【黒ウィズ】ハッピースイーツカーニバル Story6【白猫】
story
〈君たちが次に訪れたところは、バターがたっぷりの甘いビスケット、香ばしいコーン、それに――〉
〈チョコの香りに満ちた場所だった。〉
〈彼女の言う通り、長々と続くビスケットの道の向こうには、鮮やかな彩りの大きな建物が見える。〉
〈きっとあれもお菓子で出来ているのだろう。そんなことを考えていると、〉
〈と、いつか見たことのある天使が君の頭上で羽ばたいていた。〉
〈その腕には、見知らぬ少女が抱えられている。ふたりはゆっくりと君の目の前に降りた。〉
〈君もそれに続いて、改めて名を名乗った。〉
〈君は再び名を名乗った。〉
〈君がうなずく。〉
〈きっとラヴリの魔法で呼ばれたのだろう。〉
〈君はルシエラに事のいきさつを説明した。〉
〈自分たちがやってきたこと。デザートンのことなど、君の知る全てのことを。〉
甘いものを食べていたり、持っていたりする人をこの世界に呼んだというは本当みたいですね。
〈控えめな口調でそう言ったのはルシエラと一緒にいた少女である。
どうかよろしくお願いします。
〈ミレイユという名の少女は深々と頭を下げた。〉
あまり心配させたくないです………
story2 吹きすさぶ風
〈君たちがカプリコ城に向かっていると、突然ものすごい追い風が吹き抜けた。〉
〈突風がようやく止み、君は薄めた目を開いた。〉
〈そこには、なんというか……暑苦しい男が立っていた。〉
そこの金色の翼の生えたガール。好きだろ?足の速い男。
〈君はピークの意見に賛成した。理由はともかく彼らを倒さなくてはいけない。〉
〈そうしなければ、元の世界にも戻れない。〉
〈ラヴリは、事情を飲み込めず、首を傾げた。〉
〈ルシエラはラヴリになにやら耳打ちする。それを聞いて、ラヴリもなにやら納得したようだった。〉
〈と言って、したり顔でマッハはミレイユを見た。どうだと言わんばかりの表情である。〉
君たち……。
story
言うや否や、マッハはカプリコ城目指して駆けていく。
〈ルシエラがそう余裕たっぷりに言うので、君は少し拍子抜けする。〉
〈何を考えているのかわからないが、彼女はふわふわとお菓子の道をゆっくりと飛んでいった。〉
〈ルシエラの白い翼を見て、ふと君はミレイユのある変化を思い出す。〉
〈いつの間にか彼女にも翼が生えている。〉
〈君の視線に気づいて、ミレイユは慌てて翼をしまう。〉
〈君もルシエラと同じ天使なの?と君は訊ねる。〉
〈彼女は少しだけ言いよどむ素振りをした。〉
〈〈フェニックス〉………たしか物語に出てくる炎の鳥。〉
〈絶えず燃え続けるその炎の様子から、不死の力を備えているともいわれる。〉
〈それと、合成された人間?聞きなれない言葉だが、それが持つ意味は分かる。〉
〈ただし、突拍子もない、現実味のない考えだが……。〉
たまにあたしの感情に反応して、〈フェニックス〉の力を表に出しちゃうんです。
あと、傷を癒したりもできますけど、天使じゃありません。
〈認めなくていいよ………と君は誘導されるミレイユに助け舟を出してやる。〉
ルシエラは飛ぶ以外に何か力があるのかにゃ?
〈そう言われて、君ははたと考え込む。そんな力を見た覚えがなかったからだ。〉
〈いいんじゃないかな?と君はルシエラをおいてウィズの後を追った。〉
***
〈しかし――。〉
〈ルシエラは大丈夫だと言うが、カプリコ城に向かっていったマッハの姿ははるか彼方にある。〉
〈ミレイユが不安げな視線をよこすと、ルシエラは、〉
〈と言って、一同にチョコで出来た小石を配った。〉
〈君は怪訝に思いながらも言われるままに渡されたお菓子を口に放り込む。しかしこれでは………〉
〈ウィズの言う通りだった。これで何が解決するのか。〉
〈またルシエラにはぐらかされているのだろうか?〉
〈だがそんな不安も、お菓子を口に入れた途端に広がる甘い誘いに、かき消される。〉
〈すると……。〉
story4 戦いの行方
〈マッハはもうゴールであるカプリコ城の目の前まで来ていた。〉
〈ゴールまであと少し。審判のラブリたちの姿もはっきりと見えてきた。〉
ナンバーワンは!僕だ!
甘いの甘いの、いらっしゃい!
〈だからお菓子を食べたのか。たしかに一気にゴールに到着したけど………〉
〈君は振り返って、後ろを見た。そこには呆然と立ち尽くす悲しい人影がある。〉
〈頭に血が上ったマッハは、君たちに向かって猛然とダッシュしてきた。〉
***
〈向ってきたマッハを君たちは大人げなくこらしめた。元々少し足が速いだけなのだ。〉
〈君たちに戦いで及ぶべくもなかった。〉
〈打ちのめされたマッハの顔に、ふわりと白い羽が一杖降りかかった。〉
頭が良くないからモテないんですよ。
〈ひどい、と君は思った。〉
〈折れかけたマッハの心は、ルシエラの容赦のない言葉でぽっきりと折られ、さらに投げ捨てられ、〉
〈埋められて、さらにその上に大きな石を置かれて……。〉
〈とりあえず、それくらい再起不能にされた。〉
〈マッハのむせび泣く声が聞こえる。〉
〈君は顔をそむけて、ただ早くこの声が止んでくれるのを待った。〉
〈どうにかしてやりたくても、かける言葉が見つからなかった。そんな時……。〉
〈マッハに手を差し伸べたのはミレイユだった。その手の上にはチョコがある。〉
〈チョコを受け取ると、マッハはむさぼるようにチョコを頬張った。〉
お菓子はみんなで楽しく食べましょう。そのほうがおいしいですよ。
〈すでに泣き笑いの表情となったマッハは、うんうんと激しく首を縦に振る。〉
〈ミレイユは少し悩んでから、答えた。〉
〈マッハは満足したような笑みを浮かべながら、ほのかな光を放ち始めた。〉
〈どうやら今回も勝つことができたようだ。〉
〈改心したマッハが消えてゆくのを見送り、君たちはスィー島のさらに奥へと進んでいった。〉