エヴェリーナ
Illustrator:浮 Ririfa
名前 | エヴェリーナ |
---|---|
年齢 | 10代前半 |
職業 | ルミエールが作ったビスクドール |
- 2021年7月21日追加
- PARADISE ep.IVマップ1(PARADISE LOST時点で135マス)課題曲「ハルシナイト」クリアで入手。
イベントinclude:開催日(オリジナルNEW+)
町一番の職人が作った人形。
一家にとっても特別な思い入れが込められている。
スキル
RANK | スキル |
---|---|
1 | 鉄壁ガード・パラダイスロスト |
5 | |
10 | |
15 |
- 鉄壁ガード・パラダイスロスト [GUARD]
- 鉄壁ガード・エアーの上位種。カウントが残っている間もダメージ半減となる。
GRADE | 効果 |
---|---|
共通 | 一定回数ダメージ軽減 (50%) カウント[0]の時 ダメージを無効化 (※初期カウント20) |
初期値 | ゲーム開始時にボーナス +12000 |
+1 | 〃 +16000 |
+2 | 〃 +20000 |
+3 | 〃 +24000? |
推定理論値:84000(5本+4000/22k) |
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | EP.1 | Ep.2 | Ep.3 | スキル | |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
Ep.4 | Ep.5 | Ep.6 | Ep.7 | スキル | |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
Ep.8 | Ep.9 | Ep.10 | Ep.11 | スキル | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
今からそう遠くない昔のこと。
とある町の一角に、小さなお店を構える人形職人がおりました。
職人のルミエールはまっすぐな心の持ち主で、人形作りの腕前も天下一品。
おかげで、街の人たちから大変愛されていました。
「ルミエールさん、新しく人形を作ってもらいたいのだけれど」
「ありがとうございます! どんな子にしましょうか」
「実はね、孫が生まれたの。そのお祝いだから、とびきり可愛い子にしてちょうだい」
「なんと! それはおめでたい! 腕によりをかけて作らせていただきます!」
ルミエールの家は、彼のおじいさんのおじいさんの頃から人形作りをしているほどの職人一家。
この町の人たちは、男の子も女の子も関係なく、みんなお店の人形と一緒に育ってきたのです。
そんなルミエールは、今日も工房で一生懸命人形を作ります。
人形作りは楽な仕事ではありませんが、町の人たちを笑顔にできるこの仕事がルミエールは大好きでした。
「あなた、お昼ご飯ができたわよ。そろそろ休憩にしてはいかが」
「そうだよ、父さん。すぐ夢中になってご飯も忘れちゃうんだから」
まるでお店のお人形のように美しい、ルミエールの奥さん、リリィ。
そして二人の息子であるリュンヌが笑いながらそう呼びかけます。
「おや、もうこんな時間かい。あと少しだけ作業をしたら、すぐに行くよ」
「ふふ。無理はしないでくださいね」
いつも笑顔が溢れるルミエール一家は、それはそれは幸せな日々を送っていました。
「あら、リリィちゃん。これから買い物?」
「ええ。今日はお野菜のスープにしようと思って」
「おっ、リリィさんじゃないか。今日も綺麗なツノだねぇ」
「もう。おだてても何も出ませんよ」
ルミエールと同じくらい、リリィも町の人から愛され、今日も次々と声をかけられます。
そんなリリィには、少し変わった特徴がありました。
それは、頭の上のツノ。
人間の中でも『獣人』と呼ばれる種族のリリィは、この国では珍しい存在でしたが、町の人は決して馬鹿にしたりしません。
それどころか、リリィのツノはとても綺麗だと、褒めたたえます。
優しい人々に囲まれ幸せに暮らすリリィ。
しかしある時、彼女の身に悲しい出来事が訪れてしまうのです。
「く、苦しい……うう……」
「母さん!? どうしたの、母さん!」
リリィは自分の力では立っていられなくなり、病に伏せてしまいました。
慌てて呼んだお医者さんが、診察の結果をルミエールとリュンヌに伝えます。
「奥様は、獣人だけがかかる病気に侵されてるようです」
「そうなのですか……あの、妻は……妻は治るんですよね?」
「残念ながら……まだこの病気を治す方法は解明されていないのです……」
「そ、そんな……!」
ルミエールは大変落ち込みましたが、それでも諦めず毎日リリィの病気を治す方法を探しまわりました。
しかし簡単には見つからず、リリィの具合はみるみる悪くなっていきます。
それからしばらく経った頃。
リリィはルミエールとリュンヌを自分が寝ているベッドのそばへと呼ぶとこう言いました。
「自分で分かるわ……お別れの時がきたみたい……」
「そんなこと言わないでくれ! きっと助かる!」
「行かないで、母さん!」
「心配ばかりかけてごめんなさい……二人のこと、ずっと見守ってるからね……」
「リリィ! リリィ!!」
「母さん!」
ルミエールとリュンヌの声にリリィが応えることは、もうありませんでした。
リリィはたくさんの星が煌々と輝く夜空へと、静かに旅立っていったのです。
リリィを失った悲しみは、それはそれは深いものでした。
あんなに明るかったルミエールの家は見る影もなく、暗い空気が漂います。
いつも工房から聞こえてきた、人形を作るときの軽やかな音もありません。
ルミエールはあまりに落ち込んでしまい、人形作りができなくなってしまったのです。
「父さん、何か食べないと……パンくらいしかないけどさ」
「ああ……私はいいんだ。リュンヌが食べなさい……」
食事もほとんど摂らなくなってしまったルミエール。
気の毒に思った町の人たちがどんなに励ましても、元気にはなりませんでした。
「リリィ……どうして私たちを残していってしまったんだ……」
お店に並ぶ前のたくさんの人形が並ぶ工房で、ルミエールはひとりぼっちで呟きます。
そんな彼をじっと見つめている、ひとつの人形がありました。
それは、リュンヌが生まれた記念に作ったとっておきのもの。
ルミエールとリリィの思いがとびきり込められ、特別に「エヴェリーナ」と名付けられた人形は、いつしか心を持ち、どんなときも家族のことを見守っていたのです。
(ルミエール様……リュンヌ様……なんておかわいそうに……力になって差し上げたいけれど、私はただの人形……どうすることもできないのです……)
心を持っていても、体はただの人形。
大切な人たちのために何もすることができず、人形ははがゆい思いをしながら、じっと二人を見守り続けました。
そんなある満月の晩。
ルミエールたちがとっくに寝静まり真っ暗になった工房に、突然光が溢れました。
光の中から現れたのは月の魔女。
魔法使いは、まっすぐあの人形の元へとやってくると、優しく声をかけます。
「おや、これは珍しい。心を持った人形じゃないか」
(ま、魔女様? 私、お話することができなくて……)
「大丈夫、聞こえてるよ。アタシは頼まれてここへやってきたんだ」
星になったリリィと空の国で出会った月の魔女は、愛する家族を哀しみから救ってほしいと、願いを託されました。
魔女はリリィのあまりに清い心に感心し、その願いを叶えるため地上へと降りてきたのでした。
「ふむ……お前ならリリィの願いを叶えてやれるかもしれないねぇ」
(私……ですか?)
「お前は、あの家族のことが大切かい?」
(はい……ルミエール様も、リュンヌ様も、天に召されたリリィ様も……私の大切な方々です……ですから、今のお二人を見ているのは胸が痛くて痛くて……)
「想いは分かった。そうだねぇ……お前には人間になれる魔法をかけてあげようか」
(ええっ!?)
魔女がリリィから託された、魂のかけら。
そのかけらの力を使って、人形を人間にするというのです。
人形が驚いていると、魔女は突然真剣な顔になって言います。
「でも、ひとつだけ約束がある。それは、お前の正体が人形だと決して知られないようにすること。もしも知られてしまったら、元の姿に戻ってしまうからね」
(元の……姿に……)
「それでもいいならば、魔法をかけてやるが……どうするかい?」
(私……守ります! 私を人間にしてください!)
にっこりと笑った魔女が杖を軽やかに一振りすると、星のかけらが人形へと降り注ぎます。
そして光に包まれたと思うと、みるみるうちにその光は大きくなり、気づけば人形の硬い体は、可愛い少女の姿へと変わっていきました。
「すごい……すごいです! これが、私……!」
「おや、これは驚いた。あの子の魂のかけらを使ったせいかねぇ。こんな形で残るなんて」
人間になった少女の頭には、美しいツノがふたつ。
それは、リリィのツノとそっくりなものでした。
あれからこっそりと工房を離れ、一晩かけて魔女から人間のルールを教えてもらった少女は、夜があけると再びルミエールの工房を訪ねました。
今度は人形ではなく、人間として初めてルミエールと会うのです。
少女は大変緊張しながらも、ドアを叩きます。
「はい……どちら様でしょうか……」
力なくドアを開けたルミエールが少女の姿を見た途端、彼は驚きで目を丸くさせました。
なぜなら、愛したリリィと同じツノが、彼女の頭にあったからです。
「君は……」
「はじめまして。私はエヴェ……エリーと申します」
「まさか……信じられない……」
「あの……」
「あ、ああ……すまないね。ちょっと知っている人と似ていたものだから」
それがリリィのことを言っているとエリーは分かっていましたが、正体に気づかれないためにもぐっとこらえます。
「あの、私をメイドとしてお家に置いていただけないでしょうか」
「メイドだなんて……雇うお金なんてうちには……」
「もとより私は身寄りのない身、お賃金は頂きません! ただ、食事だけご一緒させていただければ!」
「ありがたい話だが……なぜそこまでしてうちで働きたいのかい?」
「それは……ここのお人形が大好きだからです! ですから、少しでもお手伝いができればと!」
久しぶりに家を訪ねてきた人と何か不思議なやりとりをしているのが聞こえたのか、リュンヌがそばまでやってきました。
「父さん、そこまで言うなら来てもらおうよ。僕たち家事は得意じゃないし」
「そ、そうか……ではエリー、お願いできるかな」
「はい、精一杯頑張ります! おぼっちゃまも、よろしくお願いします!」
「お、おぼっちゃまはやめてくれよ……」
同い年くらいの可愛い女の子におぼっちゃまと呼ばれ、赤くなったリュンヌは頬を掻きました。
こうして、エリーはルミエールのお家の住み込みメイドとなったのです。
メイドとなったエリーは、ルミエールとリュンヌを支えようと張り切ります。
掃除に洗濯、それにお料理と、メイドのお仕事は山積みなのです。
しかし、昨日まで人形だったエリーには、何もかもが初めての事。
リリィの姿を思い出して真似をしてみますが、上手にできません。
「これは……何かな?」
「真っ黒だけど……食べ物なんだよね?」
エリーは初めて作った食事を食卓に並べましたが、それを見たルミエールたちはとまどいます。
「それはパンです……申し訳ありません、焦がしてしまいました……」
メイドとしてお家に入れてもらったのに、大失敗ばかり。
このままでは追い出されてしまうかもしれないと、エリーが落ち込んでいると、なぜか大きな笑い声が聞こえてきます。
「はっはっは! なんて豪快な焦がしかたなんだ!」
「こんな炭になるまで焦がす人なんて、そういないよ! くっくっく……」
「あの……お叱りになられないのですか……?」
「叱るなんてとんでもない。一生懸命頑張っているところを見ていたからね」
「これから上手になればいいんだよ! 僕も一緒に覚えるからさ!」
「ルミエール様……リュンヌ様……」
エリーは溢れそうになった涙を堪えました。
それは、優しい言葉をかけてもらったからではなく、リリィが亡くなってからすっかり消えてしまった、二人の笑う姿を見られたからでした。
「あら、エリーちゃん。これから買い物?」
「はい。ブラシが傷んでしまったので」
「おっ、エリーじゃないか。ルミエールの旦那によろしく言っておいてくれ」
「ええ、必ずお伝えいたしますね」
あれから、少しずつメイドのお仕事にも馴れてきたエリーは、町の人たちともすっかり顔なじみになりました。
町を歩けば、みんなが口々に声をかけてきます。
「エリーちゃんが来てから、ルミエールさんたちも元気になってきたからさ。これからも支えてあげてくれよな」
「もちろんです! それが私の使命ですから!」
ルミエールとリュンヌが元気になったのは自分のおかげと言ってもらえて、嬉しくなったエリーは思わずスキップしながら、足取り軽くおつかいの続きをします。
「ただいま戻りました」
「ああ、おかえり。エリー」
「大丈夫だった? どこかで転んでるんじゃないかと思ったよ」
「そ、そんなドジじゃないですよ!」
「あはははは!」
実際に、二人に笑顔が戻ったのはエリーのおかげでした。
リリィのことを思い出すたび悲しい顔を浮かべることはありましたが、いつも元気で明るいエリーの笑顔は、自然と二人にうつっていったのです。
(よかった……これでリリィ様にもお顔向けができます……)
以前と同じように、幸せに見えるルミエール一家。
しかし、本当の意味で悲しみを乗り越えることは、まだできていなかったのです。
笑顔を見せるようになったルミエールですが、まだ人形を作ることはできませんでした。
何度も工房に足を運び、道具を片手に挑戦しようとしても、そのうち諦めてしまいます。
リリィをなくした悲しみが癒えていないのはもちろんですが、理由はもうひとつありました。
「お人形を作るのは、それほど難しいのですね……」
「……エリーかい。そうだね……簡単ではないのは確かだが、これは心の問題なんだ。人形を作ろうとするたび、彼女を思い出してしまうから……」
「そう、ですか……」
「それに……」
「それに?」
「ここには私とリリィにとって、とてもとても大切な人形があったんだ。初めてリリィも手伝ってくれて、二人で作った思い出の人形だったのだけどね。それも……ある時突然消えてしまった。きっと神様が、家族に苦労をかけるような人形作りなんて、もうやめてしまえと言っているのかもしれないな」
「そ、そんなことありません!」
ルミエールが大切にした人形は、人間になる前のエリーのこと。
本当のことを話して、神様のせいじゃないと伝えようとしたエリーでしたが、人形に戻ってしまうことをおそれて言い出せません。
そのうち、ルミエールは寂しそうに笑うと、工房を出て行ってしまいました。
入れ違いにリュンヌが入ってくると、エリーに声をかけます。
「父さん、今日もダメだったんだ」
「はい……」
「仕方ないよ。僕も人形職人になるのは諦めるしかないな」
「リュンヌ様も人形をお作りになろうとしていたのですか?」
「そりゃ父さんの子だもん。本当はそろそろ修行をする予定だったけど……父さんが作れないんじゃ難しいね」
「そうだったのですね……」
「ま、なるようになるさ! ねえ、エリー。夕方までもう仕事はないだろう? その……もしよかったら、一緒に町外れの山に行かない? すごく綺麗な景色を見つけたんだ」
「はい、もちろんお供させて頂きます」
「やったー! すぐ準備するから、ちょっと待ってて!」
慌てて部屋へと走っていくリュンヌを見て、エリーは笑みをこぼします。
でもすぐに先ほどの話を思い出し、考え込んでしまいました。
(私がここにいることが、逆にご迷惑となっているのなら……人形に戻ってしまった方がいいのかもしれません……でも、私はずっとここにいたい……)
大好きな二人と過ごす、暖かい毎日。
人間として、話したり触れたりすることの喜びを知ってしまったエリーは、これまで以上に人形に戻りたくないと思うようになっていたのです。
それからしばらく経った頃、その日は突然やってきました。
いつものように三人で食卓を囲み、食事を済ませると、ルミエールは言います。
「工房とこの家を売りに出そうと思ってるんだ」
驚いたエリーは、理由を尋ねます。
「どうしてですか!?」
「実は、もう貯金が尽きかけているんだ。どうやら私はもう人形を作れそうにない。ならば、他の仕事を始めないと」
「だからといって売ってしまうなんて……」
「ここは思い出が多すぎる……楽しかった分、余計辛くなるくらいにね。だから、新しい生活は新しい場所で始めたいんだ」
「そんな……リ、リュンヌ様はよろしいのですか?」
「父さんの気持ちも分かるからさ……」
「リュンヌ様まで……」
このまま二人が元気になっていけば、きっと以前のように戻るはず。
そうエリーが考えていた以上に、問題ははるかに大きくなっていたのです。
悲しみを断ち切って新しい生活に挑戦するのは悪いことではありません。
でも、これはエリーが望んだものではありません。
エリーに二人を託したリリィも、こんな結末は望んでいないでしょう。
「そこで提案なんだが……エリー、よければ新しい家でも一緒に暮らさないかい?」
「そうだよ! 僕たちとエリーはもう家族みたいなものだしさ! 絶対絶対ぜーったい、一緒にくるべきだって!」
「今はまだ難しいかもしれないが、お賃金もちゃんとだせるよう、私も頑張るから」
二人のありがたい言葉で一瞬笑顔になりますが、エリーはゆっくり頭を振って断ってしまいます。
そして、今にも泣き出しそうな声を抑えながら話しはじめました。
「私は……ご一緒できません……」
「ど、どうして? 僕たちが嫌いになったの?」
「とんでもない……お二人のことは大好きです……」
「じゃあ、なんで……」
「私が一緒にいると……お二人の運命を変えてしまうからです……」
「運命って……?」
エリーはひとり食卓から立ち上がると、ドアの前に立ってルミエールとリュンヌに深くお辞儀をしました。
不思議そうに見つめる二人を前に、エリーは続けます。
「私はお二人に……ずっと嘘をつき続けていました……私の名前はエリーではありません……本当の名は……エヴェリーナと申します」
「エヴェリーナだって……!? それは……私たちのあの人形と同じ名じゃないか!」
「はい……本当の私は……魔女様の魔法で体を手に入れた、ただの人形なのです……」
「魔女の魔法だって? ははは……エリーにしては珍しい冗談だね……」
「きっとすぐに信じていただけると思います……」
「そんなまさか……」
おとぎ話のようなエヴェリーナの言葉が信じられず、ルミエールもリュンヌもただ呆然としてしまいました。
すると突然、エヴェリーナの身体が淡く光り輝いたかと思うと、ひとりの女性の姿へと変化していきます。
なんとそれは、亡くなったはずのリリィの姿でした。
「リリィ!!」
「母さん!!」
「あなた、リュンヌ……エヴェリーナの話を信じてあげて。エヴェリーナは、ずっと二人のことを心配していたわ。だから魔女様に頼んで、私の魂のかけらを使って彼女に人間になってもらったの。二人を近くで見守ってもらえるように」
「ほ、本当にエリーは、あのエヴェリーナなのか……」
「ええ。私たちの愛に負けないくらい、家族思いの立派な子だわ」
「エリー……いや、エヴェリーナ……そこまで僕たちのことを……」
どうしてもお手伝いがしたいと、ルミエールの家にやってきたエヴェリーナ。
ルミエールとリュンヌは人形の愛を知って暖かい気持ちになりながらも、そんなにまで心配させてしまったのかと反省します。
「だからあなた……また人形を作って。エヴェリーナがいなくなったのは、神様のせいなんかじゃない。人形を作るあなたが大好きなの。私も……そしてエヴェリーナも」
「……そうだ。私は怯えていたんだ。いつもと変わらず人形を作り続けたら、君が亡くなったことを認めてしまうような気がして……しかし、もう一人で悩んでいじけていてはダメだね。私はもう一度……人形を作りたい!」
「ああ、よかった……それでこそ私の大好きなあなたよ。リュンヌ、お父さんと一緒に夢を叶えてね」
「うん! 心配いらないよ、母さん!」
「いい子ね。さあ、そろそろ行かなくちゃ。特別にエヴェリーナの体を借りたけど、これ以上は魔女様に怒られちゃう」
「……もう行ってしまうのかい」
「ええ……二人とも……エヴェリーナを大切にしてね……」
リリィはそう言うと、あっという間に消えてしまいました。
今度こそリリィは、空へと帰っていったのです。
そして残されたエヴェリーナも、二人へお別れの挨拶をはじめました。
「私たちの気持ちが伝えられて、本当によかった……もう思い残すことはありません。こうしてお話できるのも、これで最後となりました」
「へ、変なこと言わないでくれよ。僕たち……明日もあさっても、ずっとずっと一緒だろ?」
「リュンヌ様にそう言ってもらえて、私は本当に幸せです……でも、ダメなのです……本当の正体を知られたら魔法は解けてしまう……そういうお約束ですから……」
「嫌だ……そんなの嫌だよ……」
「エヴェリーナはこの家に生まれて、本当に幸せでした……ルミエール様、リュンヌ様……どうかお元気で……さようなら……」
穏やかな笑みを浮かべたまま、そう言って頭を下げると、エヴェリーナはドアの向こうへと姿を消しました。
「待ってよ!! エヴェリーナ!!」
リュンヌとルミエールが慌てて追いかけますが、そこにはもう誰もいません。
かわりに、ドアの近くには小さな人形が落ちていました。
それは、人形に戻ってしまったエヴェリーナ。
ルミエ-ルはエヴェリーナを抱きしめると、大切な四人目の家族の愛を想って、静かに涙を流し続けるのでした。
――それからすぐのことです。ルミエールは再び人形作りをはじめました。
でも、前までの人形とは少し形が違います。
ルミエールが新しく作る人形にはどれも、愛するリリィと、エヴェリーナのものと同じ、美しいツノがついていました。
主人のために人間の姿になって現れた天使のような人形の噂は、町だけではなく、遠く離れた都にまで広まっていき、『ルミエールの人形は幸せを呼ぶ』と言われ、お店は大繁盛するようになったのです。
今日もルミエールとリュンヌは人形を作り続けます。
みんなを笑顔に、そしてリリィとエヴェリーナが笑顔になってくれていると信じて。
とある町の昼下がり。
幼い娘が寝転んでいる横で、彼女の母親は絵本の読み聞かせをしていた。
「――笑顔になってくれていると信じて……おしまい」
「おもしろいおはなしだったー!」
「ふふ。ならよかった」
「でもふしぎー! おにんぎょうさん、ママとおなじおなまえだった!」
「そうね、不思議ね。どうしてだと思う?」
「うーん……わかんない!」
「まだ難しいか。大きくなったら、またお話しするね。あ、ちょっと待ってて」
呼び出し用のベルがチーンと音を立てたのに気づいた母親は、慌てて立ち上がると、母屋と繋がった店先へと急ぐ。
「すみません、お待たせしちゃいました」
「いいのいいの。あのね、オーダーメイドで注文したいのだけど」
「オーダーメイドですね。それなら主人が対応致します。あなたー? お客様よー!」
母親の大きな呼び声に、少し遅れて店の奥から主人のものらしき声が返ってくる。
「ごめん! 今どうしても手が離せないんだー! 少し待ってもらってー!」
「もう……! あの人ったら……」
「うふふ、気にしないで。いくらでも待ちましょうとも」
「本当にすみません……今回はお祝いか何かですか?」
「ええ、孫が生まれたのよ! だから最高の逸品を作って頂こうと思って」
「まあ、おめでとうございます! それを聞いたら、主人もきっと張り切ります。ちなみに、どういったものでお考えでしょうか」
その言葉を聞いた客のマダムは、待ってましたとばかりにこう答えた。
「孫の幸せを願って、とびきり立派なツノをつけてほしいの! そう、あなたみたいなのがいいわ!」
-
-
僕もその1人です
-
-
チュウニズムな名無し
-
-
チュウニズムな名無し
32021年07月24日 22:04 ID:cs1ykxg6「リレイションレーベルの人形」ということで某14のアレが脳内に浮かんで身構えたけど最後までストーリー読んでみたら平和な感動物語で安心した
-
-
チュウニズムな名無し
22021年07月24日 17:59 ID:duhx424aなんでこんな奴に鉄壁スキルつけたんだ?(ある部位を見つめながら)
-
-
チュウニズムな名無し
12021年07月24日 13:33 ID:soe0x80c公式サイトで見られる全身絵では台座に乗っていてより人形らしさが出ているのが分かる
筐体上ではトリミングされて見えないのが残念