【黒ウィズ】空戦のドルキマス4 Story4
空戦のドルキマス4 Story2 殲滅兵器
空戦のドルキマス4 Story3 ボーディス奪還作戦
空戦のドルキマス4 Story4 黒衣の襲撃
空戦のドルキマス4 Story5 王都決戦
空戦のドルキマス4 Story6 ドルキマス
目次
story
父と兄が戦死した時、俺はイグノビリウムと戦っていてボーディスにはいなかった。
国家危急の時に、いつも母国にいないのが俺の運命なのかと思ったりもしたが……。
今回の戦いで多少は王らしいことをしてやれたとは思う。だが、作った借りは、まだ返せてねえ。これからの俺を見ててくれ。
きっとドルキマスにいる母上のことが心配なんだろうね、と君は同情する。
自分の情けなさに苛立ちを募らせていたところだ。
いい策を思いついた。フェリクスとあいつを呼んでくれ。
わからない。誰のことを差してるのかな、と君はウィズは首をかしげる。
君にはわかった。この作戦、ジークの人質救出はあくまでもドルキマスの目を引き付けるため。
王都で派手に暴れれば、出撃しているドルキマスの主力は、引き返さざるを得なくなる。
その隙にフェリクスたちが、フェルゼンを解放し、反ドルキマス同盟軍の勢力を拡大するのが目的。
ナハト・クレーエ号の性能は、俺がー番知ってる。ドルキマスには、お前に追いつける艦は存在しない。
その間に、フェルゼンで好きに暴れ回れ。
それは、君の魔道艇に搭載してある殺戮兵器の発射スイッチだとテオドリクは説明する。
もっとも、使いたいと思った時は、遠慮なく使えばいい。虐殺者の汚名を後世に残したいのならばな。
だが、このスイッチは預かっておこう。切り札は、袖の中に隠しておくものだからな。
***
玉座に座るアルトゥールは、沈痛な面持ちで、第3艦隊裏切りの報告を聞いていた。
御処分はいかようにも……。
反乱は、ボーディスだけではなかった。大陸各地でドルキマスヘの反乱の火があがっていた。
ドルキマスにこれまで虐げられてきた、大陸各国の感情が爆発していた。
その切っ掛けとなったのは、当然、第3王子テオドリクの殺戮兵器保有宣言である。
大陸はいまドルキマスー国による統ーか。殺戮兵器の恐怖による統制か。――世界は、真つ二つに分かれようとしていた。
肝心なのは、第3王子テオドリクだ。奴の反乱を鎮めさえすれば、反乱軍どもは旗頭を失う。
以前よりもアルトゥールは、感情を顔に出さなくなった。グスタフ王もそうだった。
アルトゥールは無感情にじっとカミルを見つめている。
彼らを処刑することにしました。その噂を聞いてお頭のジークは、必ず取り戻しに来るでしょう。
敵は向こうからやってきてくれます。
私が、アルトゥール陛下の治政を乱す、奸賊を始末してきます。
去って行くレオナルドの背中は、軍人らしく逞しいものだった。
戦争は、闘争が拡大したものである。
人が人である限り、この世から戦争はなくなることはない。
戦争は、とても素晴らしいものだ。過去も栄光も名誉も忠誠も、すべて流れ出た血が洗い流してくれます。
そしてドルキマスが滅ぶのも時間の問題。ふっ……ふふふっ。
周りが聞けば変に思います。
story
小勢の反乱軍は、そうやってボーディスで勝利をもぎ取った。
そしてそれは、ディートリヒ・ベルクが最も得意とする作戦でもあった。
機動力のある艦隊を編成し、敵の急所のみを狙う――
戦力の少ないドルキマスは、その方法で幾度も大国相手に勝利してきた。
だが、ディートリヒ・ベルクは、その悪名と勇名と共に過去の人間となった。
今更、蘇る必要はない。
レオナルドの脳裏に蘇るのは、ガライド連合王国との空戦の記憶だった。
ドルキマスの何倍もの国力を有する大国相手の戦いは、序盤こそ優勢だったものの――
圧倒的な戦力の差は覆すこともできず、徐々にドルキマス軍は、崩れはじめていた。
当時、戦艦艦長だったレオナルドは、全軍の指揮を執っていたディートリヒの命令を受け取った。
大勢が決しつつあるこの段階で、いまさら迂回戦術など――誰が見ても無意味な作戦に見えた。
子飼いの第3艦隊は、最後まで温存しておきたい――となれば、最初に捨てられるのは私というわけか。
それでもいい。ドルキマス軍人として戦場で散るのは名誉なことだ。
元帥の真意を飲み込んでレオナルドは、自艦を進発させた。
かくしてレオナルドの艦は、ガライド連合艦隊を引き付ける役目を果たした。
レオナルドの艦長としての能力。そして、率いた部下たちの練度は、困難な任務を達成した。
どちらでもよかった。味方を救い、戦死するのは、軍人の誉れ。
その時、戦場で見た光景は、生涯忘れる事はないだろう。
ディートリヒが手塩にかけて育ててきた第3艦隊が、ブルーノ提督の指揮の下、敵艦隊に突撃をかけていく――
ひとつ、またひとつと、撃ち落とされながら、ガライド連合艦隊の旗艦だけを目掛けて、決死の特攻を続けて行く。
レオナルドが命じられた迂回は、無駄ではなかった。第3艦隊特攻の機を生み出すために敵の注意を引く。それが真の目的だった。
第3艦隊の決死の突撃により、劣勢だったドルキマス軍は勝利を手繰り寄せた。
提督ブルーノ・シャルルリエの戦死という重たすぎる代償を支払って。
あの男はもう蘇らなくてもいい。これ以上、ドルキマスの兵たちが血を流す必要はない……。
だから、私が終わらせる。ディートリヒ・ベルクの伝説を。
story
すべてを奪われてきた。
ドルキマスは、ジークのー族を奪い、母を奪い。そして、今子分まで奪い取ろうとしている。
権力と脅威。そのふたつを象徴しているものたちが、いまはこの空を支配し、空賊を空から追い落とそうとしている。
舵を握る手に魔力を込めた。クレーエ族特有の紋様が皮膚に浮かび上がる。
ナハト・クレーエ号は、黒い影となり、風を追い越して蒼天を疾駆する。
ドルキマス上空にて待ち構えるのは、レオナルド提督率いる第10艦隊。
砲弾と光線が、ナハト・クレーエ号を捉えた矢先、漆黒の鴉は、さらにその翼をはためかせた。
第10艦隊は、高速艇対策のために、すぺての艦が広い距離を取って散開していた。
ここはドルキマスの領土である。ジークを待ち受ける敵は、空だけではない。地上からも、ナハドクレーエ号は狙われている。
ジークの周りには、巨大な戦艦が連なって立ちはだかり、背後からは足の速い駆逐艦が追ってくる。
そして、地上からは対空砲撃が止まない。
あなたのお仲間を処刑するという情報は、すべて偽物。釣られてやってきた時点で、カミル参謀総監の罠に嵌まっていたのです。
レオナルドの降伏勧告をー蹴し、魔力をさらに増幅させた。
ー斉砲撃。ナハト・クレーエ号に雨のように砲弾や光線が降り注ぐ。
しかし、砲弾が命中したはずの艦影は、消えたナハト・クレーエ号の残像だった。
レオナルド旗艦の左右を守護していた戦艦が、火を噴いてバランスを崩した。
なにが起きたのかわからない。ただ、黒い影が、第10艦隊の間を飛び回っている。
ナハト・クレーエ号を肉眼で捉えることができない。飛行音すらも、遅れて届いてくる。
狼狽えるな!小型艇の砲弾では、戦艦の装甲は貫けん!こちらが落ちることはない!
艦橋の目の前に現われたナハト・クレーエ号。甲板の舶先に立っている、黒い服の男。
その手には、魔力の充填を示す、光が蓄えられていた。
story
旗艦旗を掲げた戦艦が、ゆっくりと地上へと沈んでゆく。
だが、そのお優しさは、戦場では、決して美徳とはいえませんな。
衝撃。ナハト・クレーエ号が、砲撃を受けたのだとわかった。
艦のバランスが崩れ、尾翼から黒い煙が立ちのぼっている。
背後から、高速の駆逐艦が迫っていた。
本隊とは切り離された別働隊。そのうちの1隻にレオナルドが乗っていた。
だからあなたを釣るために、あえて弱点である旗艦をわかりやすいところに置いたのです。
ジークユーベル殿下。チェスは、私の勝ちのようですな?
駆逐艦から無数の投擲網が放たれた。ナハト・クレーエ号に、からみついた網は、艦の動きを固縛する。
おおっと、ドルキマス兵からどよめきがあがった。
殺戮兵器の発射スイッチまで手に入れることができるとは。これで戦争が終わると誰もが思った。
次の瞬間、派手な爆発音と共に、レオナルドの味方艦が、次々に撃墜されていった。
砲撃しているのは、味方であるはずのドルキマス艦――いや、味方ではなかった。
味方に砲撃した駆逐艦が、殻を剥くように装甲を外した。中にあったのは、例の魔道艇だった。
いや、やはりあなたは……第3王子テオドリク陛下なのですか?
だがいまや、ドルキマスは大陸の大半を支配し、見せかけの統一を果たそうとしている。
ドルキマスの武力による平和か。殺戮兵器の恐怖によってもたらされる平和か。
無線から聞こえる第3王子の声には、あまりにも無数の感情が込められているように感じた。
レオナルドは、続ける言葉を失っていた。
story
テオドリクがそう言うってことは、アルトゥール王は、徹底抗戦すると見ているのだねと君は言う。
……今日の午後。リント・クレーエを処刑するですって?
まさか、ジークの母親を――
併走していたナハト・クレーエ号が、矢のように飛び出した。
君も慌ててあとを追った。
殺戮兵器を差し出し、恭順する以外に、処刑を回避する手段はないと伝えろ。
(王子同士を争わせ、ドルキマスを破滅へと導く……。いまのところは順調ですが――
問題なのは、殺戮兵器の行方。あれを手にしたものが、次のこの大陸の覇者となるでしょう。
テオドリク殿下が、ドルキマスヘ向けて殺戮兵器を使ってくれれば、私にとっては都合がいいのですがね)
ドルキマス王都の中央広場の処刑場。多くの重罪人が、ここでギロチンにかけられた。
瞬く間に、処刑人たちを殴り倒し、ジークは空賊の子分たちを救い出した。
騒ぎを聞きつけて憲兵たちがやってきた。
story
ナハト・クレーエ号に戻ったジークは、無線を使いドルキマス国に向けて宣言する。
アルトゥール王が、俺の母を人質にとってこちらに要求を呑ませようとするのならば――
俺は迷わず手元にあるスイッチを押す。そうすれば、王都は廃墟となる。
そんな最悪な未来を迎えたくはないはずだ。
アルトゥール。お前のつまらない野望に民を巻き込むな。
大人しく王城を明け渡せ……。貴様に王たる資格がないことを自覚しろ。
もちろん、アルトゥールが城を明け渡すはずがなかった。
戦艦を繰り出し、最後まで王都を防衛する意思を見せた。
アルトゥール陛下の求める平和は、あたしたち空賊にとって、ちょっと都合が悪いものねー。
v込み入った話は、あとにしましょう。今はドルキマスを倒すだけです。
この圧倒的な戦力差。絶望を感じないかね?
でも負ける気はねえぜ。最後の戦だ。思う存分暴れてやろうぜ!
フェリクスの言葉に応じるように、全員の歓声があがった。
反ドルキマス同盟軍は、ゆるやかに王都に向かって進軍する――
空戦のドルキマス4 Story2 殲滅兵器
空戦のドルキマス4 Story3 ボーディス奪還作戦
空戦のドルキマス4 Story4 黒衣の襲撃
空戦のドルキマス4 Story5 王都決戦
空戦のドルキマス4 Story6 ドルキマス