【白猫】帝国戦旗Ⅱchapter2 連邦編 Story
2018/03/16 ~ 04/09
帝国戦旗2 Story01 序章・帝国
帝国戦旗2 Story02 序章・連邦
帝国戦旗2 Story1 帝国編
帝国戦旗2 Story3 連邦編
帝国戦旗2 Story5 決戦
帝国戦旗2 Story6 アフターストーリー
後日談
目次
帝国戦旗Ⅱchapter2 連邦編 Story
登場人物
story1
――カテリーナの屋敷
さて、まずは情報を整理しましょう。
極秘の特務機関である、あたし達<V.O.X>(ヴォックス)の存在が、何者かによってリークされたわ。
面白えことをやってくれるよな。
連邦議会はカンカンよ。だから、認めさせる必要がある。
それが今回の任務なんだよね。
非人道的兵器の発見、及び首謀者の拘束。
<革新派>……あんたの弟が裏にいると思うか?
その可能性は高いわ。
にしても、姉不孝モンだよなあ。
ちっちゃい時は可愛かったんだけどねえ。
末の弟もか?
あの子はずっと可愛くなかったわ。……亡くなるその瞬間までね。
<嵐の国>の妾が看取ったそうだな?
あら、どうして知ってるの?
見ていたからさ。
はいはい、いつものジョークね。
…………
話を進めましょう。アッシュ、兵器について改めて教えてちょうだい。
製造されているのはここ、<ヴェルガ王国>内のどこかだ。それ以外はー切不明。
情報源は?
連邦のとある諜報員、とだけ言っておこう。
お前の情報網が羨ましいぜ、<掃除屋>。
接触する手筈は整えてある。
いいわ。まずはその諜報員と会い、兵器についての詳細な情報を聞き出しなさい。
イエスマム!
つーかバアさんよ。エリスを現場に出すなんて、俺は反対だぜ。
仕方ないでしょ、人手不足なんだから。
サイファーは心配性だね。
それにね、この子はあたしの『秘蔵っ子』なの。あんたが思ってる程ヤワじゃないわ。
初めての任務!ワクワクするなあ~。
で?バアさんはどうするんだ?
決まってるわ。<お客さま>をもてなすのよ。さっきから玄関のベルが鳴りまくってるでしょ。
執事がまた痩せちまうな。
アッシュ。指揮と同時で悪いけど、護衛の方もよろしくね。剌されたらイヤだもの。
イエスマム。俺が守ってやる。
ヒュー。
諜報員とのランデブーポイントは<ミザリーズ・カフェ>。
手前から三番目、窓際のテーブル席だ。
<注文>(あいことば)は?
コーヒー二つ。砂糖多めでミルクを一滴。
……エリス。さっきはああ言ったけど、くれぐれも気をつけてね。
うん、おば様。あたし、頑張るからね。
これ、お守りのアメちゃんよ。道中でなめなさい。
サイファー。……この子を、頼んだわよ。
しかたねえ。守ってやるよ、お茶くみ。
さあ、任務開始よ。気張りなさい、あんたたち!
ケツはあたしが持ってあげるから。
下品なバアさんだ。
story2 キャリーポップ
<街の大通り>
<サイファーとエリスは、諜報員との合流地点であるカフェヘと向かう。>
おいエリス。コソコソ動くな。ガキのごっご遊びじゃねえんだ。
どうしようサイファー。諜報活動してるって思ったら、うまく歩けないよ!
ったくよ。潜入も戦闘も苦手なお前を現場に出すバアさんが、未だに理解できねえぜ。
どんな風に歩けばいい!?
普通にしてろ、普通に。
……普通って?
俺とデートしてる時。
したことないよ?
今してるだろ。……男女で動く場合に有利なのは、カップルを装えるって事だな。
そうなんだ。うんわかった、やってみよう!
えへへ。
ナイス笑顔。
キャンディなめてもいい?
お前、ほんとキャンディ好きだな。
三食キャンディでもいけるよ。
じゃあ、愛しのスウィートハートに贈りモンだ。
任務の途中だよ?おかし屋さんに寄ったりしていいの?
まだ時間じゃない。にしても、ヴェルガってのは菓子中毒者の為の国だよなあ。
……おっ、あった。ねーちゃん、これを二つくれ。
ほらよ。もう一個は任務が終わったらくれてやる。
ありがとうサイファー。面白い形だね。キャンディに棒がついてる。
…………
どうしたの?
いや、ちょっとな。にしてもお前、<キャリーポップ>を知らねーとはな。
イキりたがりのティーンエイジャーには欠かせねぇファッションアイテムだぜ?
へえー。キャンディはずっとおば様がくれてたから、わかんなかったよ。……いただきまーす。
そろそろ行くぜ。着くまでにそれ食っとけよ。
うーん、おいしーなー。手に持ちながらっていうのが新鮮……
<ふと、エリスは思い出したように立ち止まった。>
……?
あれ?
エリス?
あれれ?なんで?どうして?
うれしいのはわかるが、泣くほどか?
サイファー、違うの。涙が勝手にあふれてくるの。
どうしよう……止まらないや。
(何だ……?)
あたしは……悲しんでいる?
story3 おみ足、そして銃声
<ミザリーズ・カフェ>前――>
落ち着いたか?
うん……もう大丈夫。
<サイファーは<伝声のルーン>を取り出した。>
カフェ前に到着。これより<名刺交換>を行う。
”ラージャー。デートは楽しかったか?”
女を泣かせちまった。
”クソ野郎だな。”
<その時、二人の横を男が通り過ぎた。そのまま、カフェに入店してゆく。
サイファーが、店内を素早く一望した。>
対象が席についた。……待て。見ろ、エリス。壁際のテーブル席、男女の二人組だ。
え??どのふたり??
唇の動き、視線、さりげない所作、ネーチャンのキレイなおみ足。ありゃただの客じゃねーぜ。
……おみ足は関係ないと思うけど……
なになに……?『追われる身になりたくはないけどね』――だとよ。
読唇術だ!サイファーすごい!
<バンッ!!>
キャーーーッ!
!!
”何が起きた。”
報告は後だ!
サイファー!あの人!
<手前から三番目、窓際のテーブル席……
男が、崩れ落ちた。>
エリス!あの男を頼む!
サイファーは!?
撃ったヤツを追う!
た……助けなきゃ!
おい……しっかりしろ!
<いち早く駆け寄った女性が、応急処置を始めた。>
私も手伝います!
では、あとを頼めるかね?私は医者を呼んで――
<――ふと、二人の視線が交わる。>
…………?
(この人……普通じゃない)
<女性の瞳に、エリスは吸い寄せられる。>
(……見える。瞳の奥に宿る、これは……力?とても激しくて、冷たくて、そして……悲しい。
この悲しみを……あたしは知っている気がする)
……あぁ……
!しっかり……
……ゼラニウムの、花……!
<それだけを言い残すと、男はそのまま動かなくなった。>
…………
ゼラニウムの花、だと?
……あの。ちょっといいですか。
私も君に質問がある。
――君は何者だ?
さて、面倒な事になった。
…………
(やはり、壁際の席にいた男か)
男を撃ったヤツを追いたいんだけどな?
…………
どうやらお前も、目的は同じらしい。
貴様、匂うな。
マジかよ。傷つくじゃねえか。
(……能力者ってヤツだな。ますます面倒だぜ)
ハナが利くんだな。……どっから来た、ワンワン。
当ててみろ。
味方じゃなさそうだ。
グルウゥゥゥゥ……
鎖が邪魔だって顔してるぜ。
お前を討つのに不都合はない。
悪いが、お前を拘束させてもらう。
やれるものならやってみろ。
ボ―ル遊びがしたいってか?ほらワンワンとってこい!
ガアァァァァッ!
story4 めぐりあう力
……あなたこそ、誰?
私はただの客だよ。
ウソよ。あなたは普通じゃない。
なぜそう思う?
<エリスは女性の手を握った。
わからない。でも、感じるの。とても深いところで。>
――あなたの<力>を。
……やめろ。
衛兵さん、こっちです!
――私は、拒絶する――
あっ……
<意識を失ったエリスを、女性はそっとソファに寝かせた。>
また、会う事になりそうだ。
――私が死んでなければね。
ガァルルゥ……!!
……おっと!おあずけだ、ワンワン!
ガァッ!
クッソ。強えな、お前!
――噛みちぎってやる――!
骨でも持ってくりゃよかったか?
黙れ!
(……とはいえ、そろそろお開きだな)
<――>
表が騒がしくなってきやがった。お互い、ここは退いといた方がいいぜ。
…………
いい子だ、ワンワン。
ガアァァァッ!
じゃあな。
…………
……
――街外れの路地裏
平気か、エリス。
……大丈夫。ちょっと気を失っていただけ。
<04>。諜報員が殺された。
”何だと?”
それから、敵と交戦した。男女二人組。所属は不明。
”聞いてるか、00。”
”ええ。……とにかく、無事でよかった。”
”敵の特徴は?”
頭脳明晰、よく利くハナに超人的な戦闘能力。そこいらの番犬ってワケじゃなさそうだ。
……女の人も、普通じゃなかった。特殊な力を持っていたよ。
”精鋭か。暗殺者と二人組の関係は?”
無いな。ヤツらの目的も俺達と同じだったようだ。
”マム、どう考える?”
”その前に、殺された諜報員について教えてもらえるかしら。”
”ヤツはただの末端だ。問題なのはその上。ボリス・シュベルツ。”
”ボリス……ブラックレターね。国外協力者、偽装亡命に内乱幇助。……それに、ワスカルート。非合法組織の存在……
……気になるわ。”
???
”何の情報かはともかく、口封じで殺された事だけは確かね。”
革新派の仕業だと思うか?
”何とも言えないわね。二人組の方が弟の駒って可能性もある。”
もしくは、<帝国>のエージェントとかな。
”馬鹿な。動き出すには早すぎる。”
”他に何か手掛かりは?”
……ゼラニウムの花。男の人が、死ぬ間際にそういったの。
兵器の名前か?04、心当たりは?
”……いや、無いな。”
”あたしもないわね……”
うーん、どうしよっか?
”04、次の手を考えなさい。”
”情報を得られる可能性があるとすれば、殺された諜報員の穴ぐらだろう。”
じゃあ、まずはその穴ぐら探しからだな。
”場所は特定済だ。”
さすがだねえ。
”あたしは<お客さま>の応対に戻るから。ああもう、やんなっちゃうわ。
ところで04、さっきから姿が見えないけど、あんた今どこにいるの?”
”……マスクのメンテナンスをしている。”
”あらそう。じゃ、頼んだわよ。 00アウト。”
”経路は追って指示する。――ムーヴ!”
story5 ヒントをやろう
――街の裏通り
……ねえ、サイファー。二人組のこと、どう思う?
俺のカンだが、ありゃ連邦の人間じゃねえな。
……あたしが会った女の人。うまく言葉に出来ないんだけど……
……どこか、似てたの。とても深いところに、同じ、何かがあった。
共通するもんがあんじゃねえか?食いモンの好みとか。
あの人も、キャンディが好きだったりしてね。
目標と思しき建物を発見した。
”スタンバイ。
どこからどう見ても、ただの倉庫だね。
ソファを置く場所には困らなそうだ。
”正面からでは目立ち過ぎる。裏口を使え。
うわあ、真っ暗。
人の気配はない。……明かりをつけるぞ。
……あ?
”すまんな。”
<ドスッ。>
”ヒントをやろう。<笛吹き男>だ。”
…………
……
…………
あの野郎、ギッチギチに縛りやがったな。ご丁寧に魔術までかけてやがる。
マム、聞こえるか。
聞こえてるよ。マムじゃないけど。
今度はどこのお客さんだ?
マスクの男とは無関係だよ。
見てたのかよ。俺のツレはどこだ?
君の縄を切る道具を探しに行った。
……少し、話がしたい。
ウイスキーでも振る舞いたいところだな。
左腕の中のモノ(・・)は、いつ使うんだい?
何のことだ?
血の証明だよ。
よく知ってるな。
壁に耳あり障子に目ありってね。
使い道なんてねえよ。使ったって無意味なだけだ。
今はね(・・・)。
つーかお前、誰だ?
貧民街のヒーローの味方。
どうして俺に接触した。
世の中を面白くしてくれると思ったからさ。
その縄の魔術は、解いておいてあげるよ。
やれやれ……
サイファー!気がついたんだね、よかった……!
まってて!その縄切ってあげるから。
俺が気絶した後の事を教えてくれ。
アッシュ、ここの書類とか資料とか、まとめて持ってっちゃった。
動いたら殺すっていわれて、何もできなくて……ごめんなさい。
気にすんな。……マム、応答してくれ。
”はいはい、こちら00よ。ああもう、あっちにこっちにと忙しいわね。”
04が裏切った。
”……何ですって?”