【白猫】アンジェラ・思い出
アンジェラ・ベイリアル cv.小清水亜美 蒼炎の島・ウルドの第三公女。 窮地も運命も、大声で笑い飛ばす女傑。 |
蒼き炎のテンペスト
思い出1
リンツ島での出来事からしばらく経ったある日――
ハッハッハ! 実に心躍る場所だな、ここは!
アンジェラ、いらっしゃーい!
こんにちは、アンジェラさん♪
うむ、健勝でなによりだ。主人公も、リンツでは世話になったな。
――と、改めて自己紹介しよう。
アンジェラ・ベイリアル。蒼炎の島ウルドの第三公女だ。よろしく頼む。
それにしても愉快だな! 飛行島というやつは!
足は大地の重みをしっかり感じているのに、空がこんなにも近い! そしてなにより広大だ! 自由を感じる!
もー、大はしゃぎねえ。
ハッハッハ、大目に見ろ。これでも元箱入りだからな。
それに、お前の抱き心地も恋しかったぞ?
ぎにゃっ!?
ふふ、やはりキャトラはかわいいな!
いきなり抱っこしないの! ……あ、でもやっぱりアンタ、抱き方は上手……よね……
お前との再会にそなえて、さらに腕を磨いたからな! よしよしよーし……
ぐー。
(寝てる!?)
……たーっ! あぶなく寝るトコだったわ!
ううん、寝てたよキャトラ……
とにかく、ゆっくりしていってくださいね♪
甘えさせてもらいたいところだが、そういうわけにもいかないのだ。
お前たちに協力を仰ぎたい。――私と共に再びリンツヘ赴いてくれないか。
なんで?
……例の戦闘の事後調査だ。時間が経ってあらわになる情報というものもある。
念のため、当事者にも立ち会ってもらいたい。それにお前たちがいれば、島民の怯えも幾分か和らぐだろう。
お安い御用よ! エマにも会えるしね♪
お前たちならそう言ってくれると思っていたぞ!
リンツに着くまでの間、存分に飛行島を堪能させてもらおう!
思い出2
ハッハッハ! さすが飛行島だ! 酒場まで備えているとはな!
アンジェラさん、そろそろやめた方が……
ん、アイリス? 酌が止まっているぞ~? はやくはやく~!
けっきょく滞在中、徹底的に遊び倒したわね……
だってもったいないだろ~? 兄上の目もないんだし~……
ほらキャトラ、もっと近う寄れ~? 存分に愛でさせるがよいぞ~。
こないでー!
ん~キャトラはふかふかだな~。ぎゅ~!
それはカーテンよ!
キャトラ~? こっちかな~?
キャトラ、なんか硬くなったか~? だがそんなお前もかわいいぞ~。
それは酒ビンよ!
あれぇ……キャトラ~?
今度こそ、つかまえた~。
それはアタシよ! ……はっ!?
ぎゅ~~~っ! 私を癒やせ! さあ!
ぎにゃーーー!
アンジェラさん、なにか嫌なことあったのかな……?
***
「――事後調査、ですか? お兄様」
「そうだ。機材の手配が整った。改めてリンツヘ向かい、現場の再調査を行え。
<あの事件>は極めて特殊だ。徹底的に痕跡をさらえば、思わぬ発見があるかもしれん」
「わかりました。……もしも重大な痕跡を見つけた場合は?」
「無論、接収する。
必要とあらば、リンツもろとも」
思い出3
アンジェラと共にリンツに上陸してから、しばらく後――
ヒマねぇ。立ち会いっていっても、ときどき呼ばれるだけだし。
エマさんも留守みたいだね。終わるまでに会えるかな?
あ、おかえりアンジェラ。
なにか見つかりましたか?
……森の奥地で、謎の地下空間に繋がる入り口が見つかった。
巧妙に隠ぺいされていたが、以前の戦闘の影響で露出したのだろう。
現状の情報から推測するに、おそらくは未踏の古代遺跡だ。
大発見じゃない!
あの……どうしてそんなに悲しそうなんですか?
もし未知の古代技術が遺跡に残されていれば、我々は大きな力を得られる可能性がある。
我がウルドの領主は――兄上は、決して放っておかないだろうな。
この島は、もう――
……アンジェラ!? それに……みんなも。
エマ……!
……すまない、お前たち。少しだけ、エマと二人にしてくれないか?
***
「買い物で遠出していたんです。そしたら飛行島が見えて――」
「火事場泥棒じみた真似をしてすまなかった、エマ」
「あなたの意思ではないんですよね?
それなら、仕方がないです」
「……そうか。健勝なようで、なによりだ」
「はい。アンジェラも」
「島の者たちとはうまくやっているか?」
「……努力は……しています」
「ハッハッハ! やはり難儀していると見える! お前は意地っ張りだからな!」
「わ、笑わないでください!」
「また嫌がらせを受けたら私に言うがいい。島中練り歩いて脅してやろう」
「遠慮します。ほっといてください……」
「ふふ、それは残念だ」
「…………さっき私が来たとき、なにを話していたんですか?
話は聞こえなかったけど、なにか重大なことがあったのはわかります。
私は、リンツを守りたいです。大切な人たちが眠る、この静かな地を。
巫親としての使命ではなく……一人の島民として。
そのためなら、私は……あなたとだって……」
「――ハッハッハッハ! とんだ独り合点だな、エマ!
心配そうな顔をするな。もはやリンツには、軍事的価値など微塵もない」
「アンジェラ……」
「次は空の上で茶でも飲みながら、お前とゆっくり語らいたいものだ。
懲りずに付き合ってくれるか? エマ」
「……断る理由なんてありませんよ、アンジェラ」
思い出4
「――報告は以上か?」
「はい、お兄様。遺跡内部はすでに、何者かに荒らされていました。
持ち帰れる物は接収しましたが、軍事的な価値はありません。元より儀礼的な、墳墓の類であったと推測できます。
かの島にはもはや、ウルドが介入する意味は皆無と考えますわ」
「――――」
(遺跡の詳細は口外しないよう兵たちには命令したが……本当にこれで良いのか?
身命を国に捧げると、蒼炎に誓ったこの私が……)
「――わかった。ご苦労だったな」
「……もったいないお言葉ですわ。期待に応えられず、面目次第もありません」
「構わん。見つかれば拾い物、程度の認識だった。元よりな。
ときにアンジェラ、余力はあるか?」
「問題なく」
「ならば少し付き合え。俺なりの労いだ」
「それは……兵棋ですか。
最後に一戦交えたのは、もうずいぶん前でしたね」
「善き領主で在り続けるのも、いささか疲れる。
たまには家族と、水入らずで戯れたいと思ってな」
「私の拙い腕前でよければ、お相手になりますわ」
「そうこなくてはな」
***
戦場を模した図上に並ぶ駒を、アンジェラとデクスターは熟考しつつ、動かしていく。
「こうして盤を隔てていると、幼いころを思い出しますね」
「戦略演習用の兵棋も、この国では玩具代わりだからな」
「もう一戦、もう一戦とせがむ私に、お兄様は笑いながら付き合ってくれました。
私を泣かせないために、手加減もしてくれましたね」
「そう言うアンは、みるみる頭角を現していったがな。
やはり将に向いているよ、お前は。……ん、その夜襲は悪手だ。もう挽回はきかんぞ」
「あら、本当ですね。私としたことが……」
「白々しいな。手心のつもりか?」
「買いかぶりですわ」
「面白い。あくまでも兄に花を持たせるわけか。
ならば否が応でも、本気になってもらう必要があるな」
「ですから、手加減など……」
「――何を(・・)隠している、アンジェラ?」
「…………ッ!」
「席を立つな。瞳を逸らすな。真実以外を口にするな。
それら一切を違うこと、ウルドヘの反逆と心得よ」
「お兄様! 私は……!」
「アンジェラ。お前に残された道は一つだけだ。
勝利し、守れ」
思い出5
「軽率な一手だ。動揺が采配に表れているな。
(まずい……序盤の加減が相当に響いている。もはや……)
「慣れない嘘などつくからそうなる。
やはりお前に謀の才はないな、アンジェラ。
安心しろ。お前が俺を謀っているという確たる証拠があるわけでもない。言いがかり、というやつだ」
「それは……」
「お前が勝てば、今回の不義不忠には目をつぶってやる。
ただし俺如きに負けるようなら、蒼炎にかけて、真実を語れ」
***
(この劣勢から巻き返すなど、もはや望むべくもない……
……そもそも兄上はすでに真実を知っていて、私を試している可能性すらある。
ならば今この状況で、私が勝とうと抗うこと自体が、兄上への――ウルドヘの反抗になってしまう……!)
「どうした。お前の手番だぞ。
俺の兵を私情でそそのかしたのだ。――さぞや面白い話が聞けるのだろうな?」
(やはりか……! どうすればいい?
ウルドに背くのか。リンツのために抗うのか……私はどちらを選べば良い!?)
「……戦意喪失、だな。どのみち戦況は覆るまい」
「…………」
「お前が、俺に逆らうほどの何をリンツで得たのかは知らないが――
終わりだ」
(私が、あそこで得たもの……
――そうだ。私は、彼女のために――)
「……お兄様。賭けに乗ってはくださいませんか?」
「賭けだと?
屠所の羊もかくやといった無様な敗勢……」
「覆してみせた暁には、ある<取引>に応じていただきたいのです」
「話にならないな。敗北必定のお前に、賭け金など残っていない」
「命を」
「なに?」
「負ければ、斬り捨ててください」
「…………
いいだろう。ただし、取引の内容そのものを飲むかは別だ」
「構いませんわ」
「この盤上には今、お前の命が置かれている。死に物狂いで戦え、アンジェラ」
思い出6 (友情覚醒)
「目標地点の突破を阻止。敵軍残存勢力、四割。戦闘終了……
――私の勝ちですわ、お兄様」
「率直なところ、俺は驚いている」
「運に救われただけです。私など……」
「違う。
お前が堂々とリンツを選び、ウルドに反旗を翻したことに、だ。
<取引>とやらの内容を言え」
「……まず先に、私はお兄様に嘘を申し上げました。
発見された古代遺跡には、貴重な情報が眠っている可能性があります」
「なぜ黙っていた」
「危惧を覚えたからです。
あの規模の遺跡を調査するには、長い期間と知識が要るでしょう。
現地の歴史や文化に精通した島民の協力は不可欠です。
武力行使に慣れたウルドとは、相性が悪いと考えました」
「言葉を選ぶな。お前はウルドでなく、俺の<やり方>を恐れたのだろう。
長兄もろとも無関係の者たちを――お前の家族まで亡き者にした、あの祝宴のようなやり方を」
「否定は……いたしません」
「それこそ、お前が判断することではない。
大きく出たな、アンジェラ」
「……遺跡は、かの<魔幻獣>の秘密に関わっている可能性も強く考えられます。
巫親の一族である少女の協力が得られなければ、解明の道は永久に閉ざされる恐れがあります」
「力尽くで聞き出せばいい。
苦痛を与える方法など、いくらでも知っている」
「――屈さない」
「!」
「彼女は、決して屈しません。なぜなら私は知っています。
あの鋼のような強情さを。大切な者のため、命すら懸ける強く気高き精神を。
痛みや恐怖に屈し、理不尽を受け入れるほど彼女は弱くはない……
なぜなら彼女は私が選んだ――初めての<友>だからだッ!!」
「――――」
「<取引>です。
リンツの民を敵に回さぬよう、遺跡には必要最低限の調査隊のみを送ること。
彼らの平穏を脅かさぬよう、良好な関係を築くこと。
それを飲んでいただければ、私自らリンツの民を説得します。難儀な交渉ではありますが、多少は円滑に進むでしょう」
「俺が<取引>に応じなければどうする」
「この首を差し出して、誠意の足しにするのみですわ」
「……忠義(ウルド)も義理(リンツ)も、両方選ぶか。
我が妹ながら、慎ましさの欠片もないな。
久々に胸躍るひとときを過ごした。お前も休め、アン」
「……お兄様」
***
……で、結局リンツにとんぼ返りってワケ?
ハッハッハ! もはや笑えるだろう!
大変でしたね……
兄上も刺激に飢えているのだろう。私も久しぶりに本気を出してしまった!
しかし、エマの説得は兄上以上に骨が折れそうだ。
応じてもらえなければ、今度こそ私の命はないだろう! テンション、アガってくるな!
アガらないわよ!
――
……友達なんだから、きっと大丈夫?
そうね。だってアンタは、エマのために戦ったんだもの!
はい。きっとエマさんも、わかってくれると思います。
……そうだな。きっとそうだろう。
私にとっては、家族も友も等しく大切なものだ。
それを守るためならば、私はどんな困難にだって立ち向かってみせるぞ。
蒼炎を背負いし女傑
その他
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