【黒ウィズ】空戦のドルキマス Story0
「無限に続く、同国と絶望が蠢く【戦争】──
この刹那に味わい、抵抗し、そして戦い続けたまえよ。」
story1 元帥と呼ばれる男
君は頷く。
後ろを歩くローヴィの視線を感じる。
──彼女が自らの名を名乗ったのは、数分前。君が拘束されたあたりのことだった。
ローヴィ・フロイセ……それが軍服の女性の名前である。
君は今、両腕を後ろ手に縛られ、軍服の女性の部下らしき男たちに囲まれながら歩いている。
全く見知らぬ土地の、全く見知らぬ戦艦の上……独特の空気が漂っていた。
船が飛んだ……という記憶はある。
立ち止まってください。言うまでもありませんが、余計な行動はしないように。
君は言われるがまま足を止め、重そうな扉を見上げた。
"元帥閣下"という聞きなれない言葉は、何故か君の中に残った。
奥へ進むにつれ、周囲の兵に緊張の色が浮かんできている。
この状態で逃げることはできず、君たちは仕方なく従っていた。
ローヴィの言葉が耳に入ってきたのと同時。
君たちの前から、痩身長躯の男性が近づいてくるのが見えた。
彼の、獣のごとき瞳が左右に動いたあとで、君とウィズをしっかりと捉える。
男が、ローヴィの言葉を手で遮る。
カツン、と音を立てて、ローヴィが下がった。
君を取り囲む男たちもそれにならって、一歩後ろに引く。
まるで遠雷のような、ティートリヒ・ベルクの声が体内に響いた。
ローヴィ。
武具の類は一切持ちあわせておりません。そして、この者は──
〈イグノビリウム〉の兵とは違う魔法を使用していました。
仮に〈イグノビリウム〉の者でないのであれば、使える可能性があるかと。
君は何とか口を開いて、自分の名を名乗った。
ディートリヒは続けてこう口にする。
story2 空戦の異界
君は口を開かず、ディートリヒを見ていた。
見透かされるような、それでいて締めつけられるような……強い圧迫感があった。
君はそんな圧迫感を抱きながら、愚かさ?と訊いた。
我がドルキマスもそのひとつだ。
ここは空戦による──いわるゆる戦争で国力を誇示しなければならない大陸だった。
それができなかった国は、全て大国、あるいは強国と呼ばれる国々に飲み込まれていく。
戦争……ディートリヒの口から出た言葉に、君は慄然とした。
ウィズがぼやく。
ディートリヒはそんなウィズを無視して、話を続ける。
言ったであろう。1年ほど前の話だ、と。
戦争が行われていたのは1年前まで……
要するに、争いがなくなり落ち着いた、ということだろうか。
ディートリヒが声を発すると、どこからかローヴィが姿を見せる。
ドルキマスを除いたほぼ全ての国が"飲まれて"しまったからです。
飲まれた……。
君は、瞬時に意味を理解できず、ディートリヒ、ローヴィを交互に見やった。
〈イグノビリウム〉……その言葉には聞き覚えがある。
……戦争ではない、というのはつまりそういうことらしい。
現在、抵抗できる戦力を持った国は、我々ドルキマスのみ……。
敵国へ目を向けさせれば、時間は十分に稼げる。
ウィズの疑問と君の疑問は、ローヴィの声にかき消される。
私たちはアレを"魔道艇"と呼んでいます。
他国にどれほど存在していたのか、あるいは我々の国にしかないものなのか定かではない。
造船に優れた国だが、我々では手に負えん代物だ。
使わない手はない、ということ──だとローヴィは言う。
君とウィズは、驚きを隠しきれなかった。
何故、自分が戦いに参加しなければならないのか、君は全く理解できない。
してもらう、してください、そういう言葉ではない。
あくまで確定していることとして、彼女は話をする。
〈イグノビリウム〉を撃滅し、大陸を取り戻すだけの戦力が──。
決然と言い放つディートリヒの瞳には、ここまでに見せなかった色が浮かんでいた。
〈ファーブラ〉という軍が我々と共闘関係にあります。
あまりにも横暴な話だ。
それに魔道艇という乗り物を使って、君たちが逃げないとも限らない。
そういったことを、彼らは考えているのだろうか?
まるで君の心を見透かしたようにディートリヒは続けた。
ディートリヒはそれだけを言い残して、君たちに背を向けた。
……いや、ディートリヒが、そんな隙を見せる男とも思えない。
……逃げ出すだけの気力が湧き上がらなかった。
story3 決断の時
面会の場に着いた早々、君は少女の怒号を浴びることになった。
我がドルキマス、シャルルリエ軍団の指揮官を務めています。
吐き捨てるような言葉は悪いけれど、年端もいかない可愛い少女だ。
どうやら彼が彼女の副官を務めているらしい。
先ほどからクラリアをなだめようとして、何度も脛を蹴られている。
長身の女性が、君に問いかけてきた。
君は違います、と返答する。
竜騎軍の副官は彼女だ。君はよろしく、とキャナルに返した。
と、ライサたちの背後に静かに佇む男性……。
愛想もなく、そう言ったのが〈ファーブラ〉の副官。
プルミエ・シエルだった。
ディートリヒ・ベルクが求めているのは、〈イグノビリウム〉の掃討。
卿もそれで利害が重なったからこそ、ドルキマスという小国と共闘すると決めたのだろう?
〈ファーブラ〉のリーダーと言われた男性が口を開くと、戦艦の中が静寂に包まれた。
彼の声は、不思議と君の心を落ち着かせた。
決して平和とはいえないこの異界。
いったいどうしてここに来たのか、何故こんなことに巻き込まれたのか……。
君には考えなければならないことがいくつもあった。
〈ドルキマス〉クラリア・シャルルリエ中将 |
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竜騎軍〈ウォラレアル〉ライサ・ナトゥル将軍 |
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天の使い〈ファーブラ〉ルヴァル・アウルム指揮官 |
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三者の視線を一手に集め、君は所在なさげに上を見た。
覚悟を決めるしかなかった。
***
「人間が行う戦争の重みを、味わわせてやりたまえよ。」
分岐
(上記のルートを全てクリア後に開放)
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