【白猫】ジュダ(帝国Ⅱ)・思い出
ジュダ・バル・アーウェルサ CV:子安武人 鎖を引きずる弔い手。 縛られてなお、獣は帝国の敵を追い続ける。 |
帝国戦旗Ⅱ
思い出1
<帝国>と<連邦>をめぐる陰謀が収束し、狼は再び飛行島へと足を踏み入れた。
狼は空を仰ぎ、目を閉じている――
「…………」
「あれ、ジュダじゃない。」
<ジュダが静かに目を開いた。>
――やはり、そうか。
どうしたの?
英雄たちのたどった道を、感じていた。
多くのものが命を賭し、忠義に殉じた。
そして、耐えるだけでは到達できない、答えを、得た。
礼をいう。眠れ。安らかに……
……お話を、聞いてもいいですか?
ああ。――俺は、確かめていた。
なにを確かめてたの?
差だ。……狂人と英雄の差。紙一重の、な――
……難しいわね。
ああ。しかし、単純なことでもある。
世界と繋がっていれば、気がつけることだ。
……今回の任務も、大変だったんですね。
大丈夫だ、問題ない。
<帝国>に仇なすものに、棺を送る。
帝国軍、第十三軍団所属、<葬送>――
――俺の使命だ。
せっかく、来たのだからな……
<ふいに、ジュダが真横を向いた。>
けづくろいね! まっかせなさーい!
ふふ、狼の習性なんですよね。
――そうだ。……ふむ。なかなか、いいな。
<ジュダが反対側を向いた。>
こっちもだ。
おっけー。サラサラにしてあげる。
ほう、そう来るか。いい、腕だ。
思い出2
「あら、あそこにいるのはジュダじゃない?」
「本当だ。なにか持ってるみたい。」
ジュダー、それなにー?
……ふっ。
<ジュダは、大きな骨を差し出した。>
骨、ですか?
ああ。いい、骨だろう。
そうね。狼的にはいい骨よね。噛みごたえがありそうだわ。
――俺は、学んだ。
求めるものは、追うだけでは、手に入ることはない。
ふむふむ。一理あるわね。
欲しいものを、待つことはない。餌は、自分で用意する。
――撒餌だ。
<ジュダが鋭い眼光で、こちらを見据えている。>
……ふっ。
<ジュダが骨をそっと置いた。>
なに? くれるの?
<ジュダが貫くような眼光で、こちらを見ている。>
……ど、どういうことなのかな。
<ジュダが射抜くような眼光で、じっとこちらを見ている。>
そっか! わかったわ!
<キャトラが骨を取ると、勢い良く放り投げた!>
キャトラ……!?
ワオーン!!
<ジュダが骨を追って、勢い良く走っていった!>
え? ジュダさん!?
ジュダは骨を投げて欲しかったのよ。
そ、そうなんだ。
狼がこっちをじっと見てるときは、遊んでほしいときのサインでしょ?
うん。たしかそうだったね。
骨を置いて、じっとこっちを見てるなら、やることはひとつじゃない。
いわれてみれば……! キャトラ、すごい……!
思い出3
「ジュダ、体の調子はどうだい。」
「ふっ。俺の心配より、自分の心配をするべきじゃないのか?」
「ははは、これは一本取られたのかな?
……お互い、ボロボロだねえ。」
「今さらなにをいっている。
ボロボロだろうが、ここでくたばるわけにはいかんだろう。
――それで、要件はなんだ?」
「今日は一緒に食事でもいかがかな、と思ってね。」
「ふん。それだけなら、ここに呼びはしないだろう。
前置きはいい。俺が棺を送る相手は誰だ?」
「――そうだね。実は君に頼みたいことがある。
秘密情報部をかき回してくれた反逆者のリストをきっかけに、過去のリストを再調査したんだ。
――デイヴィッド・コノリー技官。」
「誰だ、そいつは。」
「愛国心のある、いい科学者だったよ。
人を魔物に変える<熔印のルーン>。あれへの対抗策を研究していたんだけど――
除隊します、と短い書き置きを残して去ってしまった。」
「<帝国>に仇なす人物には聞こえないが?」
「ああ、彼はいい軍人だった。だからこそ、さ。彼の愛国心に、報いたいんだ。」
「……そういうことか、わかった。」
「――頼むよ、ジュダ。」
***
<ジュダは、コノリー技官がいるという島へと向かった。>
…………
――!
え? ジュダがいる? あ、ホントだ。
お前たち、どうしてここにいる?
ギルドから、島の調査依頼があったんです。
魔物の目撃情報があったみたいで……
……そうか。
アンタも魔物の討伐に来たの?
いや、討伐ではない。――俺は、弔うために来た。
…………
お前たちの魔物討伐、俺も同行していいか?
アタシはオッケーよ。ジュダがいるのは心強いわ。
私も……主人公は?
――♪
決まりね! じゃ、みんなで行きましょ。
…………
思い出4
――欠片よ。何を迷っている?――
「迷ってなどいない。」
――ハハハ、己が我儘を、飼い慣らせたとでも?――
「黙れ。」
――甘い甘い。自惚れるな。――
「おいぼれが、ほざくな――!」
――愚かな。実に滑稽な姿よ――
「俺が、滑稽だと――!? ……<我儘>め……!」
ジュダさん、大丈夫ですか?
……ああ。こっちでいいのか?
はい。この奥の森を抜けると遺跡があるらしくて、魔物はそこで目撃されたみたいです。
……そうか。
臭うな。こっちだ。
(この気配は、人間、か……? しかし、同時に魔物とも……
どちらにせよ、すべきことはただひとつだ。
俺が迷っている、だと――? 戯言を……)
***
なんだか、こわい雰囲気ね。
主人公、気をつけて。
……来た。
で、出たわね! 主人公、やっちゃいなさーい!
――待て。
bあ、あと少し、ナンダ。大丈夫。ダイ、ショウブ。
…………
あと少しとは、なにがだ?
b……マモノで、なくス、はずダ。私は、ラクインの、犠牲者を……
<魔物が攻撃してきた!>
b私はギセイを、なくす研究には自信が……だから自分にラクインを……
――デイヴィッド・コノリーか?
bワタシ! 私、ワタシだ、ああああああ!
…………馬鹿者め。
思い出5
ちょっと、どうなってんの!? 魔物なのに喋ってるし!
こいつは帝国の、科学者だ。
どういうことですか?
人を魔物に変える、<熔印のルーン>の対抗手段を研究していた。
だが研究には危険が伴った。軍は研究の即刻中止を命じたが、この男は強引に研究を進めたのだ。
先の騒乱で、多くの仲間が犠牲になった。この男の、戦友もな。
…………
こんな悲劇は二度と起こさせない、と言い残して、消えた。帝国のために、自らを捧げると。
………そんな。じゃあ、この魔物は。
――――ああ。
「聞こえるか、同胞よ。俺は帝国軍、第十三軍団所属、大佐、ジュダだ。」
『十三軍団……大佐! オオ、来て、クダサッタんデすネ?
研究は、順調デス! ギセイはナクして、みせマス!』
いってることと、やってることが滅茶苦茶じゃない……
それくらい蝕まれているんだわ。意識を保ってるのが、奇跡的なくらい……
「――デイヴィッド・コノリー技官。」
『そうでアリマス。そうでアリマス!』
「汝に、皇帝陛下より賜りし棺を送る。謹んで、受け取れ――」
<――影の中から、巨大な棺が出現した――!>
『!? そ、ムカエ、そんな! チガウ! ワタシは! ああああ!!』
<――魔物が棺に背を向け、逃げ出した――>
「待て! ――ッ!!」
――見たか、欠片よ――
「!? おいぼれ……」
――これが下らぬ迷いの果ての、末路よ――
「黙れ!」
――門を開くのだ。思うがまま、真の<我儘>を、受け入れろ――
「黙れと、いっているッ!! ……っ!」
――献身だと? 実に愚か。正視に耐えぬ、愚かさよ――
――欠片よ、欲するままに、生きるのだ!――
「ぐ、ぐあああ! ガウウウ!!」
――抗う必要などない。己の本性を受け入れろ――
――全てを、無に還すのだ!――
***
苦しそう、ジュダさん――!
主人公! 頼むわ!
思い出6 (友情覚醒)
「……戯言ばかりを、並べるな。」
――なに?――
「愚かか、どうか、すべて、俺が決める。
俺は、俺の思いに、殉じている――
俺の意思は、<我儘>に等しい――!」
――儂の欠片よ。あくまでそれを、<我儘>と吹くか――
――まったく、忌々しい光よ――
***
……ッ! は!
ジュダ! よかった、大丈夫?
ああ、――礼をいう。――やつはどこへいった?
……奥へ逃げていきました。
――そうか。
……お前たち、この先は俺に任せてくれないか?
で、でも! アンタ――!
ジュダさん、気をつけてください。
――無理しちゃダメよ。
――ああ。いってくる。
***
『ドウしてダ! ワタシは帝国の、タメに! 仲間ノ、タメに!!
クルな!クルな!』
「……ッ!」
『…………ナゼ、ダ。ナゼ――』
「デイヴィッド。汝に皇帝陛下の棺を賜る――」
『…………』
「謹んで拝領するがいい。」
『アア……』
棺の蓋が開き……無数の影があふれ出す。そして魔物の体を包んでいく。
『ワタシは、ワタシは帝国の、仲間ノ、タメに――』
「――その献身、大義である。誇りを抱き、眠れ。」
『ワタシは、ワタシは、お役に……立ちましたか?』
「帝国のため、命をかけた英雄よ。俺は決して、忘れはしない――
……よくやった。」
『!!
…………あ、ありがとう、ございます……
ワタシは……こレ、デ……よかった……』
…………
<帝国の棺>か……
俺は、俺が決めた道を貫く。付き合ってもらうぞ、我が、友よ。
その他
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