【黒ウィズ】Birth of New Order Story6
目次
story
リュオンは、何度かあの湖畔を訪れた。
イスカがいないときもあったし、いるときもある。
いるときは、イスカはいつもひとりだった。
毎度交わされるやりとり。それから並んで、話をするのが、いつのまにかふたりの慣例になっていた。
イスカは、インフェルナのことを教え、リュオンは聖域での生活を教えた。
お互い知らないことが多く、非常に為になった。
リュオンの騎士の格好は、戦場では畏怖の対象。イスカは、同じ姿をした騎士と戦ったこともある。
ねぇリュオン。もっとお話しして。
あなたのこと、そして聖域のことをたくさん知りたいの。戦争を終わらせるには、まずお互いを知らないとね。
ずいぶん無茶なことを言う娘だ。最初は、気にも止めなかった。だが、それが本気なのだと段々わかってきた。
リュオンは鼻で笑う。いまの戦争は、。ふたりが生まれる遥か前からつづいている。
終わらせられるものなら、誰かがとっくに終わらせている。
リュオンの心に冷たいものが差し込んできた。受け入れたのではない。正体を探るために接近したふりをしているだけだ。
決意する。今夜、イスカの正体を突き止めると――
突風が吹き、湖面には薄い波紋が出来た。土と緑の香りが、辺り一面に広がっていく。
イスカは、かなり躊躇ってから答えた。
イスカは、向き直る。
夢のようなことを大まじめに語る少女。
手を取ろうとするイスカだが、リュオンはそれを自然にかわす。
リュオンは、なにも言わずに湖面を見つめた。
可哀想という言葉の意味がわからなかった。夢や理想など描かなくても、人は生きていける。
でも、イスカは、そんな世界では嫌だという。
そこに決定的なズレを感じた。聖域で生き、命を賭けてそこを守ってきた己の生き方を否定されたような気になった。
この瞬間、わずかに灯っていた暖かい感情を捨て去る決意をした。
閉じた瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
リュオンの言葉は、イスカの思いを明らかに否定していた。希望はイスカの手から、するりと抜け落ちたのだ。
イスカ。次は戦場で会おう。戦争を終わらせたければ、お前が俺を斬れ。
リュオンはなにも答えない。風と共にイスカの前から無言で立ち去った。
その後、イスカが何度湖を訪れようとも、リュオンは、姿を表さなかった。
あれが、最後の別れにしたくない。
イスカの中にいつの間にか、小さな感情が芽生えていた。
……悲しげな唄が響いた。その唄に耳を傾ける者は誰もいなかった。
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でも、いまは義父さんを助けたいの。だから、そこをどいて……。邪魔しないでリュオン!
退かないというのなら、それでもいい。力尽くで押し通るから!
湧き立つ闘気。イスカの殻衣が、逆毛を立てるようにざわめいた。
鋭利な先端を持つ蠍の尾が、鞭のようにしなってリュオンを襲う。
リュオンは反射的に磔剣を操作し、その攻撃を迎え撃とうとするが――
なにかに気づいて、磔剣を動かすのを躊躇った。
蠍の尾は易々とリュオンに届く。危ない――君は、とっさにカードを抜いてリュオンを助けようとする。
7放たれた魔法は、蠍型の尾を弾き飛ばす。その魔法に驚いたのは、イスカと――
懐かしい声が聞こえる。それは、君がずっと求めていた声だった。
でも、なぜその騎士を守ったにゃ?もしかして聖堂に協力して戦っているのかにゃ?そんなわけないにゃ?
師匠の方こそ、どうして敵の審判獣と一緒にいるのかと君は訊ねた。
そうだったのか。だけど無事でよかった。
師匠と戦いたくはない。君は、手を広げてウィズを迎えようとした。こっちに来てと――
もちろんイスカは君の敵ではない。でも、リュオンとは、これまでずっと共に戦ってきた。
この戦いが終わるまでは、彼を助けてあげたい。だから、ウィズがこっちに来るべきだと君は言う。
君だってそうだ。リュオンたちと共に戦い、彼らが戦う理由を知ってしまった。ラーシャの苦しみに触れてしまった。
ウィズのところに飛んでいき、彼女を抱きしめたかったけど、蠍型の審判獣の味方は……できない。
どうして……?なぜウィズが、イスカの側にいる?
望みつづけた再会なのに……。
なにがあっても、ウィズのことを第一に考えなきゃいけないのに……。
ウィズのところに飛んでいけずに躊躇している自分自身に君は、絶望していた。
聖堂全体が大き<揺れた。聖都に、逃げ惑う人々の悲鳴や叫びが響いている。
内通者たちの破壊工作がはじまったのだと、ウィズは理解した。
この隙にイスカは聖堂を離脱する。冷たくなったイーロスを抱いたまま、空いた天井の穴から飛び出す。
待って、と止める君。
先ほど戦うのを躊躇したのは、ウィズの存在に気づいたから……。そうなの?と君は訊ねる。
リュオンの言葉は、君の迷いや躊躇いをすべて吹飛ばしてくれた。
ありがとうと君は告げる。そして、背中に捕まるように言う。
「空を飛ぶ魔法?残念ながら、そんな便利な魔法はないにゃ。
でも、魔法を使ってそれに近いことはできるにゃ。何事も創意工夫にゃ。」
リュオン、しっかり捕まっててと君は告げる。
そして、カードに込めた魔力を地面に向かって解き放つ。
魔力を放った反動は凄まじく、君たちは、空高く飛び上がる。
リュオンはイスカを追い。君はウィズを追う。
図らずも、リュオンと君の目的が一致してしまった。これも巡り合わせという奴だろうか。
やっと再会できたんだ。ウィズと、もうはぐれたくない。
最初から、素直になっていればよかった。
今度は迷わない。ウィズに対して、素直な気持ちを告げる。そう君は決意した。
冷たくなったイーロスの身体を地面に横たえる。
老戦士は、すでに事切れていた。イスカは、それを確かめると。顔を伏せて涙を流す。
思い出すのは、幼かった日々のこと。
雨が降る日も、晴れの日も、やさしくイスカの成長を見守ってくれた。
夜の風の冷たさは、リュオンになにひとつ。心地よさをもたらさなかった。
サザの仇が目の前にいる。そう思うと胸の内側で、溢れんばかりの感情が燃え滾る。
冷たくなったサザの骸を抱きながら、涙を堪えているラーシャの姿をリュオンは、一時も忘れたことがない。
駆けつけるのが遅れ、サザを救えなかった悔いは、リュオンの中に後悔の刻印として刻まれている。
仇を討つまで、リュオンの心が晴れることはない。後悔の刻印が消えることはないだろう。
溢れ出る感情に呼応するように、殺気が膨張する。
星の下、アバルドロスの殻衣は、イスカの内側に満ちた父への惜別と哀悼を飲み込んで。拡大し、イスカの肉体を包み込んでいく。
神聖なる裁きを受けた審判獣の肉体は、煉獄に堕ち、その魂は天に住まう偉大なる主の元へ誘われるだろう。
この裁きを下すのは、審判獣ネメシス――!聖堂による刑罰の執行ではない。
俺自身が、お前の罪を断罪する!
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雲が動き、闇が晴れ、星は完全に輝きを取り戻していた。
地表に飛び出た晶血片の原石の輝きは、インフェルナ兵が流した。血塊のようであった。
淀みが晴れた空の下では、2体の審判獣が、それぞれ、光の粒子を纏い衝突していた。
それは、さながら流星同士の衝突のようだった。
審判獣アバルドロスは、義父から受けた愛情を噛みしめ、その人を死に追いやった。敵への憎しみに身を焦がしている。
夜の光に白銀の光の粒子をまき散らし、己の身を包む殼衣を夜会のドレスに見立て、聖堂の審判獣を死の舞踏に誘う。
審判獣アバルドロスの尾は、イスカにとって3本目の腕であり、唯一の武器だった。
鞭のように素早く、風を断つ音を置き去りにして、対象の肉体を直接貫こうとする。
つまり、私が負けるということは、インフェルナが負けるってことよ。義父さんの死を無駄にはしない!
イスカの尾が振り下ろされる。向けられた先は、大地に埋まる晶血片。
聖域の者たちが、煉獄と呼ぶ地上には、赤い光を放つ石が埋まっている。
これまで、単に特殊な色をした石にすぎないと思われていたが――
その晶血片の中には、審判獣がエネルギーとする福音と同じ物質が、内在されていることが判明した。
なぜなら晶血片は、死んだ審判獣の血が凝固して出来た物質だからだ。
殼衣が膨張し、淡い光の粒子が、イスカの肉体に集まっていく。
凝集した光――それこそ、ティアマギスや審判獣が、人間を裁くために放つ、審判の光である。
リュオンの身体は、イスカの光を受けて傷つき、堕ちていく。
その間、彼の脳裡に蘇るのは、サザとの記憶……。
審判獣アバルドロスは空を飛び、リュオンにとどめの一撃を繰り出す
鋭利な尾の先端は、稲妻のごとく、鋭くリュオンを貫く。これですべてが、決したかに思えた。
肉体を貫かれながらも、リュオンはその尾をつかんでいた。
君が、以前やったことを今度はリュオンが、自らの肉体を犠牲にして、再現してみせたのだ。
リュオンは、尾を引いて、イスカを地上に引き摺り下ろした。
だが、倒れこんだイスカの真上から、リュオンがのし掛かる。そして重厚な一撃を叩き込む。
殻衣にヒビが入り、イスカの肉体に衝撃が走る。
地上で異形の存在がふたつ、もつれ合うように戦っている。
それぞれの殼衣が破れ、肉が弾け、赤い体液がこぼれ出た。
異形同士の戦い。両者を突き動かすのは、それぞれの誇りと復讐心。
血涙を弾けさせながら死闘を繰り広げる2体の審判獣の姿からは、なぜか哀れみすら感じられた。
君は、2体の審判獣の戦いを、遠くから眺める影を発見した。
君は、さらに視線を走らせる。地上にうずくまる小さい影を見つけた
イスカが地上に墜落したと同時に、地上に投げ出されてしまったらしい。
君は、意識を失っているウィズを抱き上げた。
墜落の衝撃か、ウィズは目を閉じたまま意識を取り戻さない。
君は、ウィズの身体を優しく撫でた。何度も何度も。
まず、さっきのことを謝りたい。
そしてウィズがいない時に、どれだけ心細かったかを伝えたい。どれだけ、再会を願っていたかを伝えたい。
やっとこうして、ウィズを抱きしめることが出来て、安心し、涙が溢れ出そうになっていることを伝えたい。
言いたいことが、山のように溢れてきた。
でも、ぐっと飲み込み、ただ願う。ウィズが目ざめてくれることを。
やっぱり、キミの腕の中は、温かいにゃ……。キミの手だとすぐにわかったにゃ。
キミはなにも言わずにウィズを力強く抱きしめる。
やっぱり言葉はいらなかった。
君の思い、ウィズと再会できた感情は、言葉にしなくても、ちゃんと伝わっている。
でも君は、一言だけ言いたかった。これだけは伝えたかった。ウィズと離れている間、ウィズのことを考えない日はなかったと。
それに、私が間違っていたにゃ……。イスカは、私の命の恩人だけど、イスカの敵は私の敵じゃないにゃ。
そうだね、と君も気づく。リュオンの下で戦ってきた。彼らが戦う理由も良くわかる。
だけど、イスカは君の敵じゃない。
イスカとそして、リュオン。ふたりの戦いを止める。どちらも死なないような道を探す……。
story
2体の審判獣の戦いは、勝敗が決しようとしていた。
審判獣ネメシス――リュオンの手がつかんでいるのは、殼衣が破壊され、傷だらけになったイスカだった。
首を絞められながらも、イスカは苦境を脱しようと藻掻いている。
傷つき、疲れ果て、夜風に乗せて飛ぶボロ布のようになったイスカの命運は、いまやリュオンの手に握られていた。
その細首。捻るだけで、すべてが終わる。
イスカの身体からなにかが落下する。
小さな袋に入っていたのは、イスカがみずから作った砂糖菓子だった。
リュオンに食べさせようとして、慣れないことをしてしまった。
その苦労の痕跡は、砂糖菓子の歪な形状に表れていた。
だが、お前の存在は聖域の民にとって脅威だ。ゆえに、審判獣としての力を奪わせてもらう。
契約している部位を切り離し、それで終わりにする。契約している部位を言え、腕か脚か?
脳裡に浮かぶサザの面影。
記憶は時間と共にかすれていき、いまではどんな顔をしていたかも。おぼろげにしか思い出せない。
しかし、そのサザが語りかける。はたして、その子を殺すことが、お前の正義なのかと――
リュオンの手に力がこめられる。
その手に違和感があった。ウィズが、リュオンの手にしがみついていた。
きっと本心では、イスカを殺したくないにゃ。だから、そんなに苦しんでいるんだにゃ。
君も、リュオンの手に飛びついてイスカを救おうとした。
君は言う。彼女を殺してどうなる?それは正義じゃないと、きっとサザなら言ったはずだ。
リュオンの手が小刻みに震えていた。先ほどから、力を送り込もうとしているのだが、身体が言うことを聞かない
イスカは、サザを殺した。だが、リュオンもまたインフェルナ兵を大量に殺した。イスカの義父を殺した。
戦争をしているのだ。殺す、殺されたは、お互いに言い分がある。
「私は、聖域とインフェルナだけじゃなく、審判獣と人間が共存できる世界を作りたいの。」
首をつかむ手が緩む。イスカの身体が、地面に落ちた。
人間と審判獣が共存できる世界。その理想のために、イスカは情熱を燃やしている。
イスカは……〈悪〉ではない。彼女のような考え持つものを排除する聖堂こそ悪なのだ。
わかっていた。けど、認めたくなかった。使命に突き動かされ、死んだ人間の意思を継ぐことに躍起になって――
真に正しいことを見失っていた。いや、己で考えることを諦めていた。
リュオンは、落ちたイスカの袋を拾い上げた。粉々に砕けた砂糖菓子は、まるでいまのリュオンの心のようであった。
大地が揺れる。地の底が煮え立ったように地表が波打っている。
星の位置すら動きそうな、激しい震動。地震というには、あまりにも不自然な揺れだった。
聖都の方角。覆い被さるように皿く巨大な影。
聖堂の背後に聳えていた巨大な審判獣が、動き出していた。
聖都にて人々を〈善〉と〈悪〉に判別してきた大審判獣エンテレケイア。
いままでは、その圧倒的な存在感だけを示し、自ら動くことはなかった。
それが、自立して活動をはじめている。
聖皇と呼ばれていた老人が死んだためだ。エンテレケイアが覚醒したのだ。
聖都は、悪夢に包まれていた。大審判獣の下敷きになって人が死んでいく。
空の月に、悲鳴が吸い込まれていく。
静止していた人類への審判が、再開されたのだ。
***
聖皇の制御を失った大審判獣エンテレケイアは、
覚醒に至った。
その威容は、天を衝くほど。踏み出せば、地が割れ、石造りの建造物は、音を立てて次々に瓦解する。
聖堂が崩れ、聖域の民が暮らす家々も破壊されていく。
逃げ惑う人々。子どもが泣き叫び、家を失い、家族を亡くした者たちの嘆きが響き渡る。
焼けた家は、赤い火の粉を散らし、黒煙が聖都に立ちこめる。聖都は死と煙と血に満ちていた。
残念だったなイーロス!お前は私を信じたようだが、私は最初から、お前を利用することしか考えていなかった。
そして、イーロス。お前は、私の期待に応えてくれた。予想以上に有能な戦士だったよ。
影のように立つシリス。大教主に忠実ではあるが、聖都の惨状を見て、なにも感じない男ではない。
新しき世界では、審判獣がすべてを支配し、人間は福音を生み出す価値しかもたないようするに、人は餌だ。
福音を精製する方法を知っている我々一部の人間だけが、餌となることを免れる――
シリス。お前はこちら側(・・・・)に来たいかね?それとも、餌となるだけの人生を迎えたいかね?
もしくは……調整部屋(・・・・)に入りたいかね?
調整部屋――その言葉を聞いた瞬間、シリスの表情が歪み、全身が震え出す。
それは、シリスに心理的恐慌を引き起こすトリガーとなる。
言葉に躊躇いがある。シリスが忠誠を誓い、戒律を遵守している聖堂は、いま目の前で崩壊しようとしている。
それでいいのか?と内側からの声が、何度も心の扉をノックする。
人間そのものが価値を失った、究極の世界。それが私の描く理想の世界だよ。
戒律を守って戦ってきた騎士たち。そして聖堂を裏切ったがために処刑された父と兄は、なんのために死んだんだよ)
彼らが求めていたのは、少なくとも、エンテレケイアに破壊し尽くされた、寂寞とした世界ではない。
聖皇を斬ったイーロスも、そのような世界など望んではいなかったはずだ。
聖域に暮らす敬虔な信徒たち。ほとんどの民は、このように信心深く、そして穏やかだ。
彼らの生活を守るために、執行騎士は存在するのだと、改めて気づかされる。
火の手は高々とあがり、夜空と海の境界を焼き尽くす。
聖都の山を必死で駆け下りてくる聖域の民。もはや聖都に安全な場所など、どこにもなかった。
君は、訊ねた。あの巨大な審判獣は、なんのために存在しているのかと。
いまでは”英雄”と呼ばれているひとりの人間が犠牲となり、エンテレケイアを封じ込めた。
お陰で人間たちは、エンテレケイアに庇護された区域。――聖域という安全圏を手に入れた。
聖皇とは、その英雄の役割を受け継ぐものである。
エンテレケイアが目覚める時、最終審判(エスカトン・ディエティティス)が開始され、人類は神話以前の時代に戻るってな。
最終審判。つまり、あの大審判獣を止めることは、誰にもできないの?と君は訊ねる。
君は言う。イスカならば止められるかも。
審判獣と会話ができるあの子なら。
そんなに笑わなくてもいいのにと君は思った。
たしかに馬鹿げているかもしれない。でも、わずかな可能性がある以上は、賭けてみたい。黙って滅びを待つのは嫌だ。
決まっている。聖都の民を助けに行く。
困っている人、泣いている人を目の前にして、平然としていられるほど、君の心は凍り付いてはない。
誰かに頼まれたわけでもなく、なんの見返りも得られなかったとしても。
いままでウィズと共に、たくさんの人を助けてきた。
人助けの前に、出来るかどうかなんて、あまり考えたことがない。
だから今回も助けに行く。リュオンはいかないの?と君は訊ねる。
リュオンがそのつもりなら、当然手伝うよと君は言う。
リュオンは、胸の鎖をつかんだ。鎖は、リュオンの体内に吸い込まれており、すでにかなり短かった。
いくぞ、魔法使い!
魔法使いと執行騎士は、赤く燃える空に向けて飛び立つ。
光は白銀の光帯となり、闇の空に流星めいた光芒を描く。
地上の人は見る。真っ直ぐに向かう救いの光。それを見て人々は願う。
理不尽な裁きが、ただちに中止されんことを。そして、新たなる英雄の登場を――