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フリーシア・ベイヤード

最終更新日時 :
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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常誰が為の正義

Illustrator:吠L


名前フリーシア・ベイヤード
年齢18歳
職業帝国参謀本部士官
身分隊長

軍人を目指し研鑽を続けてきた、エリートの少女。

皇女ステラリウスとの出会いによって、彼女の人生は大きく変化していく…


スキル

RANK獲得スキルシード個数
1勇気のしるし【SUN】×5
5×1
10×5
15×1



  • 勇気のしるし【SUN】 [EMBLEM+]
  • JUSTICE CRITICALを出した時だけ恩恵が得られ、強制終了のリスクを負うスキル。
  • 嘆きのしるし【SUN】よりも強制終了のリスクが高い代わりに、ボーナス量が多く、JUSTICE以下でもゲージが増える。
  • PARADISE LOSTまでの勇気のしるしと同じ。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
効果
J-CRITICAL判定でボーナス +??.??
JUSTICE以下150回で強制終了
GRADEボーナス
1+30.00
2+30.10
3+30.20
101+39.95
推定データ
n
(1~100)
+29.90
+(n x 0.10)
シード+1+0.10
シード+5+0.50
n
(101~)
+34.90
+(n x 0.05)
シード+1+0.05
シード+5+0.25
プレイ環境と最大GRADEの関係
開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
SUN449+34.80
~NEW+0149+42.35
2022/10/13時点
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
  • ボーナス量がキリの良いGRADEのみ抜粋して表記。
  • 水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。
GRADE5本6本7本8本9本10本11本
1600120018002400320040005000
11581116217422323309738714839
21563112516882250300037504688
31546109116372182291036374546
41530105915892118282435304412
51515102915432058274334294286
61500100015002000266733344167
7148797314601946259532444055
8147494814221895252731583948
9146292413851847246230773847
10245090013501800240030003750
12244087913181757234229273659
14242985812861715228628583572
16241983812561675223327913489
18241081912281637218227283410
20040180212031604213926733341
筐体内で入手できる所有キャラ
  • 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
Verマップエリア
(マス数)
累計*2
(短縮)
キャラクター
SUNep.Ⅰ7
(505マス)
1055マス
(ー)
フリーシア・ベイヤード

※1:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

期間限定で入手できる所有キャラ
  • カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。

※1:同イベント進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

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ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

STORY

EPISODE1 焼け落ちた戦場で「愚かな盲信……今ならなんとでも言えるだろう。だがそれが生きる意味であり……私の全てだった」

 曇天と呼ぶには生温い、分厚く塗り潰したような黒い雲が空を覆い尽くしている。

 本来ならば夜のように暗いはずだが、遮られた陽の代わりに戦火の炎が辺りを照らす。

 そこに広がるは、瓦礫と死体が無数に転がる苛烈な戦場。

 死の香りが立ち込める非現実的な光景の中、まるでそこにいることを神に赦された唯一の存在かのように、たったふたつの人影が佇んでいた。

 ひとりは天を仰ぎ、何か祈りを捧げるかのように両手を開く。

 ひとりは膝をつき、救いを求め――否、何かを救うように手を伸ばす。

 まるで宗教画のような様相であるが、そこに神々しさは感じられない。

 あるのは、純粋すぎる欲望。

 持たざる者が真実に気付くその瞬間は、いつだって等しく、悲劇の最中にやってくるもの。

 伸ばした手は誰にも届かない。

 だがその手のひらには、わずかな真実が掴み取られていた――。

EPISODE2 力を持たざる者「この国に自分は必要な人間なのだと信じていた。そんなもの、ただのまやかしだとも知らずに」

 侵略、そして支配。

 帝国主義を掲げ、他国を飲み込み、ひたすらに強大な国家を目指し猛進する国があった。

 誰かにとっての“悪”は、誰かにとっての“正義”。

 その帝国は近隣諸国に恐れ疎まれながらも、自国民の強い愛国心によって今日も力を蓄え続ける。

 “次の有事”に備えるために。


 王族の管理する軍部が実質的政権を握るこの帝国では、当然軍人の地位は高い。

 上層部にも関係する“役職持ち”ともなれば、誰もが憧れるような職業であるといえる。

 そんな民衆の羨望をも利用する形で、歌闘士の力を持つ者達を集め“歌闘騎士”として部隊を組織し軍事利用していた帝国は、未来の兵力を育てるためにも幼少教育に力を入れていた。


 「私は……必ず歌闘士となって戦果を上げてみせる! 我らが帝国のために!!」


 歌闘士候補生として日夜研鑽を続けるフリーシア・ベイヤード。

 彼女もまた、軍人としての輝かしい未来を目指す少女達のひとりだった。


 「またフリーシアさんが主席?」

 「当たり前でしょう。入学以来、全カリキュラムでトップだもの」

 「エリートは違うわね。未来の将校が約束された人って、きっと彼女のような人物なんだわ」

 「そうね。来年の今頃は、もうきっと戦場で多大な功績をあげているでしょうね」


 優秀な成績、軍人としての美しい所作。

 周囲からの信頼も厚かったフリーシアは、必ずや歌闘騎士として若き希望になるだろう。誰からも、そしてフリーシア本人もそう信じて疑わなかった。

 だが――その希望は潰えた。

 全教育課程を終え、同期が次々と歌闘騎士部隊へ配属されていく中、フリーシアの姿はそこにはない。

 彼女は類稀なる素質を持ちながらも、最後まで才を顕現させることができなかったのだ。

 歌闘士として、歌の力を発現させる才を。

 どんなに優秀でも、歌の力を持たなければ歌闘士にはなれない。

 その頭脳を見出され、参謀本部へと配属されたフリーシア。

 生え抜きとしては異例の、まさしくエリートコースと呼べる配属ではあったが、それはフリーシアの描いた未来とは大きく外れていた。


 「どうして……どうして他でもないこの私が……!”歌の力”は、なぜ私を選ばなかったのだ……ッ!?」


 王宮の中庭。

 王宮内に設けられた支部に軍務でやってきたフリーシアは、待機時間をこの中庭で過ごしていた。

 自分の不甲斐なさ、“歌の力”という才の理不尽さ。

 口に出して吐露せずにはいられないほど、フリーシアは消沈していたのだ。


 「あら? アナタは……どなたかしら?」


 大庭園とは違って、ここは人の往来が少ない。だから油断していた。

 フリーシアのこぼした声はとある人物の耳に届いてしまう。

 よりによってこの国の皇女である、ステラリウス・エオン・ブリルノーヴァ、その人に。

 二人が対面するのは初めてのこと。

 だが、自国の皇女であるその姿をフリーシアが知らぬはずがない。


 「ひ、姫様……ッ! 私は参謀本部士官、フリーシア・ベイヤードであります! お聞き苦しい泣き言をお耳に入れてしまい、申し訳ございません!」

 「いいのよ、フリーシア。それより、ワタクシ退屈してしょうがないの。アナタの話を聞かせて頂戴」


 フリーシアは一瞬戸惑うも、姫君の命ということもあり、これまで自分に起こったことを話した。

 歌闘騎士になるという夢が、力を発現させることができずに砕かれたことを。

 それを面白がっているのか興味がないのか、感情の読めない表情で聞いていたステラリウスは、さも当然のようにこう言った。


 「歌の力が目覚めなかったのは残念でしょうけれど……戦場で活躍する方法はいくらでもあるのではなくて? 力がないのなら、力を持つ者を使えばいいのですわ」

 「力を持つ者を……使う?」

 「ええ。歌闘騎士という兵を束ね、使う側……そうですわ! アナタはそちらのほうが向いているかも!」

 「あの……それはどういう……」

 「フリーシア・ベイヤード! アナタを本日付けで歌闘士部隊指揮官への転属を命じます!」


 思いつきのようなステラリウスの転属命令は、その日のうちに一瞬で現実のものとなった。

 フリーシアがまだ軍人として重要な任についていないこともあるが、皇女の一声に逆える者はどこにもいないからだ。

 だが結果として、この出来事がフリーシアの人生を大きく変えることとなる。

 歌闘騎士隊指揮官として戦場を駆けた、一人の軍人の人生を。

EPISODE3 騎士としての誓い「ステラリウス様は、この私に光を与えてくださった。ならば私は剣となり盾となろう。この命尽きるまで」

 かつては隣国であり、現在は帝国の占領下にある国。その国を西に抜けた先に、砂嵐の吹く乾いた荒野が広がっている。

 そしてさらに荒野を越えると、潤沢な天然資源を有する西の国がある。

 大陸の中央に位置し、貿易の中心となっているその地を落とせば、帝国が大陸を手中に収めるための大きな足掛かりになるだろう。

 だが、西の国もそう易々と国を明け渡すはずがない。

 侵攻する帝国を迎え撃つ形で、荒野は戦場と化していた。


 戦場の中、小高い岩山の上にひとり立つフリーシアの姿がある。

 その手には“レイピアタクト”と呼ばれる、歌闘騎士隊指揮官にのみ揮うことを許された軍器が握られていた。

 指揮棒を模した細身の刃を持つそれは、直接相手を斬りつけるというよりも、まさに“指揮棒”として用いられる。

 振ればたちまち風が巻き起こり、心身ともに味方への癒しの力を与えるものなのだが、真の使い道は他にある。

 それは“音の力をまとめあげる”こと。

 人智を超えた力を持つ音の力。そのひとつひとつを、まるで糸を織るように紡ぎあげていく。

 フリーシアの振るタクトに合わせ、歌闘騎士が各々の力を合わせたときの戦力は、これまでのものとは桁違いであった。

 その姿はまさしく“指揮者”。

 フリーシアは戦場という舞台を音の力で掌握するまでに成長していた。


 「歌闘騎士隊よ! 突撃の時が来た! 姫様をお守りするのだ!!」


 破竹の勢いで進軍する帝国軍。

 西の国は必死に応戦するも、フリーシアが束ねる歌闘騎士隊には歯が立たず、みるみるうちに防衛線は崩れていく。


 「よくやったわ、フリーシア。アナタ達のおかげで随分と戦いが楽になったわね」

 「はっ、ありがたきお言葉」


 王政軍である帝国の末姫として、先日より前線へと合流しているステラリウス。

 戦については素人であり、いわば“お飾り”である彼女の護衛を命じられていたフリーシアは、ステラリウスとの距離を急速に縮めていた。


 「全ては姫様のおかげです。他の歌闘士を指揮する……私にこんな力の振るい方があることなど、姫様のご助言が無ければ知ることもありませんでした」

 「姫様、なんて固いですわ。ステラリウスと呼びなさい」

 「で、では……ス、ステラリウス……様」

 「ま、それで許しましょう。これからもよろしくお願いね、フリーシア」


 腐っていた自分を沼の底から救ってくれた人。

 その人物からまるで友人のように接してもらい、フリーシアは喜びに身を震わせる。

 元来国民の中でも愛国心の強い人物ではあったが、この時より彼女は、より強い忠誠を誓うようになる。

 帝国のため。王族であるブリルノーヴァ家のため。

 どれも間違いではない。

 だが何よりも、ステラリウスのために。

 姫のためなら命も投げ出すと、フリーシアはその胸に誓いを刻んでいた。

EPISODE4 美酒にも酔えぬ夜「ステラリウス様は変わってしまわれた……姫君ではなく、戦に取り憑かれた武人のように……」

 ステラリウスが“戦場のお飾り”であったのは、ほんのわずかな期間のことであった。

 ある日、どこで手に入れたか分からぬ楽器を手にしたステラリウスは、フリーシアにこう提言した。

 「自分を前線に立たせよ」と。


 「いけませぬ! そんな危険な行為……ステラリウス様をお守りする者として許せるはず――」

 「黙りなさい。ワタクシがやると言ったらやるのですわ! それとも……ワタクシに意見するつもり?」

 「……いえ。ですが、常にお隣で護衛につかせていただきます。歌闘騎士指揮官として、それだけはお譲りできません」

 「好きにするといいですわ! アナタの出番はないでしょうけれど! このギターがある限り!」

 「その楽器……ギターというのですか……」


 ギターを抱えながら、いつも以上に興奮した様子のステラリウス。

 これまでも彼女が突拍子もないことを言い出すことは少なくなかったが、フリーシアはその全てを受け入れてきた。

 だが、今回は事情が違う。国にとってこれ以上にないほど大切な姫君の命がかかっているのだ。

 それでも、フリーシアは主君の行動を否定することはできない。

 ステラリウスの意思はフリーシアの全て。

 この世に生を受けたのは産みの母のおかげではあるが今の自分があるのは彼女のおかげだからだ。


 「どんな危険が迫ろうと……この命を投げ出してでもお守りする……」


 そう覚悟し、ステラリウスと共に馬を駆らせたのがつい半刻前ほどのこと。

 フリーシアの目の前には今、想像もしなかった光景が広がっている。


 「これは……一体何が……?」


 ステラリウスがギターを爪弾く度、雲もない空に雷鳴が轟く。

 その雷は敵兵へと大量に降り注ぎ、まるで彼女のギターの音色に合わせて歌うように、悲鳴が戦場を埋め尽くしていく。

 それは、まさに天罰。

 神が人間に罰を与えるかの如く、雷は大地と敵兵を焼いていった。


 それから西の国が陥落するまでは、瞬きするほどの早さでしかなかった。

 帝国の持つ軍事力もあるが、一番の要因はステラリウスの力。

 神にも匹敵する力を持った軍を相手に、まともに立ち向かえる国などどこにもない。

 この戦で、西の国は隷属する運命を。

 そして帝国は、束の間の平和を手に入れた。


 「我々帝国の勝利を祝って!!」


 占拠した西の国の王城内に、帝国軍幹部たちの歓喜の声が響く。

 戦の勝利を祝したパーティー。この時ばかりは歴戦の軍人たちも破顔させ美食に酔いしれている。

 戦を仕掛け、勝つ。勝って奪い、また仕掛ける。

 帝国は至ってシンプルなやり方で、ここまで国を大きくさせてきた。

 だから、戦に勝利すること以上の喜びなどない。それが帝国の人間として当たり前のことだからだ。

 だがそんなパーティー会場の中に、ひとりそぐわぬ表情を浮かべる人物がいた。

 ステラリウスだ。

 この度の勝利をもたらした立役者だというのに、その顔に喜びの顔は見られない。

 王族として上座に座ってはいるものの、誰かと会話をすることなく退屈そうな顔をしている。

 それに気づく者もいたが、誰もが「パーティーなど飽きておられるのだろう」と、気まずそうに苦笑するだけ。

 しかし、ただ一人。

 扉の前に立ち警護に当たっていたフリーシアだけは、その表情の真の意味に気づこうとしている。


 「退屈なされているのですね、ステラリウス様……いや、違う……あの瞳は“退屈”ではない……あれは……“乾き”?」


 フリーシアは、軍の中で今のステラリウスと同じ瞳をした人間を何人か見たことがある。

 彼らに共通しているのは、“戦いの中でしか生き場所を見いだせない”人種。

 ギターを手にするようになってから、ステラリウスは確実に変わってしまった。

 だが、何が変わってしまったのかは分からない。

 何か嫌な胸の高鳴りを感じながら、フリーシアはバルコニーに続く窓から王城の下に広がる城下町を覗き込んだ。

 被害も少なく、パーティーに華やぐ王城とは対照的に、ステラリウスの放った雷に焼かれた城下町は瓦礫の山と化している。

 命を落とした者、怪我をした者、復興を試みている者、諦めている者。

 様々な民の姿が見えるが、一貫して流れる空気は“絶望”であった。

 フリーシアは初めてそれを体験する。

 いかに優秀な候補生であったフリーシアとて、戦は初めてのこと。

 帝国が味わってきた勝利。“それがもたらす側面”を目の当たりにするのも、初めてだったのだ。


 「……何を戸惑っている、フリーシア・ベイヤード。ステラリウス様、そして我が帝国こそが正義……疑う必要などあるものか」


 フリーシアは自分に言い聞かすように、小さくそう呟いていた。

EPISODE5 風見鶏は何を見る「帝国の軍人である私に、迷いの心など赦されない。だが……このまま進むことは本当に正しいのだろうか」

 帝国の猛烈な侵攻。それを諸外国がただ傍観しているはずがない。

 同盟を組んで軍事力を飛躍的に拡大させた国々は、帝国へと立ち向かってくる。

 共通の“敵”を打ち倒すために。

 そんな他国の軍の中に、これまでは見ることのなかった力を持つ者達が現れ始めた。

 形状に差はありこそすれ、その手にはステラリウスと同じギターを携えている。

 神に匹敵するほどの力を秘めた、あの不思議な楽器を。


 「くっ……なんという強大な力……!」

 「フリーシア殿! 我々の音の力だけではとても!」

 「ええい、怯むな! 我ら帝国の歌闘騎士隊が、これしきのことで!」


 吠えるフリーシアであったが、防戦一方となっているのは事実。

 打開策を巡らすものの、妙案は浮かばない。

 そこへ、ふとフリーシアの肩の叩く者が現れた。


 「下がってなさい、アレはこのワタクシが仕留めますわ!」

 「ステラリウス様!?」

 「ワタクシ以外にもギターを使う者がいたなんて……なんて素晴らしいの……!」


 もはやステラリウスには敵国のギター遣いの姿しか見えていない。

 静止するフリーシアを気に留めず前線へ飛び込むと、敵の音にぶつけるように、自らのギターを掻き鳴らす。


 「これが……神の力を持つ者同士の戦いなのか……」


 強大な力と力のぶつかり合いは、災害級の嵐を巻き起こすほどの苛烈なものだった。

 だが、そんな極限状態を維持し続けるのは難しい。

 ひとり、またひとりと。

 敵対者は皆、ステラリウスの前に膝をついていった。

 次々とギター遣いを葬っていくステラリウスは、相手の出自などには関心を示さない。

 興味があるのは、彼らの持つギターだけ。

 ステラリウスは遺品であるギターをかき集めていく。

 まるで、悪魔に魅入られたかのように。


 「……ステラリウス様。この辺りで和平交渉を提案してみてはいかがでしょうか。連合国は必ず案を飲みます。そうすれば事実上帝国の勝利として戦争は終わるでしょう」


 常勝し続ける帝国に対する諸外国からの脅威と警戒は、日に日に大きく膨れ上がっていった。

 帝国を野放しにするわけにいかない彼らは同盟国を増やしていき、それに伴い戦場はますます激化している。

 いくら軍事力で勝る帝国といえど、圧倒的物量を前に疲弊が確実に見えはじめ、遂には国外脱出を図る国民まで現れ始めていた。

 優位を保ったまま停戦するのであれば、このタイミングが限界である。

 だが、そんな事情はどこ吹く風とばかりに、ステラリウスはあっけらかんと答えた。


 「いやですわ、そんなの。大手を振ってギター遣いを狩れないじゃない」

 「しかし、それでは我が帝国の民が……!」

 「いつからワタクシに意見するようになったのかしらフリーシア」

 「そ、それは……」

 「良いことを思いつきましたわ! ただ迎え撃つだけでは面白くないもの! ワタクシを倒したいというのなら、こちらから進軍して差しあげましょう!」


 上機嫌でそう言い放ったステラリウスは、フリーシアを置いてその場を後にする。

 何か言いたげにその背中に手を伸ばしたフリーシアだったが、ついに言葉が出ることはなく、力なく腕を下ろすだけだった。


 「私は、ステラリウス様にお仕えする者……だが、このままでは帝国が……一体どうすればよいのだ……」

EPISODE6 魅入られる姫君「あの炎の巨人……何かよからぬ厄災を運ぶ気がする。それは帝国に……そしてステラリウス様の身にも」

 ステラリウスが主導する帝国軍は、勝利を積み重ねていく。

 だがそれに伴う犠牲や代償も、確実に増え続けていた。

 傷つき倒れていく兵、補給の停滞、長引く激戦に混乱する国内。

 まるで、己の肉が裂けるのも構わず茨の中を突き進むようなステラリウスの指揮に、軍上層部を始めブリルノーヴァ家に仕える貴族からも、反発の声があがりはじめていた。


 そんな王政一体の鉄壁の軍を持っていた帝国に、綻びが見えはじめたある日の戦場。

 フリーシアはその瞳に映す。映してしまう。

 宙を裂き、禍々しい炎を纏って大地へと降臨した“炎の巨人”の姿を。


 「神……いや、悪魔か……?」


 炎の巨人はその力を振るうと、大地が割れ、帝国や連合軍関係なく全てを吹き飛ばしていった。

 残されたのは、ただ静寂のみ。

 先ほどまで兵達の雄叫びや悲鳴で埋め尽くされていた戦場は、まるでこれからオペラが始まるかのように、ただただ静まり返っていた。

 フリーシアは炎の巨人を、悪魔と形容した。その姿を見て感じ取っていたからだ。

 巨人を構成するものが、純然たる怒りそのものだということを。

 フリーシアだけではない。その場にいた者達全て、胸の中をひとつの感情が満たしていく。

 それは“恐怖”。

 絶対的支配者の前では、いかなる抵抗も無意味だと、否が応にも悟ってしまう。

 ただひとりを除いては。


 「無事ですの? ほら、掴まりなさい」

 「ぐっ……ありがとうございます……ご無事でしたかステラリウス様」


 幸いにも怪我なく済んだステラリウスが、瓦礫の下敷きになっていたフリーシアを引っ張り出した。

 主君を守るどころか助けられたことに恥じ入りながらも、無事を知ったフリーシアは胸を撫で下ろす。

 気づけば、炎の巨人の姿は消えている。だが、油断はできない。

 「今すぐ避難を」、そうフリーシアが言おうとした瞬間、目を輝かせたステラリウスが先に口を開いた。


 「見たわよね!? あの素晴らしい巨体を!! あれこそがワタクシが追い求めていたものに違いありませんわ!!」

 「ステラリウス様……?」

 「あの禍々しいほどの怒り……戦に導かれてきたのかしら……なら……もっともっと激しい力をぶつけ合えば……!!」

 「いけません!!」


 たまらずフリーシアは、その先の言葉を断つように声を荒げる。

 それは主君への明確な反抗。

 だがステラリウスは気にも留めず、楽しげに策を巡らせている。

 炎の巨人に再び相まみえる方法を。

 もしも炎の巨人が、憎しみ争い合う人間に罰を与えるため顕現したのだとしたら。

 ならば、これまで以上に激しい命のやりとりをすればいい。

 そう考えたステラリウスは、軍や民衆の思いとは逆行するように、さらなる戦いへと身を投じていく。

 フリーシアが忠誠を誓った姫君の姿は、もうどこにもなかった。

EPISODE7 散る者達は何を思う「戦の果てに、我々は一体何を求めていたのだろうか。ただ本能のまま戦い続ける。それは、獣と変わらない」

 もはや国益のための戦争ではなくなっている。

 全ては炎の巨人を呼び寄せるため。

 血と絶望を撒き餌とするためだけの戦争が、ステラリウスによって続けられている。

 そこには戦術や外交といった駆け引きなど存在しない。

 それでも、純然たる暴力による支配によって帝国は勝った。勝ち続けた。

 文字通り血を流し、その身を削りながら。


 そして、大陸制覇を賭けた最後の戦いが始まった。

 “最後の戦い”を臨むに当たって、人や組織はふたつの状況に分かれることが大半である。

 『そこに辿り着くために消耗しきっているもの』と『最後だからと持て余すことなく余力を使い切ろうとするもの』。

 まさに今、前者は帝国であり、後者は連合軍であるといえる。

 帝国がここまで勝ち進めてこられたのは奇跡といっていいほど兵力は擦り減っており、それも間も無く燃え尽きようとしている。


 「ここまでか……だが、最後までこの足を止めるものか……ここまで多くの帝国兵が死んだ……彼らへの手向けのためにも、私は戦い抜いてみせる……!!」


 息巻くフリーシアだが、彼女が指揮する歌闘騎士達もひとり、またひとりと脱落していく。

 気づけば前線はとうに崩壊し、攻め入ったはずの帝国が押し込まれる形になっている。

 音の力を持たぬフリーシアがその命を散らす時は、そう遠くないところまで迫っていた。


 ――その時だった。

 憎らしいほど晴れ渡っていた空が黒い雲に覆われたかと思うと、まるで空間を切り裂くように雷が戦場へと降り注いだ。

 それは敵兵達の頭上に落ち、命を狩り、大地を燃やしていく。

 雷は――いや、ステラリウスのギターから発する力は、戦場に落ち続ける。

 敵兵に。そして、守るべきはずの帝国軍にも。

 ひとりとして、見境なく。

 フリーシアがその事実に気づいたのは、その身を吹き飛ばされながら気を失う直前のことだった。


 ――幸か不幸か。

 瓦礫に埋もれながらも、フリーシアの命の炎はまだ弱々しく揺れていた。

 だがそれは風前の灯ほどのもの。

 全身に走る激痛、そして逆にまったく痛みを感じない右脚。

 痛みに耐えながらもフリーシアはすぐに悟る。もはや自分は再起不能なのだと。


 「ああ、一体どこにいるの!? あの炎の巨人は!」


 フリーシアの耳に若い女性の声が届く。

 その声は絶望しているようで、悲しんでいるようで、そして歓喜に満ちていた。

 主君の声だとすぐに分かったフリーシアは、歯を食いしばり、瀕死の身体に鞭打ってなんとか身を起こす。

 視界に広がるのは、黒い雲に覆われ淀む空。あちこちであがる戦火。

 ただひとりを除いて、その両の足で大地を踏むものはどこにもいない。


 「ス……テラリウス……様……」


 なんとか声を絞り出したフリーシアは、主君に向かって手を伸ばす。

 ボロ布のように傷つきながらも、まだステラリウスの身を案じるほどの忠誠心。

 狂っているのではない。それだけがフリーシアが生きる意味だからだ。

 だがステラリウスは、声のする方向――フリーシアを一瞥すると、気にも留めず去っていく。

 手を伸ばすことも、声をかけることもなく。

 まるで“そこに何もなかったかのように”。

 誰よりも彼女を崇拝していたフリーシアは、その瞬間理解した。

 ステラリウスの瞳には、最初から自分など映っていなかったことを。

 そして、自分を指揮官に推奨し護衛に置いたことなど野原で見つけた木の実を何気なく捥いだ――その程度だったということに。


 ふと、一面瓦礫の山となった戦場の中に死体が転がっていることに気がついた。

 それが口火となり、同様に夥しい数が瓦礫と共に広がっているのが次々と目に入ってくる。

 帝国軍、同盟軍、もはや関係ない。

 誰もが皆、何かのために戦って果てた者達だった。


 (我々は――私は、何のために戦っていたのだ? 帝国のため、ブリルノーヴァ家のため、ステラリウス様のため……忠誠を誓った正義がもたらしたものが“コレ”か? 命を賭けて戦ったその先に、一体何を残せたというのだ?)


 戦いに支配されていくステラリウスの蛮行に異を唱え、離反していく者も少なからずいた。

 その言い分を理解しながらも、フリーシアは内心で蔑み、ステラリウスと共に歩む道を選んできた。

 それほどまでにステラリウスを崇めていた彼女が、初めて己に疑問を持ってしまう。

 「自分は間違えていたのではないか?」と。

 自分の存在意義であり、原動力である忠誠心に疑いを持ってしまった今。

 “真実”を導き出してしまった今。

 フリーシアの心を形作っていた何かは、バラバラに崩壊していった。

 まるで、自らの手でその身を掻き毟るように。

EPISODE8 フェルマータ「全ては手遅れだった。だが、後悔はない。修羅の道を選んだ罰は、私自身の手で下そう……」

 戦場にひとり残されたフリーシアは、腰に帯刀していたレイピアタクトをゆっくりと抜く。

 もうこのタクトを指標に歌を奏でる者はいない。戦を生き抜いていた者達も、皆ステラリウスの手によって絶命してしまった。


 「数えきれぬほどの命が散った……私が信じた者の手によって。それは、信者である私の手でもある……」


 切先を天に向け掲げていたフリーシアは、柄を逆手に持ち替えると、そのまま自らの心臓を勢いよく貫く。

 彼女は、文字通り自身の手で終止符を打ったのだ。

 その瞳から流れる最初で最後の大粒の涙を見届ける観客もなく、フリーシアはその場にくたりと倒れると、間も無く尽き果てた。


 ――その直後。

 穏やかな風だけが吹いていた戦場の跡地に地鳴りが響いたかと思うと、大地が大きく裂けていく。

 その裂け目は、瓦礫を、火を、岩を、そしてフリーシアの亡骸を飲み込んだ。

 奈落の底には眩いほどの光が今にも溢れそうなほど輝いていた。

 その光は煉獄の炎か、祝祭の希望か。

 見届けた者は、どこにもいない。

 こうして、愚者のオペラは幕を引いた。

 カーテンコールも、拍手の音ひとつさえも、聞こえないまま――。

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脚注
  • *1 RANK15で解放
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コメント (フリーシア・ベイヤード)
  • 総コメント数7
  • 最終投稿日時 2023年03月03日 14:20
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    7
    2022年11月21日 20:28 ID:cezpl43q

    ブーツの食い込みがすごいって言いにきたらみんな指摘してて草

    あのガーターとブーツの絶対領域はエグいて

    • チュウニズムな名無し
    6
    2022年10月22日 10:32 ID:pn82yh6p

    ピアノ特化の曲のキャラとギター特化の曲のキャラで関わりあるの良き

    • チュウニズムな名無し
    5
    2022年10月20日 23:13 ID:f6eymvnt

    推しキャラ(ステラリウス)と絡んでくれてありがとう

    どっちも益々好きになった

    クッ殺キャラなのも良い

    • チュウニズムな名無し
    4
    2022年10月19日 16:40 ID:lg84irz8

    太ももにイラストレーターの尋常ならざる性癖を感じる

    • チュウニズムな名無し
    3
    2022年10月19日 16:23 ID:ftp3l3h1

    えぐい太ももしてる

    • チュウニズムな名無し
    2
    2022年10月16日 17:12 ID:t1zpfvq8

    イラストだけ見たらトランスフォーム前と後が逆に見える

    • チュウニズムな名無し
    1
    2022年10月15日 01:19 ID:dgy90o4l

    太もも

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