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淀川 沙音瑠

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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常The FUN!!!

Illustrator:へんりいだ


名前淀川沙音瑠(よどがわ さねる)
年齢9歳
職業ジュニアアイドル
  • 2022年4月14日追加
  • NEW ep.Ⅳマップ2(進行度1/NEW時点で165マス/累計290マス)課題曲「Give me Love♡」クリアで入手。
  • トランスフォームで「淀川 沙音瑠/The FUN!!!」へと名前とグラフィックが変化する。

大阪で活躍するジュニアアイドル。

病気の母親の為にジュニアアイドルとして奮闘する彼女は、魔大陸アキハバラで名声を得るべく琵琶湖へと向かうのだが……?

近年のGUMINレーベルの例に漏れずネタが豊富。今回は全体的に大人しい(当社比)
  • ストーリーの全体

関西圏(主に大阪)のローカルネタが多く散りばめられている。


  • 各EPISODEのタイトル

全て大阪出身だったり関西圏を中心に活動していたアーティストの曲の捩りとなっている。


  • 名字及び彼女が御用達しているブランド(とそれらしきロゴ)

世界的に有名なファッションブランド『ココ・シャネル』が元か。

ちなみに大阪だと日本では2号店にあたる大阪市・心斎橋店(大丸心斎橋店南館)が有名。


  • 「おおきに~! 邪魔させてもらうで~!」「邪魔すんねやったら帰って~」「ほなな~……って帰らんわ! うちゲストや!」

吉本新喜劇の定番ネタの一つ。

借金取りが登場して早々帰るよう促されかけるのがお約束となっている。


  • ミックスジュース

近年コンビニでたまに見かける「みっくちゅじゅーちゅ」という飲み物は大阪の喫茶店の看板メニューをサンガリアに持ち込んだことから商品化されたと言われている。


  • 「でも、“逆に”ってCMでも言ってたし」

ヒラカタランドの元ネタであると思われる大阪のテーマパーク「ひらかたパーク」のCMのセリフ「逆に楽しい」から。


  • せやかて工藤

漫画『名探偵コナン』の服部平次を象徴する言葉。

…というわけではなく、「服部平次が言いそうなセリフ」としてネットミームとして定着し、いつしか服部が言ったと勘違いされたセリフなのだが服部は実際にこのセリフを発していない。つまりはシャミ子が悪いんだよの同類。

…なのだが、服部役の声優・堀川りょう氏がアニメ『銀魂』に出演した際に「せやかて工藤」と言いかけるという声優ネタを発した。


  • オタクくん見とる~? 空に飛んどる、あれ。きみらがだ~いすきなアキハバラらしいで~。

NTR系の導入とかでビデオテープが登場する場合の第一声は大体こんな感じ。


  • あんなん落ちたら水とめとる場合ちゃうで!

京都府民や大阪府民とのマウントの取り合い合戦で負けた滋賀県民側の捨て台詞と言うネタ「琵琶湖の水止めたろか」

ちなみに現実的に琵琶湖の水をせき止めて大阪・京都側に多大な被害を出すことは可能だがそれと引き換えに滋賀県が琵琶湖に沈んでしまうと言われている。


  • BBC

世界的に有名な方はイギリスの「British Broadcasting Corporation」、つまり「英国放送協会」

さねるが言っているBBCというのは「Biwako Broadcasting Co.」の方。

こっちは滋賀県のローカル局


  • 「くよくよするな!」「ドーマンセーマン」「レッツゴーッッッ!!!!!」」

レッツゴー!陰陽師の歌詞。


  • もぉ、どうにでもなぁ~れ

   '``・ 。

             `。

       ,。∩          もうどうにでもな~れ

      + (´・ω・`) 。+゚

      `。 ヽ、  つ ゚

       `・+。・' ゚⊃ +゚

       ☆   ∪~ 。゚

        `・+。・ ゚


スキル

RANK獲得スキルシード個数
1天使の息吹×5
5×1
10×5
15×1

include:共通スキル(NEW)


スキルinclude:天使の息吹(NEW)

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STORY

EPISODE1 太陽のナニワエンジェル「オタクくんたち、そのほっそい目ちゃんと開けてうちのことよう見ときや!」

 「あなたの気になるお店を突撃取材! ヒルナンヤデ、ヒラカタ探訪~!」


 収録開始を告げるリポーターの小気味よい声が響く。

 地方ローカルの小さなテレビ番組、その中でも割と人気のあるワンコーナーだ。


 「今日のゲストは~……なななんと! 今、幅広いヒラカタ女子に大人気の、“あの”ジュニアアイドルが登場!」


 いよいよ出番がやってくる。地方ローカルと侮るなかれ、ここから全国へと羽ばたいていった有名人も少なくないと聞く。ここで爪痕を残せば、必ずや次へつながるに違いない。


 「ご登場いただきましょう! ヒラカタが生んだカリスマ、淀川さねるちゃんでーす!」

 「おおきに~! 邪魔させてもらうで~!」

 「邪魔すんねやったら帰って~」

 「ほなな~……って帰らんわ! うちゲストや!」


 スタッフや見物している人たちから笑顔が溢れる。

 現場の雰囲気も良く、いい収録になる予感がした。


 「では、改めて自己紹介お願いします」

 「淀川さねる、9歳や! アイドルやってます。よろしゅうたのむで~!」

 「さねるちゃんの出演を聞きつけて、ファンの人たちも集まってくれたみたいだよ!」


 レポーターに促され、カメラがくるりと反転。ロケ現場に集まったファンを端からなぞるように映していく。

 小学生から高校生ぐらいまでのギャル風ファッションに身を包んだ女子たちから身振り手振りを交えた黄色い声援が飛ぶ。


 「おおきに~! 応援ありがとな~!」


 カメラの動きと合わせるように、大きく手を振りながら笑顔で声援に応えていく。

 しかし、その中に覚えた一粒の違和感。まるでタコの入っていないたこ焼きのようなそれを、さねるは見逃さなかった。


 黄色い声援を送る女子たちの最後方。

 ひとつの声も上げず、ただ腕を組み、満足そうにうなずきながらロケの様子を見守る、全身にさねるのグッズをまとった男たちの姿があった。

 そう、彼らこそ自称・さねる親衛隊である。


 (うわぁ、今日もきとる。よっぽど暇なんやなぁ)


 しかし、彼らもまた大切なお客様だ。

 全身を舐めるような視線も全てお金になると思えばなんてことはないし、他のファンや仕事に害を与えない限りは邪険にする必要もない。


 「ではさねるちゃん、今日の意気込みをどうぞ!」


 そうしてカメラが自分を抜く。

 気合いは十分。けど、決してやりすぎないよう、いつもの自分を心がけて口を開く。


 「うちを応援してくれてるファンのみんな、今日はうちの活躍を楽しみにしとってな~! ついでに~」


 口角を上げ、いたずらな笑みを満面に浮かべる。


 「き~っしょいオタクくんたちも骨抜きにしたるで(ハート)」

EPISODE2 ガッツやで「うちは諦めへん。どんなことがあっても、必ずや」

 「お疲れ様でした~」


 初めてのヒルナンヤデのロケは滞りなく終了。

 レポーターとの掛け合いはテンポ良く、時折笑いも起きるなど、終始順調であった。

 番組プロデューサーからも高評価だったようで、確かな手応えを実感する。

 しかし、気合いを入れて臨んだがゆえか、充実感とは裏腹にだいぶ疲労しているようで、無意識に身体が“あれ”を求めていた。


 「お疲れ様、さねるちゃん」

 「お疲れ様~。そんなことよりあれを……早くあれを、うちに……」

 「そんな大袈裟に言わなくてもちゃんと用意してあるよ。はい、大好きなミックスジュース」

 「そう、これやこれこれ! 流石はうちのマネージャーやな!」


 冷たく甘いミックスジュースを一気に流し込む。

 疲れた身体の隅々まで、じんわりと染み込んでいくような感覚がたまらない。


 「はぁ~、生き返るわ~。仕事の後の一杯は最高やな!」

 「おっさんか」


 軽口を交えつつ、今日の振り返りと反省会。いつしかそれが2人の日課になっていた。


 「さて、次の仕事は……スタジオでファッション誌のモデルかな」

 「撮影か~。どんな服着るん?」

 「なんと、さねるちゃん御用達のブランドから直々のオファーだよ!」

 「ほんま!? そういうことははよ言ってや!」


 好きなブランドの仕事。それも直々のご指名となれば、否が応にもテンションは上がる。

 急かすようにマネージャーの手を取り、移動用の車に向かって駆け出す。


 「そんなに焦らなくてもお仕事は逃げないよ。転んで怪我でもしたら大変だから落ち着いて」

 「転んだりなんかせーへんて。もし怪我したって、つばつけとったらすぐ治るし」

 「でも、お仕事には影響するよ? それに、怪我だって甘く見てると大変な病気になることだってあるんだから」


 病気。

 マネージャーの発した何気ない一言が、不意にさねるの心に突き刺さる。


 「……そんなもん、なる時はどうしたってなる」

 「あ……ごめん、そんなつもりはなかったんだ」


 この人はいつだって自分を気遣ってくれる。今の言葉だって、純粋に心配してくれてのことだと頭では理解しているのに。


 「今度、一緒にお見舞い行こうね」


 ずっと元気だった母が、急に倒れてしまった。

 すぐに治る病気ではないらしく、長い入院をしなければならず、その分たくさんのお金も必要になる。

 そのため、父は今まで就いていた仕事をやめ、一獲千金を目指してマグロ漁船へと乗り込んだ。

 家族三人で過ごす団らんの時間は、もうない。


 ……いや。ないなら取り戻せばいい。

 ふと目にしたテレビの中で活躍するジュニアアイドルたちの姿を見て、これしかないと思った。


 「うちが絶対に治したる。お金をいっぱい稼いで、また家族三人で暮らすんや」

 「僕もできる限り協力するよ。その為にも、まずはさねるちゃん自身が元気でいないとね」


 そうだ。自分ならやれる。

 どんな仕事もこなしてみせる。

 疲れててもファンの声援には笑顔で応える。

 オタクくんの視線にも耐えてみせる。……本当はちょっと嫌だけど。かなり気持ち悪いけど。


 「あ、お仕事と言えばもう1つオファーが来てるよ」

 「へ~、なんやろなぁ?」

EPISODE3 がむしゃらダイナマイト「ようやくうちにもツキが回ってきたな! このチャンス、絶対ものにしたるでーっ!」

 「ふっ、ふふ……ふふふふふふ……」

 「ど、どうしたの? 薄気味悪い笑い方して」

 「これが笑わずにいられるかいな! こんな大仕事がうちに舞い込んできたんやで!」


 そう。まさに千載一遇とも言える大仕事。

 ここはヒラカタに住む人々憧れの場所にして、癒やしと娯楽の桃源郷。

 その名を、ヒラカタランド。


 「ヒラカタランドはオオサカが世界に誇るテーマパークや。東にある有名なあのランドとタメ張れるのはここだけやな」

 「えっ、流石に魔法の国と肩を並べるのは……」

 「魔法? ようわからんけど、ランド言うたらヨミフリランドやろ。他に何があんねん」

 「あ、ああ、そういう。それはそれで危険だけど」


 ヒラカタランドと言えば、CMに誰もが知るあの超有名イケメンアイドルを起用したことでも話題になった。

 となれば、自分にも同じだけの期待が寄せられていると考えてもおかしくはない。

 いつも以上に気合いが入るのも致し方ないのだ。


 「しっかし、担当の人遅いなぁ」


 控室に通されてはや30分。

 退屈に耐えかねて、ふと窓から外を眺めてみると。


 「は? え? なんかブッ飛んどるーっ!?!?」


 遠くの空に、妙なものが浮かんでいた。

 ランドの人たちも気づいているのか、皆同じ方角を見上げており、写真を取っている人の姿も。


 「なんやねんあれ! かなりの大きさやで!?」

 「さねるちゃん、これ見て!」


 マネージャーが差し出した画面をのぞき込む。

 そこには望遠で撮影したと思われる写真と共に、空飛ぶ物体の正体が記されていた。


 「……アキハバラ? オタクくんたちが聖地~とかなんや言うとる、あの?」

 「そう、そのアキハバラなんだって! ほら、こっちには街が消えた後の写真も!」


 アキハバラの浮遊は大きな話題となっているらしく、SNSでは怒涛の勢いでコメントや画像がアップされ、テレビのニュース番組でも取り上げられている程。

 その時、さねるの脳裏に電撃が走る。


 「マネージャー! すぐに配信の準備や!」

 「え? でも今はお仕事が……」

 「よう見てみい! ランド中大騒ぎで仕事どころやない! うちに構わず遊べー、言うても、ホントに見向きもされへんのは、きっついやろ」

 「でも、“逆に”ってCMでも言ってたし」

 「せやかて工藤! これはうちをスターダムに押し上げるチャンスなんやで!」

 「うう、おいしいと思うんだけどな……わかったよ」


 マネージャーの工藤は、しぶしぶといった感じで生配信の準備を進めていく。

 フォロワー数の大したことない人でもあれだけバズるなら、ある程度人気のある自分が生配信すれば、もっと話題になるに違いない。


 「それじゃあ行くよ。3……2……1……」

 「みんなのアイドル、さねるやでー! 告知もなしにごめんなぁ。今、空がすごいことになっとるんよ!」


 煽りに合わせてマネージャーがカメラを空へ向ける。

 大事なアイドルが見きれないように、しっかりと画角を調整することも忘れない。


 「オタクくん見とる~? 空に飛んどる、あれ。きみらがだ~いすきなアキハバラらしいで~。近くなってよかったな~(ハート)」


 その刹那。辺りを白く染め上げる程の強烈な光が、空を漂う都市に直撃。

 アキハバラは力を失い、急激に高度を下げていった。


 「って落ちとるーーーーッッッ!?!?!?」


 前代未聞の出来事に、コメント欄もドラムロールの如く高速で流れていく。

 アキハバラを襲った謎の光、それを映していたさねるの配信は今やトレンドトップに躍り出たのだ。


 「え、ちょ! アキハバラ落ちてもうてるやん! あっち琵琶湖の方やろ!? あんなん落ちたら水とめとる場合ちゃうで!」


 しかし、これは更にバズるチャンスだ。

 アキハバラと言えばオタクくんの聖地のみならず、トップクラスのアイドルたちが集う地でもあったはず。

 自分とて一人前のジュニアアイドル。アキハバラで名を上げられれば、一山当てることも夢ではない。

 そうと決まれば行動あるのみ。


 「マネージャー。すまんけど、うち今からちょっと琵琶湖いってくるわ」

 「な、何言ってるの!? さねるちゃんも見てたでしょ! どう考えたって危険だよ!」

 「何びびっとんねん。むしろ有名になれるチャンスやろ。おかんにはBBCで仕事が入ったって言っとくから、口裏あわせてな。ほななー!」


 言うが早いか、踵を返してヒラカタランドを後にする。

 走りながらスマホを操作して病院に電話し、母につなげてもらう。


 『さねるどないしたん? 今日はヒラカタランドで仕事やー言うて楽しみにしてなかった?』

 「うん、今終わってん。けど、BBCでもうひと仕事あってな。ちゃんと報告しとこ思て」

 『BBC? BBCて、あのBBCか?』

 「せや。あのBBCや。今話題のアキハバラを取材しに行くらしいで」

 『アキハバラってオタクの聖地やっけ? よう知らんけど、あの世界的なBBCが取材するなんてよっぽどやんなぁ』

 「……ん? 世界的? BBCが?」

 『さねるはうちに似て可愛さトップギアや。世界中の人を魅了したるんやで!』


 そう言って通話は切れた。


 「びわ湖の放送局って、世界的に有名なテレビ局やったんか……」


 さねるは各テレビ局に売り込みをかけるようマネージャーにメールで伝え、ちょうど停車していたバスに飛び乗る。

 ようやく自分にもチャンスが巡ってきた。

 目指すは天下無敵のジュニアアイドル。


 「さあ行くで! 一攫千金はうちのもんやーっ!」

EPISODE4 世の中デンジャラス「変態! チャイナ! オタク! 何が起きとるかなんて知らんわ! うちが知りたいぐらいや!」

 『次は~京都駅八条口~、京都駅八条口~』

 「もう京都か。たこ焼き買っといたらよかったな。オオサカ出る時つれてって~、ってな」


 次の乗り換えを確認しようと画面に目を落とすと、そこには母から1通のメールが。

 さねるを気遣いながらも活躍を楽しみにしている旨の優しい言葉がつづられていた。


 「……おかん、うそついてすまん」


 何よりも大切な母への嘘を今になって悔やむ。

 芸能界に入ることを相談した時も、母は優しく背中を押してくれた。

 仕事のことも、なんでも包み隠さず話してきた。

 今回のことだって、何も隠すことはない。いつものように素直に話せば良かっただけなのに。


 「でも、うちが絶対なんとかしたるからな」


 そう心に留め、停車したバスを降りる。

 京都駅と言えば交通の要所。利用者も多く、行き交う人々の喧騒で賑わっている……はずなのだが。


 「あら、あーし好みのかわいいお・ん・な・の・こ」

 「……は?」


 変態がいた。

 鏡のように輝く禿頭、ボロボロに破けた衣服、その隙間から見える美しい肉体美。

 紛うことなき変態のオカマが、そこにはいた。


 ――さねるの脳裏に、再び電撃が走る。

 いやいや、そんなことありえないここは法律によって守られた現代日本、あんなトンチキがいるわけないやめろこっちに来るなはげきたないきしょいなにするはなせ――!!!!


 「もう。そんなに暴れなくてもいいのに」

 「な、なんや、こいつ! へんたいへんたいへんたいへんたい、へんたーーーい!!」

 「ちょっと動かないでよ。首へし折っちゃうわよ」


 首へと回された変態の片腕に力が込められる。

 徐々に息が苦しくなっていく様は、幼い子供に恐怖を刻むには十分過ぎた。


 そこから先はおぼろげにしか覚えていない。

 パトカーのサイレンでふと我に返れば、横には泡を吹いて倒れた変態の姿。

 まだ恐怖に縛られ、身じろぎひとつできない自分の前に、しなやかな手を差し出すひとりの影。

 恐る恐る見上げると、チャイナドレスを着た美人の優しげな顔と、白衣に眼鏡をかけたこれまた整った顔立ちの少女が目に入る。


 今、世界で信じられるのはこの人たちしかいない。

 差し出された手を取ろうとした、その時。


 「お前たち、そこを動くな!」

 「やばい、こんなところで捕まったら出遅れるネ! 電車で逃げるアルよ!」

 「は、はいなのだ!」


 言うが早いか、自分を助けてくれたであろう二人は即座に踵を返し、一目散に駅へと駆けていく。


 この状況はとてもまずい。

 ようやく少しずつ回り始めた頭が警鐘を鳴らす。

 隣には倒れたままの変態オカマ。ついさっきまで自分の隣にいたのに、一転して逃亡を図る二人組。

 どちらに転んでも面倒は免れない。もし捕まりでもすれば、アイドルとしての経歴にも傷がついてしまう。


 「君、大丈夫? 金髪の女の子が不審者に捕まってたって聞いたけど、もしかして――」

 「うおおおおおおおおお!!!!!!」


 人生最速のロケットスタートを決め、その場から逃げ出す。足はまだガクガクで上手く動かない。

 それでも走った。さねるは走った。

 息を切らしながら、必死であの2人を追う。


 「ま、まって……! うちを……うちをひとりにしないでぇぇぇぇぇっ!!」


 無我夢中で改札を抜け、ホームを駆ける。

 発車のベルが鳴る中、2人が飛び乗った電車に決死の思いで飛び込む。

 直後、ドアは閉まり電車は走り出した。


 疲労と安堵が重なり立っていることすらできず、思わず床にへたりこんでしまう。

 路面から伝わってくる電車の揺れが、ようやく心に落ち着きを取り戻していく。


 「……あれ? なんか増えてるアル」

 「酷いやないか。あんなところにか弱い女の子を置いてくやなんて!」

 「どうして、警察にいかなかったのだ?」

 「なんて説明すればええんよ。半裸のオカマに捕まった思うたら、急に苦しんで倒れた、なんて誰が信じるん!」

 「アイヤー、確かにそのとおりネ」

 「それに、まだお礼言うとらんし……」


 思わず、涙と鼻水がこぼれてくる。


 「助けてくれて……ありがとう……めっちゃ、めっちゃ怖かったあああ!!!」


 でも、泣いてばかりはいられない。

 夢のためならどんな手段でも使ってやる。

 聞けば、2人もアキハバラを目指しているらしく、旅は道連れと手を差し述べられた。


 「わたしの名前は高須らいむなのだ!」

 「ウチも一緒でええの?」

 「もちろんアル!」

 「あ、ありがとうな! ええっと、ウチは淀川さねる、よろしく!」

 「アタシの名前はリー・メイメイ!」


 偶然にも目的地を同じくする3人を乗せ、電車はひた走る。それぞれの思惑と共に。

EPISODE5 夢みたあとで「やっとの思いで琵琶湖まで来たのに……けど、こないなことでうちは諦めたりせえへんで!」

 「…………んん、ふわぁ~」

 「やっと起きたか。お腹減ってるなら豚まんあるヨ」

 「これ有名なやつやん。最後の1つやけどええの?」

 「もちろん。らいむが途中で買ったやつだけど、ご覧の通りだから」


 こちらの肩に頭を預け、居眠りするらいむ。

 緩みきった顔からは、時折「ふへへ……」と妙に寒気のする言葉が漏れ聞こえてくる。

 邪魔ではあるが起こすのも忍びない。

 このままそっとして――


 「ふ、ふへへ……さねるたそ、やわらかいのだ……」

 「……きっしょ。オタクくんたちと同じようなこと言うやん。近寄らんとこ」


 支えを失ったらいむは、重力に逆らえず頭から落下。

 カエルが潰れたような声と共に目を覚ました。


 「いててて……おはようござい――あ! それはわたしが買っておいた肉まんなのだ!」

 「最後の1つもらうで。豚まんある時~!」

 「うぅぅぅ……ない時ぃ~……」


 口内に広がった肉汁がもたらす旨味の多重奏。

 お土産にもらったら笑顔になるのも頷ける。


 「そう言えば、琵琶湖にはいつごろつくん? うち、お姉ちゃんたちを追って乗っただけやから何も知らんねん」

 「それなら~……あ、ちょうど見えてきたヨ!」


 窓の外に目を向けると、夕日を反射して美しくきらめく広大な湖が広がっていた。


 「わぁ……これが琵琶湖?」

 「うん。日本一大きな湖なのだ」

 「ほんまおっきいなぁ……初めて見たわ」

 「そして、湖の真ん中に見えるのがアキハバラ。アタシたちの目的地」


 オタクの聖地、アキハバラ。

 名だたるアイドルが集うと噂され、日々しのぎを削り合う修羅の地。


 「あれ? アキハバラに用があるなんてうち言ったっけ?」

 「直感ネ」

 「あの状況でただの観光とは思えないのだ」


 アキハバラの落下はニュースにも取り上げられ、今や知らない人はほとんどいない。

 そんな中、ただ琵琶湖に用がある人なんて確かにいないだろう。


 「さて、次の近江今津って駅で降りるヨ。仲間が用意してくれた船でアキハバラを目指すアル!」


 オカマの変態を一撃で倒すほどの強さに、先んじて移動手段を用意しておく頭の回転の早さ。

 こんなに頼もしい仲間ができて、本当に良かった。


 「――なんて思っとったんやけどなぁ」

 「ごめんアル……けど、アタシだって想定外ヨ!」

 「まさか船じゃ渡れないなんて思わなかったのだ」


 近江今津で出迎えてくれたメイメイの仲間から告げられたのは、期待を粉々に打ち砕く悲報だった。


 「すまない。アキハバラへ船で渡るのは無理だ。街全体を包む謎のバリアのせいで近づけなくてな」

 「なんやねんバリアて。今どき小学生でもよう言わんわ。保安チョップでどうにかならんの?」

 「さ、さすがに無理があるのだ……」

 「けど、頼みの綱が使えないとは困ったヨ……」


 途方にくれる一行を表すかのように、徐々に日も陰っていく。


 「はぁ……あんな怖い目にあってまで来たのに、ここで終わりなんてあんまりや……」

 「大丈夫。さねるたそはわたしが守るのだ」

 「らいむ……」

 「そう、さねるたそはわたしが……うへへ、さねるたそ~!」

 「きっしょ! 心の声だだ漏れやないか!」

 「とりあえず、お腹も空いたし腹ごしらえネ!」

 「ご飯かぁ……とんかつ食べたいなぁ。とんかつ……とんかつ……」

 「体に優しいお野菜をご用意するのだ?」

 「心と味でおもてなし~、ってやかましいわ!」

 「2人とも何の話してるアル? ……ん?」


 ふと見れば湖に小舟が1そう。

 ゆっくりと、だが確実にこちらへ向かってくる。


 「なんやあの船……生きとるんか……」

EPISODE6 願い事ひとつだけ……?「うちに巫女の素質? 巫女さんなんかよりお嫁さんになりたいわ」

 「誰アル! 顔を見せるネ!」


 一歩前へ進み出てみんなを守るように立つメイメイ。

 京都では変態に襲われたが、今ではこんなにも頼りになる仲間ができた。もう何も怖くない。

 そう思うと、今更ながらに怒りがこみ上げてきた。


 「あのハゲ、す巻きにして琵琶湖疏水に流すんやったわ」

 「さ、さねるたそ!? 急にどうしたのだ?」


 そうこうしているうちに船はもう目前。

 警戒をよそに、船から降りてきた人物は3人の前に立ち、芝居がかった様子で仰々しく両手を広げた。


 「待っておったぞ。神に導かれし巫女たちよ」

 「へ? 子供?」

 「誰が子供か! れっきとした大人なのじゃ!」


 可愛らしい声を荒げながら深々と被っていたフードを勢いよく脱ぎ去り、その全貌を露わにする。


 「やっぱり子供やないか。アメちゃんいる?」

 「まだ言うか!? なら聞いて驚くのじゃ!」


 自称おとなの幼女はない胸を精一杯張り、高らかに名乗りを上げる。


 「我が名は安倍八雲(あべのやくも)! 由緒正しき陰陽師一族の末裔なのじゃ!」


 名は体を表す。

 厳かな和装がとても格式あるものに見えた。しかし。


 「陰陽師ってあれやろ? あくりょうたいさーん! とかってやるやつ」

 「え? あ、いや悪霊は別に……」

 「よくできたコスプレやなぁ。うちにもちょっと着させてや。一度着てみたかってん!」

 「な、何をする! これは大切な一張羅! おぬしなぞに貸すことなどできんのじゃ!」


 少しじゃれただけなのに、八雲は既に肩で息をしていた。あまり体力がないのだろう。むくれた顔が愛らしい。


 「我を馬鹿にしておるな。ならば見せてやるのじゃ。いでよ! 我が式神たち!」

 「――――」


 しかし、何も起こらなかった。


 「なんや式神て。そんな子供だましにひっかかると思ったんか?」

 「ふっふっふ……我の周りをよく見るのじゃ」

 「……? 何か浮いてるネ」


 改めて目を凝らして見ると、小さな光の粒のようなものがふよふよと漂っていた。

 それは徐々に輝きを、強さを増しながら大きくなり、次第に鬼の面のようなものが現れる。


 「ひぃぃぃーーーーーッッッ!!!」


 静かな湖畔に、さねるの絶叫が響き渡った。


 「かっかっか! 式神をそんなに怖がるなんて、おぬしこそ子供なのじゃ!」


 八雲が呼び出した式神は計3体。

 楽しげな彼女と呼応するように、ふよふよと3人の周囲を舞ってみせる。


 「陰陽師……アタシの国でいう道士みたいなものアルか。それがアタシ達になんの用ネ?」

 「うむ。実はな……」

 「そ、その前にこいつらどっかやってや……っ」

 「くよくよするな! 少し待っておれ」


 八雲がひとつ柏手を打つと、式神たちは別れを惜しむように消えていった。


 「はぁ……ひどい目にあった……」

 「泣き顔のさねるたそも愛おしいのだ」

 「な、泣いとらんわ!」

 「2人とも、話を聞くネ」


 日は暮れ、辺りが静けさに包まれる。

 そして、八雲が厳かに口を開いた。


 「アキハバラを救うには、そなたたちの力が必要なのじゃ。どうか力を貸して欲しい」

EPISODE7 今宵、琵琶湖の片隅で「うう……うちの身体がきずものにされてしもた……もうお嫁にいけん……」

 「アキハバラをすくう? なんや、アキハバラは金魚の代わりか」

 「その“掬う”ではないのじゃ!」

 「ほな、アキハバラに蚊の大群でも集まっとるんか」

 「それは“巣食う”じゃ! つまらん! おぬしの話はつまらんのじゃ!」

 「つまらんのはこっちやで。最後までつきおうてや」

 「そ、それで……どういうことなのだ?」

 「うむ。話せば長くなるのじゃが……」


 途中でトイレ休憩を挟む程、長々と語られた真相。

 詳細は省くが、このまま琵琶湖にアキハバラがあると大変なことになるらしい。


 「全国のオタク化を企む古の巫女……これは一筋縄ではいかなさそうネ」

 「なんやねん、全国のオタク化て」

 「でも、わたしたちは偶然居合わせただけの美少女。そんな力があるとは思えないのだ」

 「美少女とかよう言うたな自分」

 「全ては星の巡り合わせ。おぬしらはアキハバラに導かれたのじゃ」

 「まぁ、バズれるネタがあればうちはなんでもええ」


 神妙な顔をして話を進める3人。

 何から何まで全てがオカルト。おかしいのは周りで、正気なのは自分だけのはず。

 いや、あるいはその認識そのものが間違っている可能性も……。


 「おぬしらには巫女の素質がある。迷えるオタクの力をその身に束ね、アキハバラを再浮上させるのじゃ」

 「んなわけあるかーっ!!!」

 「き、急に大声を出したら驚くじゃろうが!」

 「何わけわからんこと言っとんねん! 詐欺か? 新手の詐欺やな!?」

 「失礼な! 全部本当のことなのじゃ!」

 「なら証拠見してみい!」

 「……良かろう。おぬし、さねると言ったな。そこでしっかり立っておれ」


 八雲は一歩下がり、他の2人にも距離を取らせる。


 「さねるよ。巫女の素質が最も高いのは、他ならぬおぬしなのじゃ」

 「うちはただのアイドルや。巫女さんなんてよーしらん」

 「巫女力とは即ち、信仰を集める力の強さ。おぬしからはすさまじい巫女力を感じるのじゃ。何か心当たりはないか?」

 「うちはべつに――」


 自分は決して神様などではない。

 ただお金を稼ぐためにジュニアアイドルになって、必死に今を頑張っているだけだ。そのおかげで一定の人気も出ているし、それなりにファンもついている。

 そのファンの気持ちが信仰ならば――

 さねるの脳裏に、腕組みをして仁王立ちするオタクくんたちの姿が浮かんだ。


 「ちょ、なんでやねん!!」

 「何か思い当たったようじゃな」

 「うっ……今のはただの偶然や。うちはあんなオタクくんらのことなんか、きょーみない!」

 「ならば、試してみるとしよう」

 「な、何する気や?」


 一歩下がり、神妙な面持ちで瞑想する八雲。

 すると、八雲の周囲を淡い光が取り巻いていく。

 可愛らしい顔立ちの八雲が見せる凛とした表情に思わず見とれていると、その眼がカッと見開かれる。


 「ドーマン……セーマン……」


 そして、勢いよく正拳突きが放たれた。


 「レッツゴーッッッ!!!!!」

 「ぐああああ! やーらーれーたー!」


 八雲から5、6歩離れた位置で、やけに間延びした声が聞こえたかと思うと、いつの間にかさねるがうつ伏せになって倒れていた。


 「えっ? なんじゃ?」


 あまりにもスムーズな転倒。

 さねるの中の血が、やらずにはいられなかったのだ。


 「ま、まさか八雲も気功の使い手アルか!?」

 「んなわけあるか! ただのお約束や!」

 「お約束じゃと……白い鳩が飛ぶアレと同じネ」

 「と、とにかく! これで完了したのじゃ」


 やりきったとばかりに満足げな顔の八雲。

 しかし、さねるの体に大きな変化は見られなかった。


 「何も起きとらんで。式神の方が働いとんちゃうか」

 「さ、さねるたそ、お腹のあたり何か光って――」

 「んなアホな。お腹が光るわけ――って、光っとるーっっっ!?!?!?」


 なんと、さねるの下腹部に七色の輝きを放つ紋様が浮かび上がっていた!


 「おお、すっごくきれいネ!」

 「どこかで見た事あるようなロゴなのだ……さねるたそ、いつの間に有名ブランドとコラボしたゲーミングタトゥーを用意していたのだ!?」

 「……よく見たらコレたこ焼きネ。有名ブランドどころか、パチモンアル。だからセーフネ」


 あさっての方向を見ながらつぶやくメイメイに、さねるとらいむの2人は首を傾げた。


 「それこそ、紛うことなき巫女の証! やはり我の目に狂いはなかったのじゃ!」

 「いややー! もうお嫁にいけんくなるー!」

 「これでは認めざるを得ないアル。さねる、あなたこそ真の巫女ネ!」

 「巫女服のさねるたそ……ふ、ふひひ……」

 「なぁこれ消えるんか!? 消えるんやろ!?」

 「祝え! 新たな巫女の生誕の瞬間なのじゃ! 期待しておるぞ、淀川さねる!」

 「どいつもこいつも、人の話聞けやーーーッッ!!」

EPISODE8 明日があるさ「だ~れもうちの話なんか聞いてくれへんし、もうなるようにしかならん。後はどうにでもなぁ~れ」

 「着いたのじゃ」


 八雲の先導で連れてこられたのは、琵琶湖に浮かぶ小さな島に建つお社だった。


 「ここは我ら陰陽師の一族が代々守ってきた由緒正しきお社なのじゃ」

 「……神聖な雰囲気を感じるのだ」

 「日本の神秘ネ。アタシ、こういうの大好きアル!」


 身体を穢されて傷心の巫女様など意に介さず、八雲の案内でお社の中を進んで行く。


 「さて、まずはお清めからじゃな」


 八雲が軽く手を叩くと、どこに潜んでいたのか幾人もの侍女が姿を表し、傷心のさねるを取り囲む。


 「ジャパニーズ・クノイチ? かっこいいネ!」

 「ま、まだうちにひどいことするつもりなんか!?」

 「これもアキハバラを救うためなのじゃ」


 そこから先は語るも涙、聞くも涙。

 さねるは着ていた服を全てひんむかれてすっぽんぽんにされた挙げ句、露天つきの大浴場で身体の隅から隅まで丁寧に洗われたばかりか、程よい熱さの温泉で身体の芯まで温められた。

 白を基調とした美しい着物に着替えて通された先の部屋では、まるで宴の如く豪勢な料理の数々。

 こんなものを食べさせられては、もういつもの食生活には戻れないかもしれない。汚い、さすが陰陽師汚い。


 「くっ……こんなことでうちは負けん……!」

 「存分に満喫しておったように見えたが」

 「さねる、見違えたネ!」

 「元々可愛かったけど、一段と愛らしく……ふひ」

 「儀式を行うには心身ともに身体を清めなくてはならぬからの」

 「儀式? なんのことや」

 「正式な巫女となるには儀式が必要なのじゃ。迷えるオタクの力をその身に束ね、アキハバラを救う力を得るためにはな」

 「オタクくんたちの力を、うちに……?」


 途端に体中にサブイボが立つ。


 「い、嫌や! それだけは絶対に嫌や! オタクくんたちのいけにえになんてなりとうない!!」

 「温泉、気持ちよかったじゃろ?」

 「極楽やった」

 「ご飯も美味しかったじゃろ?」

 「ほっぺた落ちるかと思ったで」

 「ふふ、空調完備の部屋にふかふかベッドもあるぞ」

 「ふかふかベッド!? 好きなだけ寝ていいんか?」

 「ああ……それだけじゃない。今ならなんと、ミックスジュース飲み放題。たこ焼きも食べ放題もセットでお得なのじゃ!」

 「乗ったーっ!」

 「よし。早速、儀式の準備を!」


 待機していた侍女たちが両腕をがっちりホールド。

 そのまま有無を言わさず連行していく。


 「しもたぁ~! うちの血がうずいてもうた~!」

 「さねるたそ、ちょろすぎるのだ」


 連れてこられたのは大きなお堂だった。

 床には大きな紋様が描かれ、その中心にさねるが、向かい合うように八雲が立つ。

 メイメイとらいむが心配そうに見守る中、いよいよ儀式が始まる。


 「……それで、うちはどうすればええの?」

 「皆からの信仰を一身に浴びる己の姿を、強く思い描くのじゃ」

 「またオタクくんたちが出てきたらどないしよ……」


 目を閉じ、今まで自分がしてきたことを思い出す。

 雑誌の撮影。テレビ番組のロケ。ステージでのライブ。オタクくんたちとの握手会。

 お金を得るためではあるが、どれもこれも……一部を除いて、とても楽しいかけがえのない体験ばかりである。

 動機は不純かもしれない。

 目的も低俗かもしれない。

 それでも、応援してくれるファンのために。

 また楽しく家族3人で暮らすために。

 どんなにつらいことでも、乗り越えてみせる!


 「さねるの体が光に包まれ始めたネ!?」

 「巫女の力が覚醒しつつあるのじゃ。それにしても、なんとまばゆく、そして強い輝きか」

 「すごい……すごいのだ、さねるたそ!」

 「どうじゃ。オタク力(ちから)がそこに溜まってきたじゃろう?」


 全身をかつてない充足感が満たしていく。

 いつも仕事終わりに感じるそれとは比べ物にならない、もっと、心の奥底から湧き上がる温かいもの。

 これが巫女の力だと言うのなら、そう悪くはないのかもしれない。


 「その思いと印を我が秘伝にて結ぼうぞ。では……参るのじゃ!」


 全身の気を拳に集中させる八雲の姿が目に留まる。

 さねるも身構え、本気には本気で応えようと手に汗をにぎる。


 「ドーマン……セーマン……ッ!」


 全身全霊を込めた八雲の拳が空を切り、そして。


 「レッツゴオオオーーーーーッッッ!!!」


 拳から放たれた光が衝撃波となってさねるを襲う。

 が、しかし。


 「って、何もおきんのかーい!」

 「ふっ……おぬしはもう、巫女っている」


 ドヤ顔で指をパチンと鳴らす。

 それに呼応するかの如く七色の紋様がまばゆく輝き出し、さねるを包み込んでゆく


 「な、なんやこれ! 頭が、なんだか……ぼーっと、して……」

 「オタクの聖地、おぬしに託したぞ」


 母に嘘をついてまでやってきた琵琶湖。

 そこで待ち受けていたのは過酷な運命。

 果たして、アキハバラを救うことはできるのか。

 まどろむ意識の中、さねるが下した決断は。


 「もぉ、どうにでもなぁ~れ……」

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コメント (淀川 沙音瑠)
  • 総コメント数30
  • 最終投稿日時 2022年06月26日 15:29
    • チュウニズムな名無し
    30
    2022年06月26日 15:29 ID:m69l70pc

    なんでカードだしてくれへんのや…

    • チュウニズムな名無し
    29
    2022年05月27日 10:30 ID:dovnonbb

    大阪人のいいところ全部乗せみたいな性格してて好き

    • チュウニズムな名無し
    28
    2022年05月13日 08:52 ID:e0p712gs

    >>27

    レベル100育成不可避じゃん

    • チュウニズムな名無し
    27
    2022年05月13日 07:49 ID:h7fnm42i

    (へんりいだはアカン)

    • チュウニズムな名無し
    26
    2022年04月26日 08:46 ID:os1j8a0h

    メスガキな見た目の割に常識人というか巻き込まれ枠というか

    • 木主
    25
    2022年04月21日 09:40 ID:thj6jvnz

    >>24

    あっ、やっぱ違うわ。禿げてねぇ

    • チュウニズムな名無し
    24
    2022年04月21日 09:15 ID:thj6jvnz

    誰も突っ込まないなら言うけど、NEW PLUSのポスターにいたあのオカマってグミンレーベルなのかよ…

    • メスガキに釣られたおじさん
    23
    2022年04月19日 19:11 ID:aoyn45c5

    どう足掻いても淫紋にしか見えないんだが

    • チュウニズムな名無し
    22
    2022年04月19日 04:18 ID:k1o7kuf5

    >>18

    10連まわせる(意味深)

    • 木主
    21
    2022年04月17日 19:48 ID:thj6jvnz

    >>18

    そら10回目で確定(意味深)なんだから割高よ

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