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【白猫】エンド・リクエスト ~死神の報酬~ Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
死神へのリクエスト――それは残された最後の希望。
2016/01/25

目次


Story1 仕事

Story2 依頼者

Story3 対話

Story4 憤り

Story5 繰り返し

最終話 報酬


主な登場人物


多くの魂を狩り続ける死神。常に新たな戦場を求めている。

story1 仕事


「あ、あの! あなた冒険家さんですよね!

 ギルドから出てきたの見たんです!」



「……チッ……俺になんの用だ。」


「依頼を……僕の依頼を、受けてくれませんか?

 ギルドに頼みにきたんですけど、誰も話を聞いてくれなくて……」

「聞いてくれない……?」

「はい……だから、こうして外で直接お願いしてるんです。」

「……なるほどな。いいだろう。話を聞いてやる。」


「あ、ありがとうございます! 僕はラシフといいます!」

「お前の名前など、どうでもいい。それより依頼の内容を聞かせろ。」


「あ、はい……えっと、

 行方不明になった僕の恋人を、探してほしいんです。」

「恋人……ね。あてはあるのか?」

「……はい。手がかりはあるんです。」

「ならどうして自分で探さない?」

「ダメなんです……僕には、何も話をしてくれないから……

 僕は彼女の故郷の村で、一緒に暮らしていました。

 でも村の人たちは、新参者の僕を嫌っていて……」


「……つまり、俺にはその村で、情報収集をしてほしいという事か。」

「はい! 村の人も、僕が相手でなければ、話してくれるかもしれないから!」


「……ふん。わかった、いいだろう。この依頼、引き受けよう。」

「ありがとうございます!」


「さぁ、俺をその村へ連れていけ。」



初級:みちゆき

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story2 依頼者



「おい、村までは、まだかかるのか?」

「すみません。もう少しかかります。」

「……ふん。なら、村に着くまでに、詳しい話を聞かせろ。」

「は、はい……」


「僕とイム……彼女は、結婚を前提に付き合っていました。」

「……どんな女だ?」

「彼女は美人で、気だてもよくて……よそ者だった僕にも優しかった。」

「……ほう。そうなのか。」

「ええ!……でもそんな彼女が、ある日、突然姿を消したんです。」


「何か事件に巻き込まれたのか?」

「……わかりません。」


「ただ、仕事を終えて家に帰ると、どこにも姿がなかったんです……

 すぐに村中を探しました。でも……どこにも居なくて……」

「居なくなった理由は、わからないのか?」

「……はい……」

「……そうか。」


「……わかっていることもあるんです。」

「ほう……言ってみろ。」

「村の人は彼女の行方について、何かを知っているということです。」

「なぜそう思う?」

「イムがいなくなって、僕は彼女の両親に行方を尋ねたんです。

 それだけじゃない……村の人たちにも聞いて回りました。

 だけど、誰も答えてくれない……それでも態度でわかります。

 みんな僕に何かを隠している。」


「……その何かを、聞き出せばいいのだな。」

「はい。村と関係ないあなたなら、何か聞けるかもしれないから……」



「どうか、よろしくお願いします……」

「…………ふん。」


中級:愛しい者

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story3 対話


「……ここがそうか。なるほどな……」


「おい、あんた……」


「……なんだ?」

「なにしに来たか知らんが、早く、この村から出て行ってくれ。」

「今来たところで、いきなり出ていけとはな。」

「ワシだって言いたくはないがの……こっちも事情があってな。」

「依頼が済めば、すぐにでも居なくなる。」

「……依頼? こんな村にか?」

「そうだ。イムという女について、知りたくてな。」


「っ!?」


「ほう……知っているか。」

「いや、ワシは知らん! なにも知らん!」

「なら、そっちのお前はどうだ?」

「ひっ!」


「どう見てもお前たちの態度は、知らないって類いのものじゃない。」

「…………本当に知らんのだ……たのむ……関わらんでくれ……」

「知りたい事が聞ければ、俺の要件も終わる。手間をかけさせるな。」

「「………………」」



「……その者らに聞いても知らぬよ。」


「なら、お前からは聞けるのか?」

「娘の話だからの……だが、関わらねば良かったと後悔するぞ。」

「余計な心配だ。」


「……聞いたら帰るんじゃな?」

「要件が済めばな。

 さあ、聞かせてもらおうか。ここで何があったのかをな。」


「……ひとりの旅の男が、この村の女を愛した……言葉にすれば、それだけの事じゃ。」

「……ふん。……続けろ。」


「ああ、話してやる……そして早く、ここから去るがいいわ……」



上級:沈黙の理由

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story4 憤り


「……アナザーさん、彼女のことは、聞けましたか?」


「いいや。お前の望む話は聞けなかった。」

「そうですか……あなたでもダメだなんて……」

「村の人間は誰も、お前の恋人など知らんと言っていた。」


「……知らない?

 そんなバカなことはないですよ! 知らないわけないんだ!

 きっと僕たちを引き離して、別れさせるつもりなんです!

 ……陰険なヤツらめ! アイツらが考えそうなことですよ!」


「……ふん。だが収穫はあった。ひとつ、気になる場所がある。」

「っ!? ど、どこですか!」

「村の外れに、古い遺跡があるらしいな?」

「あ……はい。神聖な場所らしくて、誰も近づかないところです。

 ……でも、まさか……」



「どうした? 確認に行かないのか?」

「……いえ、でも……あの場所は……」


「さっきまでの意気込みはどうした?

 まさか暗くなったから、怖いなどと言い出すなよ?」

「も、もちろんです。行きましょう!」



絶級:忌避

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story5 繰り返し


「…………ふぅ……ふぅ……」


「どうした? 息を切らす距離でもないだろう?」

「そうなんですけど……なぜかここだと、体が重くて……」

「チッ……しっかりしろ。」

「は、はい……」


 ***


「……本当に来てしまったのか……」

「これが俺の目的だからな。」


「お義父さん……それに村のみんなも……

 やっぱり、そうなんだ……みんなでイムを隠してたんだ!」

「……ラシフ…………」


「イム! 迎えにきたよ!

 さあ、出て来て、僕と帰ろう!」

「………………」


「…………イム?」

「………………」

「……お義父さん?

 ……イムは……どこなんですか?」

「ここに居る……」


「ど、どこですか?!」

「……そこだ。」


 ゆっくりと指をさす場所には、一本のナイフと、ふたつの干涸びた死体があった。


「…………え……? 何もないじゃないですか?」

「……お前は…………まだ受け入れられないのか……」


「僕をからかってるんなら、またみんなに聞かなきゃいけないじゃないですか……」


「たくさん、たくさん、聞かなきゃ!」

「……そうか、また繰り返すのか……また……繰り返されるのか……」



「……チッ。やはりこうなるか……」



破滅級:のぞむ答え

最終話 報酬



「アナザーさん、お願いします。彼女を……彼女を見つけて下さい!

 僕も、またみんなに話を聞きます。話してくれるまで何度でも……

 絶対に知ってるんですから!」



「い、イヤだ……もう話はいやだぁ!」

「知らない! 私は何も知らないぃ!」

「……ラシフ…………お前は……」



「……そこまでにしておけ。」

「でも! イムのことを聞かなきゃ! 探さなきゃ!」


「そのためにまた『話をする』のか?

 お前が満足する答えを聞くまで、順番にひとりひとり、殺して。」


「…………ッ!?」


「どうした?

 ヤツら死者の魂がすり減るほど、もう何度も同じ『話』を繰り返しているだろ。」

「何を……何を言ってるんですか、アナザーさん……それより彼女を探さないと……」

「お前の彼女なら、探す必要はない。」

「どうして……ああ、わかりました。アナタも僕の邪魔をするんだ……」

「違う。彼女はずっと……最初から、お前の後ろにいる。」

「……え?」


「お前の依頼は、『彼女を探してほしい』だったな?

 この鎌の刃に映る姿を見ろ……」


 アナザーが手にした鎌をかざすと、刃の中にラシフの顔が写り込む。

 ……そして、その後ろに……


「……イ……ム?」


 悲しみに顔を歪ませた、女性の顔が映り込んでいた。



「見えたな? なら、お前の依頼はこれで果たした。

 次はお前が手にかけた、村のヤツらの願いの番だ。」


「……コイツらが、何だっていうんですか。」

「ヤツらの願いはな……『お前を消し、解放されたい』だ。」


「消すって……まさか、僕の命を奪うっていうんですか?!」

「命を奪う? 馬鹿を言え。お前は俺と会う前から死んでいる。」

「え……死んでるって……僕が?」

「お前は自分が、生きてるつもりだったろうがな。」

「……なに……言ってるんですか。そんなこと、あるわけが――」


「彼女を閉じ込め、独りよがりの想いを押し付け続けたうえ……

 逃げ出した彼女をかくまった両親や村人たちの命を奪った。

 彼女は、おのれを責めたんだ。みんなが死んだのは私のせいだと。

 ……自分の手で人を殺めるほどな。」



「そ、そんな……僕たちは愛し合ってるんだ……

 そんなことで僕を傷つけるはず……」


「お前は愛されてなどいない。思いだせ。彼女に拒絶された痛みを……

 お前が『忘れた』事にした真実を。」


「しん……じつ……?

 ち、ちがう! そんな……ちがう!」

「お前は彼女の拒絶も、自分の死も、全て『忘れて』無かったことにしたいんだろうが……無駄だ。

 お前……本当は全部……覚えているだろ?」


「し、知らない。そんなの知らない! 僕はイムと……イムと……」

私さえ居なければ、よかったのに……ごめんね

「――っ!!」


「お前を剌した、彼女の言葉だ。

 ……二度目だ。もう、忘れるなよ。」


「……あぁ……あぁ! あぁァアアァアーッ!!」

「……彼女の願いはな、『この悲劇を終わらせて』だ。」



「イムぅ! イムゥウー!!

 どうしてええ!! なんで僕を!!」


「さあ、そろそろ消えるがいい。」



 ***


「これでお前たちを縛りつけていた、恨みも怨念も消えたな。」

「はい……ようやく楽になれる……ありがとう……ありが……とう……」

「では、俺の力になれ。約束の報酬、いただくぞ。」


 ――


「…………ふん。終わったな――ん?」




「……吸収したのね。」

「……やはりお前か……なんの用だ?」


「私はギルドの依頼よ。村の浄化をするっていうね。

 でも、出番はないみたい。」


「なら、もう用はあるまい。さっさと去れ。」

「そうね。でも、ひとつ聞かせて。

 どうして、あんな面倒なやり方を?」

「……どういう意味だ?」

「魂を狩るだけなら、もっと簡単に全てを狩れたはずでしょ。」

「…………」


「……あなた、以前に会った時より、なんだか人間臭くなったみたい。何かあったの?」

「答える義務はないな。」

「それは……そうね。だけど、そっちのが悪くないと思うわよ。」

「……チッ。ほっておけ……」




「……死神、アナザーか……

 もう警戒する必要……ないかもね。」


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