【黒ウィズ】空戦のドルキマス Story3
呼び出された場所につくと、少し幼さの残る、優しげな声が聞こえてきた。
??? |
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そう、ライサ――ライサ・ナトゥル。彼女が確か、〈ウォラレアル〉を指揮している。
あ、魔法使いさん、あなたもこの戦争に参加するんだよね?
君は頷く。
こんな子まで戦いに参加させられる、なんてことを考えたくはなかった。
ここに来る途中、空母と呼ばれていた巨大な船を君は見ていた。
そこには何体ものドラゴンがいて、それはかなり壮観だった。
言葉そのものの柔らかさとは対象的に、殺気のようなものに充ち満ちている。
ライサ・ナトゥルは、指揮官と呼ぶには、あまりにも凶暴な側面を秘めているように見えた。
突如現れたのはディートリヒ・ベルクだった。
許せない。私がいれば……負けることなんてなかったのに。
と、キャナルは〈ウォラレアル〉についてを教えてくれた。
〈ウォラレアル〉が住まう地へと現れたのは、〈イグノビリウム〉の強大な兵だったという。
それはライサというリーダーが故郷をあけて2日ほど経ってからのことだった。
頭のいない〈ウォラレアル〉は、3割近い人数を失い、あまつさえ拠点を奪われてしまった。
あなたに力を貸すのは、戦争に勝つため。決して報復をしたいだけの理由ではないわ。
ディートリヒは、無言でライサの言葉を流し、作戦を口にする。
開かれた地図には、拠点の位置に印がつけられていた。
ディートリヒは、口元を笑み歪めて答える。
ドラゴンと対峙するよりも、この男ひとりと向き合うほうがずっと緊張する、と君は思った。
君はウィズの疑問をそのままキャナルに投げかける。
拠点をおさえれば、そこを軸としてドラゴンたちを飛ばすことができるの。
空母という巨大な船がなくても移動が可能になって、敵に対抗できるかもしれないってこと。
噂によれば、〈イグノビリウム〉が支配しているものの、人間もまだまだ健在みたいね。
小国……ドルキマスだけでは限界であった戦艦の増強ができる……ということだろうか。
それは、使い捨てることもできるということ。
ディートリヒが背を向けたのを見て、君は胸を撫で下ろす。
だけれど、それだけだと勝ち目はないでしょう?
君は首肯する。
言葉が悪いわね。ふふ、人のような何か、よ。
ライサは何がおかしいのか、頬を緩め笑った。
ドルキマスは戦艦に戦艦をぶつけて、動きを止めてから乗り込んでいくの。
それは戦艦の何たるかについて諌しくない君にとっても、“ぶっ飛んだ”作戦だった。
そのためにはあなた――あなたの力が必要不可欠なの。逃けないでちょうだいね、魔法使いさん。
ライサの不気味な笑みを見て、君は来る場所を間違えてしまったかも……と、思ってしまった。
この長い泥沼の戦争で、連戦連勝の負け知らず。その上あなたのような逸材に巡り会うのだから。
そういって、ライサは寂しそうに天を仰いだ。
上空には、君を見守るように太隠を背負って航行する〈ウォラレアル〉の船団がある。
4つの拠点に向けて出発してからというもの、ふたりは本隊である船団ではなく、
魔道挺に乗り込み、君と行動を共にしていた。
逃げないように監視するため、ということらしいが、そもそも君にそんな気はない。
右も左もわからない異界を彷徨ったところで元の世界へ戻れる保障は何処にもない。
しかも〈イグノビリウム〉という得体の知れない何かにいつ襲われるとも限らない。
この世界での戦い方を知るディートリヒヤライサたちといる方が遥かに安全だ。
とは言え――。
そう言いながら、ライサは魔道挺の舶先に休ませていたドラゴンに跨って、飛び立っていく。
君は戦いを好む彼女の性格については、まだ慣れることはできない。
君の心中が顔に出ていたのだろう。
キャナルが君に微笑む。
それに、ようやく故郷を取り戻せるかもしれないんだもん。
少しはしゃぐくらいは、大目に見てあげてよ。
君はウィズに頷くが、
彼女はそれを自分に対するものだと勘違いしたようだ。
魔道挺の通信機を通してライサが君を呼んだ。
聞こえている、と君は答える。
魔道挺の操作にはもう慣れた。もっと魔力を込めれば、いまより速く進むことも可能だろう。
君はそれをライサに伝える。
こうして連絡を取ることが出来るのなら、わざわざ母艦へ戻る必要はなかったのでは?
頭上を追い越していく艦隊を見上げながら、君は思わずそんなことを口にする。
君はひとつため息をついてから、魔道挺に魔力を込めた。
この長い泥沼の戦争で、連戦連勝の負け知らず。その上あなたのような逸材に巡り会うのだから。
そういって、ライサは寂しそうに天を仰いだ。
上空には、君を見守るように太陽を背負って航行する〈ウォラレアル〉の船団がある。
4つの拠点に向けて出発してからというもの、ふたりは本隊である船団ではなく、
魔道艇に乗り込み、君と行動を共にしていた。
逃げないように監視するため、ということらしいが、そもそも君にそんな気はない。
右も左もわらかない異界を彷徨ったところで元の世界へ戻れる保障は何処にもない。
しかも〈イグノビリウム〉という得体の知れない何かにいつ襲われるとも限らない。
この世界での戦い方を知るディートリヒやライサたちといる方が遥かに安全だ。
とは言え──。
そう言いながら、ライサは魔道艇の舳先に休ませていたドラゴンに跨って、飛び立っていく。
君は戦いを好む彼女の性格については、まだ慣れることはできない。
君の心中が顔に出ていたのだろう。
キャナルが君に微笑む。
それに、ようやく故郷を取り戻せるかもしれないんだもん。
少しはしゃぐくらい、大目に見てあげてよ。
君はウィズに頷くが、
彼女はそれを自分に対するものだと勘違いしたようだ。
魔道艇の通信機を通してライサが君を呼んだ。
聞こえている、と君は答える。
魔道艇の操作にはもう慣れた。もっと魔力を込めれば、いまより速く進むことも可能だろう。
君はそれをライサに伝える。
こうして連絡を取ることが出来るのなら、わざわざ母艦へ戻る必要はなかったのでは?
頭上を追い越していく艦隊を見上げながら、君は思わずそんなことを口にする。
君はひとつため息をついてから、魔道艇に魔力を込めた。
敵艦との距離を保ちながら、攻撃のできる君の魔法は、確かに効果的だった。
しかし、〈イグノビリウム〉はそれすらも凌駕する圧倒的な数量で魔道挺へと迫ってくる。
たった”ー挺”でこの大群の相手をするのはもう限界だった。
ウィズの言葉に君は天を仰ぐが、くウォラレアル〉の本隊は沈黙を保ったままだ。
ダメだ。全然応答なし……。故障してるのかなぁ?
しばらく通信機に向かって応援を求め続けていたキャナルも、諦めて君の元へと戻ってくる。
この戦闘が始まってから、ライサとの通信は途絶え、君は文字通り孤立無援の状況だった。
彼女は怯えきった白いドラゴンを撫でながら、申し訳なさそうに言う。
敵艦の数はかなり減らしたものの、魔道挺を取り囲まれ、君の魔力は尽きかけていた。
ドラゴンに乗ったライサが、魔道挺の直上にいる。
そんな彼女の声とともに、空母の甲板からくウォラレアル〉の竜騎部隊が一斉に降下する。
統率のとれた一糸乱れぬ動きで、敵艦を覆い尽くし、戦闘はー気に決着を迎えた。
戦いを終え、魔道挺に降りてきたライサが涼しい顔で言う。
今回は?ライサはいつもこんな、味方を隔すような戦い方をしているのだろうか?
君はキャナルにそっと尋ねる。
ライサはそういって優しく微笑む。
確かにあなたがいれば、この戦争を終わらせることができるかもしれない。
先の戦闘ののち、ライサとキャナルは本隊へと戻っていった。
それにしても――
ドラゴンを自在に操って敵を殲滅するくウォラレアル〉の戦いは圧巻だった。
クエス=アリアスではまずそんなことのできる者はいないだろう。
彼女たちがどうやってドラゴンを従わせるのか、君は通信機ごしにキャナルヘ尋ねてみる。
私とドラコは大切な友だちだもん。これからだってずっと、ね?”
それに比べて、キャナルのドラコは育った場所が場所だから、大人しい子になったみたい”
通信機の奥から、ドラゴンの声が聞こえてきた。
表情はわからないのに、言葉だけでお互いがお互いを信頼しあっているのがよくわかる。
そういうのってお互いのことを考えていなければできないことなの。
……っと、少し喋りすぎたようね。ふふ、戦いの前は、昂ぶるから大変だわ。”
造船国と呼ばれるだけはあり、さすがに広いドックを抱えている、とライサは言った。
だがそれも〈イグノビリウム〉が来るまでの話だ。
そう、これはウォラレアルにとって”貸し”になる可能性があるという。
ウォラレアルの拠点があった場所へ向かうため、あたりを見回りながら進んでいると、
今の状況に遭遇した。
ドルキマスがあっさり放棄したものかもしれないが、だからといって無下にはできない。
――というのがライサの判断らしい。
実際、どれくらい残っているのかは知らないけれど、ドルキマスに貸しができることが重要なの。
手を結んだのだって、ドルキマスと利害が一致したからよ。
そう言うのなら、貸し借りがどうこうと言わず、さらりと無視してしまえばいい。
というようなことは、さすがに口が裂けても言えない。
ライサの言葉に反応し、ドラゴンたちが叫びながら大きく飛び上がった。
ドルキマスが所持していたという要塞を物ともせず、“壊していっている”。
それとも何かしら。許してくれってこと?ダメよ、絶対に許さない。
偶然、ライサの近くに立ったとき、とても楽しげに微笑んで、言った。
君は首を横に振った。
キャナルがライサにつられ、奥へ奥へと進んでいく。
君は困惑しながら、戦場の奥へと向かっていった。
ライサ・ナトゥルという将が、いったいどうしてディートリヒと知り合ったのか……
性格が合わないというより、人間性が交じり合わないだろう、と不謹慎ながらも思ってしまった。
ドルキマス国が敵であったか味方であったかも、記憶に残っていないわね。
それはそれでとてつもなく怖い話だ。
近づけば噛みつかれ――るだけで済めばいいのだが。
きっとそれ以上でもそれ以下でもないわ。そういう程度の関係ね。
ドラゴンの拠点を追いやられたとき、空母やー時的に拠点となる場所をくれたのが、
どうやらドルキマス国だったらしい。
あっけらかんと言い放って、ライサがその場を後にする。
まとまってないよ、と言ってみたけど、キャナルは笑ったまま首を傾げるだけだった。
story9 荒ぶる竜たち
眼前に迫ってきたのは、真っ赤な遺跡だった。
燃え立つような――そう、まるでライサとドラゴンたちを指すような、赤だ。
君はその声を聞き、前方に視線を向けた。
眠りながら、静かに鼓動する大地を見て、君は不気昧さを覚えた。
〈ウォラレアル〉は、あるいはこれが平常だと言うかもしれない。
とキャナルが言ったのを聞き、君は苦笑してしまう。
ライサの言葉に続くよう、君は魔道艇を進めた。
そもそも、どうして奪われてしまったのか、君は理由を聞いていなかった。
〈イグノビリウム〉はその物量だけで、力づくの行動に出るから……
こちらの統率がとれなければ、どうしたって勝てはしないわ。
被害を受け、飛べなくなったドラゴンもいる。だから――
だから必ず、何があっても〈イグノビリウム〉だけは全て倒さなきゃいけないのよ。
相手がどんな姿形をしていようと必ず。苦しませて、苦しませて……
泣いても謝っても許さないわ。何があっても、大切な仲間を奪ったことを後悔させてやるのよ!
ライサの怒りに呼応して、ドラゴンたちの咆球が間こえてくるようだった。
これは……絶対にあの地を取り戻さなければならない。
彼女たちの家を、拠点を……絶対に――!
君とウィズ以外には、あれが不快な音に聞こえるらしい。
巨大戦艦の横につけ、乗り込もうとした途端、飛び乗ってきた少女は満面の笑みを浮かべている。
ライサが武器を大きく振るう
ドラゴンはドロシーのものだ!ドロシーが手に入れたドラゴンだ!
歪な魔力がドロシーの周りに浮き上がっている。
愉快げに笑いながら、ドロシーはそのようなことを繰り返す。
バカバカしくて笑えてくるわ。もうこれ以上、耳障りな音を聞く必要はないわ!
さあ、お前たちッ!出てきなさい!ここから先は、何をしてもいいわよッ!
ドラゴンの咆峰に負けない、“強烈な”ライサの声に、体の奥底が熱くなる。
今にも飛びかかりそうなライサを見やって、あのドラゴンをお願い、と君は言う。
ドロシーと名乗る少女――いや、〈イグノビリウム〉と対峙した。
ドロシーがロットを片手に魔力を込め始めた。
私たちの大切な子どもたちを助けるのが先決。ええ、そうね。
あの馬鹿なガキは、あなたに任せるわ!
その言葉に大きく頷き、君は、戦う姿勢をとった――
***
爆ぜるような音のあとで、ドロシーが膝をつく。
君は加減をせずに戦ったが、それでもまだ彼女は戦えるようだった。
ドロシーが叫びながら立ち上がり、再びロッドを構えた。
瞬間――
巨大なドラゴンが、ドロシーの衣服を掴み、軽々と持ち上げてしまった。
負けない!ドロシーは負けない!ノグズエル様に失態は見せられない!”
……ライサの瞳が、かつて敵であったものを眸睨し続けていた。
君は大丈夫、と言う。
君はほっとして、息を吐いた。
もちろん、まだ戦争は終わっていないけれど。
みんながウォラレアルの里に向かう中、取り残されないよう君も魔道艇へと走った。
君の眼下に今、ライサたちの故郷がある。
昔は美しいところだったのだろう。
しかし、長く人の手を離れていた為に、家屋は朽ち、土地は荒れ果てていた。
ライサたちは既に船から降り、奪還した里の空気を昧わっているようだ。
無邪気にはしゃぐキャナルとは対照的に、ライサの表情は暗い。
ライサは膝をつき、地面に穴を掘り始める。
キャナルはそう言うと、瓦篠のなかから手頃な木片を集めはじめる。
キャナルの集めてきた木片をライサが掘った穴に立てていく。
しばらくして、彼女たちは幾つもの墓標を建て終えた。
長い祈りを捧げたあとで、ライサは君を見上げる。
分岐
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