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【黒ウィズ】黄昏メアレス2 Story1

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story



 状況は不明だが、門を目指し、〈メアレス〉たちと干戈を交える相手の心当たりなど、ひとつしかない。

〈ロストメア〉と思しき5人へと、君は続けざまに牽制の魔法を放つ。

魔法使いだと……?馬鹿な。ありえん――!

 先頭の男が腕を振った。君の放った魔法は謎めいた力の影響を受け、虚空へと逸らされてしまう。

だが直後、男の左腕を雷撃が直撃した。

くっ!

さすがに、ふたつの魔法を同時に逸らせるほど器用じゃないようね!

 どういうこと?と尋ねながら、君はリフィルの隣に並ぶ。

奴は魔法を逸らす力を持っている。タイミングを合わせて、同時に仕掛けるぞ、魔法使い!

来て早々、戦いに巻き込まれるなんて、ホントついてないにゃ。

そう言うな、黒猫殿。後で一杯おごらせてもらう!

お、そんなら、あたしも一品つけますよ!

わたしもケーキを足しますね!

んじゃ、あたしは肩でも揉んだげようかしら。

ひとり増えた程度で勝てる気になってんじゃねえ!

あいにく、ただの〝ひとり〟じゃない!

 ぞっと間合いを詰めたラギトが、男の構えた機械の塊を蹴り弾く。

頼りにしてるわよ、魔法使いさん!

 こちらにウィンク、あちらに銃弾。男の防御に入ろうとしていた少年を精確な銃撃で牽制し、動きを封じる。

あとは、こちらも全力で!

 コピシュは両手に剣を構えた。狙いは、ぎょっとなった〈ロストメア〉の少女。

のわっ、ちょ、あっち行けぇ!

行きません!

 少女が放った魔力を、コピシュは剣一閃で砕く、その刃自体に魔力を乗せたことで、魔力そのものを断ち斬ってみせたようだ。

〈レベル〉!

 少女の助けに入るべく、女が、目の前のミリィを突破せんと挑む。

人間離れした速度で繰り出される蹴打と拳打。ミリィはそのすべてに反応し、杭打機で防ぎつつ、隙を見て反撃を繰り出す。

あなた……センスの化け物ね。

よく言われます!……いろんな意味で。

 そして君は、リフィルとともに〈ロストメア〉の男へと魔法を放つ。

想定外の事態は覚悟の上だが、まさか魔法使いが増えるとはな……

 言いながら、敵は何かを生み出した。小型の異形――〈ロストメア〉の分身たる〈悪夢のかけら〉たちだ。

奴らとの戦い方。忘れてないでしょうね、魔法使い!

 君はうなずき、カードに魔力を込めた。


 ***


黄昏が終わる!もうちょっとよ!

 ルリアゲハの言葉通り、太陽が沈みつつあった。

黄昏が終われば、門が閉じる。それまで門を守りきれれば、こちらの勝ちだ。

不意に、〈ロストメア〉の女が動きを変えた。

ミリィを攻撃する――と見せかけてフェイント。反射的に防御姿勢を取るミリィの脇をすり抜け、門へと疾走する。

うわっ、やばっ!

〈戦小鳥(ウォーブリンガー)〈ラスティメア〉を任せる!

 言い捨てて、ラギトが女の後を追う。〈ロストメア〉の力をまとった肉体が、弾丸のごとき加速を見せた。

女がすべてを振り切り、門に触れた――瞬間、ラギトが装甲から魔性の鎖を伸ばし、女を絡め取る。

行かせるか!

 そのまま剛力で引き寄せ、遠心力を利用して豪快に振り回し、逆方向へとぶん投げた。

女は空中で手刀を振るって鎖を砕くが、その間に、広場の入口付近まで放り投げられていた。

黄昏が終わる……退くぞ!

くっそー!

チッ、仕方ねェ。

 号令一下、〈ロストメア〉たちは後退していく。

逃っがすかぁ!

 ミリィの武器が火を噴いた。ドン、と腹に響く重々しい音を立て、〈ロストメア〉たちの背へと砲弾が飛ぶ。

最後尾の少年が、くるりと振り向いた。楯をかざし、砲弾の直撃を受け止める。

こういうときのための、この俺さ!しんがりは任せてもらうぜ、みんな!

w〈クラッシュウィール〉!

 聞き覚えのない声が、真上から降った。

魔力の光を伴う、強烈無比なる一撃とともに。

う……おぉぉおっ!?

 楯で止めた少年が、たたらを踏んでよろける。手にした楯が、あまりの衝撃に砕け、半壊していた。

それほどの威力を生み出したのは、機械の弓――のような武器を持った若者だった。

弓で殴ったにゃ。

 その通りだった。彼は、魔力の光を放つ弓で殴りつけた。それがとてつもない威力を発揮し、楯を砕いた。

wなんの夢だか知らんが、消えろ。

 若者は冷たい目で少年を見据え、弓を振りかぶる。

そのとき、〈ロストメア〉の男が逃げながら腕を伸ばした。

来い、〈アイアンメア〉!

 すると、少年の姿が瞬時に男の方へと引き寄せられた。若者の振るった弓は虚しく空を裂く。

〝導く夢〟……そうか。〝導く〟ことが、奴の力か……。

 リフィルが驚きの声を上げている間に、〈ロストメア〉たちは広場を離れていく。

それを見届けて、ミリィがぺたりと地面に座り込んだ。

ひ、冷や冷やしたぁ……。

今回は、さすがに危なかったですね……。

なんとかなったのは、魔法使いさんが来てくれたおかげね。

まったくだ。助かったよ、魔法使い。

本当にあなた、去るときも来るときも唐突ね。

前と同じで、気がついたらここにいたにゃ。せめて心の準備くらいさせてほしいにゃ。

 ウィズの言葉にはまったく同感だが、それはともかく、みんなが無事で本当に良かった。

ほっとした顔を見合わせていると、

w〈メアレス〉がこれだけ揃って、門を守り切れないとはな。

 先ほど現れた若者が、仏頂面で近づいてきた。

いやいやいや、ちゃんと守ったじゃないですか!ちょっと……や、かなり?相当?まあ、危なかったは危なかったですけど!

w後ろを見てみろ。

 言われて、君たちは背後を振り向く。

ようやく太陽が沈み、黄昏が終わった。都市には静かなる闇が訪れつつある。

なのに――

門が……閉じていない――?


 ***


あー、いてててて……一瞬、突破できるかと思ったけど、さすがに一筋縄じゃあ行かないなあ。

よりにもよって、それがなければ、魔法の使い手が増えた。押し切れたんだがな……。

でも、門には触れたわ。力を引き出せた。

さっすが〈ラウズ〉ちゃん!そのストイックなトコ、シビれるぅ!

第2案で行こう。――〈ラスティメア〉。

構わねェがな。ちいと時間はかかるぜ。

ああ。仕方がない。

 うなずいて、〈ロードメア〉は一同を見回した。

連中は俺たちを狩り出そうとするだろう。特に、門の力を引き出した〈ラウズメア〉が狙われるはずだ。

私が狙われるなら、むしろ〈ラスティ〉に向く目を逸らせる。

……ってそれ、まるっきり囮じゃん!いっそみんないっしょにいた方が安全じゃない?

固まっていたら、目立ってしまう。

 〈ラウズメア〉は、ふるふると首を横に振り、心配そうに見つめてくる〈レベルメア〉の髪を優しくなでた。

だいじょうぷ。私だって、自分を叶えるまで、死ぬ気はないから。逃げおおせてみせる。

俺が〈ラウズメア〉のガードに回るよ。5人いっしょにいたら目立つだろうけど、ふたりなら、まあなんとかなるでしょ。

頼む。うまくすれば、俺たちみんなが確実に門を潜れる。

そうでなきゃ、つるんだ甲斐ってもんがねェからな。

そう?あたしは、そうでなくても、つるんだ甲斐あると思うな。

だって、仲間といっしょにがんばる方が楽しいじゃん!



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 夜が来てから少し経ち、門はようやく光を失った。

それを見届けた君たちは、〈メアレス〉行きつけの定食屋、〈巡る幸い〉亭に場を移した。

おまえの話は聞いている、魔法使い。まさか会うことになるとは思ってなかったが。

俺はレッジ。門を管理するー族の人間だ。

そして〈メアレス〉でもある。いつもはあまり表舞台に出ようとせんがね――

アフリト翁も、いつも唐突に出てきますよね……。

 どこからともなく現れて笑うアフリトを無視し、レッジは仏頂面で話を続ける。

俺の仕事は、あくまで門の管理だ。〈ロストメア〉狩りに参加する気はない。

だが、今回はそうも言っていられん。門の力を引き出す……そんな〈ロストメア〉が現れたからにはな。

〈ラウズメア〉だな。

門に触れ、その力を引き出した……おそらく〝引き出す〟ことが奴の能力だ。あの動きも〝己の力を引き出した〟結果だろう。

今回は、門が閉じるまでの時間が多少長引く程度で済んだ。放っておけば、元に戻るだろう。

しかし、その〈ラウズメア〉とやらにまた力を引き出されたなら……最悪、永遠に閉じなくなることもありうる。

うはー……そんなことになったら、守りづらいどころじゃないっすね。

そうだ。だから、確実に奴を仕留めなければならない。

 レッジは、〈メアレス〉たちに鋭い視線を向ける。

おまえたちにも協力してもらうぞ。門を守れなかった責任だ。

わかりま――

 粛然とうなずきかけたコピシュを、リフィルが身振りで止めた。

私たちはあなたの手下じゃない。奴を狩ることに文句はないけど、指図を受けるのはお断りよ

どうしてもと言うなら、あなたに同行する期間中、〈ロストメア〉撃破の報酬とは別に、拘束料を支払ってもらう。

 毅然たる物言いに、レッジは強く眉をひそめ、撫然として答える。

〈黄昏(サンセット)〉リフィル……。世界に残る最後の魔道士が金目当てで戦うとは、アストルム一門も堕ちたものだな。

〈メアレス〉とはそういうものよ。自らの利のために〈ロストメア〉と戦う。義務や責任で門を守ってるわけじゃない。

 お互い言うだけ言って、静かに視線をぶつけ合う。見えない火花がこちらまで飛んでくるようだった。

ところで、気になってたんだけどにゃ。

 そんな話には興味ありませんとぱかり、ウィズが、あくび混じりに声を上げた。

この世界の魔法使いはリフィルだけのはずにゃ。レッジが使ったのは、魔法じゃないのかにゃ?

俺が使っているのは、魔匠具だ。道具に特殊な紋様を施し、魔力を宿している。

 レッジは、思いのほか律儀に質問に答えた。

あたしの弾やミリィのパイルパンカーにも、魔匠技術が利用されているのよ。対〈ロストメア〉専用の加工ってヤツね。

いわば疑似的に魔法を再現する道具よ。もっとも、効果は相当制限されることになるけど,

それに〝外〟ではあまりお目にかかれない代物だ、燃料となる魔力を補給するには、〈ロストメア〉を狩るしかないからな。

 そういえば、この世界の魔法が廃れた原因は、人々が魔力を失ってしまったから、という話だった。

なるほど。人が魔法を使えなくなったと言っても、魔法の道具を作ることはできるわけだにゃ。

疑問は解けたか?なら、話を先に進めるぞ。

〈ラウズメア〉は高い身体能力を誇るそうだな。なら、変幻自在の魔法で集中砲火をかけるのが最も効果的だろう。

〈黄昏(サンセット)〉と、黒猫の魔法使い。おまえたちに同行してもらう。

拘束料は?

払う。法外な額をふっかけてこないならな。

私たちが安心して魔法を使うためには、ルリアゲハとコピシュのサポートも必要よ。

 レッジは、しれっと告げるリフィルを睨んでから、渋々うなずいた。

……わかった。そのふたりの拘束料も出す。それでいいな。

その間、俺とミリィは他の〈ロストメア〉を探しておくか。

そっちも、放っといていい相手じゃないですもんね。

 方針を確認し合うや否や、レッジを除く〈メアレス〉たちは、そろって君の方を向いた。

突然注目され、目をぱちくりとさせる君に、意味深な笑みを向けてくる。

やることも決まったことだし……約束通り、再会を祝しての宴といきますか。

いっそ、前の戦いの祝勝会も兼ねようか。あのときは、戦いが終わると同時にいなくなってしまったからな。

お話ししたいことも、いろいろありますしね。

んじゃ、そういうことで――リフィルさん、なんでもいいんで、とりあえずジャンジャンお願いしまーす!

毎度。

 明日も早いからほどほどにね、と、君は苦笑しながらうなずいた。


 ***


 翌朝。予定通り、君たちはレッジに呼び出された。

門に干渉した〈ラウズメア〉の力を逆に辿る。

 レッジはそう言って、熊手から取り出した車輪を弓に差し込み、手で回転させる。

〈ディテクトウィール〉。

 つぶやきに、車輪が応えた。魔力の光が浮かび上がり、針状となって微細に揺れ始める。

それで相手の居場所がわかるんですか?

今わかるのは、おおまかな方向だけだ。近づけば、より正確に位置を示す。

なるほど。探知系の魔法を再現する魔匠具ね。

さっすが〈魔輪匠(ウィールライト)〉いろいろ便利だこと。

 と――揺れ動いていた針が、突然ぴたりと止まり、激しい明滅を始めた。

さっそくかかったな。近いぞ。あっちだ!

 叫び、レッジが走り出す。君たちも、その後に続いた。


 驚き顔の人々が道を開けていく。その向こうに、見覚えのある背中がふたつあった。

げっ、やべっ。見つかった!

 〈アイアンメア〉と〈ラウズメア〉――こちらの接近に気づいたふたりが、通りの奥へと逃げ出していく。

追いつめるぞ。遅れるな!

わかってる!

 リフィルはうなずき、魔法陣から光の糸を引き出す。

繋げ、〈秘儀糸(ドゥクトゥルス)〉!

 そして、追跡行が始まった。


 ***


 大通りにいた人々は、騒ぎが起こるや、そそくさと手近な店舗に身を隠していった。〈ロストメア〉の出現には慣れているらしい。

エストック!

 コピシュの背から針のような剣が鞘走る。それは人気の絶えた通りを駆け抜け、正確に〈ロストメア〉を追撃した。

〈ブラストウィール〉!

 レッジは別の車輪を弓に組み込み回転させる。すると弓に光の矢が生まれ、高速で〈ロストメア〉たちに迫った。

君のような異界からの来訪者は別として、夢を持つ人間は、見果てぬ夢である〈ロストメア〉とまともに戦うことができない。

こうして攻撃できるということは、やはり、レッジはまぎれもなく〈メアレス〉なのだ。

しかし、門を管理する一族だという彼が、どうして夢を失ってしまったのだろうか――?

疑問に思いつつ、君も魔法で援護する。リフィルとルリアゲハも魔法と銃弾を浴びせた。

しかし、そんな君たちの攻撃を、〈ラウズメア〉は機敏にかわし、〈アイアンメア〉は楯で防ぎながら逃走する。

どうにもラチが明かないわね。

このままだと、別の通りに出られてしまいます!

させるか!〈ゲイルウィール〉!

 レッジが車輪を変えた。

その身が魔力の光をまとい、瞬時に加速――一気に〈ロストメア〉たちを追い抜き、彼らの前に立ちはだかる。

んげっ!

 いきおい足を止める〈ロストメア〉たちを、君たちは挟み撃つ格好になった。

ちっ――やるしかねえか!


 ***


 いずれ劣らぬ強敵とはいえ、数の差はいかんともしがたいようだった。

魔法使いさん、援護お願いします!

 二刀を手に、〈アイアンメア〉へ向かうコピシュ、君はその動きに合わせて魔法を放ち、〈アイアンメア〉を防戦一方に追い込む。

その間に、残る〈メアレス〉たちは〈ラウズメア〉を三方から挟撃している。

とっときなさいな!

 ルリアゲハの射撃。〈ラウズメア〉は後退し、すばやく射線から逃れる。

その脚が、何かを踏んだ。リフィルが形成していた魔法陣だ。

魔法陣から伸びた光の鎖が、〈ラウズメア〉の脚を絡め取った。

しまった……!

動きを封じられた〈夢〉の背後に、弓を手にしたレッジが躍る。

〈クラッシュウィール〉!

 車輪が回転し、魔力が高密度に収束。〈アイアンメア〉の楯さえ砕いた一撃が、逃れようのない距離で迫る。

くっ……!

 〈ラウズメア〉は背後を振り向き、防御の姿勢を取ろうとする。

激突の寸前――間近で〈ラウズメア〉の顔を直視したレッジが、眼を見開き、硬直した。

――!?おまえ……ユイア……!?

 そこへ。

うぉぉおぉおおおおおっ!!

 雄叫びとともに、〈アイアンメア〉が割り込んだ。

君とコピシュの攻撃を受け止めた楯を捨て、レッジの前に駆け込んだのだ。

一瞬遅れたレッジの一撃が、〈アイアンメア〉の背中を直撃する。

同時に、〈アイアンメア〉の剣が、〈ラウズメア〉を縛る魔力の鎖を断ち斬っていた。

〈アイアンメア〉……!

おまえは……逃げろ!

……っ!

 想いを振り切るような表情で、〈ラウズメア〉が真上に跳び上がった。その足元を、魔法と銃弾がかすめる。

――――

 楯もなく〈クラッシュウィール〉の直撃を受けた〈アイアンメア〉は、そのまま魔力と化し、霧散していった。

…………。

 弓を手に、茫然と立ち尽くしていたレッジは、

レッジ。

 リフィルの声に、ハツと顔を上げ――痛みをこらえるような顔で、頭を振った。

逃げたのか……あいつは……。

〝逃がした〟のよ。あなたが動きを止めたせいで。

 皮肉に、レッジは言い返すこともできず、うつむく。

あのとき彼が硬直しなければ、〈アイアンメア〉がかばう余地も与えず、〈ラウズメア〉を倒せていたはずだ。

どうしてレッジは、動きを止めてしまったのか。

考えられる理由は――

あの〈ロストメア〉。もしかして、あなたの知り合いの姿をしていたの?

 淡々と、しかし容赦なく、リフィルは問うた。

レッジは、恒梶たる思いを顔にのぞかせ、うめくように答える。

……そうだ。

 隠しきれない苦渋の色が、声と表情ににじんでいた。ルリアゲハが肩をすくめる。

知り合いの顔した相手、か。そりゃ、やりにくいわよね。

そうですね……もし辛いようなら、あの人たちの相手はわたしたちに任せていただいても――

構うな。〈ロストメア〉がどんな顔をしていようが、容赦はしない。

 レッジは君たちに背を向け、苦渋と痛みをまとめて吐き捨てるようにつぶやいた。

あれがあいつの〈夢〉だというなら……なおさらだ……!


 ***


 わだかまる闇に、静かな吐息が響く。

人ならぬ者の死を悼む、やるせない吐息が。

〈アイアンメア〉が逝ったか……。

ごめん。私のせいで……。

〈ラウズ〉ちゃんのせいじゃないよ!

 うつむく〈ラウズメア〉を、〈レベルメア〉がおろおろと慰める。

戦力が減っちまったのは痛いが、それでよしとしようぜ。時間は稼げた。おっ死んだのは、あの野郎の自己責任だ。

 〈ラスティメア〉が皮肉げに言う隣で、しばし黙祷を捧げていた〈ロードメア〉が、ゆっくりと目を開いた。

あいつは仲間を守るために命を懸けて、散った。その心意気に報いる方法は、ただひとつ。俺たちが、自らを叶えてみせることだ。

例の件――行けそうか?〈ラスティメア〉。

ああ。明日、やる。任せておきな。

 ひらひらと手を振り、〈ラスティメア〉は背を向けて歩き出す。

他の3人から離れたところで、その顔からスッと表情が消えた。

(他人を守って散るなんざ、馬鹿な奴だぜ。俺たちは自分を叶えなきゃ、なんの意味もないってのによ……)

 長い長い嘆息をこぽしてから――〈夢〉は、我知らず伏せていた顔を上げる。

(あいつがやられた分、戦力を補充しとかねェとな……)




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