【黒ウィズ】アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ
目次
story1 VS X
ゼウスⅠの全身から、神の力が逍る。神器を覚醒させた今、その力は先の比ではない。
ストライキング・ケラウノス!
雷が巨大な拳を形成し、アレイシアに襲いかかる。その威はかって初代ゼウスⅠが得意とした雷霆拳と比べても遜色ないものだ。
そう叫び、正面から立ち向かおうとするアレイシアの前に――
君が飛び出して、障壁を張って雷霆を防ぎ、仲間がすかさず後に続く。
君たちに背を任せ、アレイシアは駆け出した。
***
アレイシアはヘルメスが放送をしていた場所へと乗り込んだ。そこに待っていたのは……。
それにいくら神でも、精神だけになって人間に取り憑くなんて、有り得ません!
言葉よりも拳じゃあ!殴り合えはすべて解決じゃい!
***
でも終わり。ほら、観客席を見なよ。
スタジアムの上空に、赤熱した金属の球体が浮遊していた。
まあ、死ぬのは3000人程度だろうし?ぼくを倒すのを優先するのも手だと思うけどね。
ヘルメスが指を鳴らすとふわりと布が浮き、プロメテウスの口へと巻き付いて、言葉を奪った。
けど、Ⅰに足止めされた時点で、ぼくを奇襲するチャンスはなくなったんだ。作戦の練り直しでしょ、普通は。
それじゃ次はどんなゲームを君にしてもらおうかな。
その全部だよ。全部全部、大っ嫌いさ。何万年も昔からね。
なに、そのうち帰るから、安心してよ。君がぼくを、満足させられたらね。
story SOTEIRA
アレイシアがヘルメスと対峙する頃、残された君たちはゼウスⅠと向き合っていた。
まあいいさ、ここまできてぺちゃくちゃおしゃべりってのも色気がねえだろ?さあ、思いっきりやろうぜ!
***
エウブレナの記憶の中にある父は、いつも笑っていた。
穏やかで、優しくて、どんなわがままにも応えてくれる父。大好きだった。
そんな父が、ー度だけ怖い顔を見せたことがある。
その夜、家の外はひどく騒がしく、怖かった。仕事を休んでいた父は、通信を受けると、仕事着に着替え、エウブレナに会いにきた。
出かけるつもりなんだ、と思い、父に怒った。私が怖いのに、置いていくな、と泣き叫んだ。
「できれば、ずっと君とここでこうしていたい。けれども、私はヒーローなんだ。
守るべき未来がある。救うべき友がいる。たとえ命を落とすとしても、いま行かなければ私は絶対に後悔する。なにより――
人々を苦しめる悪を見逃すことなど、私にはできない!
……なんて、悪いパパだね。ごめんよ。大丈夫、きっとすぐ帰ってこれるから。愛しているよ、僕のエウブレナ。」
――それが父を見た最後となった。
ティタノマキア事変。ハデスⅣである父は、その日、命を落とした。
以来、父のようなヒーローになることが、エウブレナの目標となった。命を捨てる時にも揺るがぬ正義を持つヒーローが。
だが――
私がハデスⅣを継ぐ自信がないのは、きっと心が定まっていないから。私はどっちつかずの半端者。そう思った。
けど――)
君は歯噛みする。実際、打つ手に詰まっていた。
エウブレナとネーレイスを守るため、君の魔法は防御と回復を中心にし、攻撃はふたりに任せていた。
だが、神器〈神王雷霆〉により強化を施されたゼウスⅠの肉体は、神器なしのふたりの攻撃を意にも介していなかった。
君が攻撃に転じるという手もあるが、ゼウスⅠの攻撃は遠く、ふたりが危険だ。
どうするべきか、判断に迷っていると、エウブレナが決然とした声で告げる。
ハデスヒーロー最強の技、ヘカテー。狂気の女神を身に降ろすその技は、その威力の代償に使用者の命を奪う。
私は身に付けなくてはいけないの。私なりのヘカテーを!
道を示したのは、アフロディテⅨだった。メタモルフォシス・ウラニア。アフロディテ神の別の側面を引き出す技。
神には様々な側面がある。ヘカテーもまた然り。狂気の女神と呼ばれる彼女は、時に救世主とも呼ばれた。
神の異なる側面を制御するのは、ふたつに刮れた心を保つような精神性を要する。
だからこそ、今の自分なのだ、とエウブレナは理解する。父への憧れと、友への想い。双方を胸に抱く自分でなければ、ダメなのだ。
エウブレナの肉体が、紫光を放つ。それは冥府最強の女神の力。
次の瞬間、エウブレナの姿が消えた。いや、消えたのではない。高速で移動したのだ。
瞬時に見極め放たれた拳を迎え撃ったのは、細くしなやかなエウブレナの蹴りだった。
それはこれまでのエウブレナとはまるで異なる戦い方。神の力によって冥府の獣を象るのではなく、その力を五体に宿す格闘術。
冥府の魔獣の力を宿した蹴りが、突きが、絶え間なくゼウスⅠを襲う。
戦の狂気が心を深淵へ引きずりこみ、友の言葉がそれを正気の彼岸へ引き上げる。
それはまさしくエウブレナだけが辿りつける、冥府の王たる者の新たな領域であった。
ゼウスⅠの拳から雷霆が放たれる。攻撃に集中したエウブレナは避けられない。
しかし君の張った防御障壁が、エウブレナを守る。
さあ、覚悟しなさい、ゼウスⅠ!天空神の暴走を止めるのは、兄弟たる冥府神と――
***
BOSS:ゼウスⅠ
***
ゼウスⅠは、唐突にどさりと腰をおろした。
参ったな、こいつは。久しぶりに師匠にぶん殴られちまう。
ゼウスⅠは神器も鎮め、完全に戦闘態勢を解いている。
君たちは戸窓う。だが、アレイシアが心配だ。エウブレナ、ネーレイスとうなずき合い、君たちはアレイシアの後を追った。
今となっちゃ師匠にも感謝しているが、あの頃は辛くてね。よく泣いてたもんさ。
そんな時、どこからともなくあらわれて、オレを慰めてくれたのがメルクリアさ。言ってみりゃ近所の優しいお兄さんお姉さんだ。
あの頃のオレは、あいつがいたから生きていられたようなもんさ。
ま、いずれゼウスⅠになるオレをガキの頃に籠絡しておこうって腹だったんだろうがな。それでも恩は恩だ。
あいつの頼みは聞いてやると決めていた。それだけだ。神だろうがなんだろうが、オレには関係ねえのさ。
story HOPE
ひとりで泣くのは悲しいことだよ。けど、泣きたい時に泣けないのは、もっと悲しいことなんだ。
ボクを嫌いなら、それでいい。だから、もっと自分の悲しみに気づいてあげて欲しい。
「巨人の壹に閉じ込められていたオレを、お前が助けたって話が広まっているよな?
ま、事実と逆だが、それはいいんだ。別に、オレがどう思われようがかまわねえ。いくら笑われても、オレはオレだ。
けどな、ヘルメス……。お前は、本当にそれでいいのか?オレは、それが心配なんだよ。」
観客に武器を与え、君に攻撃を当てたものはここから解放してあげることにしよう。
みんなの人気者の君なら、きっと無傷で済むだろうね。楽しみだ……。
激しい衝撃と音がスフィア内に轟いたのは、その瞬間だった。
時をわずかにさかのぼる。
放送を見守る人々に絶望が広がる。もはや、何人にもそれを止めることなどできないかと思われた。
だが、どのような絶望の中でも、箱の底に希望は残る。
訪れたのは、沈黙。驚愕。そして歓喜。
たとえ相手が、神そのものであろうともだ!!
歓声が爆発する。まさしく消えさる希望。〝最強〟に託された人々の願いだった。
***
かつての戦いでヴァッカリオの肉体は限界を超えている。ディオニソスⅫとして戦闘できるのは、あと2回が限度だろう。
だが、神器を覚醒させ、変身するだけならば、肉体にかかる負担は大きく減る。
かつて、初めての変身により疲れ果て、気を失ったアレイシアを、プロメトリックがさらおうとした。
ヴァッカリオはその際、10年ぶりに神器を覚醒させ、ディオニソスⅫとして立ちはだかった。
結果的に、その時は戦闘にまでは発展しなかった。激突した瞬間、プロメトリックが退いたからだ。
神々との戦いの道具としてディオニソスⅫを利用するためだったのだが、その時はそこまではわからなかった。
わかったのは、変身だけならば、命への負担は少ないということだ。
神器は互いに共鳴する。それを利用し、〈尽きざる蜜の神酒杯(アヘイロン・ネクタル)〉を通して、アポロンⅥは自らの神器に呼びかけようとしているのだ。
アポロンⅥの掌が、ディオニソスの神器に触れる。
――だが反応はなかった。
いまさらどの面さげてと思うだろうが、私もヒーローの端くれ。人々を救いたいのだ。
アポロンⅥは、マスクド・アテナの正体にまったく気づいていなかった。
……Ⅶ!Ⅶではないか!戻ってきていたのか!なぜ言ってくれなかった!
その言葉に、物陰に隠れていたアイスキュロスは嫌そうに出てきた。
ふたりはうなずき、ディオニソスⅫが差し出した神器のうえに、互いの手を重ねる。
展示室に封じられた3つの神器が光を放つ。
それは互いに共鳴し、自らの意思を持って、光を高めあい、飛んでいく。
神によって閉ざされた壁の向こうへ。自らの選んだ使い手のもとへ。
神器はスフィアを突き抜け、3人の手に収まった。
噴火の威を秘めた弾丸が放たれ、メルクリウス・スフィアに衝突し、大爆発を起こす。
だが、神の作りし球体は砕けない。その着弾点に、帰還した戦女神が跳躍し、奥義を放つ。
アペルピスィア・アイギス!
スフィアに衝撃が走る。だが、まだ砕けない。神の力にも匹敵するー撃がなければ、砕くことなど出来はしない。
ゆえに、最後にそれは放たれる。
アポロン・バスター・メギストス!
story LAUGHING GOD
君たちは神器を確保するため、特別展示室へと向かった。
ヘルメスの力で封じられているかと思われたそこは、内部からの力で開封されており、中に入ることができた。
床に倒れていたポセイドンを助け起こし、君は回復魔法をかけた。
わしは大丈夫だ。頼む、あやつを止めてくれ。ネーレイス、〈トライデント〉はお前を正式に選んだ。持っていくがいい。
い、いいんですの……?そ、それじゃ……。
ネーレイスが神器を手にするー方、エウブレナもまた己の神器に向き合っていた。
けど、その迷いも含めて、私の強さなんだと思う。だからお願い――力を貸して!
アフロディテの神器〈ケストス〉もまた、ふわりと浮かび飛んでいく。
***
倒れて動けないアフロディテⅨのもとに、〈ケストス〉がひらひらと舞い降りる。
そこへ、アポロンⅥとアテナV、ヘパイストスⅪが降り立った。
***
勝っていたはずだ!手に入れていたはずなんだ!お前にさえ、惑わされなければ!
叫びに応えるように、神器をその手にゴッド・ナンバーズたちは舞い降りた。
ゴッド・ナンバーズたちは、神器を構える。それは悪を滅する必勝の陣。たとえ神でも逃れる術はない。
だが、それを制するように、ナンバー零――アレイシアが静かに前に出る。
アレイシアは神に向き直る。
言いたいことがあるんだね。溜め込んできた想いがあるんだね。いいよ。ボクが全部、受け止める。だから――
さっさとかかってこんかぁぁぁぁい!いくぞぉぉぉぉぉぉぉ!神さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
***
BOSS:ヘルメス神
***
神の宝物タラリア。それはヘルメスを伝令の神たらしめる有翼のサンダル。
それを身に着けたものは、あらゆる空間の縛りから解き放たれ、足音を立てることもなく、風の速さで宙を舞う。
もはや君にもヘルメスの姿を捉えることはできず、ー陣の風かー条の光としか思えなかった。
叫び、斬り結び、また叫び、殴り合う。
戦いの華麗さもなにもない。そこにあるのは、剥き出しにされた数千年の逆恨み。
アレイシアの拳は、槍は、ただそれを受け止める。
アレスが乱しているのだと思った!なのにアレスがいなくなり、オリュンポスは崩壊した!
受け止める。神を。受け止める。神話を。ただのひとつの、叫びとして。
ふざけないでよ!ぼくはヘルメス!詐欺と泥棒の神!なにをしたって君にはなれない!
君に……なりたかったんだよ。君のようなヒーローに。
けどなれなかった。ナンバーズを名乗っても。あは、バカバカしいね。アレスはもう、いないというのに。
戦いは、いつしか終わっていた。ヘルメスは動きを止め、力なく腕を下げていた。
ケーリュケイオン。
ヘルメスの頭上に、杖があらわれる。神杖ケーリュケイオン。その杖は生者に眠りを与えるという。
もういいさ。眠ることにするよ。さようなら――
神の力の源に向け、ケーリュケイオンは落下する。それが胸を貫く刹那――
ゼウスⅠの奥義が、神の杖を砕く。
そしてヘルメスの小さな肉体は、青年の太い腕に抱き上げられていた。
願わくは、黙ってあなたの世界へ帰って欲しい。これは長年、英雄庁を支えた戦友への頼みでもある。
居並ぶゴッド・ナンバーズは、力強くうなずいた。
ヘルメスは立ち上がると、なにかを唱える。すると、有翼のサンダルが淡い光を放った。君が異界渡りをさせられる時のように。
それがタラリアの真価。異界渡りを可能とするヘルメス専用の〝門〟だった。
――かくして神は姿を消し、ジャスティス・カーニバルは幕を閉じた。
アテナ、ヘパイストス。君たちだろう?あれを作り、彼らに贈ったのは。なにを思い、あんなものを作ったんだい?
まあ、しょせんぼくは伝令神。あとは運命と天空神様の御心に、任せるとするさ。
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ