幡桐 こよみ
通常 | 南無三宝! |
---|
Illustrator:cura
名前 | 幡桐 こよみ(はたぎり こよみ) |
---|---|
年齢 | 18歳 |
職業 | 高校生 |
- 2022年10月13日追加
- SUN ep.1マップ4(進行度1/SUN時点で○マス/累計○マス)課題曲「推してもダメならひいてみな!」クリアで入手。
- トランスフォーム*1することにより「幡桐 こよみ/南無三宝!」へと名前とグラフィックが変化する。
戦国オタクの女子高生。
スキル
RANK | 獲得スキルシード | 個数 |
---|---|---|
1 | アタックギルティ【SUN】 | ×5 |
5 | ×1 | |
10 | ×5 | |
15 | ×1 |
- アタックギルティ【SUN】 [A-GUILTY]
- ゲージブースト【SUN】より高い上昇率を持つ代わりにデメリットを負うスキル。
- 強制終了以外のデメリットを持つスキル。AJ狙いのギプスとして使うことはあるかもしれない。
- アタックギルティ【NEW】と比較すると、同じGRADEでもこちらの方が上昇率が高い。
- SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
効果 | |||
---|---|---|---|
ゲージ上昇UP (175.00%) ATTACK以下で追加ダメージ -300 | |||
GRADE | 上昇率 | ||
1 | 175.00% | ||
2 | 175.30% | ||
3 | 175.60% | ||
▼ゲージ7本可能(190%) | |||
51 | 190.00% | ||
101 | 204.90% | ||
▲NEW PLUS引継ぎ上限 | |||
推定データ | |||
n (1~100) | 174.70% +(n x 0.30%) | ||
シード+1 | +0.30% | ||
シード+5 | +1.50% | ||
n (100~?) | 184.70% +(n x 0.20%) | ||
シード+1 | +0.20% | ||
シード+5 | +1.00% |
開始時期 | 所有キャラ数 | 最大GRADE | 上昇率 | |
---|---|---|---|---|
SUN | 2 | 25 | 182.20% (6本) | |
~NEW+ | 0 | 125 | 209.70% (7本) | |
2022/10/13時点 |
- 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
- カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | スキル | ||||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
スキル | |||||
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
スキル | |||||
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
とある高校の教室。
幡桐こよみはいつものように授業を受けていたが、突然、響いてきた声に頭を抱えていた。
「な、なんやの……変な声がするぅ……」
「どうした、幡桐? 気分でも悪いのか」
「えっ? い、いえ……なんでもありません……」
「受験が終わったからといって気を抜くなよ。これは幡桐だけに言ってるんじゃないからな」
先生の言葉に生徒が気の抜けた返事をする。
こよみも授業に集中しようとするのだが、再び頭の中から声が響き始めた。
『――が――ほし――』
「きゃあああああ!? な、なんやの!?」
「こら、幡桐! 静かにしないか!」
「ご、ごめんなさいぃ……」
急に声を上げてしまったことでクラス中の視線を集めてしまったこよみは顔を真っ赤にして縮こまる。
「うぅ……なにこれ……妖精さんが……なにか言ってるよぉ……」
こよみには頭の中の妖精さんがなにを言っているのかわからず、雑音のように聞こえていた。
しかし、その中でもときどき、聞き取れるほど鮮明に聞こえるものがある。
『天才陰陽師と言われた、わらわのご先祖……セーメー様の名にかけて!』
「だ、誰のことぉ……そ、そうや、試しに語りかけてみよぉ」
すると、こよみは祈るように手と手を握ると、ぼそぼそつぶやき始める。
「聞こえますかぁ、妖精さん。聞こえたら、返事してください……」
『おお、聞こえとるで』
「うーん、返事してくれてるんかなぁ……」
彼女の問いに答えるさねるだったが、その言葉のほとんどは伝わりはしなかった。
こよみに接続した八雲たちもこの事態には気づいているようで――
『うーむ。どうやら、こちらの会話が全て伝わるわけでは無いようじゃな』
『ホンマにこれで助けられるんか』
こよみに接続した面々にも、若干の不安が残っている。
八雲たちの目的はこの先の未来で起こるであろうこよみの死を回避すること。
『じゃが、このように平和に見える日常で、この者はどのような運命をたどったのじゃろうか……』
「あ、あれ……なんやろう……急に眠気がぁ……」
『おい、こら! 授業中に寝たらあかんやろ!』
「わ、私……どうして……これも、妖精さんの……せい……」
こよみは突然襲ってきた眠気に逆らえず、そのまま机に突っ伏して眠ってしまう。
八雲たちも彼女を起こそうと声を掛けるが、それが届くことはなかった。
――こよみが気づくと、そこは教室とは異なる場所。
「あれ、ここ、どこやろぉ……」
なにかの会場だろうか、箱状の物体が等間隔で段々に並んでいる。まったく覚えのない場所だったが、こよみはその光景に既視感を覚えていた。
「これ……クイズ番組とかで見るやつ?」
そう、それはクイズ番組などで多く見られる回答者席だ。しかし、肝心の回答者もいなければ出題者の姿もどこにも見当たらない。
周囲には誰もおらず、ただ、こよみがひとり佇んでいるだけ。
「なんで私が私を見てるんや? ……ああ、そうかぁ、これ夢かぁ」
自分が自分を見つめているという状況に、こよみはこれを夢だと思い込んで考えるのをやめた。すると、前にいるこよみを囲むように、急に火の手が上がった。
火の勢いは止まることなく、ステージに佇むこよみをじわじわと追い詰めていく。
「あの私、もしかして、死ぬんかなぁ……」
自分の身に起きていることだというのに、こよみはまるで他人事のように様子を眺めている。
当然といえば当然の反応ではあった。
火で焼かれているのは自分であって、自分では無いのだから。
だが、こよみの中の不思議な感覚は残ったまま。
それはまるで――過去の自分が体験したかのような違和感だった。
――翌日。
八雲たちがこよみに接続して一日が経過した。
彼女が学校を終えてからも、八雲たちの会話は続き、こよみはその声に頭を抱えている。
朝、目が覚めた瞬間から――
「おはようぉ……」
『おはようちゃうわ、時計見てみい。思いっきり遅刻やんけ!』
「うぅ、また聞こえる……」
こよみが言うところの妖精さんの声は、当たり前のように聞こえてきていた。
ベッドから起き上がったこよみは近くに置いてある時計をぼんやりと眺める。
「ほんまやぁ……今から行けば、一限には間に合いそうやなぁ」
『おお、ちゃんと登校するなんてえらいのだ!』
『なにがえらいんや? 普通やろ』
『高校生は受験が終わったら、自由登校になって来る人も少なくなるって聞いたことあるのだ』
『へえ、そうなんやな』
「うぅ、ま、またなにか話してるぅ……」
出かける準備をしている間もこよみの頭の中では八雲たちの話し声が響いている。
下着がどうの、朝食がどうの、と賑やかなのだが、詳細まではこよみには届いていない。
結局、頭の中の会話に気を取られてしまい、こよみはすっかり家を出るのが遅れてしまうのだった。
「せめて、二限には間に合いたいなぁ……」
通学のために電車に乗ったこよみは、座席に座るとカバンから一冊の小説を取り出す。
彼女にとって通学中の楽しみのひとつ。
それは歴史系の小説を読むことだった。
静かにページをめくっているこよみだったが、頭の中はそうはいかない。
『これって日本の武将のお話アル?』
『そうじゃな。有名な武将じゃが、読み物のために多少、誇張されておるようじゃ』
『なんや、詳しいんやな』
『部屋にも戦国時代に関係あるもの置いてあるし、実は戦国オタクってやつアル?』
『おそらく、その類じゃろうな』
「もぉ……し、静かにしてぇ……」
本に集中したいこよみだったが、八雲たちのにぎやかな会話せいで気が散り、ほとんどページが進まないまま、学校の最寄り駅へと着いてしまった。
改札を通り過ぎようとするこよみだが、ふと視界に入った広告の前で足を止める。
『なんや、急に止まったで』
『この広告を見てるみたいアル。戦国クイズラリー開催? ……なにアルか、これ』
「へえ……面白そぉ……」
広告の詳細をしきりに確認したあと、こよみが駅から出ると、急にらいむがすっとんきょうな声をあげた。
『思い出したのだぁぁ!』
『なんじゃ、急に大きい声などあげて!』
『ここ、有名な進学校なのだ。どこかで聞いたような気がしてたけど、やっと思い出せたのだ』
『では、こやつも頭が良いということか』
『でも……あんまり友達いなさそうなのだ』
『なんでそう思うアル?』
『見てればわかるのだ。わたしも……似てるところがあると思うから』
その後、登校している生徒が少ない中、こよみは授業を受け、あっという間に放課後となった。
今は掃除の時間で、こよみが担当する週だ。
「おったおった! ほらな、うちが言った通り登校してたでしょ!」
「ホント、こよみは真面目なんだから」
「えっ……やすこちゃん? みんなも……登校してたの?」
こよみが声のした方を見ると、3人の女子生徒が手を振りながら近づいてきていた。
『誰やねん!』
「えっ? ええっと、クラスメイトの三好さんたちで、やすこちゃんと、ういちゃんと、ともみちゃん……」
『あれ、聞こえとる?』
「……あれ? どうして、妖精さんの声が……こんなにはっきりと……」
「ひとりでなにぶつくさ言ってるのよ?」
「う、ううん、なんでもないよ。それで、どうしたの? 今日、登校してなかったよね……」
「こういう計画は会って決めたほうが早い思って。まずはこれ見て!」
そう言いながら、ういが出してきたのはあのスタンプラリーの広告だった。
「こ、これって……」
「さすがにこよみも知ってるよね。うちら、これに参加しようと思っとるんよ」
「えっ、そうなの?」
「ほら、うちらってこういう戦国もの好きやん。絶対にええところまで行けると思うんよ」
「それでな、こよみもおったら鬼に金棒や思って、エントリーしてきたんよね!」
「そうなんだ……えっ!?」
「ということだから、今から行くよ!」
「い、今から!?」
「ほら、掃除なんて来てる人少ないんやからやらなくても平気やって」
すると、やすこがこよみの手を取り、そのまま教室の外へと連れ出そうとする。
他の2人も息を合わせるようにこよみのカバンやらなんやらを手に取っていた。
「え、ええっ!?」
「なんや、興味ないの?」
「そ、それは……興味あるけどぉ……」
「なら、問題ないね!」
こんな形で参加するとは思っていなかったこよみ。
だが、参加しようと思っていた手前、断りきれずにそのまま会場まで連れて行かれてしまうのだった。
――これが、自身の未来に関わる分岐点だとも知らずに。
――夕方の大和西大寺駅。
この駅前に戦国クイズラリーの特設会場があるらしく、こよみは三好三姉妹と共にそこへ来ていた。
「おー、やってるやってる!」
会場は賑わっており、戦国武将の衣装に身を包んだアナウンサーまでいる。
その周りにはカメラや、スタッフが控えていた。
「あ、あれって、テレビ……」
「参加したら、わたしたちも映るかも!」
「みんなー、話聞いてきたよ。専用の手形でエントリーするから、参加希望者はそれを貰わないといけないんだって!」
「なら、早よう行かんと――わっ、結構並んでるね。早く行かないと、出遅れちゃうよ!」
「あっ、待って!」
こよみは三姉妹のあとを追って列に並ぶ。
その中でこよみと三姉妹はこのクイズラリーでは正解に応じた特典スタンプが貰えると知る。
「どんな景品かと思ったけど、スタンプが押された手形しか残らないのか~」
「でも、ええやん。卒業前の記念品になるやろ。お揃いやしね!」
「そうそう。それにこっちにはこよみがいるんだよ、ささっと勝っちゃおう」
「わ、わたしなんかで、いけるのかな……」
「もうちょっと自信持ちなよ。歴女の幡桐こよみなんだから、絶対にいけるって!」
自信無さそうなこよみの声に三姉妹は思い思いの言葉で励ますが、彼女はまだ不安そうに唇をくの字にさせていた。
「全然答えられなかったらどうし――」
「ねえ!」
溜息を吐こうとしたその時、こよみは不意に誰かに肩を掴まれてしまい、悲鳴に近い声を上げてしまった。
「きゃあっ!?」
「ごめんごめん、そんなに驚くと思ってなくって。にしても、久しぶりー!」
「えっ……えっ……?」
振り返ると、そこにはこよみたちと同年代と思われる女の子が。
やたらと高いテンションとやけに露出度の高い服装。
そして、それを裏付けるような距離のつめ方。
そんな彼女を一目見て、こよみは彼女がいわゆる“陽キャ”と呼ばれる人類だと悟った。
「どないしたん。こよみの知り合い?」
こよみはその女の子の顔をまじまじと見ようとするが、全身から感じる陽キャオーラを浴びて、ただおどおどとするばかり。
その反応を見ていたギャルな女の子は笑いながら、小さく頭を下げた。
「人違いだったみたい。急に話しかけちゃってゴメンね!」
「い、いえ……」
「……その手形、クイズに参加するんでしょ」
「あ、あっ……はい……」
「絶対に負けへんで」
「えっ……?」
突然の宣戦布告になんて答えればいいのかもわからず、戸惑っているうちにその女の子は列へと並び直してしまう。
「なんやったんやろ、あの子」
「見かけない顔だったけど、うちの学校じゃないよね、たぶん」
「そんなことより、このままクイズに参加していくなら、次行く場所で遊べるところ探そうよ!」
すぐに女の子への興味を失ったのか、三姉妹は別の話題で盛り上がり始める。
『なんや、変な子やったな』
『うむ、人違いのようじゃったが、果たして本当にそうじゃろうか』
『なにか気になるアル?』
『……いや、なんとなくじゃよ』
頭の中の八雲たちは、先ほどの女の子のことが気になってはいるが、今のところそれ以上の情報もない。
そうしているうちに、クイズ大会が始まるのだった。
「こ、ここでやるんやぁ……」
こよみが立ったのはゲームセンターで見かけたことがあるようなクイズ筐体の前。
クイズラリーではこの筐体を使って、マッチングした会場の誰かと戦うことになる。
「よかった……顔を合わせてやったら、きっと緊張してボタン押せへんかったかもぉ……」
ほっと安心するこよみ。
アナウンサーの開始の合図がされ、マッチング相手の写真と名前が映し出される。
そこに映っていたのは――
「さ、さっきの女の子……」
対戦相手はこよみに話しかけてきたあのギャルの女の子だった。
名前欄には『PN.松永久秀』と表示されている。
「こ、この子も武将が好きなのかな。ペンネームでこの名前使うなんて」
仲間に出会えたような嬉しさがありながらも、クイズが始まると気合を入れ直すこよみ。
そして、最初の問題が映し出される。
対戦方式は早押しだ。
こよみはすぐに解答ボタンに手をかけるが、対戦相手に先に押されてしまう。
「そ、そんな……正解してるぅ……」
答えはわかっていたのに、目の前でポイントを持っていかれ早くも心が折れそうなこよみ。
そんな彼女の状態はお構いなしに、次々と問題が映し出されていく。
「こ、このぉ……!」
こよみも食らいついていくが、正解がわからないクイズはもちろん、わかるクイズが出てもそれが正しいかどうかを頭の中で判断しているうちに次々と答えられてしまう。
そう、早押しクイズとは単純に知識があるだけでは勝つことは愚か、押すことさえ難しいのだ。
そして――対戦はこよみの大敗で決着した。
「こんなにあっさり負けちゃうんや……」
クイズが終わり、三姉妹と合流しようとするこよみ。
だが、そこへ松永久秀の名前を使う女の子が現れた。
「あっ……え、ええっと……た、対戦、ありがとうござ――」
「あんた、めちゃくちゃ雑魚やん」
「えっ……」
「大したことないやん、なにが歴女や。あれか、昔は強かったってやつやな。雑魚やな、ざぁこ」
彼女からの辛辣な言葉に、こよみは呆気に取られてしまう。
返す言葉も見つからず、ただうつむくことしかできなかった。
『こよみちゃん……』
『なんやねん、この女! うちがそこにおったら、どついたるのに!』
『じゃが、わらわたちにはどうすることもできん。それに、あの女……』
『なにか気になるのだ……』
『うむ、どうにも違和感があってな。どこかで見たような……気のせいじゃろうか……』
こよみほどではなかったが、なにも手助けをできない八雲たちは悔しい思いが募るばかり。
かくして始まったクイズラリー初戦。
第六次筒井城の戦いをなぞるかのように、松永久秀に破れる形で幕を閉じるのだった。
クイズラリー初戦から帰宅したこよみ。
未だにあの敗北から立ち直れず、部屋に戻ってからもベッドの上で塞ぎ込んでいた。
「私は雑魚なんだぁ……生きててもしょうがない、クソ雑魚やぁ……」
『いつまでしょげとんねん、こいつ』
「ああ、妖精さんもきっと、ざぁこざぁこ言うて私のことを笑ってるんやなぁ……」
『ちゃうわ!』
『こうなったら何を言っても聞かないって、わたしは知ってるのだ』
『……まさか、これがこやつの死の原因ではないじゃろうな』
『それはあるかもしれないアル! 負けてしまったショックで……』
『なら、なんとかせなあかんやん!』
「はは……妖精さんが、私の悪口をたくさん言ってるぅ……」
『……負担があると思い、使わぬほうがいいと考えておったが仕方があるまい』
八雲がなにかの呪文を唱え始まる。
すると、次第にこよみに睡魔が襲いかかってきた。
「な、なんや……眠気が……今日、少し……頑張り、すぎ……」
そのままウトウトとし始めると、次第に意識は遠のき始め、こよみはすぅっと眠ってしまう。
……こよみが眠ってからまもなく。
再び彼女はどこか不可思議な場所で目を覚ます。
辺りを見回してみると、そこは何もない真っ暗な空間がどこまでも広がっていた。
「え、なんやのここ……」
「こうして会うのは初めてじゃの、こよみよ」
「えっ!? だ、誰ぇ……」
こよみの前に現れたのは八雲だった。
突然現れた小さな女の子と、自分がいる場所を改めて見てこよみが出した結論は――
「なんや、また夢かぁ……」
「似たようなものじゃな。秘術、夢枕に立つじゃ」
「ひじゅつ……?」
「まあ、細かいことはよいのじゃ。それよりも……」
八雲がぐいっとこよみに近づく。こよみは咄嗟に逃げようとするが、肩を掴まれてしまう。
「お、襲われるぅ……!」
「誰が襲うものか。いいから、わらわの話を聞け」
「話……?」
「すぅ……このたわけ者が! 確かにあの女はおぬしなんかよりきらびやかでイケてる女じゃった!」
「う、うん……えっ?」
「それに比べておぬしはどうじゃ。派手さもコミュ力もない陰キャじゃ!」
「う、うぅ……き、聞きたくない!」
八雲の大声に、思わずこよみは手で耳を塞ぐ。
だが、その手を八雲が剥がして、叱りつけるように言葉を続ける。
「ええい、逃げるな! よぉく聞くのじゃ! おぬしにわらわたちの言葉を伝える!」
「は、はい!?」
「たかが一回負けたくらいでなにを落ち込んでおるか、この馬鹿者!」
「で、でも……」
「このまま泣き寝入りしたら、あの女が言うように、ホンマに雑魚のまま終わるで、それでええんか!」
「あれ、急に口調が……」
「負けて学べる戦いもあるネ! まだ戦いは始まったばかりアル!」
「あ、アル……?」
「わたしもこよみんの気持ちがわかるのだ。だから、ここで何もしなかったら、それこそ試合終了なのだ!」
「あっ……」
八雲がそれぞれ3人からの言葉を次々と伝えていく。
最初は戸惑っていたこよみも、次第にその言葉に耳を貸すようになっていった。
「わ、わたし、どうしたら……」
「戦うしかないのじゃ。でなければ、おぬしは全てを失うことになるぞ。文字通りな」
「……はい!」
「歴史オタクなら、オタクらしくその知識を披露して、ふんぞり返ってこい。雑魚はそちらじゃ、とな!」
「そ、そこまではさすがにぃ……」
「くよくよするでない! それくらいの気概を見せろという意味じゃ! ……ええい、もう時間か。おぬしは直に目が醒める、気合いを入れて、次は勝ってこい!」
「う、うん、頑張ってみる……」
八雲の言う通り、また次第に意識が遠のいていくこよみ。
夢から醒めるのだと思ったこよみは、最後に八雲へ質問を投げかけた。
「あ、あの、あなたは何者なの?」
「ふん、名乗るほどの者でもない。通りすがりの妖精さんじゃ」
「妖精……あっ……!」
こよみがばっとベッドから飛び起きる。
辺りを見回すと、八雲の姿はなく、こよみは自分のベッドの上に身体を預けていた。
「妖精さん……ありがとう……」
ベッドから身を起こすと、すぐに本棚へと向かい、片っ端から歴史書を漁り始める。
「今からでも、やれることがあるはず。次は絶対に勝つんや……!」
『頑張りや……』
――そして、やってきた次のクイズラリー開催地。
そこは意外にも、こよみの家から近い場所に位置する筒井城址だった。
「まさか、次の場所がここやなんて。ホンマに負けられへんな、今回の戦いは」
「せやから、いつもと違って服に気合が入っとるんやな」
「そのワンピース、すごく似合ってるよ!」
三姉妹が言う通り、今日のこよみはいつもの学生服に羽織ではなく、白のワンピースで会場に来ていた。
「こ、これは白装束の代わりなんよ。負けたら、私はここで切腹する……」
「ちょっと、大げさやって!」
「ち、違うんや……! それくらい気合を入れてるってことで、ほ、ホンマにはせえへんよぉ……」
「まあ、負けへんよ。なんたって今回はうちらが近くにおるからな!」
「うん……」
今回のクイズは複数人での出場が許可されており、こよみは三好三姉妹と共に出場することになっていた。
他の参加者たちも友人や家族を誘って、同じようにチームで出場している。
「でも、このペンネームなんなん?」
「こ、これは……決意の表れで……」
「というか、なんで筒井順慶なの。もっと他の有名な人でも良かったんじゃない」
「えっ! なに言ってるの!?」
いつもは大人しいこよみが声をあげて、ともみに詰め寄っていく。
「筒井順慶様はめっちゃすごい人なんやで! 茶湯や謡曲、歌道とか文化面にすごく通じてた人で、織田信長に臣従してたのも有名で、あとあと――」
こよみのマシンガントークは止まらない。
軽い気持ちで投げたボールが何十倍にもなって返ってきてしまい、三姉妹はちらりと舌を出して苦笑いする。
そんな様子に、周りからの注目を集めてしまう一行だったが、お構いなしにこよみの話は続く。
「それでね、特に有名なのが洞ケ峠の話で――」
『ええい、それくらいにせぬか!』
「きゃ!? な、なに……?」
頭に響いた八雲の声で我に返ったこよみが、自分の置かれた状況をやっと理解する。
ただでさえ注目されることが苦手なこよみ。不用意に注目を浴びてしまい、辺りで笑っている人たちの姿に、顔が急激に熱くなるのを感じていた。
「あっ……あっ……」
恥ずかしさに顔を真っ赤にしたこよみは、三姉妹の背中に驚きの早さで隠れる。
「あはは、本当に止まらないね」
「ご、ごめん……」
「あれれ~、もう終わりなん? もっと聞きたかったのにな、オタクちゃんの話」
「あっ……」
そう言いながらこよみたちの前に現れたのは、あの松永久秀と名乗る女の子だった。
彼女もまたこよみと同じワンピースなのだが、大きく違うのはまたしても露出が多い点。
「お仲間引き連れて来ても、オタクちゃんが雑魚なことに変わりはないんやで?」
「わ、私は雑魚なんかじゃ……」
「なんやったら、うちが分からせてあげよか。あんたよりうちのほうが強いんやし♪」
「うぅ……」
「まあ、せいぜい無様に負けんように頑張りや」
そういうと松永はこよみたちから離れていく。
「あんなやつに負けたくない。絶対に勝つよ、こよみ!」
「う、うん!」
三姉妹の激励を受けながら、こよみたちは戦いのステージへと向かう。
今回は早押しではなく、並び替え問題。
相手よりも早く、回答した者にポイントが入るような形となっているが、早押し問題と違うのはバラバラになった文字列が最初からすべて表示されているところ。
つまり、パっと見で答えを導ける直感が大事なのだ。
そして、当然のようにこよみたちの相手は、あの松永だった。
「運が悪かったな。またうちと当たってまうなんて」
「こ、今回は負けない。みんなが、ついてる……」
「アハハ、足手まといにならないといいね」
「っ……」
戦いが始まった。
両者の戦いは熾烈を極め、互いに一歩も譲らず、ほぼ互角の戦いを繰り広げる。
結果、わずか2ポイント差でこの戦いを制したのはこよみたちだった。
「や、やった……勝てた……!」
「さすが、こよみ! 本気出せばあの子になんか負けないよ!」
「う、ううん、みんなが助けてくれなかったらきっと負けてた……」
「謙遜せんでええて。ほとんどこよみが答えたようなもんやん」
「え、えへへ……」
こよみは緊張が解けたのかやっと笑顔を見せる。
すると、その光景を見ていた松永が、大股でこよみの前に駆け寄って来た。
「卑怯や! 四人なんて恥ずかしないんか!」
よほど悔しかったのか、その目には薄っすらと涙を浮かべている。
そんなことは気にもとめず、三姉妹は松永に強気な態度で言い返していく。
「ルールで許可されてるんだから、別に卑怯じゃないじゃん!」
「そもそも、文句言うんだったらあなたも友達を連れて戦えばよかったじゃない」
「くっ……」
「あ、あれやろ。じつは友達おれへんのやろ。ボッチはきっついなぁ!」
「さ、3人とも、そこまで言わなくても……」
「う、うるさいうるさいうるさい! 次は絶対に負けへんからな、覚えとき!」
捨て台詞を吐いて、松永は早々にその場から走り去ってしまう。
「行っちゃった……勝ったのは嬉しいけど、悪いことしちゃったかなぁ……」
松永を泣かせてしまったという罪悪感にこよみは苛まれる。
勝利を勝利として素直に喜べない自分がいることに気づくのだった。
戦国クイズラリー第2戦。
これを制したのは三好三姉妹率いるこよみたち。
その激しい戦いは、まるで第七次筒井城の戦いで松永久秀を破った筒井順慶の如き奮起だったとかいないとか。
果たして、次なる戦いはいかに。
※続きはこちらへ
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52022年10月17日 11:21 ID:j9s74uniそうか!頭の中に妖精が!
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42022年10月16日 18:29 ID:ojl10r5m頼む!!!システムボイス実装してくれ!!!!!
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チュウニズムな名無し
32022年10月16日 02:38 ID:lc706azz世界一可愛い女の子です。
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チュウニズムな名無し
22022年10月16日 00:58 ID:g8j3qfajトランスフォーム後はちゃんとGUMINで安心した
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チュウニズムな名無し
12022年10月16日 00:46 ID:n3rdqrm0通常絵が低血圧っぽくて可愛い
あったかくして寝てね😊