【白猫】闇夜を貫く気高き誇り Story
闇を信ずる島に、霊鳥の戦士が降り立つ――! |
2016/05/23 |
目次
主な登場人物
story1 光を忌み嫌う島
世界の海に無数に浮かぶ島。
ある島は独立を保ち、またある島は、大きな勢力に属す。
――その島は、連邦の領域からも、帝国の領域からも――
――人の領域からも外れ――<奴ら>に屈している――
――うっ……!?
じいさん!? どうした、大丈夫か!?
うっ……!?
<屈みこんだ老人の呼吸は浅く、顔色も死体のように白い―― >
じいさん!? 家、家はとこだ!? それとも、医者を――
――あんた。知らないのかい。
知らない……? 何をだ……?
おめでたいな。ずいぶん安全なところにいたとみえる。
さすがはあの方の近衛兵サマだ。
……皮肉はいい!お前、このじいさんの症状がわかるのか!?
――<光死病>だ――
なっ……! これが……!
――暗闇は安息を与えてくれる。
……しかし、そこに差し込む<光>という甘い誘惑が、人の心身を侵してしまう……
馬鹿なことを……!じいさん、あんた、光に惹かれちまったってのか……
う……うぅ……
死に至る不治の病だ。その様子ではもう手遅れだな。
おいあんた!目の前に苦しんでいる人間がいるっていうのに、見捨てようってのか!
……どこまでもおめでたいヤツめ。
……ちっ……!じいさん! あきらめるな! いますぐ医者に……!
……蝶々……?――いや! ホラ、じいさん、俺の背中に――
初級:ざわめく胸中
story2 『薬』
――<島>とは、海によって切り離された箱庭――
交流を封じれば管理は容易い。その島には毒がない。
……うぅっ……
…………
……見ない顔だな。
…………
……うぅっ……
…………
……無駄だ。そのじいさんは、もう助からない……
…………
<少女は小さな器に液体を注ぐと、老人の背をさすりながらそれを口に含ませた…… >
……?
――う……んん……
ほんの数回呼吸するうちに、老人の肌に生気が戻ってくる――
……あんたは……?
…………
……ありがとう……
お、おい……!いまあんた、何をした……?
…………
あんた、まさか……!闇夜の使いか……!?
……!
<どこからか現れた少女のもたらす『薬』は、病に苦しむ人々をたちどころに癒した。>
お姉ちゃん、ありがとう!
…………
ぼく、すごく元気になったよ!
――だから――これをたくさん飲めば、もっと強くなれるんだね――
!!
<器を掲げた少年の手を、少女は驚くほど機敏な動きで止めた。>
え……?
<そのままそっと、少年の手から器を受け取る。>
…………
<少女は静かに首を振ると、くるりときびすを返してその場から遠ざかっていく……>
???
…………
…………
中級:営みから外れて
story3 合流場所
…………
<――朽ち果てた砦の中。小さなロウソクを灯し、少女が佇んでいる――>
…………
……どこで知った。この島のことを。
…………
問答など不要か……ドウセココデ シマツスルノダカラナッ!
……!
<魔物の姿へと変貌した数人の兵士が、少女に飛びかかる。 >
ちっ……
……あー、ムカつくぜ。馬鹿どもの相手はよ。
<肩を払いながら、冷徹な眼差しの男が呟く。――と。
その言葉を受け、少女がゆらりと顔を上げた。>
……『馬鹿』、ではあるまい。
……へっ。
根本から常識が違うのだ。
いやに物わかりがいいな。ちとムカつくぜ。
……弔いの歌だな。
そういうあんたは霊鳥の射手。なんでまた人間の真似を?
……フン。
しかも、薬術にも長じてるときた。
……生き抜くのに便利だっただけだ。それに、得意なのは…………毒だ。
毒も使いようによっては、だろ?見事な手前だったぜ。
フン……数百年も前に流行した病だ。<知って>さえいれば、造作もない。
やっぱりな。<光死病>なんざ、ウソッパチってわけだ。くだらねぇ名前をつけてくれたもんだぜ。
この島を、外界と隔絶させておくための情報統制だろう。
……けっ。
――<闇>こそ、善――……そう信じ込ませ……
人間同士で争わせるためだろうな……!
ご苦労な計画だ。ムカつくぜ、畜生……!
story4 もう一人の弓使い
……この国の兵士たちは、皆、魔物の化けた姿か……!
違うかもな。
なに?
<闇>ってのは、人間に混ぜることも出来るらしい。
なんだと……!?
ホントかどうかは知らねぇがな。
…………
にしても、数が多いな。めんどくせー仕事を受けちまったもんだぜ……旦那、しばらく頼んだ。
逃げる気か?仕事はまだ終わっていない。
クライアントに苦情言ってくんだよ。聞いてたよりもしんどいじゃねーかってな。
……フン……
哀れな人問たちよ……せめて、安らかに眠れ……!
***
――おい、チンプンカンプン。ちと、状況が――
――ああ、そうだ。
おめぇ、バカのくせに手回しは早えな、畜生。
***
失せろッ! 雑魚どもがッ!ちっ、次から次へと……!
――!?
<闇夜から降ってきた一本の矢が、寸分違わず魔物の眉間を刺し貫いた!>
…………
いまのは貴様か。
そうだ。
いい腕をしている。
…………
あんたが来てくれたのかい、黒翼の。
お前は……何度か、共に仕事をしたな。
は、覚えてやがったかい。光栄じゃねぇか。
おい。お前。
なんだ。
弓も使うな?
ああ。
……そうか。やることは決まったな。
フン……
***
<おびただしい数の魔物の軍勢が、ジェガルたちのたてこもる砦を目指して進軍している。>
相手はたかだか二人!―気に揉みつぶせ――
な!?
馬鹿な!?月もない闇の中、この距離を、どうやって――
!!
<降り注ぐ矢の雨。しかしそれは確実に――
――虚空を裂き、魔物たちに次々と突き立っていく――!>
もォ~、このくらイで、なァ~にを手間どっているんですかァ……?ギャハハハハ!!!
story5 規律ある闇の軍隊
みなさァ~ン♪一糸乱れず、進んじゃっテくださ~イ♪
恐れちゃダメですよォ~♪たとえ敵の矢に倒れテも――
――<闇>はアナタガタに、永劫の安息を約束するデショウ♪
ギャハハハハ!!!
はっ……!ルエル様の、おおせのままに……!
者ども、続け!
<将らしき男の号令に、無数の魔物たちが吠え声をあげる。>
命を惜しんじゃダメですよォ~♪替わりはいくらでもいますしネェ~♪
ははっ!
***
――音を立てるな――闇に溶け、気配を消して忍び寄るのだ……――よし、砦はすぐそ――
!! ゴーレム!
くっ……! 見つかったか……!もはや隠密行動は不要!ゴーレム隊を前面に出せ!
押せーッ!!!
魔物の大軍が、砦を目指して進む……
最終話 一矢
…………
貴様……一人か……? 相棒はどうした?
…………
まぁいい。たいした弓の腕だったな。しかし、これで終わりだ。
俺は弓は得意じゃねぇぜ?
そう謙遜するなよ――
<男は剣を高々と掲げると、ダージに向かって振り下ろした。>
――かかれ!
誰に言ってんだ?
<――それが最後の一体だった。>
なっ……!?あれだけいた軍勢が――!?
<――男が振り返ると、山を埋め尽くしていたはずの魔物が一匹も残っていない!>
順手牽羊……貴様の軍団を、最後尾の者から仕留めていっただけだ。
気づかれぬよう……音も無く、一匹一匹、な……!
射手は砦にたてこもる……というわけでもない。
ば、馬鹿な……!たった一人の弓使いに、そんなことが出来るわけが……
生憎、一人ではない。
…………
凄腕の達人が二人もいりゃあ、万の軍勢もタダのマトだって事だな。
――くっ……!クッソオオオオオオ!!!
さすがだぜ、お二人さん。鮮やか過ぎてムカつきもしねぇ。
フン。これで任務は――
――オ・ワ・リ♪ じゃア、ありませんよォ~♪ギャハハハハ! 残念、こちらが一枚上手で~す♪
ルエル・サクラリッジ……!
アレは囮♪ 本当の作戦はァ――ここで魔物を召喚しちゃうことデェース!
――チッ!
お見事デスがデモ残念♪ いくらでも召喚は――
この蝶は……!?
ダーさんダーさん! いまのうちなの!
おうリンプイ! 助かるぜ畜生!
だけどよ、いまのうちったって――
あれを見ろ――
<レイヴンが空を指す。
そこには、闇に溶けるような黒色の飛行艇が、いつの間にか現れていた! >
早くこっちに乗ってなの!
――そうはさせマセンよォ……!
まずい!
<ルエルの周囲に夜よりも濃い<闇>が渦を巻く!>
――ワタクシの身に混ざりし<闇>よ……この場に千億の同胞を――
なんだ……?
飛行艇が……<闇>を吸っている……?
……!! <白眼の狗>……!クソがァ……!
いまなの! トドメを!
はっ!
<――レイヴンの放った矢が、ルエルの心臓を――>
――終わりだ!
<――ジェガルの一矢が額を! それぞれ貫いた! >
よし! 乗るぜ!
…………
<――少女――ルエルは、 三人がその場を去ると――
二本の矢に貫かれたまま、ニヤァリと喘う――!>
――だからァ、ワタクシ、もう壊れてるンですっテば――♪
ギャハハハハ!!!
***
ダーさん! 無事で良かったの!
たりめーだろ。おめーまで来る必要はなかったんだよ。
なんてこと言うの!あたしがいなかったらジョニーはここに来れなかったの!
……ジョニー……?
旦那方。ウチの上司から伝言があります。
『また頼む』
……いいだろう。俺は依頼をこなすだけだ。
次は値上げすっからな。
望むところだ。――<闇>は仇だ。
俺の、祖国の――――誇りの、な――!
<流線型の飛行艇が、戦士たちを乗せて夜の闇へ消えていく――
――次なる標的を求めて……!>
その他
相関図
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