【白猫】Extend Horizon Story4
目次
story19 豪傑
後継者サマはそこで黙って見とけやあ!
あんたこそ、引っ込んでなさい!
<■▼▲&%$O■*×!…………>
ふぅ……片付いたわね……
でも……
どういうつもり!?チームをなんだと思ってるの!?
じゃから断ったじゃろうが!ワシは好きに戦わせてもらうと!
おどれもソレを飲んどったじゃろうがあ!?ああン!?
だからって、新米もいるのよ!あんたの援護のためにみんなが危険になるでしょうが!
ワシになぞ構わにゃええんじゃ!
これはミッションよ!成功が第一なの!私闘じゃないんだから!
変わりゃせんじゃろが……!
は?
いくら任務じゃ使命じゃ言うとったとこで!戦うのは自分自身じゃ!
自分の想いを抜きにして、ただ戦うだけの兵隊のような真似なんぞ、ワシにはできん!
そういう話じゃ――
おどれは違うっちゅうんか!?
関係ないでしょう!?どんなに想いが強くたって、負けたらおしまいなんだから!
そんな話はしちょらんわ!
ならなによ!?
わからんわい!ワシは、アホじゃけえのお!
――断ち切るッ!
!!
……メア……?
なんじゃい。
少しは冷静になった?険悪な空気を断ち切ったのよ。
そりゃあ、無駄じゃ。
……二人とも。結果的に敵を殲滅できたから、あまりうるさく言うつもりもないけど。
ちょっと見るに堪えないわ。子供じゃないんだから。
……悪かったわね。
セレナ、ソウルを温存して?相手の戦力はわからないのよ?
……反省する。天才美少女の、あたしとしたことが……
……天才、かぁ……?
どうかした?
いえね、師匠が。向き不向きはあれど、才能なんて概念はなし、なんてこと言ってたので……
その通りよ。
へ?
自分に課してるだけ。超絶有能な天才であることを。
そうじゃなければ、……顔向けできないから。
セレナさんも、いろいろあるんスね……
そういえば、クロカも次期統領だって言ってたわね。
はい。まだただの肩書ですが、いずれのしかかってくるのであろうなあ、と……
……イツァーク?
白けたわ。ワシかて、そいつがつっかかってこなけりゃ怒鳴りもせんわい。……おう、シローよ。
ぜぇ……ぜぇ…………あ、ハイ……なんスか……?
なんじゃ、ずいぶんとヘバっとるのう。
ちょっと、走り回り、過ぎましたッス……
スジは悪くないようじゃが、ワシのような戦働きがしたいなら、クセをつけにゃならんのう。
クセっスか?
生き延びグセじゃ。
うおお、まさに、豪傑まっしぐらな単語ですね……!
とにかく生き延びまくることじゃ。成功体験が、次の成功率を上げていくんじゃ。
豪傑に豪傑を上塗りしまくってますね、イツァークさん……!
うまくとりなしたわね、メア?
私は何もしてないわ。二人とも、根は悪人じゃないもの。
アンタのお墨付きをもらえるんなら安心ね。
……メアさん。この島、どう思いますか?
……闇の気配は感じるわ。だけど、まだわからない。
予定通り、町へ行って情報収集をしましょう。
story20 世間知
旅人さんかい?いらっしゃい。
部屋、空いてますか?
ええと……七人だね。大部屋でいいかい?
はい。
ちがうちがう。
へ?
猫がしゃべった!?
悪いわね、しゃべるのよ。クロカ、部屋割りって、案外重要なのよ?
三部屋取れるかしら?あとドラゴンもいるの。外の納屋も借りられるかしら?
ああ……空いてるよ。ドラゴンなら屋根でもいいよ。泥棒よけになるさね。
じゃあそれでお願いするわね。
はっ。しまった、お金。
前払いですよね?これで足りますか?
ひいふう……ああ、十分だよ。多くもなく少なくもないさ。
アイリスさん、ゴチっす。
ちがうわ。ジョニーから仮払いを受け取ってたの。
仮払い……?ってなんスか?
……はぁ……アンタたちって、わりかしモノを知らないのねえ。
めんぼくないっス。
いいわ、色々教えてあげる。仮払いっていうのは、前金ともいって……
キャトラ、宿屋のカウンターを占拠しちやってるよ。
あらあら、ごめんしたわね。どうぞ次のお客さんを受け付けてあげて。
一人部屋で。
はいはいはい。
……世間……!
……世間な……!
……………………
…………
――つまりこれが、冒険家ギルドのー般的な報酬制度よ。わかった?
依頼のキャンセル料は前金の二倍から三倍が相場。
そう。
げーですね。
げーなのよ。だから、依頼がおかしくないかどうかも、受注側で判断すべきなの。なるへそなあ。大変勉強になりんす。
なるへそなあ。大変勉強になりんす。
おいおい、おどれら、今まで何を習っとったんじゃ?
ビラウとペルマナから、割と大量の講義は受けていたんですが……
合点がいったわい。あいつらも、最前線の冒険家ではないからのう。
ギルドライセンス、取ったらどうじゃ?
それは、どこで取れるんですか?
冒険家ギルド……そうか、ドミティアにはギルド自体なかったからのう。
たいていの島にはギルドの支部か出張所があるのよ。
そうか……ウチらの島は、みんな戦えるから、冒険家に依頼する必要がなく……
そういうことでしょうね。
取りたいッス、ライセンス。
おっけ。だれかに言っとく。
だれかて。
キャトラさんの顔は広いわよ?ギルド職員の知り合いだっているんだから。
脱帽っス。
よろしい。他に質問なければ、いっぺんに言い過ぎてもアレだし、終わりにするわよ。
……ないわね?じゃあ、解散!
……ハッ!?これってもしかして、初の、島の外でのお泊りじゃね!?
うお、そうだ!テンション上がってきた!
こぉっ!遊びじゃないの、ミッションの最中なのよ!
構わんじゃろう。セダンがおる、異変があればすぐわかるわい。
さて、と……
イツァークさん、どこへいくんですか?
……酒じゃ。
…………
他に逃げ場他に逃げ場所を、ワシは知らん……
……ほどほどにね。
……キャトラ、めずらしいね?
イツァークがなんであんなにヤケッパチなのかは、なんとなくわかるもの……
心のいやしかたは、ひとそれぞれよ……
story21 ほんぶちょうである
――混沌なんて、はじめからなかった。
それどころか、退魔士は、悪事の片棒を担がされていたのよ。
そんなことがあったの……
最初は動揺したわ。真実なんか知らなければよかった。そんなことさえ思った。
それは間違いよ。
そう。知らなければ、一生いいように使われるままだった。
知りさえしなければ幸せだったなんて……ムシがいいわ。
きっといつか直面した。後になればなるほど、衝撃は大きくなったでしょうね。
そうでしょうね。
いつだって、心の準備は先にはできない。
急に何かが起こって、そのあと……
……長い時間をかけて、自分を納得させていく。心を取り戻していく。
それしかできないんだって、思ったわ。
…………
ごめんなさい、一方的に色々しゃべっちゃって。
ううん、気にしないで。……あたしの方こそ、まだ、上手く言葉に……
……ちゃんとしゃべることが、まだ、できそうもなくって……
いつでも聞くわ。
ありがと。
私の方こそ、聞いてもらえて、なんだか楽になったわ。
……そっか。そういうことも、あるわよね……
だから、いつでも言って。――さて!そろそろ、情報収集しましょっか?
そうだったわ。そういうことも、あなたは得意なの?
のんべえがどういう生き物かは、先輩からたっぷりと教わっているわ♪
……ふふ、そう……
……………………
…………
わるもの捜索本部、ほんぶちょうのキャトラである。
ほーこくなさい。
……なんもないっス。
にゃにぃ!?
だって、見ず知らずの大人に、俺みたいな若造がいきなり話しかけられます?
人見知りのつもりはないっスけど、第一声が出てこないっスよ。
だれに声をかけようとしたの?
へ?……一人で飲んでるおじさんとか……
ふむ。ウェイトレスさんになさい。
え?
酒場で働いているコなら、いろんな話を聞いてるはずよ。
それに、アンタが声かけるなら女性のほうが反応いいとキャトラさんは踏んだわ。
なかなかのおとこぶりだもの。
ほほう……逆になんか避けちゃってたんスけど……
もっかいトライしてきます!
ゆけい!
シローは子供の頃、よく、大人のおねいさんに声をかけていたのだ。
そのときのことを思い出せば、あるいは成功するやもしれぬ。
えらそーにゆーとるけどクロカ、アンタの成果は?
ウチにもヒントをください。
そうねえ。アンタはそのままでもだいじょぶそうだと思ってたけど……
アイリス、クロカについてくれる?
いいわよ。
聞き上手の極意を、間近で見て参考になさいな。
ふふふ♪精一杯、お話を聞いてくるわね?
ぬおっ……!たおやかなるほほえみ……!ウチに足りないのはコレかー……
すぐにできるよ♪さ、いきましょう♪
うっス!アイリス先輩!
冴えに冴えわたるキャトラほんぶちょうの助言であった。
さ、アタシたちはどっしりとかまえてましょ!
story22 後悔
…………
……昧がせんわ……
どんだけ飲んでも、酔いもせん……
チッ!このワシが……
……この、ワシが……
***
――今帰ったぞ!
……遅かったな。
ちぃと、不覚を取ってのう!少しばかり、鎖につながれておったんじゃ。
引きちぎるのにひと月ばかり、クサイ飯の世話になったわい。かっはっは!
ケンセイが亡くなった。
!?
……よし!どんな予言じゃ!ワシが手助けして、その運命を変えちゃるわ!
お前が不在のうちに、闇との争乱があったのだ。
タイカン軍を率い、連合軍の主力として奮戦したケンセイは――
闇の王の後継者セレナの盾となり、その命を落としたそうだ。
…………
……うそじゃろ……?
…………
あの男は強い……あんな男は二人とおらん……
……何かの間違いに決まっとるわ!どうせ、いいところでまた現れて、オイシイトコをかっさらうつもりなんじゃろ!
がっはっはっは……!
…………
…………
……ほんとうなんか……?
……何も、視えなかった。
心底自分が嫌になる。何が予言だ。
何が未来樹だ……
……ぅ……ぅ、ぅ……!
己の無価値を痛感する。
……価値がないのは、ワシじゃ……
どうしようもないのは、ワシじゃ!
友が……!友が、友の危機も知らず、任務を、長引かせ……!
何が、不覚じゃ……!ワシは…………ワシは!!!
うぉおおおおおおおおおおお!!!
***
……貴様のせいで、ケンセイはッ!!!
!!
……っ……!!
…………
どうしたの?いいわよ?
こんなことをしても……
あいつが喜ぶはずがないじゃろうがぁっ!!!
***
…………
……クソがっ……
ワシはアホじゃ……
惚れ込んだ男のため……生きたいと願っとるのに……
いざというとき……そばにもおられん……
みな、おらんくなっていくんか……?
ワシだけを残して……
…………
誰じゃい。
…………
返答に気いつけぃ。ワシは今、クサクサしとる。胴体と別れたくはないじゃろ。
…………
……おじさん……
ぼくたちと……たたかってください……
――っ……!?
story23 一夜明けて
――イツァークさんが、帰って来てない……?
朝ベッド見たんスけど、使った形跡もなくって。
もしかして、どこかで敵と遭遇したとかでは……
いけない!
……個人行動してるからよ。
セレナ!それはそうだけども、同じチームなのよ!?
放っておけばいいわ。本人もそれを望んでいたもの。
……セレナ。
……なに?
本気でそう思ってる?
…………
――ちっ!
ちょっとセレナ!?
待ちなさいっ!
メアまで!……仕方ないわね!
手分けしたりしながらイツァークを探すわよ!セダンはアタシたちと!
***
セレナ!落ち着いて!
一刻の猶予もないでしょ!?
だからって、あなた一人で急いでどうするの!?
あなただけじゃ、敵わなかったら!?
一矢報いれば十分よ。
……落ち着いて。
セレナ。自分の命を、軽く考えてはダメ。
……あたしは一度命を救われた。使い切るのに迷いはないわ。
それは間違ってる。
あなたに何がわかるって言うの!?
後輩の責任。
……え?
自分から見た先輩は、万能に見えるわ。
だけど違う。先輩も、失敗をするの。
だから、後輩の責任は――
――失敗を食い止めること。今度は成功させること。
それが、託されるということ。先輩と同じことをするだけじゃ、資任を果たしたことにはならないわ。
……そっか……
セレナ?
ありがと、メア。もう、大丈夫だから。
必ず、イツァークを連れて帰るから。
……オーケー。……とかいって、私が先に見つけたりしてね。
どっちでもいいわ、みんなが無事なら。
そうね!じゃあ、私は向こうへ!
story24 揺さぶり
なんじゃあ……ここは……?
むかしむかしの、いせきだそうです。
地下アジト……じゃろうか……
……ドンビシャじゃ。本拠地はここじゃったか……
サニオという男がおるじゃろ。
サニオさん……はい。
つれてけ。そいつが諸悪の根源じゃ。
ぼくたちの、おとうさんです。
なんじゃと?
ぼくたちは、ここでそだてられます。
うまれたところは、べつです。
さらわれた、ちゅうことか?それに……なんかヘンじゃと思っとったが……
おどれ……子供か?
ぼくたちはふあんだから。
あン?
たたかえといわれたらたたかいます。
待たんか、ワシは――
まものをしょうかんすることもできます。
なにをするんじゃ!?
たたかうほうが、まだましなんです。
たたかってください。ぼくたちと。
!?なんじゃ、意識はまだあるんか!?
かってもまけても、かまいません。
ふあんなままが、いやなんです。
やめろ!やめんか!
……やめるんじゃ!こんな無意昧なこたぁよさんか!
いみはあります。
みんなでふあんになれば……ぼくたちだけじゃ、なくなるから。
があああっ……!なんなんじゃ、これはぁ……!?
こんな……ガキども相手に……!
どうしろっちゅうんじゃあ……!?