠はありません。

それに、主人公もキャトラも無事だと思います。

理由は?

勘、かな……でも、確信してる。とにかく、引き返して、みんなを探しましょう。それから話し合っても遅くは――

! 揺れるぞ!全員、衝撃に備えろ――

なにがあったの!?

攻撃を受けた!なんだ、今の光は!?

あの光は……

幻獣様の!

第二波来るぞ!

<>

すまない!被弾した!!

dぐっ!落ちるぞ!!

不時着させる!!ディラン! ノエル!ルーファス! レディを守れ!!

くっ――うおおおおおっ!!


 ***


全員、無事か!?

みなさん無事です。この武器のおかげで、衝撃をごまかせました。

良かった……

みなさん、気をつけてください!

これは幻獣様の……

やたらめったら攻撃してるな……

リンツ島の時も、同じような感じでした。

どうする、ディラン。

退くにしろ、進むにしろ、どうにかしないとな……あんなデカブツ、どうやって倒したんだ?

リンツ島の時は、ブルーフレアという兵器を使いました。

ウルドの焼夷弾か……

幻獣様には……

……弱点があります。以前は、そこを破壊しました。

エマさん、いいんですか?

……はい。仮に同じ姿だったとしても。あれは、あの幻獣様とは違いますから。

しかし、弱点を攻撃するにしても……

気づかれた!?

防壁、展開っ!!

不利は百も承知だが、やるしかないな。

ああ、俺が殺る――



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story29 友



さすがに、しんどいな……

指揮官が弱音はいちゃダメだよ。

ノエルが王としての器を……兄ちゃんはうれしいぞ!

軽口たたく余裕があるなら、まだ大丈夫だな。

ですが、僕も、そろそろ限界が……

ルーファスさん、次の攻撃からは私の力でみなさんを守ります。

ですが、体は大丈夫ですか?

はい。大丈夫です。

ディラン、エレノアに無理をさせるな。なにか考えろ。

考えてるよ。でもな……

ああ、クソ!来るぞ!!


――――!!!


あれは……


「アッハッハッハ!!まさかと思って来てみたが、奇遇だな、我が友よ!!」


アンジェラ!!

砲撃か……?

魔幻獣が別のほうを攻撃しはじめたよ!

攻撃してるのはウルド軍ですか?

そのとおり!細かい説明をしている時間も惜しい。力を貸してほしい、エマ。

ええ、任せて。

ならば、そこの貴様!

先ほど貴様が魔幻獣の光線を弾いたのを見た。

あれを焼き尽くすには空から仕掛けねばならん。貴様の力、私に貸せ。

……わかりました。ぐっ……

待ってください。ルーファスさんは限界です。同じこと、私にもできます。

ほう……本当か、エマ。

はい。でも、エレノアさんは以前、倒れてしまって……

ならば、倒れないことに賭けるだけだ。まったくもって、テンション、あがってくるな!

エレノア、ここを死地と心得、命を燃やせ。死んだとしても我が家名にかけ、貴様の死を無駄にはせん!

行くぞ、ついて参れ!!

(騎士のおなごが増えただと!?

ヴィシャス兄って、どんな時でも余裕、あるよね……

そうだな。でも、鼻血は拭いとけ。


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story30 声




来るぞ!!エレノア!!

七つの力がうちのーつ、<慈愛>の檻――!

――今、ここに顕現せよ!!

ぐっ……

おい、大丈夫か?

ぐっ……頭が……

エレノアさん!?

第二波、来るぞ!衝撃に備えろ!!

っ!!力が……

エレノア……

 「お願い、力を貸して――」

誰!?

間に合わ……ない……

……そうか。まあ、しかたがあるまい。

<*×○■!――

――&%$…………>

防ぎきった!?

今です!突き進んで!!

行け! 全速前進!!この機会を逃がすな!!

今だ!!ブルーフレアを投下せよ!!



…………

よかったのか?

はい……語りかけても声は返ってきませんでした。

…………

(さようなら、幻獣様……)


はあ、はあ、はあ……アイリス様、今の……

わからない。でも、声が聞こえたの……

誰の?

私の――


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story31 アレスとウルド



我が名はアンジェラ・ベイリアル!嵐の国西方戦線司令部、蒼炎の島ウルドの第三公女である!紹介が遅れてすまなかったな。

俺はディラン、こっちかヴィシャスとノエル。出身はアレス王国だ。

ほう、アレスの生き残りか……あの国の話は聞いている。大変だったそうだな。

気にするな。俺たちは生きてるしな。

そうか。前向きなのはいいことだ。

アンジェラ、私の手紙を読んで、ここに来たの?

……いや、違う。

リンツ島での事件後もウルドは魔幻獣を調べていた。カラカス島、アレス王国、カペレ教団、その辺りの情報までは手に入れていた。

そうだったんだ。

この島に軍を展開していた……か。狙いはカペレ教団か?

いい勘をしているな、ディラン殿。この島は教団のあった島に近い。

いろいろあって、一手遅かったよ。無駄足だった。

ところで、アイリス、私のキャトラはどこだ?

それが……


 ***


なんだって!?キャトラが行方不明だと!!

捜しに戻りたくても飛行艇が落ちちゃって……

飛行艇を貸してやりたいのもやまやまだが……公私混同がバレれば、私の首が飛びかねん。

いいことを思いついた!ディラン・アレス殿!貴殿らの立場を利用しよう!

……なんだ、バレてたのか。

名前は知っていたからな。貴殿ら三兄弟は王族だ。我がウルドの庇護下に入れ。

その上で、アレス王国復興を手伝ってやってもいい。悪くない話ではないか?

申し出はありがたいが、俺たちにはやることがある。

では、この案はどうだ?貴殿らに恩義を売ってやる。いずれなんらかの形で返してもらうが……

俺が答えてもいいが……

……ノエル、お前が決めろ。これは国にかかわることだ。

…………

キャトラは僕にとっても大切な友達だよ。だから……

やっぱり今のナシ!やはり公私混同しよう!

子供相手に謀略など、なんか嫌だ!覚えておけ、ノエル。目の前の使者を信じるな。

国家とは多頭の蛇で、その頭は全て飾り物だ。使者は交渉相手より、国益を取る。

他国相手に安易な借りを作るな。ましてや、ウルドのように権謀術数に長けた国に対してはな。

……はい。

だから、今回は私個人として、力を貸そう。まったく、これが狙いなら、長男殿は食えん男だ。

なんのことだ?

まあ、いいさ。悪いが兵は貸せんぞ。力を貸せるのは私個人だけだ。

でも、大丈夫なの?

ハッハッハ!わからん!なるようにしかならんだろう!細かいことは忘れろ、エマ!

よし! 私のキャトラを探しに行くぞ!!待ってろ、キャトラ!肉球、いっぱい触ってやるからな!



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