【白猫】帝国戦旗Ⅱchapter2 連邦編 Story2
2018/03/16 ~ 04/09
帝国戦旗2 Story01 序章・帝国
帝国戦旗2 Story02 序章・連邦
帝国戦旗2 Story1 帝国編
帝国戦旗2 Story3 連邦編
帝国戦旗2 Story4
帝国戦旗2 Story5 決戦
帝国戦旗2 Story6 アフターストーリー
後日談
目次
story6 暗号と捨て台詞
――カテリーナの屋敷
<サイファーとエリスは、穴ぐらに残っていた数枚の文書を、VOXのアジト――カテリーナ大公の屋敷へと持ち帰った。>
……お疲れさま。
ひでえ目にあったぜ。
アッシュの件だけど。……何かの間違いよね?
間違いなら俺をブン殴ったりはしねーよ。
……あたしは信じないわよ。
飲まなきゃやってられねーな。
<そう言って、懐からウイスキー入りのスキットルを取り出す。>
サイファー、ダメだよ……
……いえ、構わないわ。あんた達、少し休みなさい。
バアさんもな。……働きすぎだぜ。
……そうね。ありがとう。
…………
……
<今にも死にそうな少年の顔に、サイファーはマスクをつける。>
これでもう大丈夫だ!
……俺、まだ生きてるのか。
みんなー!アッシュ、助かったよー!
こんなもの、どこで手に入れたんだよ。
ヤミ市場で買った。
金持ちからいただいた(・・・・・)カネでか?
ああ。みんなとおまえが、俺の左腕を買ってくれたときと、おなじだ。
じゃあ、おあいこだな。
こまった時はおたがいさまだよ、アッシュ!
もちろんだ、――。
サイファー……
……あー、また寝ちまった。
泣いてるよ……?
お、そうだな。泣いてるな、俺。
悪い夢でも見ちゃった……?
……いいや。
あんた達が持ち帰ってくれた文書なんだけどね。
暗号化されていた文字列を解析したら、一つの文章になったの。……驚いたわ。
なんて書いてあったの?
『ゼラニウムの花は予定通り、聖マルクト病院へ移送』
ゼラニウムの花……!
……聖マルクト病院。あんたの弟が理事長をしていたな。
病院は一年前に閉鎖されているわ。これがどういう事かわかる?
病院は秘密の研究所で、兵器はそこに移送された、とか?
……決まりね。病院に向かってちょうだい。
持てよ、マム。一つ、言ってねえことがある。
……?
アッシュが捨て台詞を残していってな。<笛吹き男>――ヒントだそうだ。
調べてみたらびっくりだぜ。俺達が知らねえ犯罪組織があった。――<パイドパイパー>。危険薬物のシンジケートだ。
……ミスリードさせるのが狙いかもしれないわ。
かもしれねえな。ま、答えは決まってるんだが。
行くぜ、エリス。組織の場所はわかってる。
ちょっと待ちなさい。ワナって可能性もあるのよ。確証はあるの?
ねえ。俺のカンだ。ヤツは、そこにいる。
おば様。……あたしもサイファーに賛成。
ワナだとしても、アッシュがそこにいるのなら、あたしは行って、説得したい。
ダメよ。危険すぎる。
アッシュは大事な仲間なの。絶対に連れ戻すよ。だから、信じて。
ダメったらダメよ。あたしは、あなたまで失いたくないの!
いいえ、行きます。誰が何といおうと、行きます。
エリス、どうしたの……?様子が変よ?
お茶くみもいいツラ構えになってきたじゃねえか。こいつは連れてくぜ、バアさん。
待ちなさい。これは命令よ。
じゃあこれは立派な命令違反だな。帰るまでにギロチンでも何でも用意しとけ。
…………
story7 掃き溜め
<――街外れ>
ねえ。アッシュのことなんだけど……やっぱり、信じられないよ。
ヤツにはヤツの信念ってモンがあるんだろ。
……二人は、幼なじみなんだよね?
俺もアッシュも、<嵐の国>の貧民街で育った孤児だってのは、前に教えたよな?
うん……
昔話だ。
ゴミと悪臭しかねえ掃き溜めでな。街も人間も、ドブみてえに淀んでいた。
俺達みたいなガキは、いくらでもいたよ。毎日地べた這いつくばって食いモン探して、必死に生きてた。
だが、怖いのは飢えて死ぬ事じゃねえ。わけのわかんねえ病気になっちまう事でもねえ。
怖いのは、一人で生きる事だった。
…………
だから俺達は結束した。一緒なら、飢えも病気も平気だった。
みんなで一緒に、支えあったんだね?
何もかも分け合った。ダチの為なら盗みだってやった。みんなそうだった。
この左腕の一部は、今でもヤツらの贈り物で出来ている。
……そっか。
アッシュとはその時からの相棒だったんだ。……それから、もう一人。
もう一人?
特別、妹みたいに可愛がってたヤツがいてな。名前は……
――名前は、何だ?
ええっ。忘れちゃったの?
忘れるはずはねえ。忘れちゃいねえんだ。……んだよ、おかしいな……
思い出したら、教えてね。
……ともかくよ。俺はヤツらと一緒なら、掃き溜めだって構わなかった。
だが、それさえも、ブチ壊された。
え……?
人さらいだ。アシがつかねえ孤児ってのは、利用価値が高くてな。
みんなさらわれちまった。残ったのは、俺とアッシュだけだ。
…………
俺達は探し続けている。ダチと、人さらいを。
……アッシュは何をするつもりなの?
方針を変えた事だけは確かだ。
…………
……
<パイドパイパー>拠点――
廃城を隠れ家にするたあ、粋な連中だな。
どうやって潜入する?
城ってのは秘密がいっぱいでな?
地下道かあ。さすがサイファーだね。
エリス。ここからは別行動だ。
いいけど……どうして?
ちょっと確かめたいことがある。
……?わかった。
頃合いを見て連絡する。いいか、絶対に見つかるなよ。
大丈夫。かくれんぼじゃ負けなしだから!
盗み見とはいい趣味してるじゃねーか。
やはり気づくか。
お前の気配はすぐにわかるぜ。
夢を見て泣くとはな。弱ってるのか?
……いたのかよ。かなわねえなあ。
マムの分析能力を利用(・・)させてもらった。
必要な書類だけを残したわけか。
サイファー。俺とともに来い。
…………
俺達なら兵器を歯獲(ろかく)できる。
お前、何考えてんだ。
考えなど変わらない。
――俺達は、自由に生きる。
アッシュよう。ゴミってのは、マジで難儀だよな。
セーフティ解除。
ここでやる気か?クズどもが来たらどうすんだ。
キルエムオール(皆殺しだ)。
言うと思った!
…………
……
ここ、いかにも怪しい!ようし、さっそく手がかりを――
……だれかいるの?
story8 記憶の澱
(子どもの声……どうしてこんな所に?)
……出ておいで。あたしは味方だよ。
<監房の奥の暗がりから、数人の子どもが姿を現した。>
大丈夫、あたしが今すぐ助けてあげる――
エリス?
エリスだよね……!?そうだ、エリスだ!!みんな、エリスが来てくれた!!
<奥から、さらに数人の子どもが鉄格子へと駆け寄ってくる。>
あたしを知ってるの?
なにいってんだよ!
大きくなっちゃってさ!
エリス、とってもキレイ!いいなあ、わたしもはやく大人になりたい!
なれるさ!エリスが来てくれたんだもの!
あなたたちこそ……なにをいってるの……?
どうしたの?エリス。具合でもわるいの?
ねえ、サイファーとアッシュは?
……え?
いっしょなんじゃないの?
また、みんなで暮らせるんでしょ?
……知らない。あたしは、何も、知らない……!
<胸の奥が、ズキズキと痛み出す。よろよろと。エリスは後ずさった。>
……やめて。
<――記憶の澱が、揺れる。>
あたしを見ないで……!
本当の自分を知りたいか?
<声は、背後の監房から響いた。>
再会できて何よりだ。
あ、あなたは、カフェにいた……
アイシャだ。君はエリスというのだろう?
アイシャ、さん……
話をしよう。私は<帝国>の人間でね。裏切者を探しにこの国へ来た。
……帝国の、ひと……
そこでだ、エリス。私に協力してくれないか?
協力……?
君の<力>を、私に貸して欲しい。
あなたは、やっぱり、敵じゃないのね……?
今のところはね。
わかった。ここから出してあげる……
いや、それでは時間がかかりすぎる。
連中の知識欲が満たされれば、私はすぐにでも殺されるだろう。だから――
私を、信用してくれ。
あなたを、しんじる……?
信頼だよ、エリス。君の力は、そこから始まる。
うっ……!
<頭の中に、光が走る。>
……酷だとは思っている。許してくれ。
さっきの言葉……ほんとうのあたしって、どういうこと?
君は普通ではない。君が私にそう言ったように。
……あたしは、ただの、お茶くみだよ……
時々、自分が自分でなくなるような感覚に陥る事はないか?
本当の自分はとこか別の場所にいて、目覚めの時を待っているんだ。
エリス、そのお姉さん、とってもいい人なんだ。
お姉さんも、わたしたちと一緒に暮らそうよ。
子どもたちも同じだ。彼らは、夢を見ている。
う、うぅ……なにが、いいたいの……?
<光は、徐々に鋭くなる。>
私の手を握ってくれ。
<鉄格子越しに、二人の手のひらが、重なりあう。>
思い出せ、エリス。
あたしは……この子たちを、知っている?
当たり前だろー。友だちなんだから。
あぅぅぅ……頭が……
さあ。君の悲しみを、私にも分けてくれ。
頭が、いたい――!
<記憶の澱が、花びらのように舞った。>
story9 夢見る子どもたち
悪い事いわねえから戻って来い。今なら便所掃除で許してやるよ。
最高のジョークだ。
兵器はここにあるんだな?
そのようだ。
ようだ?
来たのは今日が初めてだからな。
さて、どうすっか。
頭が、いたい――!
エリス……!?
地下か。
……イヤな予感がするぜ。
エリス!無事か!?
…………
<エリスは――無人の監房の前で、呆然と立ち尽くしていた。>
…………?
おい、何だってんだ――
サイファー!アッシュ!
…………
ウソだ。そんなハズはない。
やっぱり、来てくれたんだね!
ずっと、会いたかった……!
お前ら、どうして……
アッシュも、久しぶり!
サイファー、大きくなったねえ!
でも、アッシュはそこまでじゃないね。
「「「アハハハハ!」」」
何だこれは。笑えねえ冗談だ。
ざけんじゃねぇ。あれから何年経ったと思ってやがる……
安心して。わたしたちも、すぐに大人になるから!
そしたら、みんなでまた暮らせるんだ!
何であの時のままでいやがる!
……この子たちは、人為的に成長を止められているの。
そして、心はずっと、縛ったまま。飽きることのない夢を見るために。
どういう事だよ、エリス。
サイファー。アッシュ。……ごめんね。
……なに謝ってんだよ……!
あたし、ぜんぶ思い出したの。
ぜんぶ、あたしのせいなの。
<エリスの頬を、涙が伝う。……それと、同時だった。
サイファーとアッシュの、偽りの記憶が、剥がれた――>
くそ……くそおおっ!
――いかなきゃ――
――みんなで――
エリス!こいつらになにをした!
さあ、いきましょ?もう、苦しまなくてすむのよ。
――ユメが、かなう――
――わたしたちの、ユメが――
――ぬけだすんだ、ここから――
ちがう、ちがうっ!おまえらは、操られてんだ!
目を覚ませっ……!
――サイファーとアッシュはこないの?――
――いこうよ、いっしょに――
ふたりは、いかないって――
やめろ、エリス……ウソだといってくれ……
サイファー!このままじゃ、あいつらが……
――こないんだ――
――サイファー、こないんだ――
――ずっといっしょだって、いったのに――
やめろ……いくな!
「「「――さようなら――」」」
いくなあぁぁぁぁぁぁぁぁ!
……ごめんね。
みんなをさらったのは、あたし。
……違う。
二人はあたしを、妹のようにかわいがってくれた。
……そうだ、エリス。お前だ。俺達の妹は、お前なんだよ。
だが、人さらいは、違う!
二人は、連れていけなかった。あたしの、たった一回のわがまま。たった一つの、秘密。
…………
あたしは……化け物なの。
違う――!
見て、サイファー。あたしたちこそが、<兵器>よ。
story10 聖なる傀儡
……そうか。お前が兵器か。
<袖に仕込まれていたナイフが煌めいた。>
……何やってんだ、お前。
歯獲する。
こいつは兵器じゃねえ。
サイファー。あたしは破壊されるべき存在なの。
……やめろ。
ボスの名前を言え、エリス。
アッシュ。今すぐあたしを殺して……!
バカいうんじゃねえ!
お願い!そうすればまだ――
ボスは誰だ、エリスッ!
殺してぇ――!
おやめなさい。
子どもたちが怯えているではありませんか。
研究員にかまってるヒマなんかねえんだよ。
実に良い素材ですね。そこの子どもたちは。
……ああ?
彼らはまさに<虎の子>です。王国を守る剣として、申し分ない。完璧です。
礼を言いましょう。あなたが率いたからこそ、彼らは強くなったのです。
強さ心に強さ肉体。そして何より、決して分かたれる事のない絆。
ダチとエリスに何をした。
私よりも殿下(・・)に聞いた方が早いでしょう。
……ああ、もう。やんなっちゃうわね。
予想外のことばかり起きるんだもの。
……おいバアさん。何であんたがここにいる。
エリス、こっちへいらっしゃい。
アッシュ、お願い……殺して……
…………!
言うこと聞かなくなっちゃったから、変だと思ってたのよ。
ダメじゃない。あげたアメちゃんは、ちゃんとなめないと。
……やめろ、バアさん。それ以上、言うな。
あんたもあんたよ。おかげでエリスが苦しむハメになったでしょ。
でも、保険を用意しておいて良かったわ。
<――>
……!
<カテリーナがハンドベルを鳴らすと同時に、エリスの目の色が変わった。>
さあ、エリス。
うん。
かはっ!
……全部、あんただったのかよ。
殿下。少し説明して差し上げたらいかがです?
この子どもたちはあたしの兵隊よ。<概念兵>っていうの。今までにない、新しい戦闘マシーンよ。
そしてエリスは、兵隊の司令官。<支配>の概念使いとして作られた。
概念使い……
エリスはあたしのお人形。だから心に鍵をかけて、大事に大事に育ててきたの。
<聖王国>の建国には、必要不可欠な存在だからねえ。
聖王国だと……?
VOXは、そのための駒。エリスが司令官ならあんた達は指揮官ってとこかしら。
今回の任務は……全てあんたの筋書きか……!
あたしの計画を、弟が知っちゃったみたいなのね。だから、正当な理由で死んでもらう必要が出てきたのよ。
革新派の仕業に見せかけ、俺達に抹殺させる……
でも、上手くはいかないものね。まさか本当に刺客を放ってくるなんて。
…………
エリスを行かせた理由、今ならわかるでしょ?
俺とアッシュが勘づくのを、恐れた。エリスは枷だったわけだ……
でもまさか、あんた達がエリスと<虎の子>をまとめあげていたなんて知らなかったわ。これも手痛い誤算ね。
……さて、エリス。二人を<支配>しなさい。
<エリスは、サイファーとアッシュに向かって、その手をゆっくりと伸ばした。>
……ダメ。きかない。友だちなのに、きかないよ。
洗脳が解けた時に防壁を張った可能性がありますね。
仕方ないわねえ。……<拒絶>の概念使いの調整は?
済んでいますよ。……さあ、こちらへ来なさい。
…………
アイシャ。あたしとー緒に行こう?
ああ。
私が守るべきは――エリス。
さっそくだけど任務よ。連邦議会の議事堂に議員が集まってるの。行って制圧してもらえるかしら?
お願い、アイシャ。
了解。
大人しいわね、サイファー。観念したのかしら?
ダチとエリスをどうやって助けるか、考えてんだよ。
相棒のアッシュが裏切った今、あんた一人でどうやって助けるのよ。
おいねぼすけ、そろそろ起きろ。
妹のビンタは効くな。
…………?
マム。俺が革命派だと、一言でもいったか?
こいつは裏切っちゃいねえよ。
……どういうこと?
この任務が始まる前のことだ。俺は兵器の存在の他に、二つの情報を得ていた。
兵器がバイトバイパーによって製造されている事。そして、聖王家の主流派が関わっているという事だ。
俺は念入りに主流派を内偵した。勿論、マム、あんたも含めてな。
…………
だが、中々尻尾を出さない。だから俺は、仕掛けた。
……情報をリークしたのは、あんたね?
任務中に考えられるイレギュラー要素を予想した上で、ワナを仕込むポイントを選択した。――諜報員の穴ぐらだ。
……ああ、あの文書。あんたが用意したの。
俺が適当に綴っただけの文字列を、よくもそれらしく解読したものだ。
天井裏には気をつけた方がいいらしいぜ。
<ゼラニウムの花>。意味など何も無いのだろう?
無かったから、持たせてあげようとしたの。
尻尾は見えた。あとは俺達二人がこの城で、アドリブを利かせ続ければいいという寸法だ。
00を差し置いて、大した信頼関係じゃないの。
昔も今も変わらない。俺のリーダーはサイファーだけだ。
掃き溜めの縁(よすが)ってヤツはな、そうそう切れるもんじゃねえんだよ。
story11 沈みゆく希望
種明かしは終わりだ。エリス、ちょっとばかし眠っててもらうぜ。
サイファー。おば様に逆らわないで。
俺は子どもたちを逃がす。
どうぞご自由に。
<埋葬者は、監房の鍵を開けた。>
気前がいいんだな?
ええ。そろそろ(・・・・)ですから。
やっと出られた!
わたしたちも、エリスやサイファーみたいに、大人になれるのね!
そうよ。立派な大人になって、一つになる。あの時みたいに。
わーい!これからは、ずっと一緒だよ!
わたしも、エリスみたいにキレイになれるかな!
そ、そしたらあたし、サイファーと、デート……し……て……
お、おい、お前ら……?
あ……あ……あ……
ああああああああああっ!
時間です。
痛い痛い痛い痛いいいいい!!
<子どもたちの体が――変貌する。>
熱い、体が熱いよう!どうして!?なんでえぇぇぇぇ!
<二人は、膝から崩れ落ちた。>
俺を見ろ。頼む、俺の目を見てくれ……
たすけて!たすけてサイファー!
どうしてなの!?僕たちは、みんなと……みんなと……!
やめろ……いくな……
<握った小さな手が、ギチギチと大きくなる。
一日たりとも忘れる事のなかった友の目が、耳が、口が固く覆われてゆく。>
俺を……見て……くれ……
<……やがて、叫び声は聞こえなくなった。>
完璧な仕上がりね……!これが、真の概念兵……!あたしの兵隊……!
みんな、よく頑張ったね。
エリス、識別させなさい。
あたしたちの親は、この人。
おば様の命令が、最優先だよ。
あたし以外は敵とみなして。
g指揮系統確認。敵対者を識別。――待機中――
……殿下。私をお忘れですよ。
いいえ、忘れてないわ。エリス、この男を抹殺しなさい。
……は?
さあ、みんな。
<エリスの能力により、すべての概念兵に行動内容が共有され、一瞬にして連携態勢が整う。>
g確認。エグベルトを抹殺する。
ありがとう、エグベルト。あたしの兵隊を作ってくれて。でも、もう用はないわ。
おや……
<――>
さて、次はあんた達よ。
……アッシュ。
…………
……
<――街外れの路地裏>
聞いたか!?異形の兵士が暴れているらしい!
こ、こっちにも来るかな……?
……クソが。
<サイファーはウイスキーをあおる。>
マムは議事堂へ向かったみたいだな。
筋書きは何だと思う?
開会中の議会を制圧。緊急動議の提出。
マッチポンプか?
あるいは純粋なクーデターか。
…………
サイファー。友は、もう元には戻らない。お前も気づいている筈だ。
俺には出来ねえ。
<喧騒を背に、二人はつかの間、沈黙する。>
……掃き溜めだっていい。俺達は、自由に生きるんだ。
俺も、やつらも、その言葉を信じて……お前を信じて、生き抜いた。
俺は、どうすればいい。
「貴様の務めを、果たせ。」
……ワンワンか。奇遇だな。
こいつが例の?
務めとは何だ?ダチを殺す事か?
そうだ。
……やっと、見つかったってのによ。なんで、こうなっちまうんだ。
泣き言など聞く気は無い。
じゃあ何で会いに来た。
気まぐれだ。
…………
なあ、ワンワン。お前、ダチはいるか?
ああ。
仲、いいか?
ああ。
そうか。そいつはいい。……ちゃんと、守ってやれよ。
貴様もな。まだ救うことの出来る友が、いるだろう。
…………
じゃあな。
おい。……お前、名前は?
ジュダ。
……アッシュ。準備はいいか?
命令しろ、サイファー。
俺達の妹を、連れて帰るぞ。