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【黒ウィズ】アンダーナイトテイル Story2

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

目次


Story1

Story2

Story3

Story4

Story5

Story6

Story7

Story8

Story9

Story0



登場人物




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story



 君たちは城の主、ヴィラードたちを追って古城の中をひた走る。

しかし、そんな君たちの童話石を遊戯の参加者たちが狙ってくる。

残念ですが、邪魔にならないところで、応援しています……。

雑魚は、僕と魔法使いさんに任せてよ。

 スノウは、毛糸を伸ばして相手の首元に巻き付ける。

たかが毛糸と侮る相手だったが、手に取ってみてはじめて感じるその強靭さに狼狽する。

しばらく眠っててもらうね。

 毛糸を生き物のように操り、頚動脈を圧迫し、相手を昏倒させる。

そのように毛糸を使う人、はじめて見ました。

毛糸が、まるで魔法にでも、かけられたように動いていたにゃ。

小さい頃から監禁同然の生活を送ってきたんだ。狭い部屋の中では、編み物しか、やることがなかったからね。

編み物、私も好きです。手袋とマフラーぐらいしか、作れませんけど。

私は全然にゃ。演人(キャスト)には、編み物ができなきゃいけないのかにゃ?

決まりじゃないですよ。

乙女の嗜みってやつだね。

ねー?

ふたりの息はぴったりにゃ。

 女子(?)ふたりの仲良しっぷりを見せつけられてウィズは、少しふてくされていた。

不意に、君はめまいのようなものを感じた。

世界が揺れるような感覚。そのあとに訪れたのは、どうしようもない喉の渇きと闘争心。

キミ、どうしたにゃ!?

もしかして――魔法使いさん、童話石を出して。

言われて君は、童話石を取り出す。前よりも、さらに黒く染まっていた。

まずいにゃ。キミの読者たちが、不満を抱いてるようにゃ。

 理由は、明白。先はどの戦いでも、なんの活躍もできなかったからだ。

前にも言ったけど、その童話石を元の輝きに戻すには、読者たちの期待に沿うしかないんだ。

 もちろん理由があれば戦うが、わけのわからない遊戯のために戦うのは、気が進まなかった。

……その童話石、私なら、なんとかできるかもしれません。貸してください。

なにをするつもりにゃ?

 アーシュは自分の童話石を取り出す。以前と変化なく、激しいまばゆさを放っている。

こうして……私の童話石と、魔法使いさんの童話石を合わせると……。

童話石がきれいになっていくにゃ!

 J瞬く間に、君の童話石から黒い影は去った。同時にめまいのような感覚も消え失せた。


なんでそんなことできるの?普通できないよ?

お掃除は昔から得意なんです。お任せくださいっ!

アーシュの持っている童話石は、放つ光が特別強いにゃ。心の清さを表わしているのかにゃ?

むぅ~。じゃあ、黒猫さんは、僕の心が汚いって言いたいわけ?

にゃ!?にゃはははっ……。

外見が美しい人は、きっと心も美しいのです。

面と向かってそう言われると返す言葉に困るね。もう、魔法使いさんも、なにニヤニヤしてるの~?



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story



リコラ、いい加減目を覚ませっての。お前は操られてるんだよ。

肉が食べたいわ。血が滴るとびっきりレアな生肉を。

お前は、そんな奴じゃなかったはずだぜ?満足に吼えることもできない、心の優しい半狼だったのに。

黙れ!黙れ!私をいつまでも半端な狼だと思うな!

人間たちは、里のみんなを殺した……。私は、復讐しなきゃいけなかったのに……。叡粂池丿人間への恨みや恐れを、すべて忘れて、平穏をむさぽり続けていた。自分が許せない……。

 リコラの手にある童話石は、黒い淀みが渦を巻いていた。

wリコラ姫!狼衆、全員揃いました!

wこの城には、俺たち狼族を懲らしめてきた童話の主人公たちが、山ほどいやがるぜ!

wいまこそ、奴らに復讐を!

 数多の童話で狼たちは懲らしめられてきた。その恨みは、根深いものがあった。

私たちが、どれだけ良い子でいようが、世間の奴らは言うわ。狼は悪者だと。

だったら、狼らしいことをしてやろうじゃないの!

本気で言ってるのか?いい加減、正気に戻れよ!

wお前は、人間の味方か?

 裏切り者は許さない。ラグールは、狼たちからー斉に攻撃された。

いてえ……。

あなたも狼ならば、狼らしく覚悟を決めることね?

俺たちは、完全な狼じゃねえ……。半狼だ。半分人間の半端ものなんだよ!

いまさら、狼ぶるなんてやめろよな……。

私は、エンシェントウルフ族の生き残りよ。ー族のみんなは、人間たちに殺された……。

復讐のためなら、半狼なんていつでもやめてやるわ!

 リコラは、手を掲げた。他の狼たちは、全員彼女に付き従っている。

正気なのは、俺だけかよ……。

第ー、ここはどこなんだよ!?メメリーたちは、どこに行ったんだよ!?

 リコラたちと共に、魔女の森を抜けてさらに旅を続けていた。

そのあと、空間の歪みのようなものを発見したところまでは覚えている。

それ以降の記憶が、まったくねえ……。気が付いたら、メメリーたちとはぐれているし、リコラは人格が変わっちまってた。

ちくしょう散々だぜ。誰か助けてくれよ……。



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story


狼たちめ許さないぞ!狼退治のプロ。鮮血(あか)ずきんちゃんが、相手なの!

wあれが噂のメメリー!?

w狩られた狼は、星の数ほど。その小さい身体が、通りすぎたあとには、4本足で立っていられる狼は皆無という……。

狼呼んで(人呼んで)覇王メメリー!!俺たちみたいな、雑魚じゃあ太刀打ちできねえ。逃げろー!?

ぬっ、はっはっはっ~!メメリーに恐れをなしたようです!

でも、許さない。狼たちは、1匹残らず処分しなきゃだもんね。だから今日も、セーバイ!セーバイ!

「「「うぎゃあああああっ!」」」


 鮮血ずきんメメリーに敵はいない。……かと思われた。

……あれ~。なんか違う。なんか違うよ~。

メメリーは、学んだはずだよ。狼には、悪い狼もいれば、良い狼もいるって。

無闇に狼を退治しちゃいけないって、リコラとも約束したのに。う~ん。どうしちゃったんだろう?

小さい女の子がいるにゃ。

あの子も、演人(キャスト)のひとりだろうか?

お困りですか?なにか、あなたのお力になれれば嬉しいのですが。

こういう時、躊躇わずに声を掛けに行くところが、アーシュのいいところだね。

わからないの……。心の奥が、ずっとざわざわして、狼を退治しなきゃいけない気分にさせてくるの。

狼を退治……ですか?

あなたの童話石を見せてくれる?

 少女は、ポケットの中に入っている童話石を取り出して見せてくれた。

かなり濁っているにゃ!

思った以上に症状が進行しているね。

でも、ここまで黒くなるってことは、読者たちの言葉に耳を貸さなかったってことだよね。よく、我慢できたね?

最初、この石がメメリーに命令してきたの。狼たちを狩れって……。

けど、メメリーはリコラと約束してたの。無闇に狼を退治しないって……。

そしたら、この石がどんどん黒くなって、胸の奥が、ざわざわして、ぎゅうっと締め付けられて……。

なにも考えられなくなったの。ねえ、メメリーは、どうしたらいいの?

読者たちは狼を狩れという。ー方、メメリーちゃんは狼を狩りたくない。う~ん、難しいね……。

とにかく、童話石を浄化しましょう。

 君の童話石にしたのと同じように、アーシュの輝ける童話石は、闇を吸い取っていく。

わあ~。心が、すっごく楽になった。お姉さんが、助けてくれたの?

童話石のお掃除はお任せください。今の私にできるのは、そのぐらいですから。

メメリーは、リコラを探しに行くのです。お姉ちゃんたちありがとう。

待って。メメリーちゃんひとりで行動するのは、危険です。

私たちとー緒に行動しませんか?メメリーちゃんの探している人、ー緒に探してあげます。

うん。その方がいいだろうね。

ありがとう。優しいお姉ちゃん。……とお兄ちゃん?

ヘー、初対面で見抜く人は、なかなかいないんだけどな。鋭い観察力だね。

わーい。褒められちゃった。

メメリーは、元狼退治の専門家なのです。ひと呼んで鮮血ずきんのメメリーだよ。よろしくね?


 ***


リコラは半狼なんだ。でも、ずっとー緒に旅してきたの。

メメリーにとっては、とても大事な人なの。

そのリコラさんは、どこにいるのでしょうか?

 メメリーは、突然、四つん這いになって地面に鼻を近づけた。

くんくん。こっちからリコラの匂いがする。いや、こっちかもしれない。

変わった特技を持つ子だね。

メメリーが持っている童話石が、明滅を繰り返していた。

なにかの合図にゃ?

気きっと、読者たちからの催促だね。物語が退屈になると、ああやって合図を送ってくるんだ。

うううっ……。まただ。また、あの声が聞こえる……。

しっかりしてください!

狼をやっつけろって……。人間を襲う狼を倒せって……。メメリーに言ってくるの。

 先ほど浄化したばかりのメメリーの童話石が、早くも濁りはじめた。

こんなに早く、読者たちの不満が募っていくなんて、とても奇妙だ。

駄目……。声が、止まらない。黙ってよ……。黙れえぇぇ……。

ようやく見つけたぜ。

誰にゃ?

俺様はラグール。こいつの仲間だ。おっと、こいつは……リコラと同じ症状だな。

原因がわかるのかにゃ?

誰かが、童話石を使って俺たちを操ろうとしてるんだ。リコラは、すでに敵の手に落ちた……。

遊戯を盛り上げるためにあえて読者たちに好戦的な趣向を持たせたのかもね。

誰かきます。

wすん、すん。すん、すん。ここから人間の匂いがしやがるぜ?

w女の子どもと……お?猫までいやがる。獲物としては、十分だな。

 現れたのは、狼のー団。君たちを獲物として、見定めたらしい。

物語での狼の狙いは、人を食べること。そして退治されるのが役割だ。

冷たい雨に打たれ、乾いた砂漠を進むように。ー族を殺された痛みと苦しみを引き摺りながら歩いてきた。

今こそ、人間に復讐を果たす時よ。お前たち、やってしまいなさい!

落ち着けリコラ。ここにいるのは、メメリーだ。わかんないのかよ?

あれが、メメリーちゃんの探しているリコラさんですね。

あんな悪そうな狼と仲間だったのかにゃ?

言っただろ?あいつは、ここに来て変わっちまったって。

……やれ!

少し、痛い目を見てもらうしかねえか。

wお嬢ちゃん。その美味しそうな身体、ーロちょ~だい。

僕を食べたいって?随分と命知らずだね~。

 君は、アーシュに下がるように命じた。

せめて、メメリーちゃんは守ります!

 君はカードを抜いて、盾となって立ち塞がる。

スノウも、毛糸を指に絡みつけた。そして、ー瞬でドワーフの人形をあみあげた。

シラユキ王国の勇敢な騎士たち。今度も、僕を守ってくれるよね?

ちゃちな幻術だ。そんなもので狼は怯まない。みなのもの進めー!



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story



 リコラは、子分の狼たちと、人間が入り乱れて戦う様子を眺めていた。

飛び散る火花と怒声は、里が焼かれた日の記憶を否が応でも呼び覚ます。


私が生まれた里には、人目につかないよう、30名ほどの半狼たちが細々と暮らしていました。

私たちは、元来争いが嫌いな種族で、森の恵みに感謝しながら、他の種族と共存することを願っていました。

私が、エンシェントウルフ族の長老の孫だと知ったのは、物心ついた時でした。

お陰で、私はみんなに大事にされて育ちました。

温かい里の半狼たちに囲まれながら、その日のことだけを考えて生きていくことができました。

しかし――里の外に出ることは、許されませんでした。

人間という恐ろしい生き物に見つかったら捕まって殺される、と大人たちは口を揃えて言います。

数年後。私は、その言葉の意味を知るのです。


長老も……里の大人たちも、私の友達も、みんな人間が殺した……!

人間が憎い。私から、家族を奪った人間どもは、必ず滅ぼす――

 リコラの持つ童話石が、怒りと連動するように黒く染められていく。

リコラ、やめるのです。メメリーは、リコラを退治したくないのです。

……人間の癖に、仲間面しないで!

手は出させません。

そいつは、メメリーだぜ。仲間だろうが!?

仲間なんて必要ない。私は、殺された里のみんなの恨みを晴らすだけよ。

駄目だ。俺は、リコラを正気に戻してやる方法を知らねえ。

ここは、退きませんよ。

お前も、人間か!?私の邪魔をするなら殺す!

 狼らしい鋭い爪と牙が、アーシュを襲う。

鮮血ずきんの登場……なのです。

 寸前で間に入ったのは、メメリーだった。相手の攻撃を防いだ動きは機敏だったが、やはりどこか苦しそうだ。

リコラの目は、メメリーが覚まさせるのです。メメリーがやらなきゃいけないのです。

「狼を退治しろ。悪い狼を退治するのが、鮮血ずきんの役目だろ?」

……いやだ。リコラは退治しない。元のリコラに戻すだけなの……。

だから、メメリーの邪魔しないで。あっちいけー!?

 幻影のようななにかを必死に振り払おうとしている。

メメリーちゃん、童話石を投げてください。

投げれば良いの?えいっ!?

あわわ、それを手放すと絵本になってしまうんじゃないかにゃ!?

腰を落として、ボールは身体の正面で受け止める!

ナイスキャッチにゃ!

浄化終わりました。メメリーちゃん、はい。これ!

 メメリーが、絵本になってしまうギリギリのタイミングで童話石が戻ってきた。

気持ちがすっきり爽快……な気分。

メメリーちゃん。自分の本当の気持ちを信じて!童話石が、黒くなったら、私がきれいにしてあげます!

自分の本当の気持ち……。

リコラ。私、絶対にあなたを助けたいのです!絶対に助けてみせるのです!

人間のお前に、私たち狼を救えるわけがない!

救えるったら救えるの!

うるさい!


突然のことでした。平和だった里に武装した人間たちが、なだれ込んできました。

長老たち大人は、必死に抵抗しましたが、人間たちは銃で武装していました……。

「エンシェントウルフ族の生き残りが、大陸のどこかにいるはずよ。彼らのところに逃げるのよ!」

「お母さん!」

「私たちが、囮となって人間を引き付ける。その間に、この隠し道から逃げるんだ。振り返るんじゃないぞ。ひたすら、遠くに走れ。」

里から逃げだせたのは、私ひとりだった。


私たち半狼は、遥か昔に人を食べることをやめた。でも、それは間違いだったわ……。

人間を食うことをやめてはいけなかった。牙と爪を使って、人間たちを狩り続けなければいけなかったの!

メメリー、避けるにゃ!


 ***


 鋭い爪が、メメリーを引っ掻いた。

 メメリーは、避けようとはしなかった。むしろ、みずから進んで攻撃を受けに行った。

リコラ、これで気が済んだ?

済むわけないだろ。私は、まだお前を食っていない。

食べやすいように、肉片になるまで切り刻んでやる!

下がりましょう。そのままだと本当に……。

いいの……。止めないで……。

 メメリーは根性で立ち上がる。

メメリーは、生まれつき狼を退治する鮮血ずきんとして育てられた。いわば狼の天敵だよ。

リコラと出会う前から、沢山の狼を退治してきた。だって狼は、人間を食べる悪い奴らだって教えられてきたから。

だから、まずメメリーを食べればいいと思うの。

遠慮はしないわ。あなたの肉も、骨も……ぜ~んぶ、食べ尽くしてあげるわ。

 君は訊ねた。本当に食べられてしまってもいいのかと。

リコラと戦うぐらいなら、そっちの方が全然いいのです。

う……あああっ。メメリー……。

 リコラが、突然苦しみはじめた。

やはり、まだ理性が残っているようにゃ。



zなにを躊躇うことがある?早く、その娘を噛み殺すのよ。

その娘は、狼を散々退治してきた、あなたたちの天敵よ。

そう、それでいいのよ。演人(キャスト)を操るなど容易いものね。

 女の手には、黒いオーラを放つオーブがあった。

遊戯を盛り上げるためとはいえ、少しやりすぎでは?


この程度でなにを言うの?展開を派手にすれば、読者たちの要求もさらに大きくなるはずよ。

いま以上に、過激な展開を見たいとね……。その願いに応えてあげるのが、主催者の役目。でしょ?

……。

魔法の鏡よ。この世でー番、頭がいいのは誰かしら?

wそれは、マルグリット様です。

そうでしょうとも。おー、ほっほっほっほっ!


 リコラの牙が、メメリーの皮膚に食いついた。

……うふー。ふー。

 駆け付けようとする君を、メメリーは手で制した。

食べていいよ……その代わり、メメリー以外の人には、手は出さないで。

うー!うー!うー!

あの目は、理性を失った眼だ。

 リコラを止める方法は、ひとつだけ。

童話石を奪って、アーシュに浄化させる。それ以外にない。

メメリーを食べちゃう前に聞いて欲しいのです。

狼たちにも感情があるんだって、教えてくれたのはリコラです。

他にもリコラは、木の実の採り方や、水場の探し方や、半狼らしい生き方を教えてくれたのです。

死んだばっちゃんとリコラだけなのです。メメリーに沢山のものをくれたのは。

だからメメリーは、リコラが好きなのです。

早く、メメリーを食べて、あの優しかったリコラに戻って欲しいのです。

 ふっと、リコラの口から力が抜けた。

ううっ。やだ、メメリーは食べたくない……。

 復讐心に燃え上がっていたリコラの心に、昔の思い出が蘇った。

ー筋の涙の雫が、頬を伝ってこぼれ落ちている。

私は……いったい、どうしてしまったの?

 しかし、童話石は、暗い明滅を放っていた。人間を食えという命令と、リコラの良心とが、せめぎ合っているのだ。


いまだ、魔法使いさん!

 君は、魔法を放ち、メメリーとリコラを強引に引き離す。

〈ツヴェルク・クリガー〉!童話石を回収するんだ!

 ドワーフ人形たちが、童話石を回収する。これをアーシュが浄化すれば――



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story



 リコラの童話石をつかんだのはラグールだった。

それは、リコラのだよ!?

すまねえメメリー。俺もなにがなんだかわからねえんだ。

このタイミングで、昔の盗賊だった頃の血が騒ぎやがった。ひょっとして、俺も誰かに操られているのかもしれねえ。

狼たちは、全部片付けたと思ったのに……。まだ、残っていたなんて。

おい、知らねえ奴には教えてやるぜ!俺様は、大怪盗ラグール様だ。

俺の「影脚」に追いつけるものなら、追いついてみやがれ!

 逃さないと、君たちは急いでラグールを追う。

だが、大怪盗と名乗るだけあって、足の速さは尋常ではなかった。

僕の〈ツヴェルク・リッター(ドワーフの騎士)〉の射程外だ。残念。

やはりここは、狼退治の出番ですね。

でもメメリーは、狼退治はやめたのです。

 ひとの物を盗んだ時点で、人も狼もない。悪い奴には、相応の報いを与えるべきじゃないかな?と、君は言う。

そうなの……かな?

みんな誰だって、色のついた服を着て生まれてきます。いくら脱ごうとしても、脱げないものなのです。

 誰よりも個性的な色を持っているからこそ、メメリーたちは、演人なのかもしれない。

迷ってると、逃げ切られてしまうにゃ。リコラを助けたくはないかにゃ?

 童話石を失ったリコラは、絵本になっていた。童話石を取り戻せなければ、絵本のままだ。

リコラのために……やる。

 そう言って取り出したのは、投擲砲。リンゴを模した手榴弾を装填して――

悪い狼には、お仕置きなのです!

あがが……。俺様は……大怪盗……のはずだ……。

久しぶりに悪い狼を退治しちゃった。気分が、すーっとしたよ。

 その言葉どおり、メメリーの染まりかけていた童話石は、元の明るさを取り戻していた。

忘れないうちに、リコラの童話石を回収しなきゃ。

 ボロ雑巾となったラグールの手からリコラの童話石がこぼれていた。素早く駆け寄る1つの影――

この童話石は、ヴィラード様のものぞよ。

またあいつにゃ。

またか、みたいな顔をするなぞよ。ヴィラード様に、黒く染まった童話石を回収するように命令されてるぞよ。

我が輩も辛い立場なんだぞよ。

 童話石を持ったまま、お城の奥へと逃げ込もうとしている。

追いかけるにゃ!!

うん!あ、待って……。

 一旦戻って、絵本になったリコラを拾い上げる。

リコラ、メメリーが戻してあげるからね!



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story



 血のような色の薔薇の花びらが、床ー面に敷き詰められている。

玉座に座る若い王子が、苦悶に喘いでいた。

血が欲しい……。

 耐え難い渇きを最初に感じたのは、いつからだろう?

理性を保っていられる間に、呪いを解かなければ……。

 物音がした。招かれざる聞入者の気配。


トルテ。ここに偉い人がいるみたいだよ?

どこの勘違い野郎か知らないけど、さっさと倒して帰りましょう。

遊戯の参加者か?

お前が、トルテをこんなところに招き込んだのか?

 ヴィラードは、答えない。ただ、余裕のある笑みを浮かべるだけだ。

言いなさい。あなたは、何が目的なの?

 ストルは、鍵型のエネルギー放出器〈ガン・シュリッセル〉をヴィラードに向けた。

演人(キャスト)は、人々に希望を与える存在だ。かつて私も、その使命に心を震わせたものだ。

だが、現実は毎日毎日監視される日々……。読者たちの期待に添うために、時には意にそぐわないこともさせられる。

そんな、自分の人生に、ある日突然、嫌気が差した。

だから、こんな大きなお城に簸もって、他の演人とやらを競わせてあざ笑うことにしたのかしら?

優勝者には、演人からの解放という自由を私が与えよう。

私は元々自由よ。あんたに与えて貰おうだなんて、これっぽっちも思ってないわ!

 トルテは、棘の剣〈シュタッヘル・シュヴェルト〉を鞭のように振りかざした。

切っ先が跳ね飛んで、ヴィラードの心臓目掛けて突き進む。

ふっ。

 ヴィラードの身体が消える。そのあとに残ったのは、漆黒の羽を持つコウモリたち。

逃げた?

w君たちは、どんな物語の演人なのかな?少し、興味が湧いたよ。

 部屋全体に声が響き渡る。

そんなこと、お前に関係ない。

 直後、ストルは耳元にぞくっとした寒気を感じた。

男の癖に、君は美しい顔をしてるね。造り手の趣味が覗える。私はまず、君の物語を見てみたい……。

バカ兄貴!逃げて!

 だが、手遅れだった。

ストルの持っていた童話石は、ヴィラードに奪い取られていた。

ヴィラードは、絵本になったストルを拾い上げた。そして、表紙をめくる。

これで私も、ストル君の物語の読者となったわけだ。

読ませて貰うぞ。君のこれまでの物語をな。





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