【白猫】劇団ほわいときゃっつ Story5
劇団ほわいときゃっつ Story5
劇団ほわいときゃっつ Story6
ジーニーが悪い魔法使いと呼ばれるようになり、何年も経ちました。
ー方、デボラは――
みなの者、お聞さなさい!
かの悪しさ魔法使いは、強大なる力を秘めています!
うかつに手を出してはなりません!島中にお触れを出すのです!勇気ある者はいないかと!?『善なる魔法使い』として、島を統べる立場になっていました。
……ジーニー…………ごめんね……
もう少しだけ、待ってて……!
そして、その頃。ある村の、外れでは――
b……まったく、どいつもこいつもシケた面しやがって!世界の終りじゃあるまいし!
彼女の名はベルマ。天涯孤独の少女。
b病や災害を全部魔法使いのせいにするより前にさあ、やれることやったらいいだろ!?
春が来ないって嘆いてないで、ニングンならもっと頭を使うべきたと思うけどねえ!
何かと口が悪い彼女には、友達もいませんでした。
ですが、構わないと思っていました。みんなで暗くなるなんて、彼女は御免だったのです。
b……フン!どうにもつまらないね!
ベルマが石を蹴りながらぶらぶらと森へ入って行くとー
bん!?
がうるるるる!
ゲエーツヘッヘッヘ!
bライオンが、魔物に……まあ、よくあることね。
だれか、たすけてえー!
b!?言葉を、しゃべった……!?
あなた、わかるの!?
bわ、わかるよ……
すごい!あのふたり以外、いないと思ってたよ!
bそんなことより、目の前!
あっ、そうだ!あなた、たすけてえ!
bしょうがないなあ……見ないフリも出来ないじゃんさあ……
ゲッヘッヘ!ウガー!
やーらーれーたー。
あっ、また来た!
bとう。
まーたーやーらーれーたー。
bふー。
あれつ、まだいるよ!?
bしつこいなあもう!
もーうーだーめーだー。
…………
…………
ぐわああー!
ありがとうございます!!
bいいよ。ケガはない?
はい!……あ、そうだった……?
知らない人としゃべっちや、ダメだったのに……
bえ?どうしたの?
だって……約束したから。
……約束……?
その子はあのライオンでした。
ジー二ーとデボラと話した、言葉を失っていない、あの……
はってんを止める、って、デボラは言ってたよ。
にんげんは、悪い道を進んじゃっているから、って。
悪い道を……
あっドダメなのに!
でも……
あたしが悪者に見える?
……見えない。
bなら、ね?
もっと詳しく聞かせてよ。
聞いてどうするの?ベルマは何がしたいの?
bそりゃ、あの悪しき魔法使いをぶっ潰してやりたいのさ。
ダメだよー!ダメダメダメー!
bどうして?
ジー二ーはデボラとともだちなのー!
bへえ。あの『善なる魔法使い』名前が出てくるとはね。
あの二人はグル、ってことなのかい?
し、知らないよ!
b隠すとタメにならないよ?
な、なにをするの……?
b何もしないさ。ただ、話したくなるようになってもらうけどね。
ヤダー!痛いのはヤだからー!
b逃がさないよ!
ライオンは森の奥深くへ走り去っていきます。
ベルマから逃げ切ることが出来るでしょうか?
わー!逃げろー!……いたっ!
……もー!もぐらさんー、穴掘ったら埋めてー!
bほら、追いついたよ。さあ、話して――
あんまいじめないでやんなよ。
bえ!?
悪いライオンじゃないんだし。
b木が……しゃべった?
あ、いまのナシ。
bナシって、どういうこと!?
いやさあ……俺たち、しゃべってたのよ、元々は。
ベルマも驚きましたが、植物たちも驚いたのです。
ジー二ー以外に、話せる人間がいるとは思っていなかったのですから。
木は、語りました。ずっと昔、全ての生き物は、語り合っていたということ……
でもいつからか、木は木として、黙るようになっていったということを。
b……そうだったんだ……でも、ならどうして、あたしはしゃべれるのかな?
イイヤツだからじゃん?
bそんなのでいいの?
そんなもんだよ案外。まあ、しゃべれない奴が、みんなヤな奴ってことでもないけど。
b……ありがとう、カシの木さん。ねえ、今度はあなたが教えて?
なにを……?
b怖くはないから。あなたがしゃべった、デボラとジー二ーの話を。
……うん。わかった。あのね、最初はジーニーとお話しするだけだったの。
でも、デボラもお話しできるようになったんだよ。
bうんうん。
だけどそれからすぐに……兵隊さんたちに追われて……
ジーニーは、自分のことを『悪い魔法使い』って、言うようになっちゃったの……
……だけど、知ってるんだ!デボラも知ってるんだよ!
ジーニーは悪くないよ!悪者のフリをして、デボラをかばったんだ!
本当なんだよ!
b……わかったよ。
……じゃあ……
b行ってみるしかないね。デボラのところに。
それなら、ついていくよ!
b心配はいらないわよ?
心配なのはジーニーだよ!ずっとみんなから嫌われてて……
このまんまじゃ、まいっちゃうよ!
b……そうね。
こうして、一人とー匹は、『善なる魔法使い』デボラに会う旅へと出かけたのです。
一人とー匹の旅は順調でした。なにせ、ペルマの腕っぷしが強かったものですから。
bたーっ!
ふーっ、片付いたね。
すごいすごーい!
b応援だけじゃなくてあんたも戦いなよ。
……ううん、やんないんだよ。
b怖いの?
戦ったら、なにかが変わっちゃう気がするから……
ぜったいに、戦わないの。かまないし、ひっかかないよ。
bそういうことなら、いいよ。
一人とー匹は、一緒にいろんなところへ行きました。
砂漠の町や海の町……いろんなところへ行きました。
そして、ついに――
――デボラは成長していました。……それはひとえに、責任感から。
人々を抑えるため、自分がしっかりとした統治者でなくてはならない、と努力をし続けたのです。
永遠の友人ージーニーのために。
ベルマ、と言いましたね。おまえの目的は、なんですか?
お触れを見ました。
『悪しき魔法使いを討伐せし者に、望みの褒美を取らせる』という。
このわたくしですら敵わない相手なのです。
おまえのような子供に、何が出来るというのです?
出来るのです。……さあ、入ってきな。
デボラ……
!!あなたは……!
あのときの……!
う……
ライオンの姿を見たとき、こらえてきたものが噴き出しました。
うううう……!
ひさしぶりだね!げんきだった?
……泣かないで?ね?
……ええ。元気だったわよ……!
……善なる魔法使い様。
……よいでしょう。
あなたには、話すとしましょう、
わたくしの計画の、全てを――
善なる魔法使いの想いを受け止め、ベルマとライオンは、再び旅へ出ました。
その、目的地は――
ひえええっ!あ、悪しき魔法使いだあ~っ!
全ての生命よ……時を止めておしまいなさい……
この世界にもはや、未来など不要!
bそんなことはないね!
……なんだ?貴様は?
bあたしはベルマってんだ。悪しき魔法使い!あんたを!
この細腕でぶっ飛ばしてやる!
アハハハハ!そんなことが出来ると思っているのかい!?
私は災いを運ぶ風ー悪しき魔法使いなんだよ!
bふん!そんな、おばあちゃんのおさがりなんかを着て、スゴむんじゃないよ!
!?
b生き物には春が必要なんだ……!あの日差しが、暖かさが!
それを、返してもらう!
小娘が、ー丁前に……!だったら見せてもらおうじゃないか!
さあ、これが!悪しき魔法使いたる所以よ!
……やりおるな……!だが、この程度では……!
くつ、あいつを倒すことは出来ないの!?
我は、全てを凍てつかせる、悪しさ魔法使い……!
我を滅ぼすことが出来るものは、ただーつ!貴様はそれを知るまい!
ひいい!やっぱり、あいつには勝てないんだあ~!
あきらめるんたねえ!
その場にいた人々は、絶望に嘆きました。
ただ一人、ベルマを除いて、
全てを凍てつかせる……!?
わかった!!
何かだ、小娘え!?
bいまよ!
がるるるるー!
ベルマの合図で、ライオンがうしろからとびかかりました。
そして、悪しさ魔法使いをその豊かな毛皮で、包み込んだのです――
ああああああああ!この、ぬくもりはああああっ!
だからあんたは、春を封じていたのね。ぬくもりが。自分にとって弱点だから……
離せ、離せえっ!
がるるるる!がるう!
(……おまたせ……)
(もう、いいからね……)
(……ありがとう……)
がる!?
暴れ回る悪しき魔法使い、ですがライオンは、しっかりとしがみついて、決して離しません。
うわあああああ!体が、溶けるううう……!
……がるう……
耳をつんざく絶叫を響かせ、悪しき魔法使いは、溶けて流れました。
b……これで。春が来るわ。
悪しき魔法使いは、これで完全に滅んだのよ!
――お待たせ。
……いつまで待たせるのよ!?
――ですが、本当は。
悪しき魔法使いは、本当は――
――しょうがないでしょデボラ!あなただって、いつまでかかってるのよ!
それこそしょうがないの!あたし、とっても偉くなっちゃったんだから!
あなたが討ち取られないようにするの、ものすっごく大変だったんだから!
ありがと!
どういたしまして!
……うふふ。
……あはは。
あはははは……♪
悪しき魔法使いは、消えたわけではなかったのです。
ただ、戻ったのでした。とっても高飛車な天才魔法使いの、友達に。
――弱点がぬくもりだなんて、よくもまあ!
あなたが島を凍てつかせるから、それしかなかったのよ!
流れ続ける時の中で。二人の魔法使いは、『猶予』を作ったのです。
そして、希望を見つけました。
過去に戻ることは、決して出来はしない……
だけれど、たとえほんの少しでも、受け継がれていくものはある。
それならばー悪くはないかもしれない。
それに、それが自分たちに出来る、最大限のことだから。
……ふ~っ。疲れたあ~。
おかえりなさい。
ねえ、あたしさあ……あんたの後継者みたいになりそうなんだけど?
そうね。あなたも魔力は十分。次の――
本当の、『善なる魔法使い』おやりなさいな。
げっ!?聞いてないんだけど!?
だって、そういうことでしょ?悪しき魔法使いを倒した英雄さん?
bうわ~……はめられたあ……
そうふてくされないで。私たちも協力するから。
生き物の声が聞こえるあなたなら……きっと大丈夫。
心強い相棒もいることだしね?
ジーニー!デボラー!うわああああ~~~ん!
あらあら、泣いてるの?
やっと、やっとみんな、一緒になったよう……!
よかったよう……!うわああああ~~ん……
よしよし。もう消えないから、ね?
うん……!もう、どこにもいかないで……!
ちょっと!あんたは、あたしの相棒なんじゃないの!?
うん!そうだよ!
みんながみんなの、かけがえのないともだちなんだよ!
がる~~~~~~♪
こうして島には再び平和が訪れました。
善なる魔法使いベルマも、その後継者に、同じ想いを託し……
その島は末永く、平和であったということです。
めでたし、めでたし――
本日は、ご来場ー
ありがとうございましたー!
ありがとうございましたー!
ありがとうございましたー!
カレン……
総長殿、来てくれたんだな。どうもありがとう。
いや、凄かったんだけど……堂々としてた、っていうか……
最初は、どうなるかと思ったけどさ……
いやホント、凄かった。
総長殿に褒められるとこそばゆいものがあるな。
で、やってみてどうだった?
ああ……
芝居の道もー甘くはないな――!
コヨミ~!がんばったね~!
コリンねーね!
コヨミはお芝居が上手いのだ!ルーシーは感心したのだ!
……おもし……ろ………か……
ルーちゃんにりーゼねーねも!みんな、ありがとー!
おう、ティナ!観たぜ~!
ふふ♪とっても良かったわよ♪
ありがとうございます♪
ティ~~~ヌウワちゃんが、イ~~~ツチバン、キュートだったわあ~ん♪
あ、ありがとうございます、ヴィンセントさん、近いです……
でも……お父さんとお母さんにも、観てもらいたかったな……
あ、大丈夫ですよ♪<ルーンレコーダー>で、ばっちり記録してますから♪
そうなんですか!?やったあ♪
ー枚、三万ゴールドです♪
げ、高えな……!
思い出はプライスレスだぜブラッド!?十枚買ったあ!
ありがとうございました~♪
ちょっとチャンレー、ガチ目に感動したんだけど!涙で前が見えない的な?
いやあ、お嬢ちゃん、お芝居上手だねえ!
おじさんとっても面白かったよお!
ありがとね、二人とも♪
――ちょっと失礼。びっくりしましたよ、レーラ、てっきり演奏するものと思ってましたから。
あ、ジョバンニさん!
演劇もいいものですね♪
ありがとうございます♪……ふふ。ジョバンニさんには、まだ本番が残ってますよ♪
え?
ご来場のみなさま。
本日は誠にありがとうございます。
これよりスペシャルステージを開演いたします。
お時問がございましたら、是非ともご覧くださいませ。
スペシャルステージ……?
みんないいわね?さん、はいっ――
うわあ……♪素敵な演奏だね、主人公……♪
しかもね。これも、これだけじゃないのよ!
生バンドの名演奏が、何曲かして終わると――
その男は突然、舞台に登場した!
HEYHEYHEY!まだ夜は終わっちゃいねえだろお~!?
最後まで聴いてきなあ!カモン!
フィーチャリング!クレア・スチーブンソン!
YEAH!
メリークリスマスインザHELL!スペシャルライブの、幕開けだぜえっ!
曲調がー転!生バンドの面々も、みんな頭を振っている!
私たちの超絶技巧をご覧に入れるわ!さあみんな!
いけいけー!GOGOGOGO~!
HELL!ぶっ飛ばす
カモーン!シェイクイットアウト、ベイベー!
クレアさん、歌上手だね……
……ああ。わかっているさ、シャグランよ……!
――では!公演の大成功を祝して!
お疲れ様でしたー!
お疲れ様でしたー!
お疲れ様でしたー!
お疲れ様でしたー!
ものすごい人数の打ち上げが始まった!
まだまだ大勢がいる!酒場をー軒まるごと貸し切りだ!
さてみなさま!今宵は無礼講で、朝まで楽しみましょう!
お~♪
……あれ、レザールさんは……?
座長には最後の仕事があるのよ。
お互いに褒めたたえあい、全員が楽しそうに笑う。
泣いている者もいる。みんなと離れたくない、と
肩を組んで笑い、泣き……夜が、ふけた頃ー
あっ!座長だー!
遅いわよ、立役者!
ヒューヒュー!
これより!打ち上げ名物、大入り袋を配る!
呼ばれた者は、こちらへ来てくれ!オレリア!
はーい!
素晴らしい演奏に鳥肌が立った!また、バンドメンバーをまとめてくれて、ありがとう!
どういたしまして♪私も、いい経験が出来たわ♪
クレア!
はいっ!
超便利だな、ルーントレイン!美声にも聞き惚れたぞ!ありがとう!
こちらこそ、みなさんのお役に立てた上に、ステージにまで出させて頂いて、感謝感謝ですっ!
コヨミ!
はい!
辛い役だったかもしれないが、君しか出来ない役だった!感動したぞ!ありがとう!
えヘヘ……!がんばりました!いろんなこと考えたけど、コヨミは元気だよ!
キュウーン♪
ティナ!
はい!
コヨミの面倒を見つつ、ちゃんと役割をこなし、そして新たな自分を見つけたな!ありがとう!
私に出来ることは少なかったかもしれないけど…………うん!手応えはありました♪
カレン!
はい。
厳しく当たってすまなかった!ー時はどうなるかと思ったが、君の芝居が観客の心を揺り動かしたぞ!ありがとう!
ずっと足を引っ張っていると思っておりましたが……
その言葉を頂けて、やって良かったと思いました。ありがとうございます。
レーラ!
はーい!
みんなを引っ張ってくれて、本当にありかたかったぞ!そして芝居には、俺もしびれた!ありがとう!
お役に立てて嬉しかったわ。また、呼んでね♪
ウォルター!
はい。
未熟な俺を立てて、裏方をほとんどこなしてくれた!君が最大の功労者だ!ありがとう!
いえいえ。これもビジネスですよ♪
……そわそわ……
――以上。
ぎにゃー!アタシもがんばったでしょー!
「ウソだ!これから、その他のメンバーにも、一人ずつ渡していくぞ!
そしてレザールは、全メンバーに大入り袋を渡しおえた。
ひとりを除いて。
」ラスト、レザール!
座長ー!
わーい!よっ、オオトリ!
レザール座長!
待ってました!
「ぬう!?
」実は、アンタにはアタシから大入り袋を用意してたけど――
『ある言葉』を聞くまでは!渡すわけにはいかないわ!
「ある言葉だと……?
」レザール!アンタこれから、どうするの!?
あれだけ大勢のお客さんを楽しませておいて、楽しませ逃げ!?
¥キャトラ、意味がわかんないよ……
」さあ、答えなさい!アンタの決心は、本当にもう揺るがないの!?
……!
「……シャグラン……!……そうだな……!
ごくり……!
「みなには大変感謝している、が、これ以上、クドクド言うのはよそう。ー言だけだ。
この冥界の腿風、レザールは――!
演劇を辞めるのをやめる!
だってやっば楽しいんだもん!
うふふふふ……!それでいいのよ!
なんだって、簡単にやめていいもんじゃないわ♪
……レザール。お疲れ様♪
「みんな……本当に……!
本当に、ありがとうございました――!
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