【黒ウィズ】アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ
目次
story
ユッピ~ユッピ~。
どうしたメルクリア。仕事中だってのに、オレに会いたくて飛んできちまったのかい?
そんなアホみたいな前髪の人に言われたくない☆ちょっとリークに来ただけだよ。
次のステージ、アレだから。
ほう。なら、オレが「木馬」になる。それでいいんだな?
大丈夫?いまなら変更できるけど。
だれに向かって言っている。オレがー度決めたことは覆らない、オレは、ゼウスⅠだからな。
あそ。んじゃ、よろしくね~☆
***
3rdステージが終わり、勝ち残ったのは6名となった。
アレイシア、エウブレナ、アフロディテⅨ、ゼウスⅠ、ネーレイス、そして君だ。
おお、すごいぞ!3分の2がヴァンガードだ!優勝はもらったも同然だね!
そんな甘いわけありませんわ。むしろ本番はこれからですわよ。
通例通りなら、この先のステージは、ヒーローとしての純粋な実力が求められるはずだものね。
4thステージ☆
頂点を目指すヒーローも6人に絞られました。ここから先はガチモードです。というわけで今回の競技は――
トロイ戦争です☆
トロイ戦争――それは神々の様々な思惑と謀略の末に起きた、トロイ王国とギリシャ連合軍の戦争である。
この戦争の裏では、オリュンポス12神もトロイ側とギリシャ側に分かれ、争ったという。
この競技では、神話のようにふたつのチームに分かれてチームバトルをしてもらうよ。勝ったチームがファイナルステージに進出。
まあ、トップヒーローが本気で戦うわけにもいかないから、身体につけた3つの風船を割り合うとかいうお遊びだけどね。
というわけで、君たちの前に6枚のカードがあるよね?それを引いて出た絵柄に合わせてふたつのチームに分かれてちょうだい。
あ、ただし、どんなカードを引いたか、ぼくたち運営以外には見せないようにしてね☆
君たちは並べられた6枚のカードを、思い思いに手に取る。
結果、チーム分けは、片方がアレイシア、ゼウスⅠ、アフロディテⅨ。
もう片方が、エウブレナ、ネーレイス、そして君となった。
これは……厳しすぎませんこと?相手チーム、全部ナンバーズですわ。アレイシアまで敵だなんて……。
……いえ、どのみち優勝できるのはひとり。相手がだれであれ、勝つ気がないなら、参加しなければよかっただけよ。
エウさん、よう言うた!よっしゃあ、久しぶりに拳の語り合いじゃあ!今度こそ勝ぁつ!
はいはい、はしゃぐのはいいけど、ルール説明、終わってないからね。トロイ戦争だから、ありますよ、「トロイの木馬」。
引いたカードに木馬が描かれてた人、いるよね?その人、実は敵側のスパイで~す☆
トロイ戦争は、ギリシヤ側が兵を潜ませた巨大木馬を、敵の市内に騙し入れ、敵地を内部から攻めることで終結した。
トロイ戦争を題にとる以上、「木馬に当たる内通者」の存在は必然である。
味方だと思っていた相手に背後から刺されて終了。よくあることだよね~。最近もあったとか?あ、これ秘密だった☆
とにかく、この「トロイの木馬」が、勝敗の分け目だから、木馬役の人はせいぜいバレないようにしてね☆
各自がカードを再確認し、微妙な空気が流れる。チーム戦となれば、背中を預けなくてはならない、だが、裏切り者がどこかにいるのだ。
面白くなってきたじゃないか。さあ、早く始めようぜ!面白くなってきたからな!
4thステージはメインスタジアムで行われる。負けた選手たちは、サブスタジアムに移動し、モニターで観戦をしていた。
こういう戦いこそ、君の実力が発揮できるというのに、残念でならないねえ。
仕方あるまい。観覧車は楽しすぎた。メリーゴーランドもな。
そうだけどさあ、君こそ最高のヒーローだって、みんなに認めさせたかったねえ。
自分の未熟さはわかっている。だが、いま歩んでいる遭は間違っていないと、そう思えた。それで充分だ。
……そうだね。
ところで、このチーズティーというものは実に美味しいな。あとでまた飲みたいのだが、どこで売っていたのだ?
そこで待っていてよ!いま、買い占めてくるからね!
ま、待て!そんなには飲まな……。行ってしまった。ふふ……仕方のないやつだ。
なんか向こうは楽しそうだね。
私も、年甲斐もなく浮かれているよ。若い世代の躍進は喜ばしいことだ。
……もしかして、負けたのって、わざと?
まさか。勝負に手を抜いて相手を侮辱するほと、私は傲慢な人間てはない。
だが、負けても良いとは思っていたかもしれんな。市民は新たな希望を求めている。私が優勝したところで、なにも変わらない。
なるほどね。となるとエウブレナかネーレイスが優勝するのがベストだけど……難しいだろうね。
Ⅸがいつになく本気なのもあるが、Ⅰもー筋縄ではいかぬ男だからな。
今のⅠのこと、あんま知らないんだけどさ。ゼウス神のどスケベ引き継いでんでしょ?大丈夫なの?
懸念といえば懸念だが、問題ないと言えば問題はない。なにせ――
というわけで、いよいよ4thステージのスタート!
今回も、ぼくがいい感じに解説サボるために、客席から適当に人を連れてきたよ☆
どうも~。アレスちゃん応援団の団長です。皆さん、優勝はどなただと思いますか?私はアレスちゃんだと思います。
だよね☆ぼくも優勝はアレスちゃんで間違いないと思うな。ぼく、アレスちゃんには詳しいからね~。
あなたに彼女のなにがわかると言うのですか?いかほどの覚悟をもって、いまの言葉を口にしたのでしょう?
どれだけ詳しいか、精査しないといけません。後でお時間いただけますか?
やだ、この人、同担拒否……。はい、それじゃカメラさん、フィールド映しちゃって~☆
君たちはフィールドに降り立ち、両サイドに分かれていた。
君のチームは、エウブレナとネーレイス。相手のチームはアレイシア、ゼウスⅠ、アフロディテⅨ。不利だ。
だが、どこかにひとり「トロイの木馬」――スパイがいる。いま見えているものはあてにならない。
どういう作戦でいきますの?
ひとつだけ確かなことがあるわ。アレイシアは、一番強い相手に向かう。つまり――貴方よ、魔法使いさん。
だから魔法使いさんはアレイシアを止めて。ネーレイス、私たちはコンビを崩さず、2対2で戦いましょう。
わたくしとエウブレナのコンビネーションは、ヴァンガードでも随ーですものね。
はい、作戦会阻は終了~☆それじゃあ、トロイ戦争……開戦!
うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
***
エウブレナの推測は当たっていた。
魔法使いさぁぁぁぁぁぁぁぁん!勝負じゃあぁぁぁぁぁぁぁ!
実はこのカーニバルが始まってから、アレイシアは全力を出していない。
他のゴッド・ナンバーズは神器を預けることで、能力に制限がかかっているが、アレイシアの力は己のものであり、神器は関係ない。
そのため、以前の戦いで学んだアレス神の力を自主的に制限していたのだ。
同様に、神器を使っていないため、普段と変わらない参加者がもうひとりいる。君だ。
全力の戦いを好むアレイシアが、君を相手に選ぶのは当然と言えた。
いつもサポートしてもろうたが、おんしが強いことはようわかっちょる!さあ、拳と拳の話り合いじゃあああい!
キミ、アレイシアの気持ちに応えるにゃ!
君はうなずき、カードに魔力をこめてアレイシアを迎え撃った。
***
戦争とはいっても、風船を割るだけだ。本気の闘争ではない。
――などという甘い気持ちは、ー瞬で消えた。
アルティメット・ナックルスマァァァァッシュ!!
真っ向正面からの全カストレートバンチ。固く張った防御障壁が砕け散り、君の身体につけた風船がひとつ、弾けとぶ。
しゃぁぁぁぁぁ!どがいじゃああぁぁぁ!
わかってはいたが、自分の身で受けると想像を遥かに超える熱いパンチだ。でも――
拳の熱さなら、こちらも負けてないよ、と君はカードを取り出し、叫ぶ。
覇劫の廃帝――クィントゥス・ジルヴァ!
うおぉぉぉぉぉぉ!HEATじゃあぁぁぁぁぁ!
正面から魔法を受けたアレイシアが後退り、風船がひとつ割れる。
やっはおんしの魔法はHEARTがLⅣEじゃあ!燃えてきたぁ!
それはこっちのセリフだよ、と君は言い、飛び込んでくるアレイシアに向けて、カードを構えた。
さすがアレスちゃんですね。ー見ただの力任せに見えますが、重心移動が完璧に行われている事が、おわかりになるでしょうか?
それと突進する時の速度にご注目ください。コンマ敗秒、毎回速さが変わっています。これにより、相手の防御がわずかに狂うのです。
それと突進する時の速度にご注目ください。コンマ敗秒、毎回速さが変わっています。これにより、相手の防御がわずかに狂うのです。
膨大な基礎訓練の積み重ねの上に、戦うために生まれたとも言える戦闘センスが加わり、彼女の強さを支えているのですね。
ですが、彼女の戦いの魅力は、そうした理屈よりも心で感じ取るものです。私、HEARTが叫びたくてたまりません。
皆様も観ていて我慢ができなくなったのではないでしょうか?それでは、遠慮なくご唱和ください。せ~の――
アレスちゃ~~~~~~ん!
……ぼくが楽できるのはいいけど、さすがにちょっと引くね、この人……。
店長(あだ名)の熱弁が続く中、君とアレイシアの激しい戦いは続く――
(厄介な状況ね。)
君がアレイシアを引きつけているため、エウブレナ&ネーレイス対アフロディテⅨ&ゼウスⅠの図式が出来ていた。
ただでさえ実力では劣る。加えて厄介なのは特殊ルールの「トロイの木馬」だ。味方側に敵が混じっているかもしれない。
「木馬」役は正体がばれぬように敵陣で振る舞わねばならないし、そのうえで味方に自分が「木馬」だと伝えねばならない。
(つまり、これは単純な戦闘ではなく、「木馬」をどう見出し、対処するかという、観察力と判断力が試されるゲーム……)
ごちゃごちゃ考えすぎ。
エウブレナの風船が、ひとつ割れる。
まるで思考の隙間を縫うように、アフロディテⅨの細剣が飛んできたのだ。
アンタってさ、普段からそーゆーとこあんよね。いろんなことに気を回して、目の前のことを忘れがち。
アレイシアちゃんの影響で、ちょっとは変わったかと思ったんだけど、ね!
速い!避けられ……。
カリュプディス!!!
助かったわ!
しっかりしなさ……。
オレをひとりにするとは、つれないじゃないか。
きゃあ!
飛び込んできたゼウスⅠの拳がネーレイスを吹き飛ばし、風船をひとつ割る。
(競技用の人造神器であの威力……!?これが、ゼウスⅠ……。)
Ⅰ、こっち任せっから。
オレはいい男といい女の頼みしか聞かないことにしている。つまり、OKだ。
アフロディテⅨはエウブレナから離れ、ネーレイスの方へと向かう。
(これは……危険な展開だわ)
分断されて1対1の実力勝負に持ち込まれるのは一番望ましくない。なんとか合流しなければならないが――
そう不安そうな顔をするな。たっぷりと可愛かってやるさ。
眼前のゼウスⅠはそれを阻むように両手を広げ、挑発的な視線を向けている。
やるしかないわね!いくわよ!!
***
ケルベロス・オニュクス!オルトロス・キノドンタス!
ケラウノ・ストライク!!!
そんな……ー撃で……。
以前、ナンバーズのひとりであるヘパイストスⅪとは戦っている。だがⅪの本分は技術者。戦闘タイプではない。
対して目の前にいるゼウスⅠは、格闘戦特化のヒーローだ。その戦い方は、ただただ速く、力強い。
これが……ゴッド・ナンバーズ……。いえ、気持ちで負けていてはダメ!
好きなだけ抵抗すればいいさ。戦いが終わったら、ー晩中でも抱いてやる。観客どもに見せてやろうじゃないか。
なっ……それがヒーローのいうこと!?恥を知りなさい!
気合を入れ直し、人造神器を握る手に力を込める。だが、すでに遅かった。
安心しろ。
目線を切っていないはずなのに、ゼウスⅠが目の前にいた。
痛くないよう、優しくしてやるさ。
次の瞬間、エウブレナは吹き飛ばされ、風船がまたひとつ割れた。
ゼウスⅠが放ったのは――デコピンだった。
ど、どういう力……!
なんとか着地するが、足に力が入らない。回復まで、数秒はかかる。
(まずい!残りの風船はひとつ。いま追撃されたら、終わり……!)
なんとか顔だけをあげて、敵の動向をうかがう。ゼウスⅠは――なぜかそっぽを向いて、微動だにしていなかった。
肩だ。
言われて、エウブレナは己の肩を見る。衣装が少しずれて、肩の露出が増えていた。とはいえ、脱げる心配はないのだが。
え……?あの……ありがとうございます……。
礼を言い、衣装を直して、立ち上がる。
あの……直しましたけど……。
ゼウスⅠはチラッと見て確認してから、悠然とエウブレナに向き直った。
いい恰好になったじゃないか。さあ続きといこうか。観客も、オレがお前を抱く姿を見たがってる。
まだくだらないことを……!そんな姿、見せるもんですか!
いいや、オリュンポリス中に見せつけてやるさ。
オレがお前を、抱っこする姿をな!!!
***
純情?ゼウスⅠが?
そうだ。
いやいや。ゼウス神の好色を継いでいるんでしょ?それで純情って……。
今のゼウスⅠ、ユピテリオスを育てたのは、初代Ⅰだ。お前も覚えているだろう?あの方が、どれだけ厳格であったか。
10歳のころから初代のもとで修行をはじめ、神器を継ぐために10年以上も純粋培養されていたのだ。結果――
だれよりも強力にゼウスの好色を引きながら、その手の知識がなにもない男に育っちゃったってこと?
そういうことだ。
いや、でもさあ。あいつ、口癖みたいに言ってるじゃない。「抱いてやる」って。
それは言葉の通り、ただの抱っこだ。
……赤ちゃんとかにする?
そうだ。昔、私がお前にしていたやつだ。
……もしかしてあいつ、普通にいい奴?
当たり前だろう、ヒーローなのだぞ?とはいえ、老若男女を問わず抱っこしたがるのは、少々問題だ。
いい歳した大人の男が抱っこしたがるって……。なんか楽しいのかな、それ……。
気持ちはわからないでもないぞ。私もお前を抱いた腕の感触を思い出し、切なさを感じることがあるからな。
……お兄ちゃん、ちょっと言い方変えない?なんかこう……ね?
なぜだ?お前の抱き心地は素晴らしかった。無理強いをするつもりはないが、私はいまでもお前を抱きたいと思っているぞ。
だから言い方ね、言い方。
***
抱っこ……?……いや、あの……結構です。いりません。
なん……だと……?オレの抱っこがいらない……?それは、オレの抱っこがいらないからか?
はい……。私も子供じゃありませんし…、よく知らない人相手はちょっと……。
そうか……わかった。
照れてるんだな?いけない子だ。知らないというなら、よーく教えてやるよ。このゼウスⅠの抱っこの昧をな!
(こ、この人、本気だ!)
かつてない危機感を抱いたエウブレナは、全力でゼウスⅠを迎え撃つ。
story
アフロディテⅨは、戦闘しながらおこなっていた観察の結果を出す。
なにが「トロイの木馬」だっての。いないじゃん。
全員の性格は把握している。嘘をついていたらわかる自信があった。
そもそも3対3でひとり裏切ったら、有利すぎっしょ。ペナルティもないし。
Ⅹのお遊び……。いや、心の乱れを誘発させる仕込み、ね。ろくなことしないっての。
ー方で、ネーレイスは必死に思考していた。
(わたくし以外のだれかは「木馬」。ならば、ひとりは本気で戦っていないはず。ですのに、全員、ガチですわ、これ。
いえ、手を抜いているのがわかれば、「木馬」だと見抜かれてしまう……。巧妙に周囲を瑞している人間がいるはず……。
アレイシア……が嘘をつけるはずないですわ。エウブレナ……はわたくしを騙さないはず。魔法使いさん……は嘘をつけない顔ですわ。
ならゼウスⅠ様かアフロディテⅨ様が「木馬」で実際はわたくしたちの味方ということ?どちらが嘘をついていそうかで言えば……。
慣れないことしてんじゃん。エンチャント・アンテロス!!
え、ちょっ……!
宝帯を模した人造神器が伸びてくるのを、ネーレイスは辛うじて防ぐ。
アンテロスが効くほど甘くはないか。ま、期待してなかったけど!
踏み込んで、刺突が3度、あわてて水流を呼び出し、飛んでくる。それを防ぐ。
(接近戦じゃ不利ですわ!離れないと……)
呼び出した水流に身を任せ、アフロディテⅨから距離をとる。同時に、別の水流を呼び出し、波として放つ。
プリミラ!!!
エンチャンドエロス!
アフロディテⅨは宝帯を振ってレイピアを強化。襲ってくる波を切り裂いた。
だがアフロディテⅨは間合いを詰めようとせず、レイピアの切っ先を軽く揺らす。
この距離なら、そっちの間合いっしょ?いいよ、仕掛けてみな。叩き潰してあげっから。
……なら、還慮なくいかせてもらいますわ!
***
ポセイドンヒーローの強みは、水流操作と海魔の力を組み合わせた、その戦法の自在さにある。
英雄大戦後、未熟さを思い知ったネーレイスは、これまで蔑ろにしていた技の修練に励んだ。だが――
そんな……まったく通じないなんて……。
すべてレイピアと宝帯に捌かれ、アフロディテⅨを揺るがせることすらできなかった。
あーしさ、美人じゃん。
え……?それは、まあ、そうですけど……。
男でも女でもたまにいるじゃん?「自分もあんな顔に生まれていたら」とか言う奴。
ちゃけ、舐めてんでしょ。素材がいいだけで微笑み続けてくれるほど、美の女神アフロディテは甘くないわけ。
体型維持、お肌のケア、メイクの研究。やらなきゃいけない自分磨きは無限。おまけに中身が腐ったら顔にも出るし。
サボった瞬間、もうおしまい。そういう毎日を乗り越えたその瞬間にだけ、美は宿り、Ⅸの数字を継ぐ資格が得られる。
あーしはさ、ヒーローになると決めた時から、その覚悟を持って生きてた。
ネーレイス。アンタ、素材は最高だよ。けど、ヒーローとしての軸はなに?
父親みたいになりたい?幼馴染のエウブレナに負けたくない?ま、そんなとこでしょ?
薄っぺらいんだよ、アンタは。我は張ってても自分がない。
そんなアンタが、アレイシアと肩を並べて戦えると、ホントに思ってんの?ちゃけ、ふざけてるっしょ。
それはネーレイスの本質を突く言葉だ。ヴァンガードに所属してから、ずっと思っていた。
(そう、私には足りないのですわ。アレイシアのような熱い正義の心も、エウブレナのように偉大な父を越える気概も。
恵まれた環境で生まれ、育ち、甘やかされたままのお嬢様。それがわたくし……。)
その顔、わかりみって感じ?じゃ、もう終わらせよっか!
踏み込み、レイピアが伸びてくる。切っ先はネーレイスの風船を的確に狙っている。ネーレイスはそれを避けることもなく――
だっしゃしょかですわぁぁぁぁぁぁ!
自らも踏み込み、槍と化した水流を放った。
ネーレイスの風船が割れる。同時にアフロディテⅨの風船も割れる。
確かにわたくしはあまちゃんのお嬢様ですわ。辛い過去とか、果たすべき使命とか、なんにもありませんわ。
それがどうしたというんですの?暗い人生を送ってなければ、ヒーローになれないとでも?ちゃんちゃらおかしいですわ!
守りたいという想いがあり!守るだけの強さがあれば!それはもうヒーロー!
わたくしはわたくしのまま!アレイシアやエウブレナに並んてみせますわ!
その決意の叫びは、同じフィールドで戦う君たちにも届いた。
ええ気合じゃ、ネーさん!!魔法使いさん!ワシらも負けちゃおれんのう!
そうだね、と君はうなずき、次のカードに魔力を込める。
アルティメット・ドロップキィィィィィック!
拳に秘めた情熱――リアラ・ローム!
まったく……ネーレイスったら……。そんなこと叫ばれたら、私が負けるわけにはいかないじゃない!
サーベラス・クロウ!
こいつは驚いた。このゼウスⅠにー撃入れるとは、言ってみりゃこいつは驚きだ。
戦いは白熱し、スタジアムは歓声に包まれた。
そのころ、特別展示室でも異変が起きていた。神器〈トライデント〉が光を放ったのだ。
素晴らしい……素晴らしい戦いてす、アレスちゃんの戦いは、いっても私たちのHEARTにHEATを灯します!
ねえねえ、ちょっとここ任せていい?ちょっとお花を摘みに行きたいんだけど。
いま目が離せないところなんです!やる気のない人はどこへでも行ってください!
あ、はい……じゃあ、行ってきます。
ヘルメスXが向かったのは、特別展示室だった。
そこには輝く神器〈トライデント〉を前に、目を細めるポセイドンがいた。
あ、やっぱなんか起きてた。おじいちゃん、これってもしかして……。
うむ。どうやら〈トライデント〉は、ネーレイスを正式な使い手として認めてくれたようだ。
うわ、神器までエコ贔屓するんだ。ずっるいなあ。
そう言ってくれるな。力はまだ足りぬが、神器が認めた以上、立派に育つだろうて。わしもこれで、肩の荷が降ろせるというもの。
ふふ……正式な引き継ぎが済んだら、あやつと茶でも飲むとするかな。
それで、Ⅹよ。なにをしに来たのだ?放送中ではなかったのか?
あ、いやいや、たいした用じゃないんだけどね。予定通り、計画も進んでるみたいだから――
枯れかけのお花を摘みに来ました☆
そして、異変は起きた。
メルクリウス・スフィア。
な……馬鹿な……これは……。そんなはずはない!いるはずがない!……だが、この力は間違いなく……!
そこにいるのか、悪戯の神――ヘルメスよ!
さあ、本当のゲームのスタートだよ。
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ