【白猫】ブルーミングブレイズ Story1
ブルーミングブレイズ Story1
後日談
目次
登場人物
story1 ショッピンガールズ♪
<バンズ島で出会った女性――メリシャに頼まれ、怒涛の勢いでガールスバンドを組むことになったカスミ、ルカ、ノア、マールは――>
ねえ見て見てこれ~!この服、すっごく可愛くない!?
こっちのスカートも、フリルがひらひらなのですー。
ここはひとつ、クールでエッジィなコーディネートにするのも手かと!たとえば……こんなのとか♪
……バンドの衣装選びなんて、気が早いと思うんだけど?
お菓子より甘いよ、カスミさん~!せっかくバンド組むんだもん!衣装も気合いれないと!
カスミさんもこっちにくるのです。試着してみるのです♪
わ、私は普段着でいいわよ……だいたい私は、やるって決めたわけじゃ……!
ふっふっふ~……そうは問屋が逃がしませんよっ!
それ間違ってるから……!それに集合時間、もうすぐだけど大丈夫なの!?
集合場所までの道のりは把握済集合場所までの道のりは把握済みですとも!どーんと頼りにしてください!
すみませんメリシャさん!!迷子になって遅れました……!!
――フフ、いらっしゃい。待っていたわよ。
遅刻してしまって、ごめんなさいなのです……
そんな、謝らないで?私からお願いしたことだもの。
……あ、見て見てみんな!お花だ~!
薔薇ね……綺麗……
いろんな色のお花が咲いているのです♪
薔薇を育てるのがお好きなんですか?
フフ、まあね。さ、まずはお茶でも飲みながら、自己紹介もかねてゆっくりお話しましょう?
――では、お話を整理するのです。メリシャさんはある日、気づいたら記憶を失ってて……
手元には昨日、風で飛ばされた楽譜が残ってたんだよね。
そして現状、唯一の手がかりであるその曲を聴くことが、記憶を取り戻すきっかけになるかもしれない――ということでしたね!!
……ずっと疑問なんだけど、どうして私たちなの?
直感よ。あなたたちに演奏してもらいたい。出会ったとき、そう思ったの。
……答えになってない。だいたい言っておくけど、私たちみんな、楽器は素人よ?
その点は安心して。私が一から教えてあげる。
不思議なことだけど……楽器の扱いなら一通り、覚えているようなの。
そうなんだ~……
もしかしたらメリシャさんは、音楽をお仕事にしていた人だったのです?
かもしれないわね。でね、幸い数日後――この島でライブフェスが開催されるの。
エントリーも、どうにか間に合ったわ。
ライブということは、つまり……大勢の人たちの前で演奏するということでしょうか!?
そ、そんなの聞いてない!!
どうして、ライブに参加する必要があるのです?
観客は多い方が、練習にハリが出るでしょう?
ですね!!聴いてくれる人が多いほど、やりがいがありますとも!
フフ。もちろん、お礼も弾むわ。
無理よ、無理!ぜったい無理……!!私、やっぱりおりる……!!
え……カスミさん、やめちゃうの?
ノアは、みんなで一緒にやりたいのです……
……っ!
フフ、決まったようね。それじゃあさっそく、スタジオにいきましょうか。
あ、ねえねえメリシャさん!あたしたちね、バンドの衣装買ってきたんだ~♪
練習を始める前に、試しに着てみたいのです。
あらあら……どんな衣装か楽しみだわ。
しゃらららーん☆お召し替え完了です!
とっても可愛いのです♪ゆら~り♪
えっへっヘー♪これであたしたち、立派なガールズバンドだねー!
カスミさんも隠れていないで、出てくるのです。
や、やっぱり私……着替えるから……!に、似合ってないもの……!
あら、みんな素敵。とてもよく似合っているわね。それじゃあスタジオに――
あ~、カスミさん!?だめだよ脱いだら~!
でも……っ!
大丈夫!どこからどう見たって、都会のシティガールですよ!!
ルカさん、意味がかぶってるのです。
フフ……
ここがスタジオ……!なんかワクワクするよ~♪
ぴかぴかの楽器がたくさんなのです♪
ではパートを決めましょう。そうね……あなたたちの性格から考慮すると――
はいはいは~い!あたしギターやりたい!一番カッコいいし!
ノアはドラムがいいのです。丸くて美味しそうで、楽しそうなのです♪
迷いますね……カスミさんはどの楽器がやりたいですか!?
……一番目立たないのがいい。
む、いけませんよー?そんな後ろ向きな気持ちでは、最高の音楽は奏でられません!おそらく、きっと!!む、いけませんよー?そんな後ろ向きな気持ちでは、最高の音楽は奏でられません!おそらく、きっと!!
○△×□◇※$~~~~!!!
…………
そうね……ノア、あなたはキーボードでいきましょう。マールはドラムかしらね。
えっ?
ルカはベースをお願いね。カスミ、あなたはギターよ。
え、あ、はいっ!!
はぁ!?そんな、いきなり勝手に――!
さあさあ、時間は限られているわ。さっそく練習を始めましょう♪
story2 つぼみガールズ♪
ドラムは、いわば<根>よ。精確なリズムを刻んで、サウンドを支えなさい。
これがすねあどらむで、こっちがばすどらむと、らいどしんばる?これは、たむたむ?
……いっぱいありすぎて、頭がこんがらがるよ~!!
フフ。まずは太ももを叩いて、リズムを刻む練習よ。
ベースはバンド全体を繋ぐ<茎>。ギターでは出せない低音で、ボトムを固めるのが役目。
強く激しく、かき鳴らしたらーーーい!!!
こぉら。あなたは縁の下の力持ちなんだからね?
……あ、なるほど!ギターとは根っこから別物なんですね……!
キーボードは鮮やかな<葉>ね。広い音域と優しい音色を駆使し、ギターとは異なる色彩でサウンドを彩るの。
ボタンがたくさんで、アルゴノート号のコンソールみたいなのです……
フフ、大丈夫。まずは指のフォームと楽譜の読み方から、ゆっくり覚えましょう?
がんばるのです……!
そしてギターはー<花弁>。変幻自在の音色を操り、アンサンプルの要となる鮮烈なる華……
……タブ譜?コード……?五線譜とは違うの?なにそれ?
琴なら少しだけ触ったことがあるけど……まるで別物じゃない!
大丈夫よ。あなたなら、きっとできるわ。
***
ぜんぜんだ~~め~~だ~~……
フフ。初日の練習、お疲れ様。
楽器に触るのは初めてですが、我ながら不甲斐(ふがい)ありません……!
前途多難なのですー……そんなに落ち込まないで。あなたたちはまだ初心者なんだから。
でも本番まで、そんなに時間あるわけじゃないし~……
まずは音を奏でることを、純粋に楽しむのが大事。ね?
……楽しむもなにも、コードを覚えるので精一杯よ……指先が痛い……
本当はギターがよかったけど……ドラムをぽこぽこ叩くのも、けっこう好きかも~♪
キーボードの音色も素敵なのです。上手く弾けるようになったら、きっと……楽しいのです。
ベースも、縁の下の力持ちなんて、なんだかやりがいを感じます!
……どうして私がギターなのよ。一番目立つじゃない……
フフ。さあ、今日はもう、暗くならないうちに帰りなさい。――明日もよろしくね。
おかえりなさい、みなさん!バンドの練習はどうでしたか?
いやあ……道のりは厳しそうです……
でも、練習は楽しいのです♪
だよねだよね~♪先生がメリシャさんでよかった~!
それならよかったです!そのメリシャさんって、どんな人なんですか?
すっごく優しいんだよ~!すっごい美人だし~。
あの人のために、全力でがんばったらーーい!!……そんな気持ちになりますね♪
……そうかしら。なんか、怪しくない?
怪しい――ですか?
だって、明らかに変でしょう。初めて会った私たちに、いきなりバンドやれとか……記憶の件だって、本当かどうか……
でも、お花が好さな人に、悪い人はきっといないのです。
そうそう♪気にしすぎだよ~。
さあ、みんなで夕食の支度をしましょうか♪
……シズさん。少しだけ、お話いい?
シズでいいですよ、カスミさん!どうかしましたか?
それじそれじゃあ、シズ。あなたってたしか――<情報の精霊>なのよね?
はい、その最新の亜種です!
調べ物とか得意?もしよかったら、お願いしたいことがあるんだけど――
メリシャさんの素性を調べてほしい――ですか?
用心のために、ね。詐欺とかかもしれないし……あの子たちは親切すぎるから。私くらいは一応、身構えておこうかなって。
引き受けました!本業の合間の作業になるので……時間がかかるかもしれませんが……
構わないわ。ありがとう、シズ。
そんな。……カスミさんって、お友だち思いなんですね!
そ、そんなのじゃないから……自衛のためよ
story3 あたふたガールズ♪
<ライブ当日に向けての特訓が始まり、三日が過ぎたが――>
シンバル叩きながら、バスドラム、スネア、バスドラム、スネア……!
……あれ?ごっちゃになっちゃった!
最初から速く叩く必要はないわ。まずはゆっくりと確実に、ね?
ゆーらーゆーらーゆーらーりーらー♪
フフ。ノアは逆に、もう少しテンポを上げて弾けるようにならないとね。
くぅぅ……思うような低音が鳴らーん!!
ルカ、弦を押さえる指がまた寝ているわ。しっかり指先を立てて?
ええと、Gコードは……こう?……こ、小指がつりそう……!
慣れね。練習あるのみよ。
フフ。苦戦しているわね、みんな。
不甲斐ないです……
手と足がばらばらに動かないよぅ~……
薬指がぴくぴくするのです……
もうやめたい……
さあさあ、めげないの。明日もがんばっていきましょう♪
はーーーいっ!!
<数日後――>
わん、わん、つー、すりー、ふぉー!つー、すりー、ふぉー!
ほら、またハシってるわ。メトロノームのリズムを常に意識して?
うぅ~……ずれちゃうよぅ~……!
……テンポを上げると、指がついていかないのです……
スムーズな運指のためには、まず正しい手のフォームを体に覚えさせないとね。
がんばるのです……!
うぉぉおーー!!またピックが吹っ飛んだー!?
もう……ルカは力みすぎよ。ピッキングはもっと柔らかく。
申し訳ありませぇん!!指弾きに変えてみようかな……
なんなのよこれ……!ちゃんと押さえてるのに、全然綺麗に鳴らない……
だから、もっとフレット寄りを押さえないと、音がビビるのよ。
わかってるけど、わかってるけど、弾いてるうちに指がずれちゃうのよ……
……焦らないで。まだ時間はあるわ。一緒にがんばりましょう?
おーーーっ!!
……
<さらに数日後――>
……<スニャホ>ってすごいのね。指一本で、なんでもすぐに調べられちゃうなんて……
ねえねえノア~!ちょっとキーボード触らせて~♪
ノアもドラムを叩いてみたいのです。ためしに交換してみるのです♪
あいたっ!?ありゃ、切っちゃいました……
指切ったの?仕方ないわね……ほら、みせて。
いえ、その、弦が切れました……
あんな太い弦、よく切ったわね!?
――フフ。ほらほらみんな、時は待ってくれないわよ?
集中集中♪さ、気を取り直して練習――
あ、そーだ!ねえねえみんな、バンド名決めなきゃ!
はっ!言われてみれば!!たしかに大切なことでしたね!
演奏もまともにできないのに、そんなの決めてどうするのよ。
転ばぬ先の杖、なのです♪
カッコいい系がいいかな?それともカワイイ系かな~♪
―――
ねっ!メリシャさんはバンド名、どんなのがいいと思う~?
――さながら、アブラムシね。
えっ?なんて?あぶら?
もういいわ。
ちょっと待って。いま虫って言わなかった?
あの、それより……!もういいって、どういう……?
お遊戯は終わりよ。合わせてみましょう。
合わせる……?
――セッションの時間よ。お待ちかねのね。