【黒ウィズ】アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ
目次
story1 GAME START
スタジアムがどよめく。
ヒーローではない者にもひと目でわかった。スタジアムを覆った力は、尋常なものではない。
君たちも戦いの手を休め、状況を把握せんと周囲の様子を見る。
そこへ、巨大モニターになにかが映し出される。
ぼくはヘルメス。君たちが崇めるオリュンポス12神のー柱、伝令と悪戯の神ヘルメスさ。
だが、モニター越しにも、その場にいるだれもがいた。かつてあらわれた嘆きの神となにかを、この者は持っている。
巻き起こるざわめきにクスクスと笑い神は続ける。
モニターが神器の飾られた特別展示室を映し出す。その床に倒れているのは――
あ、でもごめんね。暗い過去とか関係ないなんてカッコいいこと言ってたけど、君の過去、これで暗くなっちゃったね。あはっ。
使い手の呼びかけに、神器はなにも応えなかった。
ま、そんなわけで、目的は達したから、このまま黙って帰ってもいいんだけど……。
だってそうだろう?こんなお遊びでヒーローのなにが競えるって言うんだい?ぼくが見たいのはね、本物の勝負さ。
と、いうわけで、みんなには風船割りなんかやめて、殺し合いをしてもらおうと思うんだ。名案だろう?
いやいや、無理強いはしないよ?ただ、このスタジアムにいる観客の命が、ぼくの気分次第だってことは覚えておいてね。
story2 OLLISSION
その頃、メインスタジアムの外でも大騒ぎが起こっていた。
だが、連絡の結果、さらに最悪の状況が判明した。
英雄大戦時に倒したはずの巨神ヴィランが復活し、大群を成してオリュンボリスに向かってきているというのだ。
アルテミスⅧを中心とした戦闘部隊はその対応に追われており、ヘラとデメテルVは事態の究明に奔走しているという。
アポロンⅥは通信を切り、頭を上げる。その顔には、この上ない苦渋が澪んでいた。
ケーリュケイオン。死者を蘇らせると伝えられるそれは、伝令神ヘルメスの杖として知られている。
オリュンポリスを襲う巨神の群れは、そのケーリュケイオンの力によるものだ。
〈神話に終焉を告げる獣(マイス・エント・ブリンガー)〉があらわれた時、この世界を捨てるよう、ぼくがゼウスに進言したことをさ。
ま、おかげでぼくだとわからなかったろう?いや、見ものだったよ。隣にいるのにまったく気づかないんだからさ。
プロメテウスは身動きを封じられている。ただの人間と変わらぬ今の彼に、自力で脱出する方法はない。
君の大事なアレイシアが、ヒーロー同士で殺し合いをするさまを、さ。
***
今度はチーム戦なんてケチくさいこと言わずに、全員てのバドルロイヤルだ。
終了条件はひとつだけ。君たちのうち、だれか3人が死ぬこと。
後はなんでもありだから、好きにするといいよ。ただし、あんまりぼくを退屈させると――そうだな。
――観客席に有機水銀の雨でも降らすことにしようか。即死はしないだろうし、優しいだろう?
最初に口火を切ったのは、アフロディテⅨだった。
神器が押さえられ、外部との連絡も遮断された以上、市民の命を守るためには、あいつに従うしかない。
***
アフロディテⅨとゼウスⅠは本気だった。本気で君たちに襲いかかってきていた。
対するアレイシアは、不調だった。そして君も。
先ほどまで、君とアレイシアは全力で風船割りをしていた。その時に力を使いすぎたのだ。回復の時間が必要だった。だが――
ゼウスⅠの重く速い拳が、それを許さない。
ネーレイスが水流の型を張り、その動きを阻もうとするが――
エウブレナはアレイシアのサポートにまわり、君の方にまで手が回せない。
チーム分けをしたわけでもないのに、気がつくとアフロディテⅪとゼウスⅠのふたりを、君たち4人で迎え撃つ形になっている。
2対4、だが、それでようやく互角だった。
けどね、出来たらアレイシアちゃんには引いてほしい。
ヘルメスをなんとかするには、戦力が必要。なら、残すべきはあーしとⅠと、アレイシアちゃん。でしょ?
戦力として未知の君を除外すれば、その選択はまったくもって妥当だった。だが、そんなものに納得するアレイシアではない。
story3 DISTORTION
この世界を捨ててから、千年ほどが過ぎた頃かな。ぼくはゼウスに命じられ、この世界の様子を見に来た。
まったく驚いたよ。〈神話に終焉を告げる獣(マイス・エント・ブリンガー)〉に滅ぼされていると思ったのに、生き残ってるんだから。
おまけに当時の人間ときたら、アレスを篤(あつ)く信仰していたんだよ?
そんなの、ゼウスに報告できるわけないだろう?八つ当たりでぼくがケラウノスに撃たれてしまうよ。
と、いうわけでね、それからぼくは何百年かかけて、アレスの存在を神話から抹消してあげたのさ。
君が怒り狂っていることを知った時は嬉しかったなあ。それだけぼくの仕事が完璧だったってことだもんね。
その後はオリュンポスに戻って、この世界のことは忘れていたんだけどね。20年ほど前かな。ふと思い出して様子を見に来たんだ。
驚いたよ。神話還りなんてものが生まれているし、君はプロメトリックと呼ばれている。
中でも興味を持ったのは神器だ。ぼくら12神の力が封じられた宝物。あんなものが人間の手にあるなんてね。
だれが作ったのか予想はつくけど……放っておくことはできないよね。
それで、ぼくはヒーローとして英雄庁に潜入することにしたんだ。最高の状態の神器を手に入れるためにね。
そんなわけで、目的は達成したし、帰る前にちょっと遊んでいくことにしたのさ。
story4 URANIA
アンタのその真面目さも、優しさも、たしかにハデス神のー側面だろうさ。けどね、それじゃ全然足りないっての。
よーく見ておきな。神の力の操り方。
アフロディテⅨがレイピアを天に向ける。次の瞬間、彼女の身体がまばゆい光を発した。
アフロディテⅨが前方へ駆ける。速い。だが、先ほどまでと速度は変わらない。
アレイシアが槍をふるう。手応えはない。避けられていた。
すかさず、エウブレナによる二の矢が放たれる。が、それもかわされた。
ふたりはそのまま連撃をしかけるが、すべてかわされ、捌かれ、あいだに鋭い刺突が飛んでくる。
速くなったわけでも、力が増したわけでもない。だが、さきほどよりも的確に避け、きわどい隙を衝いてくる。
まるで、ふたりがどう動くかわかっているように。
女神アフロディテには二面性がある。ひとつは、地上の愛を司るアフロディテ・パンデモス。
いまひとつが、天上の愛を司るアフロディテ・ウラニア。ウラニアは未来予知に通じる女神の名でもある。
アフロディテⅨは美神の力を制御し、引き出す側面を切り替えたのだ。
わかるのは、コンマー秒にも満たぬわずかな刹那。だが死闘の最中では、その刹那が勝負を分ける。
ふたりのいかなる攻撃も寸前にかわし、伸びてきた刺突が当たる寸前にわずかに軌道を変える。
***
アフロディテの神器〈ケストス〉に選ばれるには、強さの他に条件がある。
アフロディテの神話還りの中でもっとも美しく、そしてそれを自分で信じられること。
その美しさには、心の美しさも含まれる。
ゆえに、アフロディテⅨは、ゴッド・ナンバーズでもっとも代替わりが早い。
外見の美しさを保つことは難しい。だが、己の心の美しさを信じ続けることは、もっと難しい。
力なきものを守るためのルールが、時にヒーローを縛る。ルールさえなければ、もっと救えたのではないかと苦しむ。
アフロディテⅨが自らの選択に疑念を抱いた時、神器〈ケストス〉は、次の使い手を選ぶのだ。
だから、ヒーローを志したその時、リベルティーナは心に決めた。
リベルティーナがⅨの名を背負ってから2年半。彼女はー瞬たりともその想いを忘れたことはない。
だから、いまこの瞬間の選択も悩まない。悔やまない。ただ美しくあるために、アフロディテⅨは審判をくだす。
だれよりも美しい、美と戦いの女神であるために。
アレイシアの槍が光を放つ。それは今ある全力を秘めた、戦神のー撃。
迎え撃つのは、心臓をー突きする必殺のカウンター。
ふたつの力が交差する、その瞬間。
アレイシアの槍は、ギリギリでアフロディテⅨから逸らされた。そして、それもまた美闘神の予知した未来だった。
だから、アフロディテⅨは、逸らされた槍の穂先に自らの身を移動させた。
アフロディテⅨに、後悔は許されない。自らの心が曇る選択など有り得ない。
だれかが犠牲にならなければいけないなら、それはまず、自分であるべきなのだ。
倒れるアフロディテⅨの上体を、アレイシアが抱き支える。
美神の細くしなやかな腕が伸び、祝福するように、アレイシアの頭を抱きかかえた。
そして、耳元で囁く。
愛の神エロスはアフロディテの子であり、その名は性愛や生の本能を意味する。同時に、真善美への憧れを指す言葉でもある。
リベルティーナにとって、アレイシアの生き方は、まさしくまばゆい憧れ、自らが選択し得ない公りなき希望であった。
だからこそ、悔いなく捧げ、託すことができる。自らの命を燃やした、渾身のエンチャントを。
この瞬間でなければならなかった。邪悪な神が見守るなか、アレイシアに力を分け与えるには、これしかなかった。
アレイシアの身に神の力が漲る。
戦神の力が迸る。それは正当なる12神の力。悪戯の神に向けて、アレイシアは飛び――
次の瞬間、アレイシアを撃ったのは、傲慢なる絶対者の雷。
覚醒した神器による、雷霆の威を秘めた拳だった。
story5 SWINDLER
言ったよね?ぼく言ったよね?4thステージには敵側のスパイ――「トロイの木馬」がひとりいるってさ!
展示室にある〈神王雷霆〉はイミテーション。彼がつけているのは始めから神器さ。
さあ、ゲームを続けようか、アレスちゃん。みんなが君の勇姿を見ているんだからさ!あはははははははははははははははははは!
ナンバーズの内通者が必要だと思って、アイスキュロスをヒーローにするために、ヴィランに彼の子供を襲わせたりとか。
ネルヴァの母親を追い詰めて事件を起こさせ、彼女に殺されるように状況を整えたりとか。
英雄庁のデータベースにあるアレイシアの神話特性を「不明」から「ハデス」に書き換えたりとか。
君に気付かれないように、いろいろやってあげてたんだよ?う~ん、ぼくって健気だ。
叫び、足掻いても、プロメテウスは動けない。神に抗う力など、彼にはもうないのだ。怒りに満ちた目をヘルメスに向けるだけだ。
その激しい憎しみを浴びながら、悪戯の神は笑う。
今、プロメテウスの心にアレスはいない。ぼくだけがいる。ぼくへの憎しみだけが。ああ、この瞬間をどれほど待ち望んだことか。
あとはアレイシアを苦しめて殺せば、君の心は、未来永劫、ぼくへの憎しみで埋め尽くされる。そうだろう、プロメテウス?)
ふふ、ふふふ……あははははははははは!
***
この会場にいる市民の不安は限界に達している。なんとか安らがせねばならぬというのに、私の力が足りぬばかりに!
これ以上、市民に不安を広げないためには、神器によって変身したヒーローの姿が必要。もうわかっているはずだ。
カーニバル開催中、神器はすべてメインスタジアムに集められる。だが、ひとつだけ例外がある。
ディオニソスの神器〈尽きざる蜜の神酒杯(アペイロン・ネクタル)〉――行方不明ということになっているナンバーズが持つそれは、当然、集められていない。
そして、その神器は今、ここに――ヴァッカリオの腰に下げられている。
たとえそれで、俺の命が尽きるとしても。
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story1 CARNⅣAL
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story2 LABYRINTH
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story3 LABOURS
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story4 TROJAN WAR
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story5 MISCHIEF
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story6 HERMES
アレス・ザ・ヴァンガード3 Story7 エピローグ