【白猫】シュガー(Brave The LionⅢ)・思い出
狂戦士 シュガー・フィッツロイ cv.高橋伸也 溶けずに残った砂糖。 | ||
2016/10/30 |
Brave The Lion 3
思い出1
<ヒストリア>で起きた一連の事件から、しばらく経ったある日――
その男は、飛行島に降り立った。
何と居心地の良い場所なのでありましょう。
吹き抜ける風が、全身を隅々まで浄化してくれるようではございませんか。
改めて自己紹介を致しましょう。最も、名乗る程の名など持ち合わせてはいないのですが――
……シュガー、と申します。
アタシはキャトラよ。こっちがアイリスで、こっちが主人公。
シュガーさん、ようこそ飛行島へ。
皆様のような、気高い信念をお持ちになっている方々と同じ時を過ごせるなど、天にも昇るような心持でございます。
それほどでも……あるわよ~。
私めなど、道端に転がっている小石のようなもの。
何の気なしに人様に蹴られ、コロコロと坂を下るばかりなのでございます。
あの、そこまで卑屈にならなくても……
お気遣い、恐れ入ります。
だが、人間とは少なからず己を卑下する生き物ではないのか?
それは足りない己に満足する為だ。一種の感情のコントロール。卑屈こそ人間の本質。人間のサガ。
不完全さこそが人間を人間たらしめる。完全なものなどない。……そうだろう? 主人公。
――と、難しい小説に書いてあったような気が致します。
ムムム……
……そう、怖い顔をしないで下さいませ。殺気が漏れておりますか?
!
失礼、’’あなた様’’がそのようなお顔をなさっておりますので。
……とんでもございません。混迷を極めた世界に秩序をもたらさんとする’’あなた様’’をどうにかしようなどと……
……ネエ?
…………
ア、アンタはいったい……
申し上げましたでしょう?
ただの……道端の小石、でございますよ。
思い出2
<シュガーは、飛行島をフラフラと歩いている。今にも倒れそうだ。>
だ、大丈夫ですか!?
実は……私めは、空腹でございまして。
ごはんよー! ごはんを持ってくるのよー!
とんでもない! 私めに食事など……
でも食べなきゃしんじゃうわよ!
では山を食しましょう。
!?
あすこに見える山をおひとつ、私めに頂けますか?
山を……食べる?
駄目ですか。駄目ですよね。申し訳ありません。
……では、池をいただくことにします。
池のみーずを飲み干したーいなー!
えーっと……
……それも、駄目ですか。
仕方がございません。私には、まともな食事などをする資格はないのですから……
もー、またひくつになって!
ひくつなシュガーちゃん、さようなら。
!
<なんと! シュガーは飛行島から飛び降りた!>
あーーっ!!
あーーっ!!
あーーっ!!……え?
この世からまた一人、未来ある若者の命が消えてしまいました……
ナニナニ、どーゆうこと!?
アレは私めの双子の弟にございます。
ウン、たぶんウソね!
’’この方’’には見抜かれたようでございます。
私めの拙き技でございます。お楽しみいただけたなら幸いです。
私もなんとなくわかりました。分身したんですね?
溶けずに残る砂糖が増えた所で何の意味もございませんがね。
アイスコーヒーに角砂糖を入れるが如しでございます。
時代はガムシロップですよ、皆様。それが例えホットコーヒーでもね。
フフフ……
思い出3
本日も実にいい風が吹いております。
このシュガー、カッフェーのテラス席にて優雅にコーヒーを畷りながら恋愛小説でも読み耽りたい気分になって参りました。
……ああ! 私とした事が。この上ない贅沢を申し上げてしまいました。
お許しください、皆様。お許しください……
いいわよそんくらい! なんならアタシたちも付き合ってあげるからー!!
おめえ、意外にこいつらと馴染んでるじゃねえか。
オズマさん、こんにちは。
オズマさん、こんにちは。
ヘタクソなモノマネだなあ、オイ。
そーいや、アンタたちって仲間同士なのよね。
仲間と呼べる程大したもんでもねえさ。
こいつはオレの鉄砲玉だ。
鉄砲玉などと、酷く上等なモノに例えてくださるとは。どうやら今日のボスはご機嫌がすこぶるよろしいようで。
そりゃそうよ。今から能天気なバカともを成敗しに行くんたからな。
お仕事、ですか?
ああ、そうだ。準備はいいか? シュガー。
準備など不要だ。たたあんたが引き金を引けばいい。そうすりゃ、どこのバカでも細切れになる。
弾の尽きない鉄砲ってのはイイねえ。
いつかジャムる時が来るかもしれんがな?
そんときゃ捨てるだけよ。
ハハハハハハァ! 是非ともそうしてくれ!
あの、聞いてもいいですか。
よごさんす♪
…………お二人はどうして一緒に活動しているんですか?
叶えたい夢がございましてな。
お金を貯めて島と別荘を買い、美女を侍らせたいのです。
欲望むきだしね! ウソだろーけど!
ボクはね、世界中の子供を笑顔にしたいんダ!
立派ね! ウソだろーけど!
コイツはな、戦場で生きてきた男なんた。それをオレが拾ったって訳さ。
マジメね! ありがとう!
マジメね! ありがとう!
まあ、出会いの意味なんざあってないようなモンだ。
…………
おやあ? 主人公様……
……たまりませんなあ。そのような瞳で見つめられては。
たまりませんナァ!!
匂うんだろォ! オレの<血>がよォ! ヒャハハハ!
……時間だ。行くぞ、鉄砲玉。
仰せの通りに、ボス。
…………。
主人公……?
思い出4
闇の王の後継者 | ??? |
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<主人公とシュガーがにらみ合っている……!>
な……なにごと!?
主人公……?
どうやら、’’このお方は’’は私めに興味深々なようでございます。
色々と……感じ取られているご様子。
イイですねぇ……揺るぎない信念。燃え滾る闘志。
地面に這いつくばって生きる私めに、あなた様は何をお求めになられているのでしょう?
主人公……一体、どうしたっていうの?
あ、おかあさんだ。
え?
おかあさあああああん!!
きゃー!!
アイリスお嬢様。私めを見てください。……見るのです。
オレを見ろ!
……っ!!
ああ、ああ。申し訳ございません。つい声を荒げてしまいました。
……。
ええ、ええ。そうでしょうとも。感づきもしますでしょうとも。
我々はいつだって明るい場所に生きていた訳ではないのです。
ですから、光が眩しいのです。私めは思わず目を細めてしまうが――
あなたは混ざろうとしている。荒波の中で、槌るようにもがいている。……涙ぐましい努力です。
元は同じも同じ、しかし今はこうも違うとはナァ!
ヒャハハハ!
気分はどうですか? 心地良いですか? どうなんです? ええ?
……シュガーさん。あなたは……一体……
その質問好きすぎだろ! 新婚ホヤホヤか!
意味わかんねえよ!!
…………教えてよ。教えなさいよ!
私めは――
ウッホに育てられた野生児です。
ウソね!
改造手術を受け、悪を倒す為に力を得たスーパーヒーロー。
ウソね!
心優しい父親と母親に恵まれた、イイとこの坊ちゃん。
ウソね!
皆さんのご想像にお任せ致しますよ。その方が、楽しいでしょう?
……んもう! なんなのよ、アイツ!
…………
…………
思い出5
***
「失われたはずの穢れた力が、まさかお前に発現するとは……」
「悲しいけど……仕方ない……わね……ごめんね……ごめんね……」
「残念だ。――よ。」
呼ばれた名前は、もはや意味を成さなくなっていた。
世界が――明滅した。
重厚な鉄の扉が、性急に閉められる。
蔵に保管されていた大量の武器と、家系図と、閉じ込められた少年の体が、あっという間に燃えた。
不思議と痛みはなかった。――頭が、今までにないような速度で回転していた。
優しかった両親。頑なに信じていた正義。そして、自分自身。全てが嘘だった。
『――ちゃん。お父さんが、また慈善団体に寄付をしたわ。……これでまた、たくさんの人が救われるのよ。
いい? あなたもお父様のような、立派な人間になりなさい。
……白に、忠誠を誓いなさい――』
『――よ。<白の王国>こそが正義なのだ。黒は、憎むべき存在。決して許してはならぬ』
嘘だった!!
この体に流れている血こそ、黒の証!!
孤高の戦闘民族――<ヴェガン>の血だ! 憎むべき黒の血だったんだ!
そして僕は、僕は……
ものの数秒で、愛されなくなってしまった。
少年の顔が炎に包まれる。悲鳴を上げたのは……心。
「アハハハハハハハハ!!」
…………
……
美しい思い出が詰まった邸宅が、ゆっくりと崩れ落ちていく。
「アハハハハハハハハ!!」
少年は、龍のようにうねり狂う焔の中心にいた。
側には、事切れた両親の骸が静かに横たわり、依然として燃え盛る少年に向かって、すがるような炎を揺らしていた。
「アハハハハハハハハ!!」
少年は笑い続けていた。高らかに、さも愉快そうに。
甘美なる虚無の世界で、いつまでも笑い続けていた。
***
……シュガー! シュガー!!
……おや。
なによ、いきなりボーッとしちゃって!
どうやら私めの魂は、束の間の死出の旅を楽しんでいたようです。
…………
…………
……’’おい’’。オレはなあ、嫌いなんだ。その瞳が。
思い出6 (友情覚醒)
……
何だ、その光は。
……同じではないと? 自分は、お前とは違う、と?
あー。
あーあーあー。
あーあーあーあーあー!
気に食わネェなァァアアァァァ!!
<シュガーは目にも止まらぬ速さで漆黒の刃を主人公の喉元に当てた。>
シュガーさん! やめて!
…………
…………ヒャハ。ヒャハハハハハハ!!
ブヒャヒャヒャヒャヒャ!!
失礼をば致しました、主人公様。
……何とも、面白い。そうですか。そうなんですね。
あなた様はあなた様なりの<意外性>を模索しておられるのですね。
上手くいくとは思えんがな。
なんなのよ! 結局! アンタって! なんなの!
うーん。やはり私、山を食し、池を飲み干したくなって参りました。
いいよねえ!? おかーさーん!!
話を聞きなさいよ!
皆様のご活躍をお祈り申し上げます。
ぎーにゃー! こらあー!
申し上げましたでしょう?
ただの、道端の――小石でございます。
甘美なる虚無の世界 シュガー・フィッツロイ
「シュガーさん、こんにちは。」
「アンタ、なにしてんの?」
「掘っているのです。穴を……」
「穴を?」
「ええ、これは息子の墓穴です。」
「ウソね。」
「誰から見て息子か?という問題もありますゆえ。
私もまた息子。男の子は誰しも息子なのであります。
えっほ、えっほ、えっほ。ほいさ、ほいさ、ほいさっさ! エンヤコーラ!」
「わかんない。」
「おお、まるで盆暮れ正月、小春日和がまとめて来たような優しき光……
黒は悪。白は善。誰が決めた?
古より伝わる価値観と理。それを変えようとするのはいささか以上に骨であります。墓穴も必要になりましょう。
期待はいたしません。裏切られるより裏切りたい。それこそが意外性でございますゆえ。
ゆめゆめお忘れなきよう……
あ、おかあさんだ!おかあさあああん!」
その他