【黒ウィズ】空戦のドルキマス4 Story5
空戦のドルキマス4 Story2 殲滅兵器
空戦のドルキマス4 Story3 ボーディス奪還作戦
空戦のドルキマス4 Story4 黒衣の襲撃
空戦のドルキマス4 Story5 王都決戦
空戦のドルキマス4 Story6 ドルキマス
目次
story
このドルキマスには、第1親衛艦隊。第2親衛艦隊。そして、第4艦隊がいます。
我らが反ドルキマス同盟軍を王都に引き付けている間に――
大陸各地に展開していた第5から第9艦隊が、反ドルキマス同盟軍を包囲するように集結します。
気付けば、四方八方すべてがドルキマスの艦隊。奴らに逃げる場所などございません。
お褒めの言葉は、もったいのうございます。
満足げなアルトゥールは大仰な仕草で髭を触っている。
カミルは、玉座に座る前王グスタフの姿と、の前にいる若き王の姿を重ね合わせていた。
反乱軍の目的は、ドルキマスの王位を簒奪すること。アルトゥールはそう見ていた。
そこで、特務戦隊の出番となります。
手を払って彼女を招き入れた。
特務隊の編成は、すでに終えております。ご命令あれば、いつでも出撃できます。
あやつの傍にいて誰よりもディートリヒ元帥を知るそなたこそ適任だ。
そして第3王子テオドリク殿下を名乗り、殺戮兵器を有して王都を恐怖で支配しようとしている大罪人。
私は、ドルキマスに刃向かう賊を討伐するだけです。
陛下は、殺戮兵器の破壊を優先せよ、と仰せになられてます。
story
特務戦隊のメンバーは、親衛隊の中でも特にアルトゥール王へ忠誠の高いものたちから選ばれていた。
彼らは、いわばアルトゥール王の切り札。もちろん、ローヴィもそのうちのひとりだ。
ローヴィも含め、彼らは生粋のドルキマス国民である。
彼らの故郷がここであり、家族も先祖の墓も、ドルキマスにある。
愛すべき祖国が、反逆者によって踏み荒らされようとしている。奮い立たないわけがなかった。
ドルキマスを脅す反逆者を速やかに討ち、国民の命と王都を守る!出撃だ!
***
「お父上様が、戦死なされました。
「……なぜですか?
「詳細は、わかりかねます。戦場でのことは、機密とされておりますので。
私が生まれた家〈テレジア〉に生まれた者は、ドルキマスにその身を挿げなければいけない。
かつてドルキマスを守った伝説の提督テレジア。彼女の血を受け継ぐ我が一族は――
その命を国家に捧げることで、ー族を繁栄へと導いてきた。
「そうですか……。軍人になられる決意をされましたか。
「父の遺志を継がねばと思いまして。せっかく縁談の話が進んでいたのに、お断りして申し訳ありません。
「お父上は、立派な軍人でした。あなたにも、その血が受け継がれているのでしょうね。
実を言うとこの縁談、私もあまり気が進まなかったのです。家族が結婚しろしろとうるさくて……。
「まあ、どこも似たようなものなのですね?
「せっかくの人生ですから、生き方は自分で選ばせて欲しいものです。
「ええ……。
「 父上や兄上たちに続いて軍人になりたいと思うあなたの決意。きっと本物だと思います。
その決意が、あなたにふりかかるこれからの苦難を乗り越えるための薬となるでしょう。
ドルキマスヘの愛をいつまでもお忘れなく。
「父も……同じ思いだったのでしょう。祖国のために戦う。巴リその志は、絶対に消さないようにいたします。
「それでは、これでお別れです。あなたは、とても素敵な人でした。
花嫁衣装を着たあなたも見てみたかった……。
「もったいなきお言葉。レオナルト様こそ、お元気で……。
***
空ー面。見渡す限りのドルキマス艦が、君たち反ドルキマス同盟軍を待ち構えている。
あわわ!さっそく被弾したにゃ!
進めといわれても、目の前には分厚い壁のような敵艦隊の隊列が聳えている。
今日……私たちはここで死ぬんだにゃ……。
諦めるなと、君はウィズを励ます。
とはいえ、ドルキマス軍はさすがに王都を守護する精鋭部隊だけあって付け入る隙がない。
それに壁のように隊列を組まれては、得意の機動力で敵を翻弄することもできない。
どの艦も苦戦している。
この状況を打破する策は当然あるんだよね、と君はテオドリクに訊ねた。
あの時も、君はディートリヒと共にドルキマス王都目指して進んでいた。
艦隊を囮に使い、ディートリヒ本人は地上を進み、王都への侵入を果たした。
あの時も、ギリギリの戦いだったよね、と君は感慨深く答える。
醜悪な世界を造り出しているドルキマス軍を根底から否定するために私はここにいる。
そして、そのための手は、すでに打ってある。
突然、正面の敵艦隊が爆発し、隣接する艦を誘爆させて墜落していく。
竜騎兵が、翼を広げてこちらに向かってくる。
負け戦を勝たせてこそ私たち竜騎軍の価値はあがるってものよ!
機動力の高い竜騎兵は、巨大戦艦が密集するドルキマス艦隊の隙間へと潜り込んだ。
駆逐艦が動き出す前に、竜騎兵たちはドルキマス艦に吸着爆弾を貼り付けていく。
反ドルキマス同盟軍の主力と言っていい荒鷲の艦隊は、君たちと共にドルキマス軍と向かい合っている。
彼女たちが動けば、戦力がごっそり削られる。動かしようがないように思うが……。
遠目から見れば立派な艦に見えるが、荒鷲の艦隊の半数は、巨大な風船を膨らませて見せかけているだけのダミー艦隊だった。
クラリアが率いる半数は、どこにいるのかといえば――
ドルキマス王都市街。建物にギリギリぶつからない高度で飛び続ける艦隊があった。
ブルーノ・シャルルリエが残した荒鷲の艦隊の戦い!とくとご覧いただこう!
ドルキマス艦隊は、後方から荒鷲の艦隊別働隊の奇襲を受けた。
第3艦隊を分けたということは、正面の主力は見せかけ。
実際には、半分の戦力しか存在しないということになる。
テオドリク王子……いえ、ディートリヒ・ベルクとあろうものが……軍を離れている間に衰えましたかな?
ドルキマス第2艦隊は、後方に回り込んだ荒鷲の艦隊に狙いを付けた。
クラリアたちの艦は、必死の抵抗を見せる。だが、第2艦隊は倍以上の戦力がある。
どうやら敵の司令官殿は、空戦のなんたるかを知らんようだ。
敵は、テオドリクの策によって動かされた。半分をクラリアたちの対処に回し、みずから動いたように思っているだろうが――
君たちからすれば、王都上空を完全に封鎖していた敵が、むざむざ壁を崩してこちらが付け入る隙を与えてくれたように見える。
鉄壁だった防衛ラインが崩れたとなれば、こっちは得意の機動力を活かせる。
漆黒のナハト・クレーエ号は、敵の第1艦隊に向けて突き進む。
ー斉射撃の弾幕を置き去りにして、瞬く間に第1艦隊の隊列の隙間へと潜り込んだ。
ジークの躊躇いのない突撃に君も同様に目を見張った。
それよりも魔法使い。弟のあとに続け。勝利は、目の前だ。
山のように聳える艦隊に向けて突き進むのは、勇気がいった。
それでも、いまはテオドリクを信じて艦を前進させた。
ローヴィの眼前で友軍の艦が炎上している。
ナハト・クレーエ号を含め、反乱軍の魔道艇は、その速さから、肉眼で捉えることすら難しい。
それでも、ローヴィは全神経を集中させて対象となる魔道艇を追跡する。
ナハト・クレーエ号は、いまは標的ではない。同じドルキマス艦が沈められていく口惜しさをぐっと飲み込んだ。
ディートリヒのクーデター。対イグノビリウム戦。
それらの戦いを共に戦った魔法使いが操縦する魔道艇。それをこれから撃墜する――
ー瞬だけ、彼のことが頭をよぎった。だが、忘れろ、と自分に言い聞かせた。
いまは、敵だ。彼はドルキマスに背いた。反逆の意思は、今回の戦で明らかになった。
立場が変わった。今は、戦場で討つべき対象だ。
胸に迫るあらゆる感情を抑え込みながら、ローヴィは艦の指揮を執る。
魔道艇の機関部をー撃で破壊し、航行不能にする。
向こうに殲滅兵器を使用する隙を与えない。それが役目だ。
アルトゥール陛下が呼び寄せたドルキマス艦隊か――とー瞬、喜びが走ったが、味方艦が到着するのはまだ早い。
その正体は――
「空賊には、空賊の生き方ってものがあらあ。それを否定する奴は、絶対に許さねえ。
各地に潜んでいた空賊たちがー斉に集まってきた。それを指揮しているのは、あのケーニギン・ブルンヒルト。
「空賊たちから、空を奪えるものなら奪ってごらんなさい。
「誰かと思えば、竜騎兵のライサさん。お元気そうね。
「いまここで決めても構いませんよ。
「ふふっ。相変わらずですね。空賊たちの参戦。
空賊たちの参戦。
これも、テオドリクの作戦のうちなのか。
戦況はー気に混沌としてきた。敵味方の艦が入り乱れ、せっかく捉えた魔道艇を見失いそうになる。
ローヴィの特務艦を護衛していた艦も、次々に砲弾に巻き込まれていく。
あと少し。射線上に魔道艇を捉えて砲撃を命じれば、この戦は終わる。
テオドリクを討てば、この戦いは終わる。
砲弾を放った。その直後、魔道艇は方向を変えて咄嵯に回避した。
2発、3発と繰り返し砲撃しても、結果は同じだった。
魔法使い――そう呼ばれるだけあって、危険を察知する能力は、並外れたものがある。
その声に聞き覚えがあった。ジークユーベル第4王子だ。
ナハト・クレーエ号の主砲が、ローヴィが乗る特務艦に狙いを定めていた。
激しい揺れが起き、艦橋の目の前は熱風と黒煙に覆われた。
艦はまだ動く。ドルキマスのために、なんとしてもこの任務やり遂げる。
砲撃を受ける直前、味方艦が身代わりになってくれました!
軍人になると決めた時に破談になったはず。
兵は、すでに退避させました。私のー存で、あなたへの思い。貫かせていただきます。
ナハト・クレーエ号の主砲が、再びレオナルト艦の機関部を撃ち抜いた。
ドルキマスの男として、こんな幸せなことはありません。
また1隻、ドルキマスの艦が空に散った。
レオナルト・ビューゲル。戦死。
すぐに、あとを追う。その覚悟を胸に秘めて、ローヴィは、魔道艇を追撃する。
捉えた。すぐさま、魔道艇の背後を取った。
魔法使いとテオドリクが乗る艦は、ドルキマス第1艦隊の旗艦へと向かっている。
戦場を混乱させ、その隙に敵の首――旗艦を落す。それがディートリヒの手口だった。
砲撃では、また避けられてしまう。どうすればあの魔道艇を落とせる?
考えろ……。
戸惑う部下たちを避難艇へと乗せた。半数以上は、艦に残ると言って聞かなかった。
ローヴィは舵を握りながら、少しずつ魔道艇と距離を詰めた。
長い航行で、向こうの艦は速度が落ちている。
迷うな。突き進め。
レオナルド――彼の面影ですべてをかき消した。
魔道艇が眼前に迫った。ローヴィは、機関の速度を上げた。
艦首を引き上げ、魔道艇そのものに狙いをつけ――特攻をかける。
衝突。そして爆轟。
ローヴィの視界は、黒に染まった。
思ったことは、ただひとつ。敵を落とせたのか――
先はどからしつこく背後を取って離れないドルキマスの高速艇。
君は、懸命の操縦で引き離そうとしたが、ついに肉薄されてしまった。
何者かは知らんが、おもしろい……。
ドルキマス艦が君たちの頭上に覆い被さる。ぶつかる――
激しい衝突が起きた。終わりだと思った。
だが、君たちの魔道艇には傷ひとつなかった。
身代わりになって守ってくれた艦があった。その艦は、荒鷲の旗を掲げていた。
無線から聞こえる声は明るい。だけどドルキマス艦の体当たりをまともに受けたクラリア艦は――
艦体が真っ二つになるほどの損害を受けていた。
ローヴィは高速艇を強引に前進させる。盾となっているクラリアの艦が、激しい音を立てて割れはじめた。
クラリアのことをー瞥もせず、テオドリクはただ敵の方だけを見ていた。
大きな音がしてクラリアの艦から、激しい爆発が起きた。
君の傍にいる人物は、すでにテオドリクではなかった。
眼帯をしていなくてもその男は、君がよく知るディートリヒ・ベルクだった。
ディートリヒは、艦を進めろといった。そうしたいのは、山々だが――君の魔道艇は、急速に推進力を失っていた。
これまで数々の戦いを共にくぐり抜けてきた君のもうひとつの相棒ともいえる魔道艇は、あちこちにガタがきていた。
旧魔法文明の生き残り。この時代の技術で直せるかどうかも怪しい。
でも、あと少し。あと少しで、ドルキマス軍の中枢へと届く。
だからもう少し飛んで欲しい。君は祈る思いで舵を握った。
それは、君たちにとって救いの声だった。
お前たちを牽引するから、砲台となって俺を援護しろ。いいな?
敵第1艦隊の旗艦。君たちは、装甲を砲撃で打ち破り、艦内へと侵入した。
襲い来るドルキマス兵を薙ぎ倒しながら、奥へと進む。
この先に指揮官がいるはずだ。奴を倒せば、戦は終わる。
才能のない無能を祭り上げて国家の根幹を揺るがす……。アルトゥールはグスタフと同じように扱いやすいお人でしたよ。
ディートリヒは、なにかに気付いた。
カミルの肌に紋様が浮かび上がった。この反応は――
ドルキマスによって滅ぼされた古代魔法文明の生き残りは、ジークだけではなかった。
このカミルも遠い昔、弾圧によって滅びたー族の生き残りだった。
あなたの父は疑り深く人を信じない男でした。だから私は、彼の心の支えになってあげたのです。
なんのために?ドルキマスヘの復讐のためか?
私は、この体質ですから寿命では死ねないんですよ。長く生きていると退屈なんです。
退屈を癒やす方法を探すうちに、私は唯ー喜びを感じる瞬間を見出しました。
それは、絶望に喘ぐ人を見ることです。小国のドルキマスを戦乱に突き落とし、暗君によって国民が嘆き悲しむ。
混迷するドルキマスは、私にとってのいい見世物。極上の暇つぶしになりました。
ディートリヒの手には拳銃が握られていた。まさかその銃で撃つつもりか?
周囲にいるドルキマス兵も、ー斉に息を飲み込んだ。
戦場でこそ己の生きる場所が見つかる。戦場でこそ自分を活かせる。
だから、追放された母国にわざわざ戻ってきた。戦争を求めて――
貴君のような戦争狂と、ー緒にされては困る。
君は、ディートリヒを庇うように立ち、カードを引き抜く。
残念だよ!
***
武装したドルキマス兵が、さらに援軍として駆け付けた。君たちに対して銃口を向けている。
お前たちはここで死に、すべては私の手の上で踊り続ける。この先もずっと――素敵だろ?
勇敢なるドルキマスの将兵に告げる。ただちに戦をやめて、私をアルトゥール王のところに案内しろ。
兵たちは明らかな戸惑いを見せた。
親衛隊の兵ならば、ディートリヒの姿を見たことはー度や二度ではないはず。
ひとり、またひとりと手にしていた小銃を投げ捨てていく。
元帥閣下、必ず戦争を終わらせると約束してください。
もとより、無用な戦争だった。必ず、終わらせる……。
俺はもっと見たい!大切な人が死に、泣きじゃくる子どもの姿や、兵たちに略奪され、途方に暮れる農民たちの姿を。
このような男のせいで、ドルキマスの将兵が傷つき、死んでいく……。
貴君たちは、許せるかね?
ディートリヒは、目の前にいる兵たちに問うた。誰もが首を横に振った。
もちろん、許せるはずがない。
ディートリヒは、拳銃を握る手に力を込めた。
ジークとディートリヒ。ふたりは同じタイミングで引き金を引いた。
心臓を撃ち抜かれたカミルは、ゆっくりと背中から崩れ落ちる。
ディートリヒは、ドルキマス兵をー瞥する。自分たちの指揮官を失い、戸惑う彼らに向けて告げる。
あの愚兄と話がしたい。
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