ハッピースイーツカーニバル Story4
story
スィー島の街道を進んでゆくと、小さな村が見えてきた。これまで見たところとは、文化や風習が
違うようだ。
とても落ち着きのある長閑な風景が広がっていた。
<ぼんやりとその風景を眺めていると、プレミオがこの場所のことを説明してくれた。>
<そんな話をしていると、道の真ん中でふたつの集団に分かれ、いがみ合っている人々がいた。>
<遠目から聞こえてくる会話はそんな内容だった。どうやら喧嘩をしているようだ。>
<そう言って、顔をぷいっと逸らすと、お互いの村に別れて行った。>
<少し事情を探ってみよう、と君は一同に提案した。>
***
<まっちゃ村の茶屋の外壁に巨大なハンマーが立てかけられていた。
店の外に並べられた緑台には、抹茶をすすり、ほっこりとした表情を浮かべる少女がいた。>
そこでもお茶はあるんですけど、お抹茶というのは初めて飲みました。
使っているお茶の葉は同じらしいので、時計塔のみんなにも教えてあげようと思います。
と言っても帰る方法はわからないんですけどね。……どうしようかなあ。
<彼はスッと自分のお茶受けの菓子を少女の方へ押し出した。>
<少女の言葉に、ゆっくりと首を横に振ると、縁台から立ち上がった。>
<ユッカはまた一口抹茶をすすり、風に流されゆく浮雲を見送った。>
<少し長くなるけど……と前置きし、君は事のあらましを説明した。>
***
<ケンカの理由がわかればいいんだけど……何か知っている?と君はユッカに尋ねた。>
<そういう基準で村人かどうかは決まらないと思う、と君は言った。>
***
<ケンカの理由を探るべく、君はいちご村にやってきた。
聞き込みも兼ねて、村の茶屋に入った君はさっそくケンカのわけを訊ねた。
ところがその話を振ると、さきほどまで人の好きそうな笑顔を見せていた村人も、>
<の一点張りだった。>
<君はピークの言葉に頷いて、メモに「収穫なし」と記しかけ――
ちょうどベンのインクが切れてしまい、文字が途切れた。>
<どこからか声が聞こえた………>
「ラッキープレゼント!」
<君の周りを淡い光が包む。
すると途切れたと思ったペンのインクが再びペン先から流れだし、「収穫なし」と記すと、
ちょうどインクが切れた。
こういうのって結構気持ちいい………
少し小さな幸せを味わった君の肘をつんつんと誰かがつついた。>
……ハッピー?
<たぶん………と君は答えた。>
しかも文字を書ききった後とかくぅ~ってなるよね~♪
あたしはマール。みんなに幸運を届ける天使だよ。よろしくね。
<よろしく、と君も返す。たぶんこの子も………>
<ずいぶん楽天的なんだね、と君はマールに言った。>
<たしかにさっきみたいにラッキーを起こす力があれば、それも可能かもしれない。でも……。>
例えば、背中のかゆみを止めたり、ひとつの卵に卵黄をふたつにしたりとかできるよ。
story
<いっこうにケンカの原因がわからないまま、君が村の中をうろうろしていると、
再び、まっちゃ村といちご村のいがみ合いの声が聞こえた。>
なにが抹茶つかみ取り祭りじゃ。ただ粉まみれになっただけじゃろか。
おおかた、その腹いせでウチの水車を壊して回ったんだろう。
<ユッカは大上段に構えたハンマーを思いっきり振り下ろす。
その衝撃で地面は震え、その場に居合わせて者は少しだけ浮き上がった。>
<というわけで………ケンカの原因のひとつであった水車の修理にユッカが取り掛かった。>
***
君はユッカに巨大ハンマーを手渡した。それを肩に担うと、彼女はにやりと笑って言った。
<ユッカが水車の動力部に八ンマーの打撃を加えると水車は見事に動き始めた。
同時に、抹茶を曳いていた臼も再び動き始める。
淀みのないその動きは、水車の完全復活を一同に知らせてくれた。>
とりあえずいちご畑に行こう!
story
<いちご村の村人に案内されて、やってきたいちご畑は無残な有様だった。
いちごといういちごは食い荒らされ、畑は踏み荒らされていた。>
<こんなこと……絶対に続けさせちゃいけない。>
そうだ、ここはマールに任せてみよう。君はみんなを励ますように、言葉をかけた。
ラッキープレゼントーー!!
story
<マールがいつもの言葉を唱えた。>
<君は一体どんなラッキーがやってくるのか、期待に胸を躍らせていた。>
<だが………>
もー!今度は本気だよ!ラッキープレゼント!
<だが………>
<マールは手に持った杖をだらりと下ろし、呟いた。>
<無理だ。誰もが諦めかけた。そう思っていたら……。>
<彼はどこからか見つけてきた鍬を携え、踏み荒らされたいちご畑に入っていった。>
<いちご畑の真ん中に立つと………>
<太陽に届けとばかりに鍬を振り上げ、それを大地に振り下ろした。>
<彼は黙って何度も何度も鍬を振り下ろした。>
<硬い土、粘土の土、岩、草の根、それらをものともせず、砕き、断ち切り、耕した。>
<耕し続けた。>
でも、緑の人は自分で、自分の力で、また畑を取り戻そうとしている。
何か特別な力に頼るんじゃなくて、自分でやる。それが正しい方法なんだよ!
<ユッカの言葉が契機となって、仲間たちは畑の中に飛び込んでいった。>
<君も袖をまくると、仲間たちの輪に加わった。>
<日が暮れる頃、荒らされた畝は再び真っ直ぐに地平線の奥へと伸びていた。>
<緑の、少し湿った手がマールの肩にかれた。その手は土の匂いがした。>
<照れ笑いを浮かべ頬をかくマールの手もまた、土の匂いがしていた。>
<と言ってマールは君の方を振り向いた。>
……ハッピー?
<君は優しく微笑みながら、頷いてみせた。>
<まっちゃ村といちご村の争いは終わった。ふたつの村はもとの平和な村に戻ることができた。>
<ただ、どこかで何かを間違えたような気がしたが……。>
<だいたいあっているはずだ。>
<そう胸に刻み、君は力強く歩を進めた。>