【黒ウィズ】ハッピースイーツカーニバル Story5【白猫】
目次
story
まっちゃ村といちご村の人々と別れ、君たちはスィー島の新たな名所を訪れた。
そこは森だった。
四方を取り囲むように自生する木々を君は見た。
この森の木々の枝になっているのは、深縁の葉ではなく、芳醇な香りを放つチョコである。
ひとつ取ってもいいかな?と君はラヴリたちに訊ねる。
許されることではない。と君は思った。
かわいそう?ラヴリの言った意味が分からず、君はオウム返しに聞き返した。
そうかもしれないと、君は答えた。
プレミオは森の木々になるチョコをみんなに手渡し、そう言った。
君はこくりとうなずき、チョコを食べた。
***
森の奥に進むと、チョコの木の陰に男がひとり佇んでいた。
その男のまとう言いようのない不穏な気配は、一目見て、彼が只者ではないと教えてくれる。
だが、甘いものの次はしょっぱいものが食べたくなる。そしてまた甘いもの………
どうやら妙な袋小路に迷い込んでしまったようだ。
楽しんでいるのかな?と君は首をかしげる。
助っ人でないのなら、彼に無理を言うこともできない。
君たちはその場を立ち去りかかる。
なんだか難しい人だな、と思いながらも、君たちはヴィルフリートと共に森を進むことにした。
story2 元帥と帝王
ヴィルフリートを連れて、先へ進んでいると――
今度は君の前に、痩身長躯の男が現れる。
あの、歪な戦いの気配が再び君をとらえる。
来ていたんだ、と君は返した。声は、震えていなかったはずだ……。
小声で訊ねるように
事情を知らないはずのラヴリですら、彼の雰囲気に戸惑いを隠せない。
ウィズに彼の素性を訊ねる声は、自然と小声になっていた。
そんななか、ただひとりディートリヒの醸し出す殺伐とした気配に気おされぬ者がいた。
そしてディートリヒもまた、ヴィルフリートの不穏な気配にまったく動じていなかった。
君はにらみ合うふたりの間に割って入り、その場をとりなす。
ラヴリの魔法でやってきたことやデザートンのことなども、一息に説明した。
少し慌てていたかもしれない。このふたりの衝突など想像するだけでも恐ろしかった。
***
その声はザクリと君の背筋を刺した。
無論、死にぞこないの帝王などにもな。ドルキマスヘ帰る。案内をしろ。
それだけ言って、彼は先に行ってしまった。
君は慌てて後を追った。なぜかそうしなければいけない。そんな風に考えてしまったのだ。
story3 剣呑な空気
妙に緊張した雰囲気のまま、君たちは道中を進んでいた。
その原因はもちろん……道連れとなったふたりである。
唐突に話を振られても、ディートリヒ・ベルクという男は眉ひとつ動かさない。
そんな男だった。彼は鋭い双眸を少し動かしただけで、その返事とした。
意外だった。まるで生まれてこのかた、人に頭を下げたことなどない。
彼のことをそんな風に思っていた。よく考えればそんな訳はないのだ。
いない……。ただそう言っただけのはずだ。そのはずだが……。
ディートリヒ・ベルクよ。我と手を組め。そして世界の頂点を手に入れるのだ。
このふたりが組む……。それがどのような結果をもたらすのか、君にはまるで想像できなかった。
君は自分の胸に生まれた矛盾する想いに、打ち震えた。
それはまるで、自分のなかの見たくない部分を出してしまったかのような……そんな気分だ。
どこかに私以上の者がいるならな。
Story4 もうええわ!
そんな私に、これが似合うと思うか?
言いよどむラヴリの言葉を継いだのは、ヴィルフリートだった。
と言い、ヴィルフリートはディートリヒにお菓子を渡した。
それを受け取り、ディートリヒは不敵に笑う。
だが……いつか戦争の時代が終わったとき、必要とされるのはこの私よりも――。
こういったものなのかもしれない。
しかし、お菓子の魔法とやらは私にも容易に想像できる。
君たちが気づかないうちに、こちらをつけ狙っていた魔物の一撃がディートリヒを襲った。
すんでのところで、ヴィルフリートの大鎌がそれを阻止した。
そうだった。いまはまずこの魔物たちをなんとかしなければいけない。だが――。君は少しだけうれしくなる。
彼らに背後を預けることがとても――。
とても頼もしい気がしたからだ。
***
魔物たちはディートリヒとヴィルフリートの連携になす術もなく、四散した。
君もあまりの強さに思わず感嘆した。
敵にすれば恐ろしいが、味方にすれば心強い。
そんなふたりである。
ヴィルフリートはディートリヒに冊子を一部渡した。
さあ、と君も首をかしげ、ふたりの様子を見守った。
我は常々、我の最高のギャグを引き立たてる最高のツッコミを探していた。
それが貴様だ、ディートリヒ。その冷徹さ、反骨精神、無意味に偉そうな態度。
優れたツッコミの資質を全て兼ね備えている。ではやり直すぞ。
……地味に痛くて長引く腹部を殴るツッコミ………
これは、平凡な頭をはたくツッコミに新たな地平を開くかもしれんぞ。貴様、やはりやるな。
さすが我の見込んだ男。もっとだ!
君は呆然と目の前で起こったことを眺めていた。
まあ、なんというか……。
君たちはスィー島の混乱を収拾すべく先を急いだ。