【黒ウィズ】アレス・ザ・ヴァンガード2 Story1
目次
story1 PROVOCATION
いらっしゃいませ~。アレイシアさん、毎日お疲れさまです!
魔法使いさん、キャット先輩、ここがボクのとっておきのお店だぞ。ワクワクしてきたでしょ?
前に働いてた時にヴァッカリオに連れてこられたことあるにゃ。店長に嫌がられてたにゃ。
君が思い出してうなずいていると、店内の食事スペースで、女性が手を振っているのが目に入った。
アレイシアちゃん、おつかれちゃ~ん。今日もがんばってたみたいじゃない。ちょっと全力で頭なでっから、こっち来ない?
あ、リベッさん。どうも。社会人なのでなでるのは結構です。
え~いいじゃ~ん。ケチ~。
この人もヴァンガードの一員にゃ?!
全然ちがうし。あーしはただのアレイシアちゃんの~……ファン?そんな感じ~。
君もアレイシアちゃんのお仕事仲間?あーしはリベルティーナっての。よろしく~。
お客様、お待たせいたしました。ご注文のピザになります。
来た来た。やっぱピザはペパロニがたくさん乗ったヤツじゃないとね。
リベルティーナはピザをー切れ手に取ると、美味しそうに食べた。そして――
ごちそうさま~。アレイシアちゃん、ごっめ~ん。食べきれないから、残り食べといて~?あ、あーたもよければどうぞ~。んじゃね~。
またこんなに残して。Lサイズにしなければいいのに。仕方ないなあ。
……あの人、なかなかやるにゃ。ただ奢ると言われたらアレイシアが断るところを、たくみに受け取らせたにゃ。
どうしたの?もったいないから君も食べなよ。美味しいぞ。
君はリベルティーナの去っていった方に一礼し、ピザを一切れいただく。香辛料のよく効いたペパロニのピザはたしかに美味しかった。
でも、ツナマヨコーン気分だったんだけどな、と君が思っていると、店のドアがひらいて、見知った顔があらわれた。
おお、ホントに魔法使いじゃないの。どこ行ってたのよお。おいら辛かったんだよお?仕事押し付ける部下がいなくてさぁ。
ふ……ひひ……よく来てくれたぜえ。オレに神器をいじらせに来たんだろ?
地域ふれあい課あらためヴァンガードの実働部隊隊長のヴァッカリオ。専属の技術者ハルディス。どちらも君の同僚だ。
アンタならいつでも歓迎さ。アタシゃあ忙しくて今日は顔出せないが、またよろしく頼むよ、魔法使いと黒猫のウィズ。
通信画面の相手は、ヴァンガードの総司令、ゾエルだ。かつて君をスカウトしたのも彼女だった。
あとひとりいるはずの後輩のことを聞くと、ヴァッカリオが早くも缶を開けながら、へらへらと言う。
あ~、エウブレナならだいじょぶだいじょぶ。今日は別件で別行動してるだけだから。すぐに合流するよ。
会うのが楽しみだな、と君が言い、ピザをもう一切れ手に取ったとき、また店のドアがひらき、だれかが入ってきた。
こんなところでサボっているだなんて、落ちこぼれは心まで落ちこぼれているのね。
な、なんだよ、お前、いきなり。人を落ちこぼれとか、なんの根拠があるってんだよ。
あらあら、傷ついたのかしら?けれど、誇りあるヒーローならば、夜といえどこんなところで安穏としていないはずですわ。
まさか、就業時間が過ぎているから、休んで当然とお思いなのかしら?ヒーローの心があれば、そんな判断はしないはずよね。
怠惰な生活を受け入れるその性根が落ちこぼれだというのよ。違うというのならわたくしを論破してみなさい!
就業時間外のヒーロー活動は禁止だよ。
え、そうなの?
そうだよ。規則で定められてるからね。特別出動命令が出てないかぎり、退勤後に働くのはダメだぞ。
……こ、ここ、これで勝ったと思わないことね!
なんだったんだ、いまの。
夜の走り込みに行ったんじゃないかな?そんなことよりハンバーガー食べよう。店長!エリュマバーガーあるだけちょうだい――
はい。そうおっしゃると思って、すでに用意してあります。
さすが店長、商売のプロだね!よぉぉぉし!魔法使いさん!キャット先輩!今日はとことん食べるぞおぉぉぉ!
望むところにゃ!
ハンバーガーを貪るアレイシアとウィズに、負けてられないな、と君も参戦を表明した。
story2 INVINCIBLE
バーガーパーティーを終えた君たちは、ヴァンガード隊の本部へと行くことにした。
以前、この異界にきた時は、君は本部のー室に居住させてもらっていた。今回もとりあえずはそうするつもりだった。
汚っ!
思わずそう叫ぶほど部屋はぐちゃぐちゃだった。以前も片付いていなかったが、これほどではなかったはずだ。
あ、先輩方、おかえりなさいっす。あれ?そちらの方は?
初めて見る隊員も増えていた。アレイシアの後輩ということは、君の後輩でもある。
噂に聞く魔法使い先輩とウィズ先輩っすね?はじめてお目にかかりやっす!見習いのコリーヌっす!よろしくっす!
笑顔の爽やかなひとだ。きっと根が善良なのだろう。こちらこそよろしく、と君は挨拶を返した。
あ、そうだ、アレイシア先輩。お客様、待ってるっすよ。
遅かったじゃない。待ちくたびれましたわ。
あれ、さっきの人?なんでここに?
わたくし、過ちを正しに来ましたの。
過ち?オレたち、間違ったことあるっけ?
よくもぬけぬけと……あなたたちは未来ある新人ヒーローを騙して、この部隊に引き入れたでしょう?わかっておりますのよ!
だれも騙されてねえよぉ。アンタ、何者だ?なんの権利があってそんなこと言うんだよ?
あら、お聞きになりたいのかしら?いいでしょう、教えてさしあげますわ。
わたくしの名前はネーレイス。ポセイドンちゅ……んん、ポセイドンⅡの娘よ!
言えてなかったな、と君は思ったが、それを聞いたコリーヌは目を見開いた。
え、ええ!?マジっすか!?ゴッド・ナンバーズの娘さんなんすか!?
ゴッド・ナンバーズってなんにゃ?
え、知らないんすか?英雄庁の誇る最強ヒーロー!それがゴッド・ナンバーズっすよー!
本物の神器に選ばれ、その力を引き出すことのできる12人さ。1からⅩⅡの神聖な数字を背負っているからゴッド・ナンバーズ。
中でもポセイドンⅡと言ったら、第1世代唯ーの現役ヒーロー!英雄庁の最長老っすよ!
ふふふ……わたくしの凄さがわかったかしら?
なにが?
え、いや、だから、わたくしのお父様はゴッド・ナンバーズなのよ?聞いていなかったの?
凄いのはお父さんであって、君じゃないよね?
えっ……。
ま、神話還りの能力はあんま遺伝しないしな。普通の人間から強力な神話還りが生まれることもあれば、その逆もある。
ひひ……仮に才能あったとしても、実績出してないんなら関係ねえし。カタログスペックは現場じゃ無意味だもんな。
えっ……あっ……。
この人たち、無意識に追い詰めるタイプだな、と君は思った。
ただいま。遅くなっちゃったわ。みんなの方は大丈夫だった?晩ご飯は済ませたの?
エ、エウブレニャ~~!
わっ、びっくりした。ネーレイスじゃない。久しぶりね。どうしてここに?
エウブレナの知り合いにゃ?
ええ、私が小さいころ……って、ウィズさんと魔法使いさん!?なんでここに!?
わたくしの時より何倍もおどろいてる……。
説明はあとでするよ、と君は話の先を促す。
本当にちゃんとしてくれるの……?まあいいわ。ネーレイスは私の幼馴染みよ。パパ同士が仲良かったから、よく遊んでたの。
そうよ。わたくしとエウブレナは永遠のライバル。共にヒーローの頂点を目指すと誓い合った仲ですのよ。
え?そんなこと誓った?
誓ったでしょ!
……ごめんなさい、覚えてないわ。いつだったかしら?
え……いつだったか……は覚えてないし、もしかしたら言葉にはしてないかもしれないけど、心では誓い合ってたはずよ!
……なんだかこのふたりの関係が見えてきたな、と君は思った。
だというのに、あなたときたらいつの間にかハデスフォースを辞めて、こんなだらしない部隊に……いったいなんでなのよ!
それは……まあ、いろいろあって……。
まあまあ嬢ちゃん。一見だらしないかもしれないけど、おいらたち、実はけっこうやる時はやるのよ?
酔っ払いは黙っていて。恥ずかしいと思わないの?あなたはゴッド・ナンバーズの……ハデスⅣの娘でしょう!?
ぶ~~~~~~~~~!!
ヴァッカリオが飲んでいたものを盛大に吹き出すのを見て、そういえば汚い人だったなあ、と君は思い出した。
ちょっと待ってくれ、エウブレナ。お前の父親、ハデスⅣなのか!?
……あまり広言するものではないので黙っていましたが……はい、そうです。
……やってくれたな、ボス。絶対に知ってただろ……。
あれ、でも確かハデスⅣって……。
と、その時、警報が鳴り響いた。
おいおいおい、緊急出動だぜおい!ハデス区にヴィランが出現しやがった。ひ、ひひ……いくかぁ?
よっしゃ魔法使いさん!いくぞおおおおおお!
後ろを見ずに走り出すアレイシアを、君は慌てて追いかける。
あ、待ってアレイシア!隊長、垂直離着陸機(VTOR)で追いましょう!ハルディスはここで後方支援をお願い!
え、ちょっ……わ、わたくしも行きますわ!
いってらっしゃ~~~~いっす!
***
うおおぉぉぉぉぉぉ!ヴィランはどこじゃああああぁぁぁい!
猛然と飛び跳ね駆けていくアレイシアの後を、君は魔法を使ってなんとかついていく。
と、やがて君の前に奇妙な光景が見えてきた。
前を走る車の後ろに、バイクがぴったりとついて回り、ブォンブォンと轟音をたてているのだ。
おぃおぃおぃおーい!チープなマシンがこのアキレーサー様の前をちんたら走ってんじゃねえよ!
見事なまでのテールゲーティング……。典型的な煽り運転ね。
煽り運転?と君が首を傾げていると、バイクが対向車線にはみ出して、前方の車を抜き去った。
かと思いきや、急に速度を落とす。
当然、抜いた車はぶつかりそうになり、慌てて急ブレーキを踏んでハンドルを切る。
突然の挙動に制御を失った車体はスピンし、道をはみ出してビルの壁に激突した。
ハッハァ!この無敵のチャンプのロードを塞いだ罰だぁ!タルタロスで詫び続けな!
ー歩間違えば自分の方が危なかったのに、なんて奴にゃ!怖くはないのかにゃ!!
ふひひ……怖くねえだろうぜぇ。最近話題の煽り運転の常習犯。英雄アキレウスの神話還り。
なんせあいつはみんなが呆れる無謀で無敵な自称公道レーサー。ヴィランコード〈アキレラレウス〉だからな!
道路もロードもみんなのものでしょうがあ!止まったらんかぁぁぁ……い……?
前を走っていたアレイシアが急に失速する。その足元はふらついていた。
しまった……今日はずっと働いてたから力が……エリュマバーガー、もっと食べとけばよかった……。
そういえば、アレイシアは凄まじいパワーを持っているが、すぐに力が尽きるのだった。だからあの時は――と君は思い出す。
魔法使い、覚えてるか?あいつの槍にあんたの魔法をぶつけてくれ。そうすれば、あいつに力が戻るはずだ。
アレイシアたちの使う神の力は魔力と似ている。そのため君の魔法によって、エネルギーの補給ができるのだ。
君はカードに魔力を込めると、アレイシアに向けて魔法を放った。
サンッキューーーーー!うおおおおお!みなぎってきたぞおおお!どっせいやあああああ!
アレイシアは槍を振り上げると、なんと足元へと向けて放つ。
次の瞬間、槍は接地と同時に爆発し――爆風がアレイシアを前方へと弾き飛ばした。
アレイシアの小さな身体は猛烈な勢いで吹き飛び――爆走するバイクの前方へと着地する。
爆発でわざと吹き飛ぶなんて、ワイルドすぎるにゃ!
WINDをちょっとL(得る)でWILDじゃあ!
さあヴィラン!こっから先は赤信号じゃぁぁぁい!
Lじょーとーだ!つまんねえルールで無敵のレーサーが止まるかよお!
***
いくぜマイラバー!デストロイ・オール・ドライブレコーダー!
槍よ!正義を貫け!マーベラス・ラリア――――……とおっ!?
衝突の直前、アレイシアの脚がガクリと落ちる。
バランスを崩した小さな肉体を、容赦なくモンスターマシンが撥ね飛ばした。
君はとっさに魔道障壁と風の魔法を使い、吹き飛ぶアレイシアをなんとか受け止める。
いた……いけど痛くない!でもありがっとう!
アレイシア、調子が悪いにゃ?!
なんか最近、力が切れるのが早いんだ。こんなに早かったのは、初めてだけど。
それより、ヴィランが逃げてしまうよ、と君は言う。アレイシアを撥ね飛ばし、そのまま爆音をあげて遠ざかっていた。
後ろから追いかけて追いつけるとは思えない。このまま逃がすしかないのだろうか?君がそう思った瞬間――
「ヒュペリオン・レイ。
ぎゃああああああああああ!
疾走るヴィランを、天より落ちるー筋の光が貫いた。
それは神の力により象られた1本の矢。日輪のくだす裁きの光。
すなわち、オリュンポリスを遍く照らす光明神の降臨を意味していた。
ア、アポロンⅥ様!ハデス区に来ていたの?
まずい!エウブレナすぐに着陸してくれ!
ああ……マ、マイラバー……。
ただのー撃で巨大なマシンは大破し、投げ出されたヴィランは地で震えるばかりになっている。
そこに悠然と降り立った青年は、君たちを見ると穏やかに微笑む。
この地区のヒーローだな?ヴィランの足止め、ご苦労だった。
何者なのだろう、と君は思う。まだ幼さすら残る顔立ちなのに、その立ち姿にも言葉にも威厳が満ちている。
その威に満ちた足取りで、まだ立ち上がれないヴィランに近づくと、青年は片手をあげ、無造作に光を放った。
ポイボス・シュート。
きゃああああああああ……。
ヴィランが悲痛な叫びをあげる。と、同時に、君の隣の少女が、猛然と駆けた。
なんばしょっとかああああああ!
この手はなんだ?まさか、私がわからないのか?
わかっちょるが、そんなんどうでもよかなんで射ったんじゃ!こん人はもう、戦えんかったじゃろが!
悪はこちらの甘さにつけこんでくる。戦闘能力を完全に奪うまで、手をゆるめる道理はない。
だからといって無闇に散っていい命はなかぁ!ヒーローが命の価値をわからんとですかぁ!
君は駆け寄りヴィランの様子を診る。呼吸はしている。どうやら気絶しているだけのようだ、と一息を吐く。
と、そこでVTOLが着陸し、慌てた様子のエウブレナが飛び出してきた。
アレイシア!大丈夫!?あの、アポロンVI様ですよね?す、すみませんでした!
謝る必要はない。ヒーロー同士、互いに掲げた正義があるのだ。時にぶつかることもあるだろう。
この人が何者なのか、知っているの?と君はエウブレナに訊いた。
貴方、知らないの?アポロンⅥ様よ!ナンバーズのひとり――、リーダーともいえるヒーローじゃない!
そんなたいそうなものではない。君とおなじ、ただのひとりのヒーローだ。
見たところ、ハデスフォースの新人だね。いつの間にか最新型のVTOLが配備されていたのだな。まるで我が部隊の……。
そこでー瞬、動きを止めたアポロンⅥは、ゆっくりと振り返る。
そうか。お前たちがヴァンガードとやらか。会うのは初めてだが、よく知っている。
はい、私たちはヴァンガード所属ですが……。あの……どうかされました?私たちの乗ってきた機体になに……か……。
そ、そうだ!あれ、アポロンフォースの最新鋭機……!
お前たちのボスが栄光ある我が部隊から、盗むようにして持っていったものだ。よく私に見せることができたものだ。
アポロンⅥは静かな怒気を全身に涵らせる。――が、息をひとつ吐くと、何事もなかったかのように穏やかに笑った。
……いや、すまない。君たち末端の人間に辛く当たっても意味の無いことだった。忘れて欲しい。
その笑顔を見て安心したように、物陰に隠れていたヴァッカリオが姿をあらわした。
あ、なんだ、怒ってないんだ?よかったぁ。いやあ、どうなることかと思っちゃったよ。
貴様ぁぁぁ!そこでなにしている――
ええっ?おいらたちに辛く当たっても仕方ないんじゃなかったの!?
貴様がいるなら話は別だ、ヴァッカリオこのヒーローの面汚しめ!
ちょっ、みんな怖がってるから。そういうのやめよ、ね?――お兄ちゃん。
その腐れた口で兄と呼ぶな!貴様との兄弟の縁はとうに切った!もはや弟とは思っておらん!
兄弟!?
お兄ちゃんの気持ちもわかるけどさあ、若い子の前なんだから……ね?お互い大人になろうよぉ?
ならばいますぐ貴様が死んで詫びろその手伝いならいつでもしてやるぞ――
そういうのやめようってば。だからお兄ちゃんと会いたくなかったんだよ。魔法使いちゃん、助けてぇ~。
ヴァッカリオが君の後ろに回り込むと、アポロンⅥは凄まじい視線を向けてくる。どうしたものかと君が思っていると――
ちょっ、み、皆様!あれをご覧になって!
story3 PROMETRICK
振り向いたそこにあったのは、気絶しているヴィランが宙に浮かぶ姿と――
プ、プロメトリック……いつの間に……!
おやおや。今日は君たちと話す気はなかったのだが、ヒーローというものはいらない時ばかり目ざといね。
魔神プロメトリック――暴走するヴィランを操るすべての元凶。君が会うのは初めてだったが、話は聞いていた。
トリのおじさん!その人を放しんしゃい!
残念だけどね、アレイシア君。君の頼みでもそれはできないよ。この娘にはまだやってもらいたいことがあるのでね。
とはいえ、今日は回収に来ただけだ。諸君とやり合うつもりはない。安心――
ショット・ザ・ヘリオス!
なんの予備動作もなく放たれたのは、10にも及ぶ光弾だった。
人が話している途中だというのに、不粋だね、アポロンⅥ君。度し難いよ。しかし。
プロメトリックが腕をふると、地に倒れていたヴィランのマシンが浮かび上がり、空高く舞い上がっていく。
今日は諸君と戯れる気分ではない。これで帰らせてもらうよ。アレイシア君、また会おう。
アポロンⅥより英雄庁へ。神器使用の許可を求める。
『承認。神器の使用を許可する。』
目覚めよ、神器!
その瞬間、まばゆい輝きを放ちながら、神の力が解放される。それは正視することのあたわぬ太陽の顕現。
悪の戯言を聞く趣味はない。落ちろ!
それはいかんでしょうがぁぁぁぁぁぁ!
天に向けて構えた弓の眼前に、アレイシアが飛び出す。しかしアポロンVIはわずかに向きを補正すると、迷わず放った。
アポロン・バスター!
だから君は好きになれないのだよ、アポロンⅥ!ブラック・アエトス!
漆黒の力が巨大な鷲の形を成し灼光を受け止める。ふたつの力はしばし措抗していたが――
わずかな後、漆黒の力は砕け散り、アポロンVIの矢は天を穿った。
――だがすでに、プロメトリックの姿はそこになく、ヴィランの女性と共に、何処かへかき消えていた。
逃がしたか。……なぜ邪魔をした?あの刹那の遅れがなければ仕留められていたものを。
あのまま射ってたら、あの女の人が危なかったでしょうが!なにやっとんですか!
ヴィラン相手へのくだらぬ情で、プロメトリックを討つ千載ー遇の機会を逃すとはな。甘すぎる。
ヴァッカリオ。これが貴様らご自慢のヴァンガードとやらの方針か?
え~、いや、なんというかまあ……。そんな感じかな、うん。
……よくわかった。ならば、私も覚悟と共に宣告しよう。
ヴァンガードは私が潰す。絶対にだ。
そう言い残すと、アポロンVIは地を蹴って跳び上がり、何処かへと消えた。
あ、あれがヴィランの首魁プロメトリック……。そしてアポロンⅥ……。次元が違いますわ……。
わたくしは……。