【黒ウィズ】アルティメットハロウィンガールズ Story2
story
急にあの馬鹿みたいな魔力が消えて、それで気づいたらアリエッタが死んだことになっててさ。
魔力を抑えることもしないで、ダダ漏れになってたのなんて、アリエッタぐらいのものだし。
<アリエッタが死んだという事実が、君はどうにも受け入れられない。>
<いかんともしがたい状況が、ここにあるからだろうか。>
<君は頭を振って、足を踏み出し――>
<――損ねて、思い切りコケてしまった。>
<もしかしてアリエッタは、自分のことを殺そうとしているのだろうか?>
<君は疑心暗鬼に陥っていた。>
<そうだとしても、最強の魔道士がいれば安心だね、と君は言う。>
いやいや、どうもどうも。
<爆炎娘と怪獣の戦い……君は想像するだけで怖気だった。>
結構、魔法直撃させたんだけどなあ。全然倒れなくて……。
挙句、終わったあとにご飯食べてくるー!って走っていくぐらいピンピンしててさ。
プライドもズタズタ。嫌になるよね。
魔力もからっきしで、才能もないなんて学校で言われてたし。
<そんな姿は想像もつかない。>
<君は率直にレナに伝えた。>
<そう言ってレナは笑う。>
死んじゃうなんて考えもしなかった。〈トリック・オア・トリート〉で決着つけるつもりだったんだけどなあ。
<レナは少し寂しそうにつぶやく。>
いや死んだことにすら気づかないで起き上がったのかもしれないけど。アホだし。
アリエッタはどうかな……だれかに殺されたって話もあるし。
<あれを退治できる魔道士が、この異界にはいるということか。>
<君はふとアリエッタを見た。>
<物憂げな表情で、レナを見つめている。>
魔法を封印するエリスとか、メリイとかも小手先の魔法が強いし。
<エリスやミツボシがそんなことをするとは、到底思えない。>
ま、とりあえず先に進もう。ゆっくりしてたんじゃ見つかるものも見つからないしさ。
***
<苛烈な爆発に見舞われ、君はすっかり疲弊していた。>
<火山岩のようなものが降り注いだり、とてつもない爆発が起きたり……。>
<というかレナの魔法が頻繁に君に直撃していた。>
<前に現れる敵と、後方から飛んでくるレナの爆炎に挟撃され、君は満身創痍だった。>
<なんでもかんでも爆発する子が憤っていた。>
<つい先ほど君とウィズも吹き飛ばそうとした子が美学を語りだした。>
<わざとなのか、コントロールが悪いだけか、どちらにしても君はレナの前に立たないようにしようと固く誓った。>
<君は、さあ、と言って周囲を見回した。
確かにこれだけのアトラクションなら、何かしらの仕掛けで動いていそうだが……。>
<アリエッタは相変わらず憂いの帯びた目で、どこか遠くを見つめていた。>
<この子は、何を思ってこんな危険なアトラクション……あるいは家を作ったのだろうか。>
<朗らかに物騒なことを言うレナを、君は思わず2度見した。>
<ちょっとまって、と君はレナを遮る。>
<どうして燃やすの?と至極真っ当な疑問を投げかける。>
<広いし!?広かったら爆破するということだろうか。とんだ狂人である。>
アリエッタのものとはいえ、危ないものは撤去しなきゃでしょ。
<撤去というよりも、純粋な破壊だ。>
<怪獣やアホの子の影に隠れていたが、きっとレナは頭のネジが数本足りてない。>
<……よく考えてみれば、初めて会った時も、アリエッタの魔法は蹴飛ばすわ、ためらいもなく本気の攻撃をしてくるわ……。>
<無邪気とかアホでないぶん、レナのほうが危険なのでは……?と君は不安になった。>
<そんな君の不安をよそに、次の敵……いや、レナ風の何かが現れた。>
<隣で静かにしていたのは、これが待っていたからか……と君は思う。>
<生々しいことを言うレナ風の子が、にじり寄ってくる。>
<レナ風の何かは、全身が爆弾でできていた。>
<やばいことを言うレナと、なんでもかんでも爆発するレナが今、一対一で対峙した。>
<君はすっかり蚊帳の外だった。>
<いや、いいよ……と君は断る。>
<ダブルレナに挟まれて戦うなんて、前後左右気が抜けないからだ。>
***
<レナは意外なほど苦戦していた。>
<レナ風の何かは、正直強くない。それどころか、だいぶ弱い部類だろう。>
<だが的確にレナの魔法を相殺してくる。>
<レナにとっては、相性最悪の相手だ。>
<できることなら傍観していたかったが、このままではジリ貧だ。>
<君は魔道自販機なるものから出てきたジュースを飲むのをやめて、とりあえず立ち上がった。>
<三角座りをしていたせいで腰が痛むが、カードを取り出し、レナ風の何かに向けて魔法を撃ち込む。>
<レナ風の何かは、君に魔法をむける。>
<短い詠唱でひとつ、ふたつと捌いて足元をすくい転がした。>
<詠唱を全く必要としないレナの魔法は、攻撃特化と言われるだけはあり、さすがの大威力だ。>
<跳ねるように転がりまわったレナ風の何かは、立つこともできず怨嵯の声を上げる。>
<そういうことは言っちゃダメだよ、と君はウィズを諌めた。>
<やられたんだが?と言われても……君は言葉に詰まった。>
<君の視界を塞ぎながら、アリエッタの亡霊が言う。>
<しかしそれを言われたところで、君にはどうしようもなかった。>
<……というか殺る気だったのか、と呆れてものも言えなかった。>
友だちが亡くなったら、せめて安らかに逝けるように残った私たちができることをすべきでしょ。
それにあの子、まだすごく若かったし、きっとすごく悔しいと思うんだよね。
だから遺されたものを守ってあげるのも、死因を調べるのも私の役目ってこと。
後先考えない子だったけどさ、志半ばで死ぬなんて無念だったろうな……。
<爆散したレナ風の何かのかけらを拾い上げ、レナは小さく呟いた。>
<そのいいやつを殺ろうとしてなかった?とはさすがに言えなかった。>
でもあの子は、私が辿り着けなかったところにたった数年で上り詰めた。
あの子と同じ景色を見て、あの子が感じていたことを共有したかった。
<レナが何か言うたびに、アリエッタが目の前をひゅんひゅん動いてとてつもなく邪魔だった。>
<だからレナの言葉に対して、何も返せずにいた。>
<そういえば宝はどこに?と君は言う。>
<君は爆散したレナ風のそばにあった箱を持ち上げる。
開けてみると、その中には黒い塊のようなものがあった。
<キラキラとしているこぶし大の塊に、何か違和感のようなものを覚えた。>
<君は頷いて、黒い宝石をしまいこんだ。>
<まあまあ、とアリエッタをおさえこんで、君は次の道を尋ねた。>
死ぬなよ、黒猫のひと。
<死ぬようなところなのか……君はいまいち覚悟を決められずにいた。>
<もしかすると、アリエッタは君たちを地獄へ誘おうとしているのかもしれない。>
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<一方その頃、リルムとソフィは、アトラクション内のレストランにいた。>
<何をしているかというと、普通にご飯を食べていた。>
<寿司を食っていた。>
<東の国から取り寄せたという米なるものに生魚を乗せた神秘の食べ物である。>
<超巨大な本を尻に敷いて、数段高くなった椅子に座ったリルムが、ほっと一息ついた。>
イーニアに聞いただろう!あの怪獣娘の財宝を残らず集めるのだ!
<アリエッタの財宝のひとつ、超でかい本を見つけたふたり。
稀代の天才が作り出した魔法の数々や、まだ世に出ていない魔法が記された、紛れもないド級の宝である。>
<その才能を惜しみなく発揮し、世界を恐怖――ではなく、世界の憧憬を一手に集めたアリエッタの魔法書だ。>
<売れば何代先まで遊んで暮らせる。それどころか国のひとつやふたつ、買うことだってできるかもしれない。>
<だがリルムはアホだった。>
<財宝と言われ思いつくのが金ピカとかそういうものだった。>
ソフィ、まだアリエッタちゃんが亡くなったなんて信じられないもん……。
アリエッタちゃんが来たときに壊されたリムジンほうき……直さずにまだとってあるんだ。
我を使って障害物をどかすということをしなくなったのだ。これを成長というのだろうな。
ところで小娘。地べたに我を置くのはやめてくれるか?汚れが気になるのだ。
それと、我ちょっと縦になりたい。
<リルムは傘立てにぞんざいに杖を放り込んだ。>
<エターナル・ロアより、目の前のごちそうに夢中である。>
<魔法の数々は冊数を分けられることな<、1冊にまとまっている。>
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<エリスとイーニアは、リルム一行たちとは違うところを進んでいた。>
<ところがアトラクションの周囲に群がる魔物に、その進行を妨げられ、状況は芳しくない。>
それにこのアトラクション、周りにいる人、至るところにあるもの全てがアリエッタの魔力で稼働しているようです。
私たちが見つけたのは、アリエッタの杖だけです。
恐らくほかにもあると思うのですが……あの子がいったい何を持っているのか、それは私にも見当がつきません。
<エリスは神妙に頷く。>
<アリエッタの杖は、彼女が魔道士となるとき、母親からプレゼントされたものだ。>
<とはいえ、彼女の魔法に杖は必要としない。せいぜい背中を掻くために役立つぐらいだ。>
<だがアリエッタが持ち歩いていたことで、とてつもない魔力が宿り、振るうだけでとんでもない天変地異が起こりかねない。>
<かの魔杖ほどではないにしろ、トラブルの元は早めに保護しておきたい。>
うっ……アリエッタ……どうして……。
<杖を見ていたエリスが、こみ上げる感情を抑えきれず涙を流す。>
魔道士協会のトップともあろうものがそれでは下の者に示しがつかないではないか。
<イーニアとて、親しい者の死が辛くないわけではない。>
<だが彼女は長い時を生きて、数え切れないほどの別れを経験してきた。>
<自分の感情を押さえ込む術を、知らず身につけてしまっていた。>
<小さく呟いたイーニアは、かぶりを振って前を見た。>
<かつてビジェック、アルガムナドと共に世界を恐怖に陥れた古代の大魔道士。>
<今では魔道犯罪に指定されるありとあらゆる巨悪に手を染め、その思想から狂信者を集めたことでも知られる。>
古代の魔法とはいえ、その対策がとれず封じたものも多い。
よりによってあんなものが見つかれば、この広い世界を混乱させるには十分だろう。
ヴォルフラムは、魔法書にあらゆる凶悪な魔法を記したと言われています。
<己の腕のみを信じ、力で世界と戦い抜いたビジェックやアルガムナドと違い、ヴォルフラムは魔法書の作成に熱心だった。>
<死後、後世に自身の魔法を伝えることで、ヴォルフラムという名を永遠のものにしようとした。>
いや……あるいは噂の類だったのかもしれない。
まあ、いや、吐りたしかにあの子の代わりはいないが……人は誰しも代わりを持たないものだ。
<魔道仕分けとは、世界中の人々へ魔法の透明性をアピールしつつ、その魔法が必要か否かを検討する組織である。>
<魔道士協会内の一組織だが、アリエッタはそこに在籍していた。>
<彼女は相手の靴紐を縦結びにする魔法だとか、本のページに嫌な折り目がつく魔法だとか、意味のない魔法を申請することが多かった。>
あのときアリエッタは、魚の尾びれだけをスッととる魔法を申請しようとしてたのに……わ、私が止めてしまったばっかりに……。
こ、心残りを……あの子の心残りを……尾びれを……尾びれを、うぅ……ぐす……。
<イーニアは、そこまでアリエッタが考えているとも思えなかったが、面倒なので流しておくことにした。>