アヤメ・思い出
紅茶好き少尉 アヤメ・トウドウ 紅茶をこよなく愛する軍人少女。 優れた剣技を誇るが、紅茶を飲むと表情が緩む。 |
思い出1
はじめまして!アヤメ・トウドウ少尉です!
軍服をまとった少女が、きりっとした表情で敬礼する。
少尉?
はい! 帝国軍所属です!見聞を広め、鍛練を積むべく、出向してまいりました!
そうなんですか、今後ともよろしくお願いします。
はい!こちらこそ、よろしく願います!
軍人さんかぁ……堅っ苦しそうな人ねぇ~。
あ、ところでみなさん!よければ紅茶はいかがですか!?
紅茶?
はい! 我が国の誇る紅茶です!その質と生産量は世界一!味わいは上品にして繊細で……
語るアヤメの表情が、へにゃっと幸せそうに崩れていく。
……やっぱ、そんなに堅っ苦しくなさそうね。
思い出2
はあ……、おちゃがおいしい……
アヤメが、とろけそうな表情で茶を飲んでいる。
アヤメ、なに飲んでるの~?
『ウメコブ茶』と言いまして。東の島国で飲まれているものです。
紅茶じゃないんだ?
ええ。でも、こちらも絶妙な味わいですよ。
へぇ。紅茶と飲み比べしてみたらどっちが上かな~?
の、飲み比べ……?それはもちろん紅茶が……、ああっ、でも、こちらもやはり……
はっ、両方の茶を味わうということは、そもそも幸せすぎて判定ができないのでは……!?
うん、アンタが無類のお茶好きだってことは、よぉ~くわかったわ。
思い出3
おや、みなさん、こんにちは。
こんにちは、アヤメさん。よかったらお昼を一緒に食べませんか?
ありがたいですが……申し訳ない。今日は手合せがあるのです。
手合せ?
はい。私は兄たちの影響で、昔から剣術を学んできました。
それでよく、いろんな方から手合せのお誘いを受けるのです。
ふぅん、人気者なんだ~。
いえ、私などまだまだ……剣術も人格も、未熟の一言です。
今日お誘いくださった方なんて、手合せのたび食事をごちそうすると言ってくださるんです。
ん? それって……
修行相手になっていただけるだけで十分にありがたいので、自体していますが……
それでも毎回お誘いくださるのです。律儀にして誠実……私もかくありたいものです。
では、急ぎますので! 失礼!
相手の人、根気強いのねぇ……
思い出4
むぅうぅぅ~……
アヤメが、頬をふくらませながら、茶を淹れる準備をしている。
アヤメさん?どうかしたんですか?
ああ……みなさん、すいません、お見苦しいところを……
アンタがあんな顔するなんて、珍しいわねぇ。何かあったの~?
……先日また、いつも手合せいただき方とお会いしたのですが……
あのいつも食事に誘ってくる、『律儀で誠実』な人ね。
その方が……『女だてらに剣をとって戦うのはやめろ』と言うのです!
へぇ~。
『危ないから』とか『似合わない』とか、『軍人をやめて毎日料理を作ってくれ』とか!
へぇ~。……ん?
まったく失礼はなはだしいですよ!紅茶を飲まねば気が静まりません!
いや……アンタ、それって……
はあ……。お茶がおいしい……
…………
思い出5
ふう……
紅茶を飲みながら、アヤメがため息を吐く。
アヤメさんが、紅茶を飲んでため息なんて……何があったんですか?
……帝国には獣人で編成された精鋭部隊がありまして、先日、その方々と共同で任務にあたりました。
襲いくる敵軍に、我々は団結して戦い……見事勝利を収めました。
そうしたら……軍人部隊の方々が、私の働きを認め、大尉に推挙してくださって……
すごいじゃな~い!でも、何を悩んでるの?
その……女性の大尉というのは、軍にはまだ前例がないのです。
先日の件もありますし……殿方の偏見があるなかで、大尉という大役をまっとうできるのかと……
そう考えると自信が持てなくて……うぅ……お茶の味がしないぃ……
思い出6
この光は……! あたたかく……そして何より、力強い……!
軍に入った頃を思い出すようです。あの頃の私は希望に満ちていて……何も恐れはしなかった!
勇気なくして軍人は務まらない、そんなことを忘れていたなんて……不覚です!
ありがとうございます、みなさん!おかげでわかりました……自分のすべきことが!
私、推挙を受けます!大尉となって、この身の働きで軍人の魂を証明して見せます!
アヤメさんなら、きっとだいじょうぶですよ。
はい! がんばります!でも、まずは……
はあ……。お茶がおいしい~……幸せ~……
……そのゆるんだ顔、軍の人にみられないようにね。
覚醒絵・覚醒画像
茶を愛する帝国大尉
その他