【黒ウィズ】空戦のドルキマスⅡ Story4
story まさかの朝食会
エルナが、君たちの前のテーブルに朝食を並べていく。
君とウィズ――そして、ローヴィとディートリヒの分を。
君たちは、ディートリヒから朝食の席に招かれていた。
なぜか。
まさか、朝食をいっしょに食べるためだけに、なんてことはないだろうけど………
ドラゴンの件では、ルヴァルの存在は伏せた。
だが、勘のいいディートリヒのこと、助っ人がいたことを察しているかもしれない。
重い気分で、君はテーブルに置かれたサラダにフォークを突き刺し、野菜を口に運んだ。
補給が済んだばかりのためか瑞々しい野菜だった。しかし、とても味を楽しめる気分ではない………
ディートリヒの方を見やると、ナイフとフォークを優雅に駆使し、ソーセージを一口大に切り分けていた。
案の定、彼が口にしたのは物騒な話題だった。
もっとも、この戦力で挑めば、落とせないことはないはずですが――
正直に言って、あれは予想外だった。こういうことがある、というのは、戦争の醍醐味だな。
場合によっては、魔法の力、借りることになるかもしれん。
魔法は嫌いなんじゃなかったの、と、君は尋ねた。
言って、ソーセージを食べ始めるディートリヒヘ、エルナが、あきれたように口を出す。
君とウィズは思わず顔を見合わせた。
もし、それがこの朝食会の理由だとしたら……いやいや、彼に限ってそんなわけが……。
ディートリヒはソーセージを呑み込み、ナプキンで口元を拭いてから答える。
いつもどおりの口調に、君の背筋が冷える。
つまり、戦力を減らす前提でなら、なんとかする手はあった――というわけだ。
当然だよ、と君は答える。
“資源”は有効に使わなければな。
ウィズが、君の肩の上でそっとささやいてくる。
確かに。ディートリヒやローヴィに対して、にこうも自然体でい続けられる人間など、いったいどれほどいるだろうか。
狂った調子を戻そうとするように、ローヴィが発言した。
ディートリヒの言葉に、君は違和感を覚える。
彼のこういった強硬な姿勢は、対〈イグノビリウム〉戦役で目の当たりにした。
「否、だ。ローヴィ。たとえそうなったとしても、進軍だ。
ここに来るまでに費やした時間、戦力、それを考えれば、退くことなどありえない。」
対〈イグノビリウム〉であれば理解もできた。あれは、それほどの意思、徹底的な強硬さがなければ勝てない敵だった。
だが、ドルキマス王は小物であるという。
だからこそ、ディートリヒがここまでドルキマス王の打倒にこだわることが、君には不思議だった。
夢見るような瞳で、エルナが言う。
ディートリヒの返答は、あくまでも淡々としたものだった。
story 天使降臨?
クラリア艦のブリッジで、クラリアとレベッカが、小さな写真とにらめっこをしている。
鉄機要塞攻略戦の要諦打ち合わせのためクラリア艦を訪れたフェリクスは、眉をひそめてヴィラムに視線を送った。
クラリアは、どうだ、とばかりにテーブルに置いてある写真を見せる。
そこに映っているのは――
天使と言われればそう見えなくもないかも、というくらいの影だった。
きっと、天の使いが協力してくれたに違いない。天もベルク元帥の勝利を望んでいるのだ!
拳を握って力説するクラリアに、フェリクスは笑いながら冗談を投げる。
捨てがたい。
そう告げるレベッカに、その場の全員が、ぱちくりと目を瞬かせた。
それに、古代の遺跡を調査するとね、どの文化圏でも、共通の“御使い”の姿が描かれているのよ。
時期的には、人類が魔法を失い技術進化の停滞を招いた暗黒時代の直前にあたるの。つまり――
この“御使い”こそが、この世界の人間から魔法を奪った張本人! なんじゃないかと思っているワケ!
クラリアたちは、顔を見合わせ。
答えた。
憤慨するレベッカから顔を背けて、フェリクスは、やれやれとぼやいた。
兵士たちに与えられる食事を前に、ルヴァルは複雑な表情でつぶやいた。