【白猫】Wings of hearts 2 Story2
開催日:2018/08/31
目次
登場人物
story9 わずかな変化
<それから、数日が過ぎた――>
Aおはよう、シルヴィア!
今日もいい天気だねー!そして相変わらず、朝から暑いねー!
s夜、大丈夫?寝苦しくない?
てやんでえ、ばーろー!育ちざかりは暑さにつよいんでい!
sふふ、よかった。
あの、シルヴィアさま。洗濯用のセッケンがなくなってしまったのですが……
sわかりました。すぐにお持ちします。
……シルヴィアさま、なんだか前より明るくなってないかい?
……はぁ。何か、ムカつくわね……
……不吉な気がするねえ。
rちょっと、二人とも!なんてこというの!
シルヴィアはねえ、一生懸命がんぱってるだけなんだよ!
……リサ。あの悪魔と仲良くするのはおやめ。
rへ?
優しそうにしていても、あの悪魔は、あたしらを管理する側にいるんだよ。j
rシルヴィアは、あたしの友だち!ただそれだけ!
s見回り、終わりました。異常はありません。
よし。今日はもうあがっていいぞ。
s(あれから、ルカさんはまだ動きを見せない……)
<シルヴィアは、静まり返った村を見渡す。>
s(食料は減る一方だし、理不尽なお仕置きも、日に日に増えてきてる……
早く何とかしないと……村の人たちは……)
「……シルヴィア。
s…………?
「シルヴィア~!
rこっち来て!
sリ、リサちゃん!?なにしてるの!?こんな時間に家を出ちやダメだよ!
rわかってる!だから、こっちこっち!
s待って……!
rふぃー!スリルあったねー!
sもう……!こんな危険なことして!バレたらどうするの……!
そんときゃ、あっしの小指でオトシマエけるだけでぇ。
sえ?
rお父さんのマネ。お芝居でそういうのがあるんだって。
sへ、へぇ……って、そうじゃなくて!
r――あのね、どうしてもシルヴィアに渡したいものがあって!
s渡したいもの?
rこれ……
<リサは恥ずかしげに、後ろ手で隠していたものを差し出す。>
rシルヴィアヘのプレゼントだよ。
sプ……プレゼント……?私に……?
<赤いリボンが、月の光に照らし出された。>
sわあ……!すごく、きれい……!これ、リサちゃんが?
rうん。服とか縫ったりするのは得意だからね。
sこ、こんなに素敵なもの、もらえないよ。
rううん、ぜひもらって!シルヴィアのために作ったんだから!
s……大変だったでしょう?
rまーねー!でも、ぜったい似合うと思ったし!
ほら、あたしがつけてあげる!
こうしてこうして……こう!
おー!美悪魔にハクシャがかかったね!とってもかわいいよー!
<とても愛おしそうに……シルヴィアは、リボンに触れる。>
sありがとう、リサちゃん。……一生、大事にするね。
r一生はムリだよ。そんなに丈夫じゃないもん。
sううん。大切にする。私が死ぬまで、ずっと。
r重いよ!
sええっ!?そんな!
rうふふふふ。ねえ、元気、でた?
s私、いま、とってもしあわせ……
rやっぱチョット重いなー。
sプレゼントをもらうのなんて、初めてなんだもの……
ああ……うれしいなぁ。本当に、ありがとう……!
rふふふ、いい笑顔だ。あたしもうれしいよ!
sうふふ……♪
だからね、シルヴィア。
これからどんなにつらいことかあっても、悲しいことがあっても
前を向いて、笑ってね。ずーん、って落ち込むあなたを、あたしは見たくないから。
sリサちゃん……?
r大丈夫。そのリボンに、おまじないもかけておいたの。
あなたはきっと、強くなれる。
sわかった。約束する。
rうん!
じゃ、そろそろ戻ろっか。バレたら大変だし。
s私についてきて。見つからないように行くから。それと、戻ったら、お父さんを起こさないようにね。
抜け出したって知ったら心配すると思うし、疲れてるでしょうから。
rあ……うん、そうだね。
今なら、なんだってできる。シルヴィアは何故か、そんな風に思った。
心が、ぽかぽかと温かかった
みなさん、おはようございます!
お……おはようございます……
体調は大丈夫ですか?少しでも具合が悪かったら、私におっしゃってくださいね。
その他、何か困ってる事があれば、いつでも相談に乗ります。遠慮せずにお申しつけください。
……シルヴィア。何の真似だ?
sなんの真似……って、みなさんのお世話をしているんですよ。
具合が悪かったら言え?相談に乗る?誰がそんな勝手な事をしていいと言った。
s勝手ではありません。これが、私の仕事です。
テメエ……
おっはよー、シルヴィアちゃん。
sおはようございます。
朝から絶好調じゃないの。どしたどしたどした~?
sエルゴラム様。……私、決めました。
私は、私に出来ることを、精いっぱいやろうと思います。
q……ほう。
sあとでお話する時間をいただけないでしょうか?村の人たちのことで、相談したいことがあります。
q素晴らしい!
sえ?
qいやあ~、シルヴィアちゃん。いつの間にか、立派に成長して~!
おじさんはうれしいよ~。おーいおいおいおい……
ずっと引っ込み思案で、自分の意見をはっきりと主張できなかった君が……
こんなにも言うようになって!おーいおいおいおい!
わかったよ。あとでゆっくり、話し合おうね……
sあ、ありがとうございます。・
q……ちなみに、そのリボンはどうしたんだい?
sあ、これですか?これは……
……ちょっと、と思いまして。イメージチェンジを
qそうなんだ。うんうん、いいと思うよ。
よく、似合ってる。
じゃ、また後でね。
s(……何とかして、この環境を、少しでも良くするしかない)
<シルヴィアはそっと、リサの赤いリボンに触れた。>
s(……大丈夫。いまの私でも、出来ることは絶対にある……!)
さて……
そろそろ、かな。
<一方その頃、レインは――>
lほらよっ!
<まだケンカしていた!>
lハハハハハア!どんだけいんだよ、ザコどもが!
捕らえろっ!捕らえてエルゴラム様に褒めていただくのだっ!
生ぬるいこと抜かしてんじゃねーぞ。
タマ取りに来いやあ!
……フウ。
これで大体、一周したな。ま、こんなモンだろ。
久しぶりのジモトだからか……
やたらテンション上がってんな、
レインは<ヴォルカナ>に目をやる。
……夜になるまで、ヒマだな。
寝よ。
story10 真紅の約束
story11 いまの私にできること
story12 突然の出会い
リサちゃん、気に入ってくれるかな。
<小さな木彫りのお守りを、シルヴィアは月の光にかざす。>
うふふ。
何をしている?
ひゃっ!……べ、べつになんでも!
……? さっさと見回ってこい。
はあ……びっくりした……
おい、ガキ。
えっ……
こっちだ。
あ……あなたは……!
ちょっとツラ貸せや。
…………
……
…………
(どうして、悪魔殺しがここに……)
ここならしゃべってもバレねーだろ。
わ、私になんのご用でしょうか……
俺の事は知ってるな?
……サタニアスで、あなたを知らない悪魔はいません。
俺もオメーの事は知ってる。
俺がまだ悪魔殺しだった時から、エルゴラムはオメーに目をつけていてな。
アイツは有能な悪魔を見つけ出す能力に長けている。だから、オメーの事も見張ってたんだよ。
スキあらば手下にしようってな。
……私も、ご本人からそのように聞きました。
ひと目見ただけじゃ、ただのガキだが……
…………
あの……?
エルゴラムは何を考えている?
あの方は、私を<悪魔殺し>にしようとしているんです……
story13 覚悟
<ルカの時と同じく、シルヴィアはそのいきさつをかいつまんで説明した。>
要は、エルゴラムに脅されているわけか。
悪魔を殺さなければ、村の人たちの命はない、と……
アイツも変わらねーよな。
……レインさんは、どうしてサタニアスヘ?
ジモトに帰んのもたまにはいいだろ?
それと、クソ天使の情けねー顔を拝みにな。
!
「大丈夫……あいつはきっと、ここに来る……」
ルカさんのいってたあいつって……もしかして……!
ああ?
……そうだ!レインさんは前にルカさんと戦って、そして……!
なにブツブツいってんだ。
……あなたは、ルカさんを助けに来てくれたのですね!
そして、村の人たちも――
人間?んなもん、知ったこっちゃねーな。
!
俺はエルゴラムと戦う。それだけだ。
そ、そんな!だって私、エルゴラム様から聞いたんです!
あなたの中の善良な心が目覚めたって。だから、サタニアスを出て行ったんだって。
正しくは追放なんだが、まあそういうことにしとくか。
そして今では、人々を助けるようになったって……!
結果的にそうなっているだけだ。
でも……!
……おい。何か勘違いしてねえか?
村の人間を助けるどうこうは、俺の役割じゃねえってだけだ。
……え?
オメーの役割は、何だ?
私の、役割……?
……チッ。オメーを見てるとイライラするぜ。かつてのアイツを思い出す。
……?
自分の世界が思い通りにならねえってずっとウジウジしてたクソガキでな。
他人にすがるばっかで、自分から変わろうなんて気ほども考えねえ甘ったれだったんだ。
だが、あいつ――ロニーは変わった。
会いに行くたびに驚くぜ。コイツ、マジであの時のガキだったのかよ、ってな。
…………
――そして、変わったのは俺も同じだ。
二代目。もう一度聞く。オメーの役割は何だ。
私、は……私の役割は……
…………オメーの中に、光が見える。……まだ、かすかな光だが。
いいか。テメーの道理を通してえなら、覚悟を決めろ。
……!
わ、私は……覚悟……は……
できているつもり、です……
足りねえ。
覚えておけ。守り守られるってのは、綺麗事じゃねえ。
命を懸けた生存闘争だ。
…………
クソ天使の所へ行く。<ヴォルカナ>の監房にいるんだろ?
……はい。
腹をくくれ、二代目。
これからサタニアスは、戦場になる。
……二代目じゃ、ありません。
story14 ゆゆしき事態
<シルヴィアは――駆けた。>
(……戦いが、始まる……!
一刻も早く、みなさんを避難させないと!)
<……が、ふと足を止めてしまう。>
私に、守りきれるの……?
……守らなきゃ、ダメ!
覚悟……覚悟を、もたなきゃ……!
<レインもまた――駆けていた。>
クソ……俺らしくもねえ事をいっちまった。
(けど、どうも気になんだよな、あのガキ
……まあ、未知数の力が眠ってるのは確かだしな。
でなきゃ、エルゴラムが側に置いておくはずはねえ)
……クク、面白くなりそうだ。
(変わってねーな、ココも。
エルゴラムの気配はなし……か)
ま、そのうち出てくんだろ。
!!
よおオメーら。久しぶりだな。
ワリぃが、道を開けてもらうぜ!
…………
……
な……なんで……?
<住人たち全員が広場に整列させられていた――>
どこ行ってたの~?シルヴィアちゃん。
エルゴラム様……!これは一体、どういう事ですか!?
急用でね。寝てるところ悪いんだけど、集まってもらったんだ。
えー、オホン。……みなさん。ゆゆしき事態です。
あるひとりの住民が、悪魔と密接な関係を築いていた事が判明しました。
!!
その住民をご紹介しましょう。……さあ、こっちだよ。
リサちゃんっ!
story15 発現
…………
そして、仲良くしていた悪魔というのは、ご存知――
みなさんのお世話係のシルヴィアちゃんでーす。
「「「…………」」」
……ちょっと待ってください。私が村の人と仲良くなって、なにがいけないんですか。
いけなくはないよ。別に禁じてるわけじゃないし。
問題なのはねえ。度が過ぎちゃった事なんだよねえ。
な……なにを……
答えてくれるかな、リサちゃん。
シルヴィアちゃんがつけてる、この赤いリボンのこと。
!
……そのリボンは、あたしがプレゼントしたものだよ。
それの、なにがいけないの?
いいですか、みなさん。ぼくたちは二人の様子をずっと監視していました。
するとどうでしょう。リボンを贈った次の日から――
シルヴィアちゃんは、リサちゃんにこっそりと食料を渡すようになったのです。
……なんですって!?
悪魔に近づき、懐柔し、自分を特別扱いさせる――
これは大問題だ。
デ、デタラメを言わないでください!
リサ……あんた……
待ってよ!あたし、食料なんてもらってない!
そのリボンは、友情の証として贈っただけ。ただそれだけなんだよ!
そ、そうです!みなさん、そんなウソ、信じちゃダメです!
(ウソかホントかなんて関係ないんだよ、シルヴィアちゃん。
見てみなよ。……彼らの顔を)
……こっちは、死にそうになりながら働いてるってのに……
……アンタ、へらへら笑いながら、そんなこと考えてたの?
……ふざけんなよ!
(君がプレゼントをもらった。それだけで、充分なの。
――ギリギリまで精神を追い詰められている彼らにとっては、ね)
……何を考えているんですか、エルゴラム様!
さてみなさん。この大問題、村長のぼくとしては、放っておくことなどできません。
犯した罪は、しっかり償ってもらう。
アンタは、お仕置きされるべきよ!
…………!
それも、とびっきりキツイやつだ! 子どもとか、もう関係ねぇ!
俺たちだって、ひどい目にあってんだ……!だったら、コイツも!
<憎しみのこもった目が――リサへと向けらる。>
――どう思う? シルヴィアちゃん。
え……
ぼくとしては、みんなのいう通り、きつ~いお仕置きをするべきだと思うんだよねえ。
何を言っているんですか!そもそも、こんなのは言いがかりです!
お仕置きもなにもありません!
だそうですよ、みなさん。シルヴィアちゃんも、リサちゃんのことが大事らしい……
この……女悪魔……!
人のよさそうな顔して……!
ち、ちがうんです……!誤解です……!
<憎しみの対象が――リサからシルヴィアへと――――変わっていく。>
あたしたちを気にかけていたのも……!ぜんぶウソだったのね……
村のみんなより、ガキ一人が大事だってのかっ……!
……やめて。そんな目で、私を見ないで……!
悪魔め……!ああぁ……なに、これ……
シ、シルヴィア……?
憎たらしい、悪魔めっ――!
ちから、が――!
いっただろう、シルヴィアちゃん。
君はやれば出来る子なんだ。
story16 憎悪の翼
<シルヴィアの翼が黒々と光り輝く。>
シルヴィア!どうしちゃったの!?
体の……奥から……力が!
な……なんだ……!?
人間の<憎しみ>を糧とし、パワーに変える――
それが君だよ、シルヴィアちゃん。
にく……しみ……?
それだけだったら普通だよね。他の悪魔にも、同じヤツはいるし。
君がすごいのは、少ないエサで爆発的なパワーを得られるところだ。
……君は、落ちこぼれじゃない、特異体質の、天才なんだよ。
……イヤ。そんな力、いらない……
人から憎まれて得る力なんて、私は欲しくない!
シルヴィア……!しっかりして!
あぁぁ……!ダメ!離れて、リサちゃん……!
イヤ!ぜったいに、離れない!
「「「…………!」」」
<シルヴィアの姿を見て、憎しみに満ちていた住民たちの顔つきか変わった。>
じゃ、第二段階いきますか。
よろしく~。
みな、聞け。エルゴラム様のご意向だ。――ガキヘのお仕置きはナシだ。
が、それで終わりというわけにもいかない。よって――
連帯責任として、代わりに貴様らに罰を受けてもらう。
「「「!!!」」」」
ど、どうして俺たちがっ……!
シルヴィアちゃん。……試しに、村の人間、何人か殺してみようか。
!!
ガキのお仕置きが出来ないなら、そうしてもらうしかないよね?
め……めちゃくちゃだっ!
そんなこと……できるわけないでしょう……っ!
だーれーをーこーろーさーせーよーうーかーなー?
ヒィッ!
や……やめてくれっ!
<憎しみから恐怖へ――住民たちの感情が移り変わっていく――>
約束が違います……!村の人たちは、殺さないって……!
一人も殺さないとは言ってないよ?
……お、お願いします。エルゴラム様。考え直してください……
ン~、そう言われてもねえ……
<エルゴラムの前で、シルヴィアはひざをつく。>
この通りです……なんでも、しますから……
なんでも?
シルヴィア、ダメッ!そんなヤツのいうこと、聞いちゃダメだよっ!
じゃあ、悪魔殺しになるって、約束してくれるかい?
……はい。なります。なりますから……
ウフフ……しょうがないなぁ。
じゃー、代わりにぼくがコイツらを殺ってあげるね。
!そ、そんなっ!
だーれーをーこーろーそーうーかーなー?
う……うわあぁぁぁぁっ!
逃げたヤツは全員ぶっ殺す。覚悟しとけ。
あ……うぁ……
やめてください!お願いします!やめて……!
離してよ。殺せないじゃない。
やめてえぇ……
……もうやめて!
エルゴラムさん。……私が死んだら、許してくれる?
story17 守護天使と破壊の悪魔
…………
(……何かが、おかしい。何か、が……)
……わたしのカンは、よく当たるからなあ。
何だ。眠れないのか?
エルゴラムのやつ、なにか動きを見せましたね?
お前……なぜ知っている?
やっぱり!
…………
(もう、大人しく捕まってる意味もない……!
アイツはまだ来ないけど……やるしか、ない!)
なあ。眠れないなら、俺が添い寝してやろうか?
(魔術のかけられた頑丈な鉄格子。わたしの拳でも、壊すには時間がかかる。
こうなったら――)
……そうしてもらおうかしら。
お……やけに素直だな?
ほら、来なさいよ。……抵抗なんて、しないから。
……へへ。いい顔してるじゃねえか……
<監房の鍵が開けられる。>
(そのヘンタイヅラ、思いっきりブン殴ってやる!)
朝までしっぽり、楽しもうぜ――
がっ……
なんだ!?
お楽しみのところ、邪魔するぜ。
レ……
なんだ、鍵あいてんじゃねーか。
……レイン……
待たせたな。
遅いぞこらあぁぁぁぁぁっ!
うるせえ。久しぶりのジモトなんだ。少しぐらい楽しんだっていいじゃねえか。
して、状況は!?
エルゴラムが動いたヤツは村にいる。
ブチのめした幹部から聞き出した。間違いねえだろう。
わかった。……はぁ。
はあぁぁぁぁ……!
あん?
エーーーーーーールーーーーーーーゴーーーーーーーラーーーーーーームーーーーーーーーーーーーーー!
っせーなゴラァ!鼓膜破れんだろうが!
行くぜ、レイン……人間たちを……
守ったらーーーーーーーーーーい!
言い忘れてた!!
あ?
助けてくれてありがとう!恩に着る!さすがはわたしのレインだ!
あとでいっぱいナデナデしてやるからな!
フン……