【黒ウィズ】アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ
目次
story1 APO&VACCA
よーし、よくやったお前ら!うちから4人も3rdステージ進出とは、嬉しい誤算じゃないか。
3rdステージ前の休憩時間、ゾエルが君たちをねぎらいにきた。
だれでもいい。絶対に優勝するんだよ。いいな!
参加してよくわかったが、これはただの娯楽だ。優勝にこだわる必要あるのだろうか?君はそうゾエルに問う。
あるに決まってんだろうが、この脳味噌×××優勝特典の、ルール追加権だよ!
アレイシアがナンバーズになったとはいえ、ウチはまだまだ上とぶつかりがちだ。都合のいいルールは××から手が出るってもんだ。
問題なのは、ゼウスⅠだな。あの×××××、さっさと落ちてくれりゃ良かったんだが。
あの方が優勝なさったら、英雄庁は終わりですものね。
ええ、あんなルールだけは、追加させるわけにはいかないわ。
そこまで言われるとは、ゼウスⅠはどんなルールを追加するつもりなのだろう。君は訊いてみようとしたが――
このゼウスⅠの噂話かい?いいぜ、どんどんしてくれよ。話せば話すほど、オレの虜ってことの証明だ。
出やがったな、問題児。使いたい時には来ねえで、いらん時にばっかでしゃばりやがって。
相変わらずいい女だな、ゾエル。そんなにオレが恋しかったかい?
会話しろ、会話!とにかく、テメエの×××××なルールだきゃあ追加させねえぞ。
さっきから言ってる、この男が追加しようとしているルールって、どんなものにゃ?
いい質問だ黒猫ちゃん。オレはただ、制服を変えたいだけさ。
制服?それだけにゃ?
いま着ているこいつもそうだが、どうも英雄庁のセンスってやつはダサすぎるだろう?アレンジ自由とはいえ、限度がある。
そこでこのゼウスⅠがデザインした、最高の制服の着用を、ルールで義務付けてやろうと思ってるのさ。
英雄庁の終わりだとか言ってたのに、ただの制服だったなんて、みんなおおげさだな、と君は思った。
魔法使いさん。いま、わたくしたちがおおげさだと思っていませんでしたこと?
これは死活問題なのよ。Ⅰ様のセンスで制服が作られたら、だれもヒーロー活動なんてできなくなるわ。
そこまで言われると、どんなセンスなのか気になる。君はゼウスⅠに、普段はどんな服を着ているのか、訊いてみた。
オレのプライペートが知りたいのかい?いけない子だ。いいぜ、見せてやるよ。これがオレのプライベートファッションさ。
……。
……なるほど、これは英雄庁の危機だ、と君は納得した。
ご理解いただけましたわね?あんなセンスの制服になったら、ヒーロー総辞職もあり得ますわ!
ええ。私もあんな服でヴィランと戦う勇気は持てそうにないわ。
……なんかボク、あれはあれでカッコイイかもって思えてきた。
だっしゃしょか!
ふたりはアレイシアの肩を揺さぶり頬を叩き、正気に戻そうとし始めてしまった。
悲しいな……オレを求めて、女たちはいつも争い合う……。仕方あるまい。オレはゼウスⅠなのだから……。
ゼウスⅠは天を仰ぎながらそうつぶやき、去っていった。
と、とりあえず負けられない理由ができたにゃ!
***
3rdステ――――ジ☆
というわけで、いよいよ選手も12名にまで絞られました。なんかナンバーズなのに負けたクソ雑魚がいたので解説に連れてきてみたよ。
アポロンⅥです。よろしくお願いします。
X。いまの発言について、後で話がある。放送が終わったら神卓の間に来るように。
え、この人、放送中に業務連絡してきた怖い……。ぼ、ぼく、疲れたから、ちょっと休んでくる。代理のおじさん、あとよろしくね☆
え、待って待って。またおいら?なによ、もう、せっかくいい気分で飲んでたのに。
おお、我がおと……。
(シーッ!お兄ちゃん、いちおう公務中は兄弟だってバレちゃだめでしょ!)
(そ、そうだったな。危ないところだった。ただの知り合いということにしよう)
んん、君とカーニバルの解説ができるとは嬉しいかぎりだ、ヴァッカリオ……さん。
はいはい、おいら通りすがりのヴァッカさんです。実はアポさんとは飲み友達なのよ。なんかごめんね、みんな~。
なぜいまので歓声が……?まあよい。さて、3rdステージの解説といこう。ヴァッカリオ……さん、資料はこれだ。
はいはい、と。へえ、3rdステージは……ヘラクレスの12の難行?
市民の皆様もよくご存知のように、英雄ヘラクレスはアポロン神の神託によりミュケナイ王に仕え、数多の試練を受けました。
それが12の難行だよね。3rdステージは、それを模したものってわけね。
現在、勝ち残っている12名には、それぞれ異なる試練が与えられます。制限時間内に試練をクリアできれば次のステージに進出です。
これさあ、どの試練になるかによって、難易度けっこう違わない?相性ってもんもあるしさ。
いざヴィランと戦う時、相性が悪かった、という言い訳はヒーローには許されません。不測の事態に対応できなければならないのです。
そりゃごもっとも。勝ち残った12人のヒーローちゃん。幸運を祈ってるよ~。
しかし、12の難行が題材ってのはいいね。子供に大人気のお話だもん。
私の弟も、子供のころはこのお話が大好きでした。当時、私は学業を続けながらヒーローをしており、なかなか休みが取れなかったのですが――
家に帰って、ヘラクレスになりきった弟と、12の難行ごっこをすると、不思議と疲れが取れたものでした。
(なんか急に恥ずかしい話はじめた……。ていうかこの状況下でおいらの話するんだ……)
弟はアポロンⅥごっこもよくしていました。私は敵役で参加したのですが、自分が倒したヴィランの役を演じるのはなんともおかしく――
まだ続くの!?ねえ、ちょっと、だれか止めないの?カーニバルの解説しなきゃでしょ。
しかし、なぜか視聴数が爆増したため、アポロンⅥを止める者はだれもいなかった――
story
3rdステージの参加者は、ー堂に会してカードを引いていた。それによって、試練の内容が決まるのだ。
ボクは……ステュムパリデスの鳥退治だ。
私は……ケルベロスの生け捕り?行き先はハデス区……。なんか不吉な予感……。
わたくしは……ネメアの獅子退治。……手強そうですわね。
なにが来たってすぐ片付けっけど……。ふうん、ケリュネイアの鹿の捕獲ね。
ヘスペリデスの黄金の林檎の入手……。アトラス神のあの話か。
このゼウスⅠに、ヒッポリュテの腰帯を手に入れろときたか。面白いじゃないか。
君の引いたカードには、「アウゲイアスの牛小屋掃除」と書かれていた。掃除……なんか自分だけ違うな……と君は思った。
カードにはそれぞれ、行き先が示されている。そこで目的が告げられるらしい。
よーし、今度は1位を取るぞおおお!
残念だが、今度もオレがナンバー1だ。なぜならば、オレが1位を取るからだ。
ここを勝ち抜ければ、上位入賞ですわ。ファイトですわ、わたくし。
号砲が鳴らされ、各々の試練の場所へ向けて、ヒーローたちはスタジアムを飛び出した。
***
オリュンポリス各地に散らばる試練の場所へ、ヒーローたちは次々とたどり着いた。
着いたぞ。なにすればいいんだろ?
お待ちしておりました。それでは説明させていただきます。
アレス零様には、これより英雄ヘラクレスとおなじ方法で、鳥を飛び立たせていただきます。
着いたけど……ここ、ハデスフォースの本部よね?
よく来ました、ハデスD962、貴方がお相手とは、嬉しく思います。
副隊長!?まさか、ケルベロスの生け捕りって……。
そうです。このハデスフォース副隊長、ハデスA001を倒してみせなさい!
指定の場所はここですけれど……ネメアの獅子、こんなところにいるのかしら?
安心しろよ、ネー。ちゃんといるぜ。
あら、コリーヌ。なにして……その姿は?
いまのウチはコリーヌじゃねえ!バイトテロクレスだ!さあ、ウチからネメアの獅子を奪ってみせな!
カーニバルには、多数の協力者がいる。特別刑務所に収容された模範囚も、刑期の短縮を条件に協力することがある。
ま、この場所を指定された時点でそんな気はしてたけど、やっぱりね。で、追いかけっこでもすればいいわけ?
その通りだ!時間内に、このアキレラレウスとペンテシレイアmk2を捕まえてみな!
聞いてるぜ。アルテミスフォースには、女だけで構成された部隊があるってな。たしか名前は、アマゾネス・プラトゥーン。
私はこのプラトゥーンの50名を預かるヒッポリュテ9、この難行はしごく単純なもの。
さあ、私がらこの腰帯を奪って見せなさい。もっとも、我がプラトゥーンは、全力で戦わせてもらうがな。
いいぜ。このゼウスⅠ、女の相手なら何百人だろうが大歓迎だ!
ここは……遊園地。アポロンパークか。
お待ちしておりました、マスクド・アテナ様。黄金の林檎は、このパークにございます。時間内に発見できれば、クリアとなります。
ほう、謎掛けか。面白い。知恵の女神アテナの力、見せてやろう。
そして君もまた、目的地にたどりついていた。そこは――
ここ……ヴァンガード隊の基地にゃ。よりによってなんでここにゃ?
よぉ、だれが来るかと思えば、魔法使いかよ。ま、よろしく頼むわ。
よろしく頼むって、なにを?と君が問うとハルディスはいつものように笑って答えた。
ふひぇ、聞いてんだろ?掃除だよ、そ・う・じ。この基地を、制限時間内にキレイにするのさあ。
……これを?と君は絶望的な気持ちになった。
***
カーニバルでは、使用する得物による有利不利をなくすため、ゴッド・ナンバーズの神器はいったん大会運営に預けられる。
そうして集められた神器は、メインスタジアムのー角にある特別展示室に並べられるのだ。
その特別展示室に、ひとりの老人の姿があった。英雄庁の最長老、ポセイドンⅡである。
どうしたの、おじいちゃん。神器なんて、見飽きてるでしょ?
lXか。見飽きたりなどせんよ。もしやすると、夢が叶うやもしれぬでな。
夢?え、もしかしていま、寝惚けて徘徊中?
相変わらず口を慎まぬのう。わしの夢はな、12の神器を操るヒーローが揃うのを、この目で見ることよ。
ああ、そかそか。同時に揃ったこと、ないもんね。
最後の神器〈尽きざる蜜の神酒杯(アペイロン・ネクタル)〉が目覚め、ディオニソスXが誕生したのが、十数年前のこと。
だが入れ違いに初代ゼウスⅠがヒーローを引退。神器〈神王雷霆(ゲラノウス)〉を継ぐ者が現れるまで、しばしの空位が続いた。
その後、ティタノマキア事変により、ハデスⅣが殉死し、十年にわたる空位となる。
結果的に、ゴッド・ナンバーズにすべての数字が揃った瞬間というのは、実はー瞬たりともない。
神器の共鳴を考えると、覚醒状態で全部揃ったらどうなるか、気になるね。めちゃくちゃパワーアップするかも。
さて、今のわしに、その状態を制御できるかの。……ここだけの話だがな、わしは引退を考えておる。
えっ、いまさら?じゃなくて、なんで急に?
かねてより考えてはいた。いまのわしは神器の力の制御が効かず、威力ばかりが上がり危険な状態だ。
そこへきて、先の英雄大戦、そしてアレス零の就任……。わしの時代は終わったのだと実感したよ。
実感するの遅くない?あ、いい意味でね☆でもさ、そしたらⅡの座はどうするの?
……その答えが、今回のカーニバルで見られるのではないかと、期待しておるよ。
ああ、なるほど。うん、そゆことね。いいね。ぼくもそれ期待してるよ、ホント。いや、そうだね、うんうん。わかるなあ。
……わかったふりして話を進めると、後になって悔いることもある。気をつけるのだぞ。
あ、はい……手遅れです……。いつも寝る前にわりと死にたくなります……。
story
ケリュネイアの鹿とは、矢よりも早く動くことができるという、アルテミス神の聖獣である。
王にこれの捕縛を命じられたヘラクレスは、丸ー年も追いかけ、ようやく捕まえることに成功したという。
で、その鹿の役をアンタが引き受けたってわけね。
そういうこった!さあ、時間内に捕まえてみろよお!できるもんならなあ!
言うなり、アキレラレウスはアクセルを全開。全速で走り出す。
おけまる。エンチャント・アンテロス!
アフロディテⅨは逃げていくアキレラレウスの背に、人造神器を振る。
はっはあ!ムダムダ!ペンテシレイアmk2が捕まるもんかよ!
アキレラレウスは爆走し、全速のまま道を幾度も曲がる。これでどんなヒーローも振り切ることができる。
はずが――
はい、おつかれちゃん。
どれだけ引き離しても、何度曲がっても、気がつくと前方にアフロディテⅨがいた。まるで行く先がわかっているように。
それもそのはず。いまの彼女には、アキレラレウスの思考が筒抜けだった。
返愛の神、アンテロス。想いを通じ合わせるというその神の力が、先のー撃には込められていたのだ。
アフロディテⅨは、タンデムシートに飛び乗るとアキレラレウスの背に触れ、優しく問う。
あーしの勝ち、でしょ?
ヒッポリュテとはアマゾネスの女王である。ヘラクレスはヘラ神の謀略により、腰帯を奪うだけでなく女王を殺してしまったが――
この試練では、その轍を踏むことなく、ヒッポリュテ9の腰帯のみを奪うことが最良となる。
そのために、いかにして配下のアマゾネス・プラトゥーンの攻撃をかわすかが、ヒーローの知略の見せ所だ。
なにせアマゾネス・プラトゥーンは勇猛なヒーロー部隊である。競技用の人造神器では、単身で制圧など望むべくもない。
はずであったが……。
馬鹿な……ぜ、全滅だと……?
悪いな、ちょっとだけ本気出しちまった。なに、怪我はさせてねえさ。
無敵のヒーローと呼ばれた初代ゼウスⅠ、その再来とも呼ばれる彼の実力は、神器なしでも群を抜いていた。
その身勝手すぎる性情さえなければ、アポロンⅥと並び、現在最強のー角に名を連ねていただろう。
さて、後はお前ひとりだが、どうする?このゼウスⅠと戦うかい?それとも、ゼウスⅠに抱かれたいかい?
……どちらも御免こうむる。クリアの証だ。持っていけ。
ふむ、このパークのどこかに黄金の林檎がある。神話になぞらえているのなら……。
***
かつての私は、感情を排し、救われる人間の数だけを正義の基準として、ヒーロー活動を続けていた。
その果てにたどり着いたのが、罪なき人々の犠牲を前提とした、プロメトリックとの共闘……。
愚かなものだ。人は、心があるから人なのだ。それを見ようとせずに、どうして人が救えるものか。
以来、オリュンポリスを離れ、旅をしていた彼女は、ひとつの答えを得た。
私は、私のような子供をひとりでも減らしたい。子供の心を守りたいのだ。
その漠然とした想いを告げた時、アイスキュロスは笑ってそれを讃えてくれた。
今回、カーニバルに参加したのは、想いをあらたにした自分の力試しだ。
それにしても、1stステージといい、謎掛けが多いな。奇妙な場所でクイズをする夢を見ていなかったら、危ないところだったな。
ヘラクレスは天を支えるアトラスに林檎を取ってきてもらった。その間、代わりに天を支えていたという。
ヘラクレスの軌跡をたどるなら、目指すべきは天に近い場所、すなわち、このパークでもっとも高い場所にたどりつく――
観覧車だ!
というわけで、マスクド・アテナは観覧車に乗った。
***
……なにもなかったな。
普通に間違っていた。
時間は限られているというのに、ずいぶんと無駄にしてしまった。……だが楽しかったな。
思えば、遊園地に来るのは初めてだ。まさかこれほど楽しいとはな。
……もしかしたら、中になにかあったのに、見過ごしていたのかもしれんな。
もうー度、乗ってみてもいいのではないか?いや、決して楽しかったから、また乗りたいわけではなく。
だが、この観覧車がー周するのにかかる時間はおよそ15分。もしなにもなければ、制限時間がほとんどなくなってしまう。
マスクド・アテナは悩んだ。かってないほどの懊悩だった。だが、聡明なる彼女は決断した。
ダメだ。これは私が乗りたいだけだ。そんな気持ちを、認めるわけにはいかない。
訣別の意をこめて、観覧車乗り場を見やる。
そこにいたのは、ゴンドラに乗って彼女を手招きするアイスキュロスだった。
いいんだよ……ネルヴァ……余計なことなど忘れて、自分の気持に素直になってもいいんだ。
し、しかし、それでは勝負が!
ネルヴァ。君は子供を守りたいんだろう?だったら、守らなくてはいけないよ。君の中にいる、子供の気持ちをね。
はっ……そ、そうか。私の中の、子供のままの部分が、観覧車を求めているのだ……。ならば!
ネルヴァは駆け出し、アイスキュロスの待つゴンドラに乗り込み、告げる。
ゆくぞ、アイスキュロス!頂点の眺めは、素晴らしいぞ!
――その後、ふたりは観覧車を3周し、勢いに乗ってメリーゴーランドも2周した。
もちろん、試練は時間切れになった。
ー方で、試練をクリアしていくヒーローたちもいた。
ステュムパリデスの鳥とは、ステュムパロスの湿地に住んでいたと言われる怪鳥です。
湿地に入ることのできなかったヘラクレスは、ヘパイストス神の作った青銅の鳴子を鳴らして、この鳥を飛び立たせ、退治したと言います。
このー帯には、その怪鳥を模した機械が、100体潜んでいます。機械にはセンサーが、とりつけてあり――
ー定以上の音量に反応して飛び立ちます。なんらかの方法で、この鳥をすべて飛ばすことができれば、クリアとなります。
なるほど、ルールはわかりました。それじゃ、全力でいきまっす!せ~~~のぉぉぉぉ……。
ちょっ、マイク!音声さん、マイク切って!早く!大惨事になっちゃう!
間ー髪、マイクが切られる。ゆえに、オリュンポリスは救われた。
だっしゃしょかぁぁぁぁぁぁ!
大地が震え、環境保全区が揺れる。ステュムパリデスの機械鳥がー斉に飛び立ち、空中で爆発四散した。
やった!クリアだ!……あれ?
そして念の為に耳栓をしていた大会の進行役も、気絶して倒れた。
ケルベロスとは冥府の番犬である。ゆえに、ハデスヒーローにとって、ケルベロスの使役は基礎にして奥義である。
ハデスⅣが殉死してより、もっとも巧みにケルベロスを扱うのは、副隊長のハデスA001だというのが定評である。
つい先程までは、だ。
ケルベロス・オニュクス!
……お見事。私の負けです。試練のクリアを認めます。
勝った……私が、副隊長に……?う、嘘でしょ。手加減してくださったのですよね?
まさか。全力でしたよ。私の虚をつく、見事な戦い方でした。
新人研修時代、アレイシアと行った100戦にも及ぶ模擬戦が役に立った。
アレイシアは力こそ弱かったが、当時から突撃のタイミングは絶妙だった。おかげでハデスヒーローの基礎戦術の弱点に気づけた。
まだ信じられぬというように呆然とするエウブレナに、ハデスA001は耳を寄せて囁く。
自信をもってください、エウブレナ。貴方の力は神器だけのものではありません。襲名をお待ちしています――ハデスⅣ。
はい……はい、ありがとうございます!
ネメアの獅子の毛皮は、英雄ヘラクレスの攻撃すらも弾いたため、ヘラクレスは獅子をその剛力で絞め殺したという。
ヘラクレスは倒した獅子の毛皮をかぶり、無敵の鎧とした。
ヘラクレスの神話還りが高い防御力を誇るのは、このネメアの獅子の力を発現できるためである。
だがそれも、神話還りの力次第だ。より強力な神の力を浴びれば――
ネメア・レオン!
ティモリア・ケートス!
ギブギブ。これ以上は防げないって。
や、やりましたわ!これで4thステージ進出ですわね!
いやあ、まさかネーに負けるとはなあ。ヴァンガードに来てから成長しすぎだろ。
毎日のようにアレイシアの無茶につきあわされていますもの。これくらい当然ですわ。
ネーが一人前になって、ウチも嬉しいぜ。
……前から思っていたのですけれど、あなた、わたくしにだけ言葉遣いが馴れ馴れしくありません?
だってアレイシアさんもエウブレナさんも先輩だけど、ネーは後輩じゃん?ウチの方が偉いじゃん?当然じゃん?
せめて呼び捨てにしてくださいましなんかむずむずしますわ!
そして君も――
お~、すっげ~!マジで制限時間内に片付いてるじゃん。
当然だよ、と君は胸を張る。増加し続けるカードをいつも整理している君にとっては、造作もないことだった。
大切なのは、使うもの、不要なもの、そして使わないけど大切な思い出の品を明確に区別することだ。
使わないものは当然処分し、思い出の品は邪魔にならない場所にしまう。こうすることで表には必要なものだけが――
お、時間切れだ。危なかったなあ、魔法使い。ま、4thステージもがんばれよ。
story
生まれたばかりの弟に病院で出会った時、私は悟ったのです。この愛らしさを守るために、私はヒーローにならねばならない、と。
アポさん、アポさん?3rdステージ、終わったみたいよ?
む?おお、本当だ。それでは市民の皆様、私の解説はここまでですが、引き続き、ジャスティス・カーニバルをお楽しみください。
結局、試合の解説はなにひとつしなかったが、アポロンⅥは大歓声に包まれて退場していった。
ええ……いいのこれ?とりあえず、残ったのは6人だったみたい。これからが本番だね、こりゃ。
じゃ、そんなところで、おいらもこれで。
特別展示室では、ひとつの神器が光を放っていた。
〈見えざる神の二叉槍(バイデント・アイドネウス)〉――ハデスⅣの神器である。
うわ、なんか勝手に光りだした。
ふふ……あの娘が活躍しておるのだろう。神器め、早く自分を使ってほしいとせっついておるわ。
神器もぼくたちも認めてるんだから、さっさとⅣを襲名して堂々と使えばいいのにね。
戸惑っておるのだろう。まだ若いゆえな。だが、我らもそうして戸惑いながら、その力と責務を受け入れていった。
ぼくがナンバーズを受けたのは、ヤケクソになっただけですけどね。
3rdステージが終わったみたいだ。サボるのも限界かな。じゃあね、おじいちゃん。
クリュメノスの娘は着実に進んでいる。我が娘よ。お前はどうなのだ?わしは……信じているぞ。
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ