【黒ウィズ】ハッピースイーツカーニバル Story【白猫】
プロローグ お菓子の島へようこそ
さぁ~到着しましたよ~♪ここが、世にもマレなおかしの島、“スィー島”で~す!
<彼女――ラヴリは、お菓子を食べたときめ“幸せな気持ち”から生まれたという、お菓子の案内人。>
世にも稀……か?我々の出身地もお菓子の国だろう?
<大人気ユニットプレミアムピークのひとり、プレミオがそう言った。>
<そして――。>
つまりねプレミオ、私たちのいたところも珍しかったってことよ♪
<プレミオを呼んだのがピーク。プレミアムピークのもうひとりである。>
<<お菓子の国>ではふたりのことを知らない者はいない。国王すら彼女らにメロメロなのだ。
<ピークとプレミオのふたりは、旅の途中で知り合ったラヴリに導かれ、
スィー島へとやってきたのだった。>
そうなのか……世界は広いな……。
見て見て!すっごくおっきなカカオの実がなってるわ!
これは確かに珍しい………
それだけじゃないですよ~?チョコの森があったり、ジュースの湖があったり……。
へぇ♪ちょっと、やりすぎってくらいおかしで溢れてるのね!
きっと、おふたりの国にも生かせるアイディアもたくさんあると思いますよ~♪
ほら~プレミオ、考え込んでないで、あちこち行ってみましょうよ!
まあ、そうだな。見聞を広めるのは無駄なことではない。
ではでは~、私についてきてくださ~い♪
***
<三人は、色とりどりのお菓子の島を、軽やかな足取りで進んで行く。
……町へとやってきた三人は、人々とすれ違うたびに首をかしげる。>
あれ~?どうしてみんな、浮かない顔をしてるんだろ~?
何か困りごとでもあるのだろうか?
ちょっとお話を聞いてみましょう。あの~、すいませ~ん………
<三人が事情を尋ねてみると――>
大喰らいの魔物、デザートン……?
<デザートンという魔物が、お菓子をひとり占めにしていることがわかった。
おかげでスィー島の人々は、お菓子を食べることができず、表情も暗いまま……。>
……これはいけませんね!とてもよろしくない事態です!
ラヴリ?興奮しちゃってどうしたの?
だってだってですよ!?おかしっていうのは、ちいさな幸せなんです!
ちいさな幸せ?
<ラヴリが言うには、ちいさくても誰かと一緒に分かち合うことで、幸せは広がっていく。
そして彼女は、ひとりで独占するのは、違うんです!と力強く口にした。>
いいこと言うわね。私も同意よ。お菓子はみんなで仲良く食べなくちゃ!
そうと決まればこうしちゃいられません!
そのデザートンという方に、一言いってやりませんと!行きますよ!おふたりとも!
あっ、待って!もうあんな遠くに……。
お菓子のこととなると素早いんだな……。
***
渇く……!もっと……!もっとよこせぇ……!
<デザートンに対面した三人は、“確かに、いくらでもお菓子を食べそうだ”と思った。
怪物が大口を開け息を吸うと、あたりからお菓子が引き寄せられてくる……!>
足りない……足りない……!
あなたがデザートンですね!
おれを呼ぶのはだれだぁ?
私よ!ラヴリって言います!はじめまして!
はじめまして……。
早速なんですが、一言いいでしょうか!?
…………。
ちょっとラヴリ、もう少し落ち着きなさいよ?
お菓子はみんなで食べましょう!
みんな……みんな……!!!
なっ、なに!?ものすごいエネルギーが……!
おれだってみんなのひとりだろぉぉぉおおお!
ヤツの力……〈歪み〉とでも呼ぶべきか、それが高まっている……!
危険な予感がするぞ……!
ま、まさか、ドカーン!とかボッカーン!とかなりそう!?
これは……!こうなったら、アレですね……!
<ラヴリが高々とステッキを掲げた。
ピークとプレミオは意図がわからず、首を傾げる。>
召喚しかありませんね!!
へ?
私のカで、色んなところからこの状況を打破してくれる強い人を呼ぶんです!
<プレミオが、「誰を呼ぶ気だ?」とどことなく不安げな表情で問いかけた。>
私にもわかりません!
どういうことよ!?
大丈夫、友だちの友だちはみんな友だちです!いきますよ~……!
うう……!トモダチ……!
うおぉぉぉぉぁぁぁぁあああああ!
ああっ!?なんか余計興奮してるっ!?
え~い!甘いの甘いの、いらっしゃ~い!
ハッピースイーツ カーニバル
story 再会と新たな出会い
…………。
<君はウィズと顔を見合わせた。>
<ここはいったいどこなのだろう?>
<見慣れない場所だ。>
<ウィズとふたりで買い物に出て、甘い焼き菓子を買ったところまでは覚えている。>
ハーイ♪
あれはピークにゃ!
<少し先で手を振る女性――君はその顔に見覚えがあった。>
<プレミアムピークのひとり、アーモンドピークだ。>
いらっしゃい。
……いらっしゃいって、どういうことにゃ?
<よくよく見てみると、ピークのすぐ側にプレミオの姿もあった。>
<それと見慣れない少女も。>
あれは誰にゃ?
私はラヴリ。よろしくお願いしますね、ええっと……魔法使いさん。
<君は自己紹介とウィズの紹介をする。>
いきなりごめんなさい。驚かせちゃったみたいで………
驚いているどころじゃないにゃ。ここはどこにゃ!
<君はウィズを宥めながらも、同様の疑問を抱いていた。>
<全く見知らぬ土地に来て、戸惑いがないといえば嘘になる。>
ここはスィー島。お菓子でできた甘い島なんです。
少し込み入った事情があってな。私たち――いや、ラヴリの魔法で君たちが呼ばれたんだ。
……どんなすごい魔法にゃ。無茶苦茶にゃ。
<確かに……だが、君が疑問を投げかける前に、再びラヴリが口を開く。>
助けてくれる人を呼ぼうとしたら、デザートンに妨害されちゃって……。
ちょっと待つにゃ。スィー島やらデザートンやら、話が全く見えないにゃ。
ふむ。では歩きながら話そう。この大峡谷を越えた先に街がある。
魔法使いさんが来てくれるなら、どうにかなりそうね。
<君は漠然とした不安を抱きながら、わかった、とだけ口にした。>
<何が待ち受けているかはまだ見えていないが、ついていくしかない。>
***
――つまり、そういうことなんです。
……なるほどにゃ。
<ラヴリが事情をかいつまんで要約してくれた。>
<ピークたち三人がスィー島を訪れると、島の人たちは何故か、みんな暗い表情を浮かべていた。
<原因は大食いの魔物――デザートンという存在だった。>
お菓子とあらば何でも食べてしまう、厄介な魔物だ。
それで、そのデザートンにガツンと言ってあげようって話になったの。
でも何がきっかけか、いきなり暴れだして止めるに止められなくなって……。
そうです……力及ばずで……。
<デザートンは大食いであるだけでなく、強大な魔力を秘めていた。>
<その危険な力に対抗するべく、ラヴリは状況を打破できる助っ人を呼ぶことにしたらしい。>
甘いの甘いの、いらっしゃいって呼んだんですけど……。
しかし、それはデザートンによって妨害されてしまい………
私たちが呼ばれたってわけにゃ。
甘いお菓子を食べようって気持ちになっていたのは確かにゃ。
しかし、この人数で果たしてあの魔物に勝てるかどうか………
そんなに手強い相手なのかにゃ?
<話を聞く限り、危険な力を持っていることは間違いない。>
<だけど、君にとってそれは想像の域を出ないことだった。>
ところで、ラヴリの魔法は私たちしか呼べなかったのかにゃ?
…………。
どうしたにゃ?
<急に黙ってしまったラヴリ。君は不思議に思って、その顔を覗き込む。>
ラヴリの魔法はまだ未熟で、誰が呼ばれたのかわからないんだ――。
言葉が悪いわよ、プレミオ。まだ勉強中♪でしょ?
あれ痛い。フォローで心が痛い。
みんなで何やってるにゃ………
<ウィズは呆れ顔で、とりあえずのツッコミをいれた。>
スィー島は広い……もしかすると、君のほかに呼ばれた人かいるかもしれない。
<仮にどこかに仲間となってくれる人かいるなら、それは心強い。>
探しましょ。ね?
はい!お菓子をひとり占めなんて許せませんから……!
***
進んでも進んでもチョコの谷にゃ………
これはひとつひとつが甘くとろけるようなチョコでできている。
そうなんです。ここのチョコはですねえ、特別なんです。
いいですか。あちらに見えるのがアーモンドをたっぷり使用したチョコレー卜で――。
ストップストップ。ラヴリ、また悪い癖が出てるわよ。
はっ……。
<ラヴリは、苦笑いを浮かべて頭をぽりぽりと掻いた。>
お菓子のこととなると、これだからな。
いやあ……お恥ずかしい……。
気にすることないにゃ。気持ちはわかるにゃ。
<そんな話をしながら先へと進むが、やはりまだここを抜けられそうにない。>
港町まで行くことかできれば、デザートンの情報も入るでしょうし……。
ああ、協力してくれる人がいるかもしれないからな。
そうです!みんなのお菓子を守るため、港町に行ってみましょう!
***
風が冷たいにゃ。
そうですね。ここからアイスのお城までは、少し肌寒いかもしれません。
<よく見ると、海が広がっていて奥にはお城のようなものかぼんやりと浮かんでいた。>
<船に乗って向こうに渡るのだろうか。君はそのことをラヴリに訊いてみた。>
はい。あっちのお城はとっても冷え冷えで、美味しいアイスが食べられますよ。行ってみますか?
<それもいいかもしれないね、と君は答える。>
寄り道になるかも……いやもしかするとそこにも誰かがいるかもしれない。
街は静かにゃ……。
そうね。デザートンがみんなのお菓子を食べちゃうから、気持ちか落ち込んでいるみたい。
みんなが怖がる大食いって、いったいどれだけすごいにゃ……。
想像でしかないけれど、きっと大きな体をしているんだろう、と君は思う。
とにかくキミもここの問題を解決して、いい気持ちでお菓子を食べるにゃ。
<お菓子を食べるとは言っていないけれど、不安を抱えている人を無視することはできない。>
あれ。黒猫のひとだ!
にゃ!?
<君はばったり出くわした――あのアリエッタ・トワを見て、咄嵯に身構えてしまった。>
……なんでアリエッタがいるにゃ。
もしかして、知り合い?
<君は頷く。>
<あのとき、あの場所で彼女が襲ってきたことを、君は忘れていない。>
奇遇だね!奇遇奇遇。あはは!
<アリエッタが、笑いながら手に持っていたお菓子を口にする。>
アリエッタは何をしてるにゃ?
友だち探してたんだよ。
<友だち……あの異界にいた魔道士たちのことだろうか?>
えっとねー……うーん……あのー……わはは、名前知らない!
彼女もラヴリの魔法で呼ばれたのだろうか。
<君は首を傾げるが、ここにいるということは、つまりそうなのだろう。>
<とても凶暴――ではなく、とても力のあるアリエッタが来てくれるなら、問題もすぐに解決できるかもしれない。>
<君はそう考え、アリエッタに話を持ちかけてみた。>
うーん……ダメ。わたし、これから友だち探しに行くから!
<だがけんもほろろに断られ、アテが外れてしまった。>
<アリエッタは無邪気に笑いながら、君たちに手を振り、軽快な足取りでこの場を去ってしまう。>
みんながみんな協力してくれるわけじやないってことね。
<ピークの言うように、必ずしもここに呼ばれた人たちが協力してくれるわけではない。>
<だからこそ、他に人がいたとしたら、どうやって協力を仰げばいいのか、考えなければならない。>
大変な仕事になりそうにゃ。