【黒ウィズ】空戦のドルキマス4 Story3
空戦のドルキマス4 Story2 殲滅兵器
空戦のドルキマス4 Story3 ボーディス奪還作戦
空戦のドルキマス4 Story4 黒衣の襲撃
空戦のドルキマス4 Story5 王都決戦
空戦のドルキマス4 Story6 ドルキマス
目次
story
前線では、ドルキマス兵による略奪に歯止めが効かない状態だった。
急速な軍事力拡大により、兵の質が下がり、またそれを指揮する下士官の教育も間に合っていなかった。
その俺たちに飢えたまま戦えというのか!?
逃げていくドルキマス兵たち。テオドリクは、それを無感情に見つめている。
ぽん、と肩に手を置く。
冷たい表情に君は背筋にぞくっとしたものを感じた。
私を止めるか?それとも、共にゆくか?
ディートリヒを目覚めさせた時点で、こうなることは覚悟していた。
最後までー緒に行くよ、と君は答えた。
ただ、大半のものたちの関心は、テオドリク殿下が宣言なされた殲滅兵器がドルキマスに向けられるのかどうかです。
レベッカ・アーレント開発官が、向こうについているとなるとー概に否定できません。
ドルキマス軍工廠において聖なる石のエネルギーを利用した大量破壊兵器の開発を指揮していたのは、あのお方ですから。
幸いなことに現在ドルキマスには、10の艦隊が存在し、大陸全土に戦力が散らばっております。
兵器は使わず、その威力を相手に想像させるだけで効果がある。
王である私が守るべきものは、この王都であり、ドルキマスの国民である。
現在の戦争も、ドルキマスを昔のような小国に戻し、民に再び苦労させないために決断した戦争だ。
アルトゥールは玉座から立ち上がり、背後の壁にかけられている歴代王の肖像画を見上げた。
私は、王だ。国に降りかかるあらゆる脅威に立ち向かう責任がある……。
相手が第3王子であろうと、ディートリヒ元帥であろうが関係ない。
いまのドルキマス王は、私なのだ――
ドルキマスは、必ずや私が守る!
story
ボーディス王国に戻ったフェリクスは、暴虐を繰り返すドルキマス軍に対して反撃を行なった。
俺たちの国からドルキマス軍を追い出して、ボーディス傭兵団の強さを思い知らせてやろうぜ!
フェリクスの空賊艦に乗船する傭兵たちは、誰もが命を捨ててドルキマスと戦い、祖国を守る覚悟だった。
反ドルキマス同盟軍とドルキマス軍の本格的な戦いは、こうしてはじまった。
ディートリヒ・ベルクもいると言いかけて、クラリアは口をつぐんだ。
あの人と敵味方に分かれて戦うなど、想像したこともなかった。
本当にこれでいいのかと迷いは深まるばかりだった。
クラリアの元には、アルトゥールからの電信が、毎日のように届いていた。
反ドルキマス同盟軍と戦うことを決意したアルトゥールは、人が変わったように前線の指揮官を叱咤している。
それだけ反乱軍を脅威に感じているということだ。
ドルキマスヘの忠誠を失ったわけではあるまい?ならば、四の五の言わずに突き進め!
そんな嫌な思いしてまでドルキマスに忠誠を尽くす意味ある~?あたしだったら、とっくに逃げ出してるよ。
今も昔も、それは変わらない。
いまの提督の顔とても苦しそうだよ?我慢してるような顔だよ?
我慢は身体に悪いよ?心の便秘は絶対に心を壊しちゃうよ?
本音を言ってみ?ね?ね?ね?
雲の隙間に浮かぶボーディスの国章が記された銀色の艦は、ドルキマス艦隊目掛けて航行を続けていた。
迫る艦隊。フェリクスは自ら甲板に立って、敵を迎え撃つ。
その肩には、レベッカが開発した〈ヴォーゲン・カノーネ〉高射砲があった。
対イグノビリウム戦で無数の敵艦を撃ち落としたフェリクス愛用の獲物だった。
フェリクスの精確な砲撃は、ドルキマス艦の艦底を次々に撃ち抜いていく。
生身で甲板に立ち直接艦を狙い撃つその姿に、ドルキマス兵は誰もが戦慄した。
ドルキマス軍は、狂ったようにフェリクスの艦に砲撃を加える。
だが、そのことごとくが外れた。傭兵時代から、戦場でフェリクスを守ってきた強運が、またしてもフェリクスを救った。
って言ってる傍からおっとっと!
***
ー方、クラリア・シャルルリエ率いる第3艦隊と砲火を交えているジークは――
先はどのは、風ではない。
黒い風に見えたそれは、紛れもなく戦場を飛び行く、1隻の魔道艇だった。
またしても漆黒の風が、通りすぎていった。そのたびに1隻……2隻と友軍艦が落とされていく。
我々の狙いは、あのお方が搭乗されている魔道艇ただひとつ。雑魚は包囲して身動き取れないようにしておけ。
いまのところ優勢だが、歴戦のドルキマス軍は、即座に陣形を変えて対処してきた。
シャルルリエ提督もバルフェット提督もそのぐらい承知の上だ。
それはいけない、と君は口を挟む。
この戦いは、ドルキマスの将兵をいたずらに殺すことじゃない。あくまでもボーディスを解放することだ。
空の向こうからやってくる10艦ほどの小規模な艦列を君は確認する。
味方はこの先もどんどん増えていくさ。細かいことは、気にするなって。
根拠のない自信が羨ましかった。
防衛戦は私がー番得意とするところ。万がー、シャルルリエ提督が向こうに回ったところで、防ぎきる自信がある。
よし、我ら第4艦隊は、要塞まで転進し、前線はシャルルリエたち第3艦隊だけに任せる。
これでもまだシャルルリエ提督が煮え切らない態度を取るならば、反乱軍と共に葬るまでだ。
story
「クラリア……。美しい名前だろ?これは、お前の母さんが考えてくれた名なんだ。」
父、ブルーノ・シャルルリエは、不器用な父親だった。
「こんな美しい娘を授かるなんて。神と妻に感謝だ。」
私は、そんな父親の姿を見て育った。軍人である父は、艦隊勤務が続き、ほとんど家にいなかったけれど――
たまに帰ってきた時は、いない間のさみしさを埋め合わせるように愛情をたっぷり注いでくれた。
母が病気で亡くなった時も、父は任務中で、家にいなかった。
「母さんのことは……すまなかった。」
帰ってきた時、寂しそうな顔で、私を全力で抱きしめてくれた。
「クラリア……。これから、あいつの分まで全力で愛する。だから許してくれ。」
父はたまに無愛想な若い将校を家に連れてきた。家庭の昧を教えてやるんだ。と言って楽しそうに料理を振る舞っていた。
若い将校は、いつも迷惑そうな顔をしていたが、父が出した料理は、ちゃんと食べてくれた。
「ディートリヒ。娘が、軍人になりたいと言うんだ。」
「ほう?きっと貴君に似たのだろうな。」
「娘は、妻のようなおしとやかな女性に育って欲しい。だから、君から軍人は辞めるように言ってくれないか?
父である俺の話など、いまさら聞いてくれなくてね。」
「私は軍人しか知らない男だ。普通の幸せなど、説くことはできん。」
「これは、人選を誤ったな……。」
「もし、本当に貴君の性格に似ているのなら、堅実でおもしろみのない人生を歩むだろう。放っておけばいいさ。」
「おいおい。それはどういう意昧だよ?」
「クラリア。君の父上から、話は聞かせてもらった。なぜ軍人になりたい?」
私は、父の姿を見て育ったから……と答えた。ー緒に働きたい。ただそれだけの思いだった。
「君のように戦艦に乗りたがる少女はそういない。空が、好きなのかね?」
父とディートリヒおじさまがいるところなら、どこでも大好きです――と、子どもだった私は無邪気に答えた。
父が愛した空への憧れは、昔からあった。空を飛ぶ艦から見える眺めは、いつも格別だった。
「私も、君の父上も軍人だ。いつ、どこで死ぬかわからない。
君の父上が戦死した場合、娘のクラリアを引き取って養女にしてくれと頼まれている。」
嬉しい。ディートリヒおじさまの娘ならば、今すぐにでもなりたい。と父が聞けば泣くような台詞を吐いたものだ。
「万がーその時が来た時は、君に指揮官の素質があるかどうか見極めてやろう。」
そして、父ブルーノは、ガライド連合との戦いで戦死した。
戦死の報を受け取って呆然とする私の前にディートリヒおじさまが現われた。
「ブルーノは、たったひとりの親友だった。私のような男を最後まで見捨てないでいてくれた。
クラリア。今日から私が、君を引き取る。」
私にとってー番大好きな人。ー番頼れる人が、父ブルーノだった。その父が、いなくなった。
ディートリヒおじさまと共に行く。それが父の願いであり、私の希望でもあった。
「私は、軍人としての生き方しか知らん。普通の女としての幸せなど、教えることはできん。それでもいいなら、好きにしろ。」
遺族年金で、人並みの生活を送る道もあった。でも、私はディートリヒおじさまと共に行く道を選んだ。
父が生涯を挿げた空で生きる。それは私にとってなによりの幸せ。
だって私のー番好きな場所は、父とディートリヒおじさまがいる場所だったから――
それが紛れもないクラリアの本心。
ー緒に行くに決まっているでしょ?
こんな小娘と共に来たいというのか?変わった奴らだなお前たちは。
”第3艦隊。各艦に告ぐ。私に続きたいものだけ、荒鷲の旗を掲げろ!”
story
荒鷲は、戦死した第3艦隊提督ブルーノの異名でもあった。
第3艦隊の全ての艦が、荒鷲の旗を掲げてたことを見ても――
第3艦隊の面々は、ドルキマスではなく、ブルーノと彼の娘であるクラリアに忠誠を誓っていたことになる。
なかなかできることじゃねえよ。
エルンストも、その才能をディートリヒに見出された将官だった。
けれども、ドルキマスヘの忠誠は棄てない。なぜなら祖国だからだ。
シャルルリエ提督。あんたとは、最後まで反りが合わなかったな!
予め、第3艦隊の裏切りを予想して、磨下の艦隊を要塞に退かせている。
本国からの増援も、すでにこちらに向かっている。
クラリアは、なにも言わずに、付き従う庶下の艦隊をじっと見つめていた。
その小さい背中が、細かく震えていた。クラリアが、どんな表情をしているのか、ヴィラムにはおおよそ想像がついた。
エルンスト……悪いが、ここで決着を付けさせて貰う。
***
この国をドルキマスから解放するための戦いに、もうしばらく付き合ってくれよ。
……そんなわけで、先に行かせてもらうぜ。
フェリクスとジークの艦が、先陣切って要塞へと向かった。
君たちも、遅れてならじと舵を切る。
お互い、かしこまった態度は無用にしよう。
それと、あなたがいなくなったあとのドルキマスを見捨ててしまって言葉もありません。
その質問を投げかけられた直後、テオドリクの目元に複雑な感情が宿ったように君には見えた。
その問いの答えは、君も知りたいところだった。
テオドリクが作り上げたと言っていい、現在のドルキマス帝国。
それを敵に回すということは、この先に求めるのは破滅か。共存か。
しかし、ー国家がどうなろうが、私にはもう関心のないことだ。
私を目覚めさせたのは、魔法使いだ。すべて、魔法使いが決めればいい。
噂の殲滅兵器をドルキマス王都に向けて、撃たないと約束してくださいますか?”
小さい身体で、なんて大きなものを背負っているのだと君は思った。
彼女は、テオドリクの元に下ったのではない。祖国を救うために来たのだと、この時はじめて知った。
父ブルーノも、おそらくそれを願っているはず”
だったら、俺の仕掛けを使う他ないな。要塞に潜入させておいた空賊たちに、信号弾を放つ。
***
***
エルンスト様へ。せっかくクラリア提督のことを教えてあげたのに、なんの見返りもなしなのは、ちょっとむかついた。
だから、いままでお世話になったお返しにお土産を置いていきました。
みんなで楽しんでね?空賊ロレッティ・カナラ。
ロレッティめ……私をたばかるとは良い度胸だ!今度あったらただじゃおかんぞ!
ドルキマス軍の意地を見せろ!
ささやかだが宴の用意をした。今だけは、楽しんでくれ!
まだドルキマスとの戦いは終わったわけではない。むしろ、これからが本番だ。
それでも、いまだけは勝利の美酒を味わうことが許された。
いえ、この話はやめましょう。私たちに味方してくれているのは、テオドリク様なのですから。
薄氷を踏む勝利だった。
お誘い受けたはいいものの、あたしも最後まで迷ったよ。どっちにつくのか。
テオドリクたちは、難しい顔をして向き合っていた。なにをしているのかというと――
普通のポーカーとは違い、3枚の力ードで役を作り、競い合うゲームらしい。
単純明快で、すぐに勝負がつくことから、気の短い空賊たちに好まれ〈空賊ポーカー〉と呼ばれるようになったとか。
とんでもないものを賭けようとしている!
アルトゥールよりかは、いくらかマシな世を造るはずだ。
ならば、私が勝ったら、私のことは、兄さん――とでも呼んでもらおうか?
札を配るジークの手がピタリと止まった。
テオドリクは、おそらく今日初めてこのポーカーをやる。歴戦のジークとは、経験に雲泥の差がある。
君は言われたとおり、隣のテーブルにあるワイン瓶を手にとって、テオドリクに渡した。
ジークとテオドリク。それぞれ札を交換し、手を見せ合う番になった。
テオドリクのまさかの勝利にどよめきがあがる。
まさか、と思った次の瞬間、君は袖の中に入れたおぼえのない力ードが入れられているのに気付いた。
ジークは蒸留酒の酒瓶をー気に煽って、派手にぶっ倒れた。
story
飲み過ぎた空賊たちは、ひとりまたひとりと脱落していった。
いつの間にかこの場所には、君とテオドリクのふたりだけとなった。
珍しく、君に興味を示してきた。
そろそろ誰の命令で動いているのか、打ち明けても良い頃だろう。あのルヴァルという天の使いか?それとも別の誰かかね?
テオドリクは、なんらかの疑念を抱いている。しかし、質問の意味がよくわからなかった。
おもむろに、テオドリクはカードを切り始める。
そう簡単に言われても……。ずっと見てただけで、空賊ポーカーのルールは曖昧にしか覚えてない。
やっぱり、この戦争でひとりでも多くの命を救いたい、かなと答える。
カードが3枚配られる。君は、それを覗き見て、そうしようかとウィズに訊ねた。
(キミは2のペアと8のカード……。ー応、役にはなっているけど、テオドリクに勝てる気がしないにゃ)
テオドリクは、どんな役を揃えているのだろう?いかさまなしでの実力は、どのくらいだろう?
テーブルの上のカードに触ろうともしない。触らないでもわかるのか?そもそも、テオドリクは自分のカードを確認したか?
見てなかった……。自分の手札を確認するので精ー杯だった。
もし負けたら――クエス=アリアスのことや、108の異界のことなど、テオドリクに教えなきゃいけない……?
異界の真実など、おいそれと打ち明けられるものではない。
なのにテオドリクは、それを教えろという。彼はー体なにを知ったというのか……。
追い詰められ、迷ったあげく、君は――
君は、無意識のうちに手にあった3枚のカードに魔法で火をつけていた。
そんなつもりはなかった。ただ、気づいたら燃えていた――と、君は素知らぬ顔で答えた。
昔から考えすぎると手元にあるものが、燃える性質なんです。
テオドリクのカードは、ハートの1。ダイヤの6。クローバーの13。
テオドリクの自信満々の態度に騙された。こっちは勝手に負けた気になって、勝手に追い詰められていたということか。
君はげっそりした表情で、そりゃどうも……と答えた。
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