【白猫】ガールミーツSHARK Story1
2019/08/13
ガールミーツSHARK Story1
後日談
目次
story1 <鮫宮>へご案内
あるところに、『泳ぐ古代遺跡』の調査にやってきた、ひとりの探検家がいました。
「月刊ミューの編集長もびっくりね!」
バカンスで遊びに来ていた少年少女たちもいました。
「バナナボート! トロピカルドリンク! そしてビーフ!」
みんなでわいわい騒いでいると、遠くのほうから声が聞こえてきました。
「しゃう~~~~~!」
見ると、サメの子どもがいじめられているではありませんか。
一行は、すかさず助けに行きました。
サメの子どもは、なにかお礼がしたいといい――
一行を<鮫宮>へと招待したのでした。
「まさか……メッサーくんのお家って……」
「フィオナさんがいってた……泳ぐ古代遺跡?」
「ぎにゃーーー! 食べられるーーー!」
ガールミーツSHARK
とうちゃく~!
超たのしかったな!
超こわかったわよ!
未知の遺跡、未知の歴史!サメ酔いも一気に吹き飛んだわ!
メッサーくん、一体どういうことなの?
なにが?
あなたのお家が、泳ぐ遺跡だなんて!
なによこれ、どうなってるの? 海水はどこへいったの? どうして空気があるの?
ふふっ……ふふふふふ! 何もかもわからないわー!
あのね、<鮫宮>はね、この世の楽園なんだ。
さ、ぼくのヒレについてきて!
……楽園、ね。
……どこが……?
ホントに楽園なら、バアさんになっても居座ってやるっつの!
まって、メッサーくん!
みんな、いくわよー!
へいへーい。
ここが鮫宮ね……
美術品、ないかな……?
どこからどう見ても……
普通の遺跡ですね。
ふむふむ……なるほど……
……ふふっ……
story2 ようこそ!
この建築様式……ふふっ、なるほど……
まったく見当がつかないわ。
美術品を発見できれば、なにかわかるかもですが……ガレキばっかりですね。
ついた! ここからさきが<鮫宮>だよ! みんな、心のじゅんびはいい?
いつでも。
ひらけ、サメー!
なっ……
ようこそ、<鮫宮>へ!
「「「なにこれー!?」」」
よくぞおいでくださいました!
ど、どうも……
メッサーを助けてくださいまして、まことにありがとうございます。
お礼に、是非ともみなさまをおもてなしさせてください。
ちょ、ちょっと待ってください!なんですか、ここは!?
メッサーから聞いておりませんか?
この世の楽園……<鮫宮>でございます。
これ……マジで古代遺跡か……?
違う世界に来たみたい……
私どもオトサメ族の夢の結晶でございます。
オトサメ族……? 聞いたことないわね。
このような見た目ですが、恐がらないでいただけますと幸いです。
(……半獣と似たようなものでしょうか?)
(こんなにかわいい子が、将来はサメ人間に?)
(生命の神秘ですね……)
じゃあ、この泳ぐサメ遺跡も、オトサメ族の……?
ええ……先祖は偉大でございました。
<フードシャークコート>では、得もいわれぬごちそうをご賞味いただけます。
お……おい……見ろよ、あれ……
霜降りのお肉が、山のように積まれてます……!
ご希望の料理などございましたら、なんなりと申しつけください。
こちらは<シャークリゾート>でございます。
<シャークビッグブール>に<ギガシャークスライダー>、<マウンテンシャークスパ>に<鮫宮の湯>など、様々なプールや温泉をお楽しみいただけます。
た……楽しそう……!
煌びやかな光と音による、<ナイトシャークショー>も見ものでございますよ。
…………
いかがでしょう? 私どもの街は。
争いもシャクレもなく、平和で満ち足りた生活を送ることのできる世界。それが<鮫宮>なのでございます。
シャクレってなによ。
まさに楽園! パラダイス! あたし、超気に入った!
でも、食べものとかすごく高そうだわよ。おかね、たりるかしら……
みなさまからお金をいただくなど、とんでもございません!
え、じゃあ……ぜんぶタダってことですか!?
もちろんでございます。<鮫宮>の食と娯楽を、心ゆくまでお楽しみください。
うっひょーーーーー! ビーフ! ビーフ! 霜降りビーフゥ~~~!
ねえ……どう思う?
ギガシャークスライダーは乗っておきたいですね……!
いや、そういうことじゃなくて……
(ちょっと、おかしくない? いくらなんでも――)
リルテット。アンタを誘ったとき、教えたわよね。
社会人たるもの、バカンス中はバカになるべし――
あっ……
フゥ~~~~~~!
ほらほら、みんなも!
じゃ、じゃあ……お言葉に甘えまして……
遊びましょうか!
♪
私はさっそく調査をするわ!
フィオナさん、おともします!
ほら、ビーフ食いにいくぞ!
もう……
メッサーくん一緒に遊ぼ?
見どころがいっぱいね!
ビーフ! ビーフ! ビーフ!
そんなに急がなくても……
まずはどこに行こうかな?
story3 シャークなバカンス
フィオナさん!美術品を発見しました!……サメの形をした陶器です!
見事な縞模様ね。
ふむふむ……釉薬(ゆうやく)の表情が実にソフトです。おそらく灰釉(かいゆう)でしょうか。
……飴釉(あめゆう)のようにも見えるけど?
あれ……というか、見る角度によってぜんぜん違ってきません?
……本当だわ。なにこれ、まるで統一性がないわね……
うーん、これは難問ですね。有機物を詳しく分析できればいいのですが。
専門の機関に持ち込まない限り、それは無理な話ね……
…………
……
あ~!マジでうまかったな、ビーフ!
はぁ……
おーい、リル。いいかげん、テンションあげてけって。
リル……
あたしのこともシャルって呼んでいーんだかんな♪
じゃあ……シャル。あんまり、サメ人間に心を許さないほうがいいと思う。
おっ!<マッサージサロン・ミス鮫宮>だってよ!いってみようぜ、リル~♪
ちょっと……
では、施術を始めますね~♪
わ、私はいいって……
いーからいーから♪
あっ……
あぁ~……
…………
……
ひゃっほーー!<ギガシャークスライダー>、さいっこー!
シャルロットさん!スピード出しすぎでは~~
スリルがあっていいだろー!
ありすぎです~!
き、気をつけてくださいねー!
あんなに飛んだの、はじめてじゃないかな……
……でも、とっても楽しそう!
……私も、乗ってみようかな。
ふふ。リルテットも、なんだかんだいって楽しんでるじゃない。
フィオナ、いつの間に。……調査は?
小休止よ。……ん~!このトロピカルドリンク、信じられないほどおいしいわ!
あー、楽しかった!もっかい行こうぜ!
わ、私は遠慮しておきます~。
……じゃあ、私が。
メッサーくん、私たちも乗ろっか♪
いってらっしゃーい。
…………
……
<ナイトシャークショー>、すごかったですね!
目がチカチカする……
……地上はもう夜なんですよね?
ここにいると、時間の感覚がわからなくなってくるわね……
今度はダンスショーが始まったわ!
シャワイアンダンスっていうらしいわよ……もぐもぐ……
おーーーい!あっちでマグロの解体ショーがはじまったぞー!
なんですって!?見にいくわよ、 主人公!
あの……みんな。なあに?
ぼくといっしょに遊んでくれて、ありがとう。
お礼なんていいんだよ。お友だちなんだから。
お……おともだち……
<メッサーはサメザメと泣いた。>
泣くことないでしょ……
……いままで、たくさんのにんげんを連れてきたけど……
みんなが、いちばんやさしいよ……
ちょっと待ってメッサー。……私たちが初めてじゃないの?
ぼく、すぐにいじめられちゃうから……
助けてくれた人を、そのたびに?
…………
あ、あのね、みんな――
メッサー。
……ちょっと、いいかな?
う、うん……みんな、またあしたね……
……?
マグロを食うべー♪
ほんと、よく食べるわね……
まだまだ調べ足りないわ!
私は温泉にいってきま~す。
あ、それなら私も!
マグロ、うみゃー♪
うみゃー♪
リルテットさんも、温泉いきます?
……いこっかな。
いざ<鮫宮の湯>へ!
story4 おばあちゃん
おはようございます。ゆっくりお休みいただけましたか?
ベッドがふかふかすぎて、溶けるかと思いました。
よーし、今日も食べて飲んで遊ぴまくるぞーっ!
ねえ、そろそろ帰らない?
なぬ!?
もう、じゅうぶんもてなしてもらったでしょ。
そうですね……あんまり長居するのも、ご迷惑になりますし。
迷惑などでは決してございません!みなさまは、メッサーの恩人でございますから。
ほら、サメたちもこういってるし、もうすこし遊んでいきましょうよ。
……アタシ、まだ<スペースシャーキット>に乗ってないもの!
だよなー! じゃ、朝メシお先ーっ!
私は先に帰る。日の光を浴びたいし、友だちに手紙も出したいから。
……そういえば、フィオナはどこにいったの?
一睡もせずに、あちこち調査してるみたいです。
……外の世界は、苦しみや悲しみに満ちております。
……?
そのような世界に戻る必要などないのでは?
あなた方には。この世の楽園<鮫宮>で、何にも煩わされることなく、末永く幸せに過ごしてほしい……
私どもはそう考えております。
ちょっと極端じゃない?
メッサーも、みな様とずっと一緒にいることを望んでいますよ。
…………
ねえ、メッサーくん。また戻ってくるから。ね?
みんな、あのね……
……?
<鮫宮>はね――!
メッサー、ちょっとこっちに来てくれるかい?
外の空気を吸ったせいか、昨日から調子が悪いようで。
なにかいいかけてたけど……
<鮫宮>はいいところ、帰る必要なんてない。……そんなところでしょう。
ほんとうにそうかしら?なんだかシャク然としないわ。
シャハッ!
……
失礼しました。
どうしても出ていかれるというなら、止めはいたしません。
……ですがひとつ、問題がございます。
?
みなさまは、こちらでお食事をなさいましたね?
はい、お腹いっぱいいただきました。ごちそうさまでした。
実は、<鮫宮>の食べものを口にしたまま地上に出てしまうと、肉体と精神が急激に老化していってしまうのです。
……はい?
得も言われぬ極上の昧を追求した結果でございまして……まことに申し訳ございません。
えっと……なにいってるの?
外に出た途端、あっという間に年老いてしまうということです。
はぁっ!?ふ、ふざけないでよ!
一応、回避する手段はございます。
もう一度、外界の食べものを摂取すればよいのです。
ごめん、全然わかんない。だいたい、ここの肉とか果物とか、地上から持ってきたものじゃないの?
いいえ、すべて<鮫宮>で生産されたものです。
それはすごい……って、すごくない!どう考えても不可能では!?
と、とにかく、何かないのですか!?
外の食べものは一切ございません。
じゃあ、出られないじゃないですか!
ですから、ずっと<鮫宮>にいてくだされば良いのですよ。
外に出たら……おばあちゃんに……
…………
「リルテットさーーーん! おかえりなさ――」
「ただいま、じゃ……」
「…………」
「……わからんか? わたしじゃ、わたし……フェネット……リルテッカ? どっちじゃったかの……?」
無理。
どなたか、外の食べものを持っていればいいのですが……
ごめん、私はなにも……
同じく……
……シャルロットさんとフィオナさんにも、聞いてきます!
……あっ!
えーと、確かお二人は……
……鮫宮は本当に広いなあ……
……迷子になりませんように。
story5 KANIKAMA
フィオナさん、ちょっとお聞きしたいことが――
ちょうどいいところに来たわね。これを見なさい。
……あらっ!なんて美しい宝石なんでしょう!
ふふっ……私の見解だとね……
……シャルロットさん、ちょっとお聞きしたいことが――
ちょうどいいところに来たな! 朝風呂いくぞ!
えっ?
温泉入って、牛乳飲む! ビアにも至福の時間ってやつを教えてやんよ!
遅くなってすみません! 二人とも、なにも持ってないそうです!
ずいぶんとホカホカじゃないの。
宝石にもくわしくなりました!
?
食べもの、アイリスさんたちが持ってるみたいですよ。
……そうなんですか?
キャトラのカニカマ好きが幸いしました。
<アイリスは、ポケットから小さな容器を取り出した。>
食べたいというので、持ってきてたんです。
主人公のポッケにも入ってるわよ。
♪
はあ……よかったです!
……あの、少々よろしいですか?
?
その……実は私ども、カニカマを食したことが一度もなく……
……ははーん。なんだかんだいって、興味があるのね?
一切れぐらいなら、あげてもいいわよ!
ありがとうございます!ただ、他の住人の目もございますので……場所を移動してもよろしいでしょうか?
こっそり食べたいわけ? おぬしもワルよのー。
では、こちらへ……
…………
……
歳を取る、ね……楽園に住む代償といったところかしら。
この<鮫宮>……楽しいは楽しいけど、うさんくさくない?
何か裏があるでしょうね。一族の住処というよりただのリゾート地だし。
住人たちもどこかヘン。ひとり残らず全力でもてなしてくるんだもの。
思えば私たち、ちょっと歓迎されすぎですよね……
閉鎖的な街なのに、何でもありすぎるのもおかしい。
冷静になってみると、おかしなところだらけですね……
……早いとこ、ここから出たほうがいいかもね。
なら、まずはカニカマよ。……キャトラたちは?
住人の方と、どこか別の場所に……
出しなさーーーい!
……強力な魔術がかけられているみたい。
ちょっとサメたち!どういうことなのよ、これは!
…………
……ちょっと? ちょっとーーーーーー!
ぎにゃー! 閉じ込められたー!
どうしましょう……