【白猫】ダークラグナロク Story0
2019/07/14
story
黒の王国にこんな場所、あったんだ。
驚きましたか?
白と黒、ふたつの大地からなる世界ですが、別に島がひとつもないわけじゃないんですよ。
……ここが、アマリアの言ってた場所なんだよね。
そう。ここが波蝕の島。
王の後継者を選別する六大貴族が一つ、アルカマル家が闇の王より与えられし領土です。
やせ細り、枯れ果てた島です。
いきなり話を聞かされた時は、驚いた。
闇の王を討つだなんて……
闇の王はいつの日か、必ず黒の王国に破滅をもたらします。
当代の王は黒の民のことなど、何一つ考えてはいません。
悪いやつなら、あたしが、すぐにでも――!
その力はあなたにはない。
!
そして私にも。
アマリア……
王がその気になれば私たちなど……
闇そのものたる王に我らが勝てるはずもない。自明の理です。
そんなのずるいよ。闇の力の源だからって、なんでも好き勝手していいなんて、そんなわけない。
ええ。だからこそ討たなくてはならない。
だからあなたが行くのです。わかりますね、セレナ?
この島に、時空の停止を行う術式を施した祠を用意しました。
闇の王を倒す手段が見つかる、その時まで、あなたは待つのです。
……でも。
あなたを今日まで、次代を継ぐに相応しい闇の王の後継者として育ててきました。
後継者として、表舞台に立たせることが叶わぬこと、申し訳ありません。
そんなの気にしないで。あたしなら、大丈夫。
……ありがとう。
では、セレナ。武器を構えなさい。
うん。
これが最後です。私があなたに授けてきた全てを、見せてください。
言っておきますが、もし手を抜こう――
手を抜こうものなら許しません。剣を抜く以上、力の限りを尽くすこと、でしょ。
何回も、聞いたってば。そのセリフ。
ふふ、そうでしたね。
心配なんかさせないから。あたしなら大丈夫だって、安心させたげるよ。
なんたってあたしは、天才美少女で、闇の王の後継者の、セレナ様なんだから!
まったく、あなたは……
じゃあ行くよ、アマリア!
……来なさい、セレナ!
story
はぁあああ!!
はぁはぁはぁ……強くなりましたね、セレナ。
あたしを育てたのはアマリアだよ。強くて当然だし。
はい。あなたは私の自慢の、娘です。
……ごめん。
何を謝るのですか。
あたしに、力があれば……! 今、闇の王を倒すだけの、力さえあれば……!
…………
黒の王国の人たちも、アマリアのことも、みんな助けられた。
いつの日か目覚めて闇の王を倒せても……もう、アマリアは……!
セレナ。
この時代に闇の王を倒す術はありません。
誰かがやらねばならぬことです。
確かに、私は生きていないでしょう。
けれどいつの日か、あなたが目覚めるその時、私の思いを継いだ者がきっとあなたを支える。
我が一族の末裔が、闇の王を倒す手段を見つけ出します。その時、きっとあなたが……
……うん。わかった。わかってる……! でも……!
あなたは優しい子です。でも、泣き虫なのは直さないと、ね?
でも、やっぱり、無理だよ……あたしにはそんな力なんて……
私は信じています。あなたのことを。
だからあなたに託すんです。あなたなら、できるから。
それとも私は、見る目がなかったのでしょうか。
そんなことない! 絶対にそんなことない!
ふふ、だったら安心ですね。
……ずるいよ。そんなの……
闇の王を倒してください。この世界を頼みます。
……わかった。
約束するから……あたし、いつか絶対に、闇の王を……倒すから。
……はい。――!
アマリア?
隠れなさい、セレナ。
え?
何があっても、決して姿を見せないで。
どうしたの? ……どういうこと?
はやく!
わ、わかった!
ごきげんよう。黒の王国六大貴族、アルカマル家当主、アマリア様、ですかな?
……どなたでしょうか。
闇の王に絶対の忠誠を誓う者でございます。……して、後継者様は、どこに?
答えると思いますか?
いいえ、思いませぬ。
……この度は謀反の香りを嗅ぎ付け参上いたしました。
なんのことでしょう? 根拠は?
根拠など必要ありませぬ。民とは嘘をつき、騙し、欺く獣。信じていいのは闇の王だけです。
王のため、わたくし独断にて……闇の王の後継者と、あなたの命、貰い受けようかと……
!
<アマリアの体を、虚空より伸びる<手>が貫いた。>
……がはっ!
ぁ……!!!
後継者様は、自分で探します。
……!! ……!!
瞼の裏に、その光景が、焼き付いている。
声を上げることすら出来なかった。
逃げ出すことしか出来なかったんだ。