【白猫】オーバードライブ紅蓮2 Story2
オーバードライブ紅蓮2 Story2
story 笑う男
……ただのー般人だ。なんらかの術で操られて――
<どこからか獣の絶叫が鳴り響いた――>
っ!?この声……!
この声、あの日の……
ウェルナー?
やっとアタリを引けたよ、ファビオラ……
ちょっと、いきなりどうしたの!?って、あぶない!!
邪魔をするな。せっかくの再会なんだから。
……ずっと会いたかった。お前は、すぐ近くにいるんだな。
なに、これ、地面に光――!?
なに、ここ……
…………
あれ?どこだ……ここ?
俺、なにしてたんだ?
(あたしたちと戦ってた記憶がない?)
おい、どうなってんだ?
(ウェルナーにやられたはずの怪我もなくなってる?……どういうこと?)
……声が消えた。
ちょっとどこ行くの!?
……声の主に用がある。
状況把握とー般人の保護が最優先でしょ?どう考えても異常事態なんだから。
(扱いづらいとは聞いてたけど……)
ウェルナー、待って。ここは合理的に動くべきじゃない?
…………
あなたが探してるあの声の主だけど。もしかしたら、あたしの知り合いかもしれない。
……どういうことだ?
……知り合いにいるのよ。禁忌絡みの事件で、ちょっと大変なことになった人が。
で、彼もこの島に来てるの。心配だから合流したいんだけど?
……そいつは赤いヴァリアントなのか?
あなた、レクトの知り合いなの?
……向こうが覚えてるかは知らない。
……だが、会えばわかる。
どうして笑ってるの?
……俺が笑ってる?そうか……そうだな。ずっと会いたいと思ってたからだよ。
……さあ、行こう、リネア・シルヴェストリ。
ちょっと待ってくれよ!これ、どういうことなんだよ!!
島になにが起さたんだよ!!
……あたしのほうが知りたいわよ。
story 小さなヒビ
この島、どうしちゃったんだろう?
どうせ禁忌のせいだろ。ウェルナーとリネアって奴と合流して調べるしかねーな。
心配すんな、レクト。あたしとウェルナーで解決してやるからさ。
(子供に気を使われるなんて……もっとしっかりしないとな)
きゃああああ!!
セーラ、さがって。――変身。
大事な話の腰を折るなー!
(不思議だ。緊張も怖さも……消えて……いく)
おお、あいつら逃げてくぞ!
<敵が逃げる――――どうして?まだ戦えるのに――>
(――僕はまだ戦えるのに!)
ジャアアアアアアア!!
レクト、待てって!
<ほら、僕はこんなにも強い――
――コワセ――
――コロセ――
もう終わり――?僕はこんなにも強いのに――敵がいない――
ああ、敵なら目の前に――>
(違う!違う!なんだ、今の!?僕はセーラを……)
<――コロセ――――コワセ――>
(なんだ、この声……なんなんだよ!!)
おい、レクト、どうしたんだ?具合でも悪いのか?
<ほら、敵なら目の前に――>
(違う、違う、違う!!どうして、変身が解けないんだ!!)
<――コロセ――>
ジャアアアアアアアアア!!
おい、レクト!待てよ!!
story 第拾参術式
この島がおかしくなった理由はわからないわけね?
当然だろ!
そのうえ、なにも覚えてないと?
昼過ぎくらいからの記憶がないな……
で、怪我もしてないのね?
ああ。
同じようなこと、ここ最近、あったりする?
…………
あるようあるような、ないような。
時々、あるな。ただ、なにも覚えてないってわけじゃあなくて……
言われてみれば、変なんだよな。今は変だと思うんだけど、普段はなんとも思わないというか。
そう、ありがとう。たぶん、島がこうなってることに原因があると思うわ。
(記憶障害、思考の混濁。人の精神に影響を与える禁忌の可能性が高いわね)
……もとに戻るのか?
戻すわ。でないと、あたしだって困るし。
これって……
近いな。
ば、ばけもの……!
……お前は俺を覚えているか?
俺は覚えているぞ。あの日から、ー瞬たりともお前を忘れたことはない。
ジャアアアアアア!!
レクト……?
リネア・シルヴェストリ。確認するが、彼は君の知り合いなんだな?
そうだけど……
……なら、俺を好きに憎め。君には、その資格がある。
<ウェルナーは服のなかから針のついた器具を取り出し――
――それを自分の首に突き剌した。>
第拾参術式装填――
――術式展開――
――変身――
グルアアアアアアアアッ!!!
ウェルナー……?
ジャアアアアアアア!!!
ちょっと、待って!!どうして戦うの!!レクト!ウェルナー!!やめて!!
グルアアアアアアアアッ!!!
ジャアアアアアアア!!!
story チェイサー
ジャアアアアア!!!
グルアアアア!!!
「私はファビオラ・バストリー二になるのね。
なんか、ちょっと照れるし、慣れるまで時聞かかかりそう。
「……君が困るなら、最近は夫婦別姓という選択肢もある。
「もうこれだからウェルナーは……別に嫌だってわけじゃないんだけど……
「……すまない。俺は、その、君の言うとおり、その、アレだ……ダメなところも多い。
でも、後悔はさせない、絶対に。俺は君を幸せにする。……本当だ。嘘じゃない。
「うん、信じてるよ、ウェルナー。
グルアアアアアアアア!!
ジャッ!?
(ファビオラ、もう少しだ!やっとやっと!やっと!!!)
(やっと君に会える――)
ジャアアアアアア!!
ガッ!!
(なんだ、この魔術……外装がえぐられただと……?)
…………
グルアアアアアアアア!!
ウェルナー!!なにやってんだ!!
(邪魔をするなぁぁぁ!)
っ!
大丈夫!?
ウェルナー、どうして……
story 破壊の赤
<――コワセ――――コロセ――>
(なんなんだよ、この声……こんなこと、今まで……)
(変身も解けない……なんなんだよ……!!)
<軽く殴ったつもりの壁が吹き飛ぶ。
それだけで頭のなかを巡る声が遠くなる気がした。>
ほら、こんなにも強い――この力を振るえばいい――思うがままに――誰にも縛られず――
(うるさい!なんなんだよ!!どうしちゃったんだよ、僕は!!
<この力があれば、ほしいものは何だって手に入る――ほら、試してみろよ?>ほら、試してみろよ?
(うるさい、うるさい!そんなこと僕は絶対にしない!誰かを傷つけるくらいなら!)
自分が傷ついたほうがいい?本当に――?なら、試してみろよ――
グルアアアアアア!!
(こいつ、今までの魔物と違う!)
ガァッ!!
(痛い……嘘だろ……変身してるのに……!)
(ひぐっ!痛い痛い痛い……)
ふしゅるるるる……
(ひっ!)
<異形の怪物が倒れたレクトを見下ろす。>
(殺される――)
<ほら、このままじゃあ、昔と変わらないー弱くて虐げられて、バカにされてもヘラヘラ笑ってるだけの――
ー線を越える前の僕じゃないか。>
(ー線を……)
<――越えろ!>
ジャアアアアアア!!!
ジャアアア!!グァッ!!ギギャッ!!
<そうだ、僕は強い――この力があれば恐怖も怒りも全て消すことができる。>
<――コワセ――>
<レクトの胸にソウルが集まる――>
(やめ……ろ……ちが……う)
ボロボロになりながらも、食らいついてくる黒い魔獣を――>
ガッ!!
<――光が貫いた。>
(この人、セーラと一緒にいた……)
レクト!!
ウェルナー!!
違う。嘘だ……そんな……
うわああああああああ!!
story 解の導き
レクト!!待って!!
ウェルナー……
<レクトを追おうとした瞬間、ウェルナーの消えた場所でたたずむセーラの姿が目に入る。>
(セーラ……どんな声をかければ……)
……あいつ、そんな禁忌、消えたな。持ってたか?
!(死体が消えた?違う。そんな感じじゃなかった。どういうこと……?)
そうか……もしかしたら、この世界って……
セーラ、ウェルナーは生きてる。
そんなの当たり前だろ。ウェルナーは、あたしの子分だ。そう簡単に死なない。
それより、レクトのほうが心配だ。
あいつ、優しいバカだから。ウェルナー殺したと思って、へこんでると思うぞ。
そうね、レクトを追いかけないと……
ちょっと待ってくれよ!俺たちは嫌だぞ。こんな化け物だらけの場所、歩き回るなんて。
どこか隠れられる場所とか探すのが先決だろ。女性だっているんだし。
(この人たちを放っておくこともできない。でも、レクトも……)
しかたがねーな。あたしがー肌ぬいでやっか。
術式起動――
えっと……呪文、忘れた!!まあ、いいや、センス!イメージ!術式展開!!
増えた!?
毎回、雑すぎますよ、マスター。
でも、出てきてんじゃん。この足手まといの連中、守れ。命令な。
ほんと、いい加減、呪文、覚えてくださいよ。
私たちの文明だと、呪文で声紋認証したり、いろいろあるんですよ。わかってますか?
でも、出てきたじゃん。
だって出てこないとマスター、困るじゃないですか。
はあ?おまえ、出てくっと、おなかがすごいすくから嫌なんだよ!ちょーしのるな!!
じゃあ、帰っていいんですか?
ダメに決まってんだろ。いいから、こいつら、守れ!あたしとリネアはいそがしーんだ!
ねえ、これ、セーラ、なに?
あたしの二号だ!
説明、雑。古代文明で作られた人工精霊です。あなたがたが禁忌と呼ぶ技術ですね。
そこそこつえーし、こいつに任せとけば、この村の連中は守れんだろ。
戦闘用の人工精霊をそこそこ強いって評価、承服しかねます。どうして、こんなちびっこがマスターなんだろ。
チビってゆーな!いいから、こいつら、守れ!
了解しました。マイマスター……
…………
……
レクト、いないなー……
…………
あたしを無視すんなー!
ごめんなさい。ちょっと考え事してて……
なんかわかったか?
この街の端まで来たでしょ?で、今、どこ?
あれ?変わってない?
この変化した世界は、街程度の広さしかない。
そこを越えようとしても、ずっと同じ場所から移動しないの。
そうか……言ってること、さっぱりわからんな。
要するに、この世界は現実じゃないってこと。
ほんとか!?
周囲の世界が変わった瞬間、目の前にいた人たちの怪我が治った。
魔術やルーンの力を使った気配もなかったのに傷は消えていた。
おそらく、あの瞬間、私たちは禁忌の術式に巻き込まれた。たぶん幻術みたいなものね。
この世界での死は現実としての死ではない。
当然だな。ウェルナー、強いし。
はやくレクトをみつけましょう。一緒にこの世界を調べれば、脱出できるかもしれない。
story 切り裂きサリム
――いつでも、なにかに怒っていた。
父親の顔は見たことがないし、母親も俺が八歳の頃に病気で死んだ。
生まれはスラム。頼れる大人なんていやしない。それでも一人で生きていかねばならなかった。
十年たてば小悪党のできあがりだ。ろくでもない大人に使い捨てられるだけのチンピラ。
先の人生に希望もないし、救いもない。地べたを這いずり、空を見上げて、唾を吐くだけだ。
「あなた、大丈夫?怪我してるじゃない。」
そんな時、俺はファビオラと出会った。
――っ!!ここは?
俺のとった宿屋だ。君が拉致されそうなところに、偶然、居合わせてね。助けることにした。
現状、俺は敵じゃないよ。ミスター・パッチワークマン。
…………
<――コワセ――>にらむより先に言うべきことがあるんじゃないのか?君一人助けるのも苦労したんだが?
それとも君と一緒にいた女性を助けるべきだったかな?
……助けてくれたこと感謝はする。
礼儀は大事だよ、パッチワークマン。獣と人間の違いは品性を持つか持たないかだ。
……お前はなにものだ?
俺の名前はサリム・クーパー、君たちの商売仇。
切り裂きサリム……レヴナントのエージェントか?
そのあだ名は無粋だから嫌いだ。誰も殺しちゃいないのに、噂ばかりが一人歩きする。
……事実、花園が受けた被害は甚大だ。
だが、俺は医者として誰かの命を奪ったことはない。それが俺の衿持であり、信念だ。
……いや、互いの溝が深くなるだけだろう?
……なにが目的だ?拷問にでもかけるには、拘束もされてないようだが?
単刀直入に言う。手を組まないか?
……俺は敵だぞ?
今すぐ戦闘で決着をつけたいなら、それでもいいが、話を聞く余裕くらいはあるだろう?
…………
花園の管理する禁忌をレヴナントが奪ったのは事実だ。
こちらの研究員はどうなった?エンリケ、カビーノ、カルテル、こちらの研究員はどうなった?エンリケ、カビーノ、カルテル、レナート、ルシアーノ……
……報告では皆、排除された。もしかして君の友人でもいたか?
いや、いない。お前の表情がどう変化するか見たかっただけだ。
……なかなかいい性格だな。とにかく、我々はロアノク島の禁忌を確保した。
その後、順調に禁忌の解析を進めていた。だが、いきなり音信不通になった。
裏切りにしてはおかしい。それまでは調査報告も逐次されていたからね。
事態究明のため投入されたエージェントたちも音信途絶。それで俺が派遣されてきたわけだ。
だが、予想外なことに禁忌は、すでに起動していた。結果、俺も被害を受けた。
<サリムは自分の服をたくしあげる。腹部には包帯が巻かれており、赤い血がにじんでいた。>
この島の禁忌は人間の精神に作用する。
術式が起動した際。とっさに自分の体を傷つけて、痛みでごまかし、影響を受けないようにした。
博打だったが成功してね。ただ、傷を治せば術式に飲まれる可能性がある。
負傷したままでは任務遂行も難しい。そこで、禁忌の中心点となる遺跡まで一緒に行動したい。
<――コロセ――>
……俺にはメリットがない。
ロアノク島の禁忌は構築した精神世界に他者の魂を取り込む魔術だ。
言い換えれば、脳の共有ネットワーク化。取り込まれた人間は、勝手に脳を使われ、操られる。
……操られてる気はしないが?
話してみてわかったが、君は島の連中と違ってまだ正気を保っているようだ。
だが、君が禁忌の術式に飲まれたのは事実だ。君の体に、いつ、なにが起こるか、誰にもわからない。
……それは否定しようがないな。
ーつ疑問なんだが、禁忌の術式を起動してるのは誰だ?
花園ではなくレヴナントでもない。第三勢力にしては。目的がわからない。見当はついてるのか?
禁忌にかかわってるなら、赤いヴァリアントの噂くらい知ってるだろ?
ある種の禁忌に関わろうとする者を殺して回る怪物。レヴナントでも被害は多い。
<――コワセ――――コロセ――>
……お前の考えは理解した。手を組む提案を飲んでもいい。だが、ーつ条件がある。
赤いヴァリアントは俺が殺す。その邪魔だけはするな。
好きにしろ。俺は頼まれたって、あんな怪物の相手はしたくないね。
story ローキック
ガッ!!
……違う。僕じゃない。あれは……僕じゃ……
(本物の怪物になってしまった。この手で人を……)
(誰かと一緒にいたいって……いられるかもしれないって思ってしまった……)
(僕は本当にバカだ……)
レクト、みつけた!!
ダメだ、リネア!僕に近づかないで!!
おかしいんだ、僕。頭のなかで変な声がして、壊せ、殺せって……
刈り取るようにローキック!!
ぎゃあっ!くううう……スネがあ……
うわ……痛そ~……
おい、こら、バカやろー!ウェルナーは死んでない!!勝手に殺すな、バーカ!!
でも、僕はこの手で……
この世界は現実の世界じゃないわ。
簡単に言うと、みんなまとめて同じまぽろしを見てるってこと。幻術なんて言ったりもするわね。
じゃあ、僕は誰も殺してないの?
だから、ウェルナーを勝手に殺すな!!
よかった……本当によかった……
レクト、一緒にここから出る方法を探しましょう。
……ごめん、一緒には行けない。
なんでだよ?
この世界が現実じゃないとしても、僕は殺意をもって攻撃した。それは変わらない。
リネアやセーラを襲わない保証はないよ。
襲う保証もないでしょ?
それは、そうだけど……
ごちゃごちゃ言ってないで、行くぞ、レクト。
おまえは子分なんだから、おとなしく親分の命令を聞いとけ!
仮にレクトがあたしを襲ったとしても、簡単にはやられないし、逃げ切るから安心しなさい。
安心できないよ……
いいから行くぞ!もっかいスネ蹴るか?
ちょっと!わかった、行くから!って、蹴らないでってば!
story 夢を握る
マスター、お待ちしておりました。
セーラが二人?
説明すんのめんどいからパスな。
私は人工精霊です。俗にいう禁忌の技術ですね。
あれ、人、増えてね?
途中、魔物に襲われてる方々を保護しました。
よくやった、えらいぞ。
それは、どうも。それと、気づいていないようなので、お伝えしますが、ここ、夢の世界ですよ。
おまえ、なに言ってんだ?あたしは起きてるだろ。
普段なら、こんなに長時間、私を具現化できないでしょう?ただでさえスタミナ配分考えないんですから。
たしかに!ぜんぜんお腹すいてない!
魔術的なものにソウルを消費してないということです。それくらい早く気づいてください、ちびっこマスター。
あたしをチビとかゆーな!おまえだってちっこいだろ!!
私はマスターの姿を模してますからね。私をチビと言うのは、ひるがえってマスターがチ……
あいつ、子分のくせに、いっつも態度でかいんだよな。
夢の世界ってどういうことだ!?
それに関しては、これから私が説明するわ。
…………
……
魔術のせいだっていうのか?
そういうこと。
これが夢だってんなら、起きればいいのか?
でも、さっきから起さようとしてんのに、できないぞ。どうするんだ、リネア。
推測でしかないけど、禁忌を使ってる術者を探し出して倒すしかないわ。
ここは現実世界じゃないんだろ?魔術を使った人はいないんじゃあ……
どんな魔術にも術者との繋がりがあるの。だから、その繋がりを破壊すれば、魔術は成り立たなくなる。
その繋がりが術者本人の場合もあるし、ちょっとした小物かもしれないけど。
じゃあ、片っ端からそのあたり、ぶっ壊せばいいってことだな?
そんなことしたら術者に気づかれ……
ひっ!化け物だ!!
よっしゃー!やったるぞー!
レクト、無理はしないでね。
うん、わかってる。でも、リネアたちの後ろに隠れたりなんかしない。
変身しなくたって僕も戦えるよ。