【白猫】帝国戦旗 Story5
~The Fortune-Teller~
2017/10/13
目次
story1 我が命終わるまで
<そこは、帝国の最深部。限られた人間しか知らぬ場所。
一室を埋め尽す、巨大な機械。それは無数のルーンにより整然と稼働している。>
ああ、やっぱり右腕の調子がよくないなあ。
修理に出さないとね……
この体になってから、ずいぶん経つなぁ……
『神なりし獣の王たちよ。我が帝国を守護したまえ。
王の血統は争うことなかれ、我らは共に栄え、苦難に際しては共に戦わん』
十二柱の神獣たちを前に、のちに皇帝となる男は誓うのだった~。ってね。
オペラではみんなが聞き流す、名台詞だ。驚いたことに、ほとんど史実に忠実。
ところが……この台詞には、続きがあったりするんだよね~。
『我が命が終わるまで』
神獣は理(ことわり)に従うだから盟約は順守する。
ボクが死んだら盟約はそこで終わり。神獣の血を引く貴族は、覇権をめぐって争い合う。
だからボクは死ねない。でも……いつかは終わりが来る。
ジュダ……帝国を……守ってくれ……!
…………
……
<神獣宮。皇帝すら容易に立ち入れぬ聖地である。
そこは元老院議員たちの議事堂。神獣の血統たる議員たちは――
己の魂の結晶をここに送り込んでいた。>
1ふふふ……皇帝の飼い犬め、うまく立ち回ったな――
2帝都を掃除できるいい機会だったが――仕方ない。
1だが、複製品などに、端から期待しているものか。
2<黒>が蘇る前に――帝国は<白の王国>へと生まれ変わらねば。
1そのためにこそ、我らは真の皇帝を迎えねばならん。
今こそ、<白の皇帝>の再臨を!
(ふふふ……元老院の皆様……皆様は本当に素敵……
神獣の血と力を引き継ぐ、誇り高き血統……
皆様はこの帝国の、支配者にふさわしい……
ネズミの帝国のね――)
準備完了。
ソウル注入開始――
ツァラ1から9、同調開始――
<そこには、ツァラを名乗った男と同じ顔をしたものが、九人――>
闘争のルーンよ……!
<かつて、聖地ディルムンをめぐり始まった戦い、英雄戦争。
それは、<大いなる獣>という神獣を復活させるために仕組まれた戦いだった。
ミューレアは、不気味に輝くルーンを掲げる……!
それこそは闘争のルーン。大いなる獣を目覚めさせる、恐るべきルーンである!>
story2 十二の旗
<かつて帝国には、十二の軍団が存在した。
十二の軍団には、象徴となる旗が存在し……
それぞれの軍団で最強の戦士が、その旗手を務めたという。>
よし、囲め。
爆裂のルーンで飽和攻撃を行う。
<――ボンッ!!>
消滅か。
大国とはいえ、とりわけレベルが高いわけではないな……
仕上げだ。森ごと燃やせ。
<わずか一瞬――
レヴナントの構成員たちは、音もなく息絶える。>
流石の手並みだ。<仕立て屋>――
君ってあれかい……?宙に舞う葉っぱを空中で斬れたりとかする?
――――
あっ!?斬った?今何か斬ったでしょ?
――――――――
ちょっとはつきあってよ~。
……ふひっ……!?
斬れて――ない。斬れてないのに――
ヒハァア!?お、俺は……生きてるのか!?それとも死んでるのかぁ!?
<ドサッ。>
――ああ、聞こえてるかい、――<初代>――<咎人>――
そろそろ、我々の狩りを――始めようか――
<葬儀屋>と<占い師>ばかりを働かせるわけにはいかないしねぇ~。
――――――――
諸君、我々は――何だ。
処刑人。
審判者。
――均衡の守護者。
我らは狩猟戦旗――均衡の守護者。
取り戻して見せよう――白と黒、光と闇が共にあった、あの世界を――
story3 聖地の歴史
1闘争のルーンは……英雄の因子に反応して。<大いなる獣>を生み出す。
2限られた命の生き物が、神獣になるという機構を――
応用すれば――真の皇帝を、作り出すことができる――
(でも……彼が命令を聞くのは、この私ただ一人……
つまらないわ……こんなに簡単に、手に入るなんてね……)
――データはとっているな?
はい……彼らには、気づかれていません。
それはそうだろうな。やつらは所詮獣だ。
生物を神獣化する技術……なかなかに興味深いですね。
烙印のルーンと何が違う?
1あのバカげた盟約に――我らが縛られることはない。
3ネズミの帝国は終わりだ。ついでに連邦も滅ぼすとしよう。
(さあ、私の帝国で……何をして遊ぼうかしら)
…………
……
<アイシャは本を読んでいる……>
あれれ?その本って……今やってるオペラの原作の本ですね……
そうだ。<簒奪者ツァラ>。まったくのフィクションだが、なかなか興味深くてね。
お芝居になるなんて、なんだか人気者ですね。
そのくせ、今でも謎が多い。
謎……ですか?
帝国を奪ったツァラは、暴虐の限りを尽くしたとされる。
当時の皇帝陛下もあやうく処刑されかけたが、無人島に脱出して難をのがれたらしい。
大変だったんですね……
陛下はその後、七王国に亡命して再起を伺う。
おりしもツァラの帝国と七王国軍は開戦する。決戦の地は聖地ディルムン。
七王国……今の連邦ですね?
戦いはツァラの有利に進んだ。しかし……戦いの最中。
突如<大いなる獣>という神獣が現れる。なぜかその後、ツァラが戦場から姿を消す。
あれれ?<大いなる獣>と入れ替わりに、ですか……?
後にツァラは、歴史から消える。意味がわからない――
何が起こったんでしょう?
今となっては知る由もない。そういえば英雄戦争の舞台もディルムンだったか。
<アイシャは、一冊の本を手に取る。タイトルは<聖地の歴史>。
story4 眠れる獣
1それでは、真の皇帝を迎えよう。
2世界のすべてに君臨し。我らにだけ従う皇帝。実に都合のいい存在だな。
1我らは神の血統。それくらいの権利はある。
3さあ、蘇れ!帝国の新たなる管理者よ!
<闘争のルーンが、激しい光を放つ――!>
――どうしたの?……何も起こらない……?
……どういうことだ?
<九人の、ツァラたちは――身じろぎもしない――
――否。>
……管理者だと?私に家畜の世話をさせるつもりか?
1――何だと?
<九人目のツァラが……起き上がった!>
…………
……
……過去幾度となく繰り返された聖地での戦い……
その度に、九人の御使い、つまり武勲をあげた英雄が……大いなる獣を眠らせてきた、と。
子守歌でも歌うんでしょうか。
『永き争いの終わりを告げん』か。――つまり、和平だ。戦を調停すると、獣は眠る。
では、どうすれば獣は目覚める?……そうだ。その鍵も英雄だ。
ディルムンに九人の英雄が現れることで、大いなる獣は目覚める。
では英雄達が和平ではなく、戦争を選んだら?
どうなっちゃうんですか?
<大いなる獣>が暴れまわる。闘争を司る無敵の神獣――世界の危機だな。
眠ってくれて、よかったですね……
――持てよ。
どうしたんですか?
ツァラが――大いなる獣の力を、我が物にしようとしていたなら?
最終話 終わってなどいない
大いなる獣の――カを――?
ツァラはさらなる力を得ようとして大いなる獣を自らに取り込んだんじゃないか?
大いなる獣は無敵の存在。だが誤算があった。ツァラは六百年前、眠りにつかされたんだ。
九人の英雄たちが、和平を結んだんですね!?
だとしたら、ツァラは……死んでいないことになる――
再び九人の英雄が現れたら……<大いなる獣>と一緒に、目覚めちゃうってことですか!?
――ありえない話じゃない。まさか、英雄戦争の時に――!
…………
……
ツァラ9が拘束解除!命令をうけつけません!
始末しろ!
ごちゃごちゃうるさいな。
<キンッ――!>
――消滅した――!?
元老院か……神獣の末裔が、ネズミの巣で頭をはっていると。
世も末だな。
1この人形は不良品のようだな。早く片付け……ぐえっ……!?
2ぐへあああ!!
1な、何だ……!?こいつは何だぁ……!?
3この力――こいつは――!
<元老院議員たちの意志が――消滅した!>
――元老たちのソウルに――直接攻撃を――!
俺の名前を言ってみろ。
――簒奪者……ツァラ――!
君のおかげだよ。ミューレア。君が――
九人の英雄たちを集め……大いなる獣を目覚めさせてくれたからだよ。
ああ、あなたこそ……!この世界の支配者……!
まあ、そんなものかな。
陛下に従います――私の身も心も、あなたのもの。
あっそ。
では、始めるとしよう。六百年前の続きを――