【黒ウィズ】ハッピースイーツカーニバル Story2【白猫】
story
さ、こっちよ、アイ。この先に船が止まっているって、街の人が言っていたわ。
向こうには人の気配はない。
そうなの?私にはわからないわ………
あれは誰にゃ?
<君は首を傾げる。>
<ここに来るまでに会った街の人たちとは、見るからに雰囲気が違う。>
<もしかすると、彼女たちもまた自分と同じようにここに呼ばれたのかもしれない、と君は思った。>
あら。あなたたち……。
<向こうもまた、君たちに気づいたようだった。>
<君は自己紹介を済ませ、ラヴリたちも同様に挨拶をした。
<彼女たちも自分の名を名乗り、一通りの挨拶が終わった。>
あなたたちは、何がきっかけでこうなったのか、知っているみたいね。
<それを制するようにテレーゼが言葉を投げかけてきた。>
うふふ、その目、図星って感じね。
君たちはラヴリの魔法で呼ばれてしまったんだ。厳密に言えば、その魔法は妨害されたが……。
帰すことはできるかもしれないけど、それはデザートンを倒さないと……。
簡単に事情を説明すると、テレーゼと名乗った女性はすぐに受け入れてくれたようだった。
その隣に立つ少女――アイは、無表情で君を見つめていた。
キミ、もしかして何かやったにゃ?
そんなことは……と否定して、君はアイとテレーゼに向き直る。
アイとは、すぐそこで出会ったの。ええっと確か………
私も同じ。気づいたらここにいて、帰る手段を探していた。
……キミ、話を聞く必要がありそうにゃ。
君は、そうだね、と口にするが……。
デザートン……それを倒せば帰れるの?
たぶん、と君は答える。
ラヴリも、表情を窺うに確証があるわけではないようだった。
私は、帰りたい。待っている人がいるの。
私もそうよ。演奏会に出なければいけないの。そのための練習もしなくちゃ。
演奏会……彼女の持っているものを見るに、音楽家ということだろう。
ひとますここではなんだから、場所を変えよう。
君は頷いて、みんなとともに先へ進んだ。
***
ここの食べものは、お菓子ばかりなのね。
ええ。お菓子の島だもの。
お菓子。馴染みのない響き。
色々あるわね。ほら、これなんかドライフルーツが詰まってて……。
テレーゼが手に持っていたものは、何かの生地に挟まれた果物のお菓子……らしかった。
持って帰りたいわ。できるだけたくさんね。こういうのは、なかなかお目にかかれないから。
君もまた、そのお菓子を見たことかなかった。
だが確かに、ここにあるお菓子は見るからに美味しそうなものばかりだ。
せっかくだからキミも食べてみるといいにゃ。
ええ、どうぞ。美味しいものを貪べると、気持ちが高揚していい曲が弾ける気がしてくるわ。
音と音が繋がるように、美味しいお菓子は心のなかで一筋のメロディを奏でるわね。
ずいぶんと饒舌にゃ。テレーゼは、お菓子が好きなのかにゃ?
ええ。好きよ。嫌いな女の子なんていないんじゃないかしら。
テレーゼの食べている姿を見ていると、すごくあたたかい気持ちになる。
それはお菓子を愛するものにとって、これ以上にないぐらい嬉しいことだな。
ええ、そうねプレミオ。私まで楽しくなってきちゃうわ♪
だけどそうもいかないみたいですよ……。
そうもいかない……いったいどういう意味だろうか。
そういって君は、前を見たが――。
魔物がいるにゃ………
船の周りには、魔物が集っていた。
取り囲まれてしまっては、舟に乗ることかできない。
お菓子につられたのかしら。
しょうがないわね。このままにしておくわけにもいかないし、少し大人しくしてもらいましょう。
私もやるよ。目標捕捉――殲滅する。
ありがとう、アイ。せんめ――えっ、殲滅!?
ダメよ!殲滅ダメよ!?
冗談なのに、テレーゼは慌てすぎだよ。
じょ、冗談って……もう……。
魔物を前にして、何故か和やかに話し合うアイとテレーゼ。
いったいこの子たちは何をやってるにゃ……。
仕方ないにゃ。キミも手伝うにゃ。
もちろん、と君は言って、魔物たちが集まる場所へと駆け出した。
***
<魔物を追い払って、船の見えるところまでやってきた。
アイもテレーゼも、魔物を傷つけることがなかった。>
私は、大人しくしてもらうように頑張るだけ。
<そこに理由はないのかもしれないけれど、君はそれはどうして?と問いかけた。>
大切な子と約束したから。
大人しくさせるだけなら、私のピアノがあるわ。
<テレーゼの指が鍵盤を叩き、美しいメロディを奏でていく。
それは心を揺さぶられる、情感のこもった旋律だった。>
音楽は聴く人によって、喜怒哀楽の感情が変わってくるものだけど……。
落ち着かせるためだけの曲だって存在するもの。
すごい……何だか癒されますね………
心……テレーゼの音は、すごく美しい。
<アイはうっすらと微笑み、テレーゼの音を聴いている。>
アイにも聴かせてあげたいな。
私の音でよければ、いつでも。
それで、船には乗るのかにゃ?
そうね。乗っちゃいましょうか♪
<アイスのお城があるというが、どういう場所なのだろうか。>
その名の通り、アイスでできたお城です。綺麗なお城なんですよ。
<ふたりはどうするの?とアイとテレーゼに問いかける。>
せっかくだから観光させてもらおうかな?
私も。綺麗な場所なら見てみたい。
帰る手段があるなら、早く知りたいけど焦ってもしょうがないからね。
この子たちは結構楽しんでいるみたいにゃ。
<デザートンという魔物のことがあるというのに、君も少しだけこの旅が楽しくなってきていた。>
じゃあ、行ってみましょう。
……アイスのお城へ。