【白猫】劇団ほわいときゃっつ Story
劇団ほわいときゃっつ Story0
劇団ほわいときゃっつ Story6
目次
story1 インザ・グレーワールド
本日もご来場、ありがとうございましたー!
――が、なんだッ!!
……なあ、シャグラン……
愚痴るわけではない。愚痴るわけではないのだが……
……ここ最近の公演……、お客さん、毎回同じじゃないか?
しかも……しかもだ……!
ほとんどが同業者……小劇場の役者仲聞じゃないか……?
男の名はレザール。『元魔王』という、異色の経歴を持った新人劇団員である。
<彼の所属する、『劇団びたーちょこれーと』は、壁にぶつかっていた……
すなわち……『観客動員数1000人』の壁に。>
なあシャグラン……俺はもう、疲れたぞ……
我が足を踏み入れし演劇界は……<灰色の世界>などという生優しいものではなかったな……
――泥沼だ!
もう、わからん!どうすれば売れる!?どうすれば芝居で、食っていけるのか!?
何人もの演劇人が同じ問いを投げたであろう!しかし、答えは出たのか!?
俺がいるのは……!前例の無い、答えの無い沼の底……!
演劇界という名の、深淵なのではないか!?
……なんだと?
まあ、確かに……少しずつ、業界内では俺の顔も利くようになってきた。
客演なども増えてきた。このままいけば……いずれ、役者として大成するかもわからぬが……
そうだな……シャグランの言う通り、板の上に立つのは楽しさもあるさ……
だが、それこそが――
罠ッ!!
その愉悦こそが、演劇界から抜け出ることが出来なくなってしまう、麻薬なのではないかッ!?
俺は……恐ろしい……!
この<灰色の世界>からは……未来永劫逃げられぬということなのか……!?
あ、アホのレザールだ。
キャトラか。聞いてくれ。
聞くわ。魔物追っ払ったらね。
ムゥ。
story2 グランジュの男
で、話ってのは?
俺は演劇をやめる。
えぇ!?
最後まで聞け!
最後まで言え!
来たる、クリスマスにな……初めての、プロデュース公演を打つことになったのた。
ぷろでゅー……?なにソレ?
今まで役者だけをやっていた俺が、企画から何から全てをやる、ということだな。
てことは……、脚本とか演出も!?スゴイじゃないレザール!
……ハァ……
レザールさん、嬉しくないんですか?
俺は……このプロデュース公演を最後に、演劇界から足を洗おうと思うのだ。
ど、どうしてですか!?
終わりがないんだ!
このまま続けていっても、成功するビジョンはない……!
ならば、いっそのこと……!
…………
……そうですか……
話はわかったわ!次がアンタの最後の舞台なのね!
なら、水臭いことはナシよ!アタシたちも、その舞台に協力してあげるわね♪
そうね。レザールさん、私たちにも手伝わせてください♪
感謝する。だが、現在では制作すら俺一人で、スタッフが一人もおらんのだ。
じゃあまずは、どんなひとが必要なの?
制作……だから、そうだな、経営に長けた者がいれば……
おっけーまかせて!心当たりがあるわ♪
ぎにゃー!
きゃ、キャトラ!待って!
……それほど気張らなくても、良いのだがな……
story3 プロモーターズ
お世話になっております。わたくしはこういうものです。
ウォルターを連れてきたわ!経営といったらこの男よね!
これはこれは、ご丁寧にどうも。
頂戴いたします。おお、独創的なお名剌ですね。
ははは、恐縮です。えーと……代表取締役……
あっ!!社長さんなんですか!?
そうかしこまらずに。つい先日、元いた会社を離れ、独立いたしまして。
社長といっても肩書きだけです。お茶くみも自分でやっていますよ。ははははは……
レザール、ウォルターはね、とんでもなくデキる男なのよ。
武芸はー流!しかも、どんな場所・どんな時でもビジネスを忘れない!
とってもモーレツなビジネスマンなんだから!
ハードル上げないで下さいよ、キャトラ様~?
越えちゃえるんでしょウォルタ~?
いやはや、どうも、敵いませんね。はっはっはっはっは……
さてレザール様。わたくしが行いますのは、マクロからミクロまでの、徹底的なコンサルタントでございます。
し、しかし、俺にはあなたのような人を雇う金は……
なければ集めましょう。
え。
トテモ、キョウミブカイデスネエ!ゼヒ、シュッシシマスヨオ!
――満員御礼間違いなし。、大きなブームとなることでしょう。
それはいいでおじゃる!このエリマキも流行らせるでおじゃる!
ご協賛頂けますと、宣伝効果によりこのような利益が。
なるほど……これだけの見返りがあるのなら……!これこそウィンウィンですね♪
集まりました。
<ウォルターの目の前には、お金の山が築かれている!>
おっほっほっほっほ♪さすがよウォルター!アタシの目に狂いはなかったわね!
な……!?で、ですがミスターウォルター、劇場は、抽選で当たったので格安で借りられるのですよ。
ならばクオリティをアップさせるために使いましょう。
あ、わたくしへのギャランティーはお気になさらずに。
他ならぬキャトラ様の頼みですし、それにこちらでも相応のベネフィットを頂戴しておりますので、
アタシのおかげ!エッヘンってなもんよ!
では、次のソリューションに移りましょう。
なに?
わたくし、演劇にはさほど明るいわけではありませんが、あらゆるプロジェクトに通底する勝ちへの王道は存じております。
まずは外堀を埋めるべし。優秀なスタッフを揃えましょう。
(これが……!ビジネスの考え方か……!)
(すぐに内容へと入りたがる、小劇場界とは大違いだな……!)
story4 オケ鉄!
お連れしました。
は、早い……!
こんにちは、みんな。
あら、オレリアじゃない。帝国でのお仕事はいいの?
オレリアさんは、軍楽隊の楽士、でしたよね。
心配はいらないわ。丁度、休暇の最中だから。
あらあら、それなら、休んでても……
ううん、このチューバも、何日も休ませてしまうと音色が鈍ってしまうから……
依頼されてよかったわ。公演本番の音楽は任せといて。張り切って演奏するわね♪
馴染みの仲問たちにも声をかけたから、バンドとしての恰好は十分つくはずよ。
オレリアの仲間といえば……
……問題なし!性格はちょっとアレでも、演奏は確かな連中だわ!
生バンドか……!これは盛り上がるな……!
む、シャグラン……、いや、まあ、な……
なにをもじゃもじゃしてるのよ!さあウォルター!これで終わりじゃないわよね?
もちろんですとも。お入りください。
ルーントレインに乗ってやって参りました!クレア・スチーブンソンです!
クレアさんは……なにを?
はい、私は、資材の搬入搬出をお手伝いいたします!
なるほど!アンタの出し入れ自在のルーントレイン、便利よね♪
ええ♪ルーントレインは、貨物列車としても使えますし♪
大道具の運搬に、劇場へのお客様の送迎!なんでもお申し付けください!
献身的だわねぇ……
いえいえ!私はただ、ルーントレインの素晴らしさをたくさんの方に知って欲しいだけですから!
スチーブトレイン社には、いつもお世話になっております。
ありがとうございます!では、ご利用の際はいつでもお呼びくださいっ!
確かに……シャグランがいるとはいえ、材の搬入は毎度悩みのタネだ。
先んじてその問題を解決するとは……やはりデキるな、ミスターウォルター。
恐縮です。さて次は、出演者を募りましょう。
いや、それは、俺の知り合いが……
…………
どうしたのよレザール?
……ここは、あなたにキャスティングも任せてみよう。
ありがとうございます。
レザール……?
これは賭けにも近いが……まあ、どっちもどっちだ……!
どの道、俺の知り合いの役者は……いい奴らではあるのだが……
英断です、レザール様。そう、役者の条件の第ーは、演技力ではありません……
何枚チケットがさばけるか!?これなのです……!
……ま、実力も、同じくらい大事ですけどね。
ご理解、感謝する。
では参りましょう!本番日は決まっております!ー分足りとも無駄にはできません。
story クリスマスガールズ
レザール様。ーつ、確認したいことが。
ああ、なんだろうか?
今回の公演はレザール様のプロデュース公演……脚本と演出は、どうされるおつもりで?
俺がやる気だが。といっても、自分の知っている作品をモチーフに、脚色する程度になるだろうが。
なるほど。
だから、キャスティング先行で構わない。集まったメンバーを見て、ハマる演目を探すさ。
それに……演技力も、大事だと思ってはいるか……
それよりも重要なもの……最終的に人の心を震わせるのは――
――役者の<熱量>だからな。
その言葉がお聞きしたかった。
なっ――!?
はじめまして、コヨミです!お芝居は初めてですが、せいいっぱいがんばります!
キャンキャン!
剣誓騎士団副長、カレン・カラントです。ウォルター殿に呼ばれたときは何かと思いましたが……
まさか……演劇とは……
私も驚いているわ……てっきり、バイオリンの演奏を依頼されるのかと思ったんだけど……
でも……演技、興味があるわ……!
(演技が上手になれば、きっと私のクセも……!)
…………
みなさま。座長は喜びに声も出ないご様子。
本日は、これにて。顔合わせの日程は、追ってご連絡いたします。
はい!これからお稽古、よろしくお願いします!
ウォルター殿……やはり私は……
ご覧ください、レザール座長を。
『この座組み、いける……!』その確信が、にじみ出ているではありませんか。
……ここまで来て迷うのは、甘え、か……
ふふふ……♪だまっちゃって、カワイイボウヤ♪またね♪
いかがですか?レザール様?
……まさしく、言葉もない……三人とも、小劇場の役者たちよりも――
――遥かにッ!遥かに、華があるッ!!!
しかし、もうー枚足りません。
なっ……!?正気かウォルター!?十分キャパは埋まるだろう!?
――百個の武器を、百人に売るのは三流の商いです。
百個の武器を二百人に!それが、ビジネスです!
なっ……!!!
(これが……!これこそが、ビジネスだと言うのか……!
利益の追求が、演劇とは次元が違う……!
これが……『食い扶持を稼ぐ』ということなのか……!?)
story 西路地の物語
<『もうー枚足りない』――そう言ったウォルターであったが――
――そこから、難航した。>
……このオーディションは、収穫がありませんでしたね。
そうだな……
<――シャグランと共の夜道。レザールはふと漏らした……>
……ウォルターに頼り過ぎていたな。
最後のー枚……己で探してみるとするか……
どの道……公演の成功など、期待してはいないが……
ここで出来るだけ稼がねば、次の足掛かりにはならんからな。
――やめてください!
む?
おっとっと?なんだよ?オレっちは、家まで送ってやるって親切で言ってんだぜ?
必要ありません。
女の子一人で、夜道は危険だぜ?それに、寒いし……なぁ?
!!
おい……そりゃねーんじゃねーの?あっためてやろうとしてるってのによお~?
……はぁ……、言ってもわっかんないか……
あぁ?
じゃあ、ゴチンといきますから。悪く思わないでくださいね?
あ~~~?
ハハハハハッ!おもしれえ!その細腕で、ボクをぶって~ン♪
――後悔するなよ。この細腕は……
――!!
てめえを彼方にぶっ飛ばす腕だぁッ!
!?
<名も無いチンピラは星になった。
――あとに頬を押さえて家に帰り、しっかり反省して、実家の酒場を継ぐ決心をしたのはまた別のお話である。>
まったくもう……
シャグラン、お前もそう思うか?
そうだな……
――そこの君!
はぁ?またぁ?
俺の舞台で、スターにならないかい!?
<その後、誤解したティナにぶっ飛ばされ、星になったレザールだったが……
シャグランが迎えに行き、戻ってきてから、何事もなかったかのようにティナを勧誘したのだった。>
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