【白猫】Extend Horizon Story
開催日:2020/05/28
目次
story1 据え置き
――ときは現在。外界と隔絶された、ドミティア島。
そこには、秘密裏に人間世界へと介入し、社会のバランスを保つ組織、アテル・ラナが存在する。
そして、今ここに――クロカとシローの二人が、新たな長になるべく――
<統領研修中>の肩書が与えられた――
クロカ・マニト | シロー・メナス |
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――研修中スか。
締まらない肩書ッスなあ。
<大精霊>アピス |
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お前らが受けかねるとかやいやい言うからでしょー?
あれっスかね。最終的にはー人に絞るための見習い期間的な。
ああ、そういうこと。了解。
……あのさあお前ら、言葉づかい、もうちょっとなんとかなんない?
スッススッスじゃなあ。
善処するっス。
いきなりハッキリは難しいよ。
師匠は子供の頃からずっと師匠だ。無意識に甘えてしまう。
そう言われちゃ悪い気もしないけど、でもコイツとはほぼほぼ初対面でしょ?
<預言者>ル=グイン |
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…………
はい。お名前はたびたび耳にしておりましたが。こうしてお話させて頂くのは初めてです。
クロカ・マニトと申します。以後お見知りおきを。ル=グイン様。
シロー・メナスです。お会いできて光栄です。
ああ。
ちょっとー!できんじゃーん!だからソレやってよ俺にもさー!
アピス様。
お二人にはあとでよく言い聞かせておきますので……!
少し黙っていろ、アピス。素のお前だと話が長引いて敵わん。
ふん……
では、改めて伝えるとしよう。我らが組織の使命と――
――未来樹の語る予言を――
<二人は思う。>
<ー度、頭を切り替えよう。>
<その方がわかりいいから。>
story2 長のおさらい
未来樹の神託を受け取れるのは次なる『芽』の者だけではない。化身たる私も同様なのだ。
未来樹リラビスウルスノが成木となったそのとき、私はこの姿を得た。
己の足で世界を見聞するうちに、この島へと至り――
――介入組織アテル・ラナの存在を確認した。
そしてアピスと語らい、私のカー未来樹の予言こそ、アテル・ラナに必要だと確信し……
以来、300年ほどになろうか。
アピスとともに、この島を、アテル・ラナを見守り続けている。
300年……それは、なんとも……
長い大儀でございましたね。
私は精霊だ。感覚も人のそれとは違う。いらぬ同情だ。私は、待っていたのだ。予言の時を――
予言の子が産まれる時を。
予言の子らが<その時>を迎えた日――
世界は正しき光の内へ飛翔してゆくだろう。未来樹はそう告げたのだ。
その、予言の子というのが俺たちですか?
お前たちは、遥かなる昔、この組織を興した二人の英雄の生き写しであるという。
このことについてはアピスが語ってくれよう。
多くの子を見てきた。
クロカ、シロー。お前たちが身に宿すソウルは、あのとき――
――あの二人に感じたものと、よく、似ている。
師匠……師匠の長生き伝説、本当だったんスね……
でも、大半は寝てたから。俺も起きたのはコイツと同時期、だいたい300年前。
しかも、寝すぎて記憶もあいまいなんだよね~。だから、問違っててもカンベンな!
記憶よりも信憑性は高い。ソウルに感じるものならばな。
話を戻そう。おさらいだ。このアテル・ラナについて。
この島の住民は全員、大なり小なりアテル・ラナの関係者だ。
人間社会の均衡を保つ……そのために、訓練を受けた介入者たちは――
――大きく乱れる危険性のある国や地域へ赴き、収束のため、影から力を賃す。
侵略ではない。調和のためだ。それゆえ、介入者たちが表舞台に立つことはない。
我らの存在、その働きを知る者も、多くはない。古くからの要人など、ー部に限られている。
はい。ピラウから何度も、説明を受けてさました。
秘密裏に人間社会を支える……それが我々の平素の使命。
平素の?
元より、大袈裟な話ではないのだ。世界は自浄する。何もせずとも、多少の乱れは自然に鎮まる。
では……多少で済まなければ?
それこそが、未来樹の化身たる私が、ここにいる理由なのだ。
未来樹リラビスウルスノは、また別のことも語った。
予言の子らが道を誤りしとき――
――希望の火種は潰えるだろうと。
…………
…………
難しかったか?予言は詳細には語られない。
なぜなら未来もまた揺れるからだ。
だが、多くの道が収束する点とでも呼ぶべき瞬間があり、未来樹はその地点を視る。
わかる気がします。
そうか。
希望の火種は我らとはまた別である。という解釈でよろしかったですか?確認なのですが。
そういうことになるだろう。
ちなみにその希望の火種とは?人ですか、物ですか?
不明だ。現時点ではな。
それですと、やりよう難しいですね……
……やりようむずかしい……?
おい、クロカ。
はっ。思わず、無礼を。お忘れください、ル=グイン様。
まだ猶予は多少ある。理解と納得に時間を使え。下がってよい。
は。
…………
年寄りは困りものだな。相手にも自分と同じ知識を当然のように求める。
ふん……お前が言えたことか。
…………
story3 肩書きとは
……急展開。
だな。
<研修中>には、ちょっとホッとしたけど。ー気にもじゃもじゃ言われて、ハナシについていきかねる。
な。
<その時>っていつやねん。
それまでウチらは……なにしてりゃいいの?
希望の火種を消さなきゃいんしょ。
具体的には?明日なにする?
鍛錬じゃない?
かわってねー。
変わったよ。有事の際には、先頭に立てってことでしょ。
ー応、ル=グイン様はもう、長を降りたんだから。
んが……そーゆーことか。
…………
急に、責任だけ増えたってこと?
肩書をもらうってのは、そういうことなんだろーね。
なら、いらねーよ……って、わけにもいかないか。
17っていったら、もう立派な大人だもんなあ。
歳だけはね。立派ではないでしょ、俺らはまだ。
なんだかんだ、ちやほやされて育てられた俺たちがさ。もうこれで完成だなんて、あるわけなくない?
<立派な大人>になるには、まだ何段もあるでしょ、階段。
だんだん。
そう、だんだん。
順序逆じゃね?もうちょっと登ってから、肩書くれたほうが難題はないでしょ?
師匠の言葉、覚えてる?
ん?
何事も、急だ、って。みんな急に、なんかやんだって。
ああ……それな。頭にこびりついてるよ。
きっと、心の準備とかって、贅沢な話なんだよ。
ちょっと早めに放り込まれて、状況に自分を合わせていく。
そういうもんなんじゃん? 現実。
……そっかー。
……じゃあ、もっと畳みかけてくるかな?
もっといろいろなこと、急に降ってくるかな?
覚悟はしとこーぜ。
うむ……しとく。
……長かあ……なりたい?
いまは、なんとも。
そーだよなあ。
まだもうちょっと遊んでたい。
……そ~だよなぁ~……
story4 自分一人でも
<――ところは変わり――>
…………
……あ、ネロ。おかえり。今回は長かったわね。
あんたがいないうちに、いくつか仕事しといたわ。乱れてるわね、世の中。野盗って絶滅しないみたい。
まあ、そのおかげで、こっちも討伐の報酬で食べていけるんだけど。
……そうか。
……どしたの?
法王から、依頼を受けた。
どんな?
ある目的のため、戦力を集めているという。
……戦争?
いいや。基本は、レディ・キラーと、アテル・ラナだけで動くそうだ。
レディ・キラー……アテル・ラナ……?
どちらも、表社会では耳にすることのない組織だ。
……それで?
私の方にも、協力を要請されたが――
断った。
そうして?
ヴァイスが戻っておらん。この島の兵たちも、いたずらに動かすことはできん。
あたしがいるじゃん。
……セレナ。
野盗退治とか、小さな仕事ばかりだったのは、自分のペースを取り戻すため。
もう、大丈夫。あたしがやるべきことは、本来もっと――大きいから。
そろそろ、次のステップに進まなきゃ。
……これは私の予感だが。秘密組織だけで動くとはいえ、大きなミッションとなる。
ー度参加すれば――求められる役目は、決して小さくはない。
その覚悟があるというのだな?
……うん。
もう二度と……失わせはしない。
よかろう。セレナ。合流地点へ先行しろ。
私もヴァイスとともに、後から向かう。
ー人で平気よ。この世界で、悪さをしようって奴らの、好きになんかさせないわ!
…………
頼んだぞ。
story5 その頃、別の場所で
――断ち切るっ!
……ふう。これで全部ね。さあ、ギルドに報告に――
――誰っ!?
腕は鈍っていないようだな。
バイパーさん!?どうしてここに!?
というか、やめてくださいよ、殺気を放って人を試すの。
メア。お前のことは、もうガキとは呼べんな。
はあ。そりゃあ、呼ばれたくありませんけど。
ちょびヒゲからの指令だ。
ちょびヒゲって……オズマさん?どうして私に?
手が足りんそうだ。
協力者もたくさんいませんでした?黒の飛行艇には?
レディ・キラーだ。ヤツはそう呼ばれるのを好む。
はあ……覚えておきます。
不安だな。お前の記憶力は。
そんなことはいいんです!私の質問に返答はナシですか!?
無論、協力者たちにも声をかけてある。だが、今回の件では、それでも足りん可能性があると、あいつは判断した。
それだけだ。
じゃあ、行ったはいいけど、手すきになるってこともあるかもしれないんですね。
ない。
だって、予想でしょ?
あいつの予想が外れたところを、俺は見たことがない。
そう……でしたっけ?
あったかもしれんがな。事前に手を回せるだけ回しておくことも、俺は嫌いじゃない。
用心深い奴なのさ。
ふーん……わかりました。どちらにしろ、断る理由もありませんから。
どこへ行けばいいんです?
ドミティア島だ。
……聞いたことないですね?
俺も行くのは初めてだ。多少ワクワクもしている。
はいはい。じゃあ、行きましょうか、バイパーさん?
先に行け。俺はもう少し回るとこがある。
了解しました~。
……メア。俺は、先輩だぞ?
退魔士は、もうありませんよ。
違う。人生の、だ――
……………………
…………
いつぶりかのう。島に戻るんは……
今度は……間に合うじゃろ。
もう二度と……手遅れは――
――御免じゃからのう!
??? |
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目ー杯飛ばせい、セダンよ!