ユピテル・思い出
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思い出1
ユピテル
こんにちは~。
アイリス
こんにちはユピテルさん。
飛行島はどうですか?
ユピテル
新鮮な気分ですよ~。
キャトラ
しんせん?
ユピテル
ふだん、空を見ることなんて
ないですから~。
ユピテル
というか、空もわたしの
一部と言いますか~。
キャトラ
???
どゆこと?
ユピテル
う~ん、猫ちゃんにわかるよう、
話せるかしら?
キャトラ
がんばってみてよ。
アタシもがんばるから。
ユピテル
わたしは~、木星っていう、
星なんですよ~。
アイリス
ほし……って、
夜空に輝いている
あのお星さまのことですか?
ユピテル
そう。それの一つなの、わたし~。
キャトラ
あのてんてんか。
じゃあちっちゃいのね?
アイリス
(キャトラ……!
突然子供みたいなことを……!)
ユピテル
逆よ~。わたしの本当の姿は、
とっても大きいのよ~。
キャトラ
そうなんだ。どのくらい?
宿屋くらい?
ユピテル
ううん、もっと大きいの。
キャトラ
池くらい?
ユピテル
もっともっとよ。
キャトラ
まさか、飛行島くらいって
ことはないわよね?
ユピテル
ううん。
この飛行島だったら、
私の小指の爪ほどもないわよ~。
キャトラ
ええっ!? ウソだぁっ!?
ユピテル
ウソじゃあ、ないのよ~。
キャトラ
まあでも……星だったら、
それくらいあっても
おかしくはないか。
アイリス
(キャトラ……
わかってたんじゃない……!)
キャトラ
ピンとくるかっていわれたら
きてないけど、
ともかくヨロシクね~♪
ユピテル
こちらこそ、よろしく~。
ちっちゃなちっちゃな猫ちゃん。
ユピテル
とってもちっちゃなちっちゃな
ちっちゃなちっちゃな、猫ちゃん。
キャトラ
そこまで強調しなくても……
思い出2
ユピテル
この島は、ぽかぽかしてて
気持ちがいいですね~。
キャトラ
そうよ。
飛行島の特産品は、
この日当たりだからね!
アイリス
(初めて聞いたわ……!)
キャトラ
ユピテルのところは、
ぽかぽかしてないの?
ユピテル
ぜんぜんぽかぽかしてないの。
むしろガスガスしてるのよ。
キャトラ
がすがす?
ユピテル
木星はね~、ガスの惑星なの~。
『巨大ガス惑星』とも
呼ばれているのよ~。
キャトラ
ぶっぶー。
ユピテル
なあに?
キャトラ
ガスの音。
アイリス
(どうしてキャトラ、
ここのところ幼いのかしら……?)
キャトラ
ガスでできてるって、
想像つかないわね。
どんななの?
ユピテル
そうね~……
ずっと雲がかかっているわ~。
キャトラ
そりゃ、気が滅入るわねぇ。
ユピテル
だけどね、そういった
いろんな条件が相まって、
大きな星でいられるわけなのよ~。
アイリス
大きくて、なにかいいことは
ありましたか?
ユピテル
そうですね~……
案外、あるんですよ~。
ユピテル
隕石を引き受けても、
平気だったりしますからね~。
ユピテル
わたしって~、
引力も強いんですね~。
キャトラ
いんりょく?
ユピテル
物を引っ張る力よ~。
キャトラ
おーえす、おーえす!
ユピテル
うふふ~、
いまここで引っ張るのとは
違うのよ~。
キャトラ
勝った!
アイリス
(キャトラ……!)
ユピテル
宇宙空間では、
結構ひんぱんに、
いろんな星が飛んでまして~。
ユピテル
どこかにぶつかっちゃうと
危ないのなんかを、
わたしが受け止めてるんです~。
アイリス
すいません、ちゃんとは
わからないんですが……
みんなを守ってくれてるんですね?
ユピテル
そんなかんじです~。
キャトラ
だからユピテルには、
母性を感じるのね~。
ユピテル
うふふふふ~。
アイリス
(だから子供に
戻っちゃってたのね……!)
アイリス
(って、納得はしないわよ、
キャトラ……!)
思い出3
キャトラ
前から疑問に思ってた
ことがあるんだけど?
ユピテル
なあに?
キャトラ
ユピテルがいつも
腰かけてるのってさー、
月じゃないの?
ユピテル
正解~。
アイリス
月って、あのお月さまですか……?
ユピテル
あ、そっか。え~っとね……
わたしと一緒で、
月の化身だと思ってくださいね~。
キャトラ
月のようなそんなような、
ってことね?
ユピテル
うん。そんなようなで~。
キャトラ
で、どうして月に座ってるの?
ユピテル
わたし~、こう見えて、
意外とモテるんですよ~。
うふふふふ~♪
キャトラ
アラアラ!
アイリス
つまり、お月さまは、
ユピテルさんのファン……?
ユピテル
と、いうことになりますかね~。
キャトラ
コノコノ~♪
スミに置けないんだから~♪
ユピテル
うふふ~。わたしおっきいから、
スミでも目立っちゃうんですよ~♪
ユピテル
お月さまは、わたしに
とってもよくしてくれるんです。
ユピテル
最初は、お月さまに座るなんて、
って、断ってたんですが……
ユピテル
いいからいいからって、
押し切られてしまいまして~。
キャトラ
いまではしっくりなじむわけね。
ユピテル
ええ~。
慣れるものよね~、
どんなことにでも~。
キャトラ
お月さま、寡黙ね。
ユピテル
いつも黙って、わたしを支えて
くれるんです~♪
キャトラ
ムムムム!?
これは、両想いになる日も
遠くないのかしら!?
ユピテル
でも、わたしは、太陽系全体を
守らなきゃいけないですから~……
ユピテル
特定のだれかと、
お付き合いはできないって
言ってるのですが~……
キャトラ
……それでも構わない!
という情熱が、
月にはあるわけね?
ユピテル
そうみたいで~。
アイリス
ひたむきな方だわ……!
キャトラ
まったくぅ~、
罪つくりなんだから、
ユピテルってば!
ユピテル
そんなつもりないのよ~。
キャトラ
思わせぶりが一番
ザンコクなんだからね?
ユピテル
も~、いじめないでよ~。
本体あらわしちゃうよ~?
アイリス
え……?
キャトラ
やれるもんなら
やってみなさいよ~♪
ユピテル
やっちゃうわよ~♪
アイリス
待ってくださいユピテルさん!
もしここで、ユピテルさんが
元の姿に戻ったらどうなりますか?
ユピテル
こっぱみじんでしょうね~。
なにもかも~♪
アイリス
キャトラっ!!
キャトラ
!?
思い出4
ユピテル
人間の暮らしって~、
面白いですね~。
キャトラ
あら、どうしたのユピテル?
ユピテル
新しい体験を、たくさんしたの~。
アイリス
新しい体験ですか?
ユピテル
そうなんです~。
わたし、とっても長生きでも
あるんですが~……
ユピテル
人間のお友達が出来たのは、
ほとんど初めてなんです~。
アイリス
よかったですね♪
キャトラ
おともだちって、どんな人~?
ユピテル
それがね、占星学者
なんですって~。
キャトラ
いいじゃない!
趣味も合いそうね♪
ユピテル
ええ。とても話が弾んで~。
ちゃんと、ここのしきたり通りに、
お茶もおごってあげました~。
アイリス
……しきたり?
ユピテル
年上の方が、
食べ物のお金を
払うべきなんですよね~?
アイリス
それは……?
キャトラ
……まあ、別にヘンでもない、
かな……?
ユピテル
それから、最近、
新しいお仕事に手を出そうとして
失敗したらしく~。
ユピテル
お金がないって嘆いてたので、
わたしの手持ちを
全部あげました~。
キャトラ
ぜっ、全財産!?
ユピテル
そうよ~。
キャトラ
そ、それでアンタは
どうするのよ!?
ユピテル
どうとでもなるわ~。
キャトラ
お金って大事だよ?
ないと困っちゃうよ?
ユピテル
たいしたことないでしょう?
ユピテル
138億年の
宇宙の歴史に比べれば、
取るに足らないことだわ~。
キャトラ
なんか、ものすっごい
スケールの大きなこと
言われたカンジ……!
ユピテル
うふふふふ~。
あの子、今度は成功して、
儲かるといいわね~♪
アイリス
……まあ、
ユピテルさんが楽しそうなら、
それでいい……のかな……?
思い出5
ユピテル
もう~、まったく~……!
キャトラ
どうしたのユピテル?
めずらしくプリプリして?
ユピテル
怒ってるのよ~。
キャトラ
あんまりそうは見えないケド。
ユピテル
ううん、ほんと、怒ってるの~。
自分でも、びっくりするくらい~。
アイリス
なにがあったんですか?
ユピテル
赤毛のかわいい獣人の男の子と
お友達になったの~。
ユピテル
でもあの子~……
しつこかったの~……!
ユピテル
大きなナメクジをね~。
わたしのところに、
嬉しそうに持ってきて~。
ユピテル
くっつけてきたの~。
アイリス
ナメクジ、苦手なんですか?
ユピテル
ううん、普通よ。
とてもとてもとても
ちっちゃいもの。
ユピテル
だけど~……
あの子、一度や二度では
それをやめなかったの~。
キャトラ
なんかいくらい?
ユピテル
三、四百回くらいかな~?
キャトラ
ひゃ~……!
ユピテル
わたしが~、
本当は喜んでるんだと、
勘違いでもしたのか~……
ユピテル
ニコニコ笑いながら、
何度も何度も、
何度も何度も何度も、
押しつけてくるから~……
ユピテル
さすがにイラっときたの~。
もう、本当の姿、
あらわしちゃうね~?
アイリス
ユピテルさん!
待ってください!
ユピテル
ううん、ごめんなさい、
だって心底うんざりしたから~……
ユピテル
かわいそうだけど、
この世界の全てを、
チリにしちゃうわね~。
キャトラ
ま、ま、ま、待って!
ユピテル
あきらめてね~。
これも、運命だって~。
ユピテル
大丈夫。長い目で見れば、
宇宙も巡っているから~。
ユピテル
また、会いましょう~♪
キャトラ
主人公!
アイリス
主人公!
キャトラ
なんとかしなきゃ!
思い出6
ユピテル
キレイな光~……
まるで星の爆発のよう~……
ユピテル
あら~?
ルーンの光が、罪深い
だれかを呼び寄せる……!
イグニ
……あれ? ここは……?
キャトラ
イグニ!?
ユピテル
あら、あのときの~。
キャトラ
イグニ!
アンタ早くあやまりなさい!
みんなの危機なんだから!
イグニ
え……?
……お姉ちゃん、怒ってるの……?
ユピテル
怒ってるよ~。
イグニ
! ごめんなさい!
ぼく、ぼく……!
イグニ
ナメクジくっつけたの、
悪気はなかったの!
ホントだよ!
イグニ
ぼく……甘えたかったの……
……お姉ちゃん、お母さんみたいに
やさしかったから……
ユピテル
わたしが……お母さん……?
イグニ
ごめんなさい!
もうしないから、ゆるして!
ユピテル
…………
ユピテル
……ええ。
イグニ
ゆ、ゆるしてくれるの?
ユピテル
うん。もう怒ってないわよ~。
イグニ
ごめんなさい、ごめんなさい……!
ユピテル
うふふふ、もういいって~、
安心なさい~。
アイリス
(ほっ……)
ユピテル
みなさん、ごめんなさいね~。
わたしとしたことが、
こんな小さなことで
ムキになっちゃうなんて~。
ユピテル
わたしなんて~、
まだまだ子供ね~。
アイリス
ユピテルさんが……
こども……!?
ユピテル
そうですよ~?
アイリス
ユピテルさんほどの、
雄大な大物がですか?
ユピテル
それは言い過ぎですよ~。
宇宙には、まだまだ
上には上がいますから~。
キャトラ
そーなの?
それってだれよ?
ユピテル
太陽♪
キャトラ
ほ、ほへ~……!
スケールのおっきな話だわ~……!