【白猫】実録!魔王の出る舞台! Story
照明、音響、受付、客出し……魔王の舞台は大忙し! |
開催日:開催期間:6/6 16:00 ~6/13 15:59 |
story1 元魔王の頼みごと
お前たちに頼みたいことというのは他でもない。俺が所属する『劇団びたーちょこれーと』の本公演を補助して欲しいのだ。
うん、わかりやすいわね。
そう。まず『てい』を伝えること。最初に肝心なのはそれに尽きる。
喜劇なのかシリアスなのか、曖昧なうちは、お客様もどう観たらよいか困惑するしな。
早速演劇論を語らないでよ。
それでレザールさん、具体的にはどうすればいいでしょうか?
具体的には、何はともあれ一緒に劇場まで来てもらいたい。
……『具体的には』と二度繰り返すことで、一つ目の目的がわかり、お客様も物語が把握しやすく……
ちょっと!言ったよね!?いまここで演劇論を語らないでってば!
演劇のことで頭が一杯なのだ。何せ、本番を明後日に控えた小屋入り初日だからな。
いやぁ、緊張する~。
アンタはアホでかつマイペースよねぇ……ホントに元は悪者なの……?
しかし緊張するのはまだ早い!
どっちよ!?
仕込みは時間との戦いだ!
舞台監督が引いてくれた小屋入りスケジュールは五分刻みだ!
少しでも押してしまうと、劇場稽古の時間が減ってしまう!
最悪ゲネプロがなくなってしまうかもしれない!
そうしたら初回のお客様に、本来のクオリティの芝居をお見せすることが出来ない!
ともすると、『初日割引』の対応すら必要となってしまう!
ぎにゃー!勝手にペラペラしゃべるなー!アタシらにはわからんからー!
とにかく、急いで劇場へ向かわなければいけないってことですね!
その通りだ!ゆくぞシャグラン!
あーっ!!!自分ばっかり、ドラゴンで空を飛んでからにー!
待ちなさいってばー!
初級:劇場へ
story2 アクシデントはつきもの
おはようございまーす!!!
おせぇぞレザール!
さーせん!舞監さん!
俺のいたとこでは『ブカン』じゃなくて『ブタカン』だっつっただろーが!
さーせん!以後気をつけます!
ったくよお!
……あ、どぉ~もぉ~♪こちら、当日制作のお手伝いさんですね♪よろしくお願いしますぅ~♪
ん、あ、うん、よろしく。
演劇のお手伝いは初めてですが、一生懸命やらせていただきますね。
いやいや、大丈夫ですよ、難しいことはな~んにもありませんからね。
いてくれるだけで、ホント、いてくれるだけでありがたいです♪
……おいレザール!ボサっとしてんな!まずは楽屋の整理からやれ!
うっす!
ホント、らく~に、のんびり待っててくださいねぇ~♪
……すごい裏と表ね。演劇って、体育会系なのねえ……
そうだね……
……とーじつせーさくって、なんのことかな……?
多分、頼まれてた、チケット受付のこととかじゃないかな……
…………
……
……搬入班はまだかぁ!?
冗談じゃねえ、大道具の建て込みが終わらねえと、照明班も待ちになるだろうが……!
まさか、どこかで事故にでも……?
俺が見に行きます!
あぁ?レザール、お前がどうやって……
シャグランに乗っていけばすぐですから!
おお!そいつがいたな!悪いが、頼んでいいか?
任せてください!――ゆくぞ、シャグラン――
第二形態――<ニトン・トラック>!
<なんと!見る間にシャグランが巨大化し、馬車サイズとなった!>
すぐに戻ってきま~す!
な、なんてヤツ……!シャグランを馬車扱いしよってからに……
それだけじゃないんだぜ?
シャグランの赤い目の光は照明効果に使えるし、口からはスモークも吐ける。
首飾りに仕込まれているルーンからは音楽も流せるし、もっと巨大化すれば公演が打てるテントにもなる。
まったく、新米のレザールにはもったいない邪龍だよ、あのシャグランは……
ソ、ソウネ……
中級:搬入
story3 <しゅーと>
<――危惧した通り、搬入班は道中で足止めを喰っていたらしい。
シャグランのおかげで、なんとか材の搬入は出来たのたが――>
明日のゲネは死守するぞ!泊まれるメンバーは、作業に協力してくれ!
<大幅にスケジュールが遅れたため、照明班の作業は深夜に及んでいた――>
……あふ……
大丈夫?寝ててもいいよ、キャトラ?
そうもいかないわよ……みんながんばってるんだし……
それに……いまやってるの、<しゅーと>だっけ?見てると割と面白いわね。
うん、そうだね。
すいませーん!その灯体は、ドン開きにしてツラを嫌ってくださーい!
(とうたい……というのは照明のことを指しているらしい。専門用語なのだろう。
ここにある照明は、ルーンによって任意に点けたり消したりすることが出来る。
指示された通り、脚立に上って、照明のうしろについているつまみを調節し、角度を決める。
用語も段々わかってきた。『ドン開き』は、明かりを一番大きくすることだ。
『ツラ』というのは客席のことだ。『嫌う』は、光がそこに当たらないように調節することを言うらしい。)
<主人公>さーん!バッチリでーす!初めてとは思えないっすねー!
すいません、こんなことまで協力してもらっちゃって……
(――この作業、中々楽しい!自分に向いてる気がする!)
おーし!レザール!ツラのとこに立てー!
はい!
<レザールは舞台に上がると、顔の左右で両手を広げた。>
……?
ああするとね、てのひらに光が当たるだろ?照明の具合が良くわかるのさ。
なるほどね!
そのまま力二でゆっくり歩いてくれー!
はーい!
<レザールはそのポーズのまま、ゆっくりと上手から下手へ力二歩きしていく。>
……ん~……その灯体、ちょっとメが回ってるんじゃねえか?
あ、替えましょうか?
おめーは動くなレザール!!
さ~せ~ん。
頼む。
『…………
<シャグランはゆっくり飛び上がり、灯体――照明の中の電球を口で交換した!>
しゃ、シャグラン……!なんて器用なの……!
驚くのはまだ早いぞ。シャグランはな、尻尾で卓を操作することも出来るのだ。
すごいわ!『たく』ってのがなんなのかはよくわからないけど!
卓というのは、ルーンの力で照明を遠隔操作することか出来る装置のことでな……
おいレザール!猫としゃべってんじゃねえよ!
さ~せ~ん。
(ごめんね)
(いいさ)
おーいレザール!サスの位置取るから上手奥行ってくれ~!
はーい!
……よし、そこだ。そっから正面に見えるモンで立ち位置覚えてろよー!本番は暗転中だかんなー!
よし、キャトラのハナだ。
バカヤロウ!それは動くだろうが!動かねえモンで場所取れよ!
さ~せ~ん。
<――結局、照明の作業は明け方まで続いたが――>
(中々楽しかった!心地良い疲れだ!)
上級:夜を徹して
story4 場当たり稽古
<――舞台仕込みの二日目。
現場がピリピリしだした。>
レザール!鎌が見切れてんだよ!
えっ!?さっきは大丈夫でしたよね?
……たしかに。……ん?暗幕がズレてんじゃねえか!
すぐに固定しまーす!
バカ、養生を直に貼るんじゃねえ!タルキ下に巻いて止めろ!アンピン持ってねえのか!?
ないっす!
誰かレザールんとこ持ってってやれ!ダッシュ!
……なんか、みんな殺気立ってるわね……
時間との戦い、だからでしょうね……
準備オッケーか!?よし、もっかい今のシーンを……
椅子の位置が違いまーす!
誰か戻しとけよ!いまのあいだによぉ!!!
よし、ちょっと前のセリフから!
――この音楽は――
レザール!直前すぎるだろ!
さーせん!
もう少し前のセリフから――
『…………
ん?大丈夫だって?悪ぃなぁシャグラン、合わせてもらって……
『…………
レザール!シャグランに感謝しろよ!いまのとっからでいいぞ!
――この音楽は――
……この音楽って、シャグランが切り替えているってことよね?
そうだね。
シャグランはお利口ねえ……タイミングもドンピシャだし……
これは、あの夜の……!まさか、あなたなのか!?私に会いに来てくれたのか?
レザール!BGM上がるから、いつもより声張れよー!
私に会いに来てくれたのか!?
もうちょっと張れー!満員になったら、お客様が声吸うかんなー!
私に会いに来てくれたのか!!!?
よーし!OK!次、転換かあるから、シーンの最後の方から――
椅子の位置変わるんで動かしまーす!役者のみんな、小道具あるか確認してー!
……がんばってるわねえ。レザールも、シャグランも……
そうね……
…………
……なんでがんばってるのかしらね……?
……好きだからじゃない……?
……好きならいいか……
<かくして、場当たり(というらしい)は無事に終わり――
――明日はついに、公演初日を迎える――!>
絶級:きっかけ確認
story5 開場直前
おっす!本日はお世話になります!
あ、ゲストのチャッピーさんですね♪どうぞこちらへ♪
自分は何をすればいいのですか?
軽く拳法を披露していただければ♪
……むううう……緊張してきました……
大丈夫ですよ♪サッっとリハやりますんで、それ通りやれば♪
チャッピーさんには華がありますから!自信持ってください♪
自分に……華……
……おっす!堂々と、リーグンドーをお見せしてあげます!
こんにちは。今日はゲストとして招かれて、なんだかやる気も出ているの。
リンデさん、お待ちしてました♪
公演を観た後、舞台上でフリートークをすればいいのよね?
ええ♪もう、正直に、なんでも言っちゃって問題ありませんから♪リンデさんには華がありますから♪
華……ね。なら、自由にしゃべらせてもらうわね。
ええ♪では、お席にご案内いたしますね~♪
アラアラ。チャッピーとリンデもこの公演に協力するのね。
そうみたいね。
……緊張してきた。
レザール!?楽屋いなくていいの?準備は?
開場してからで十分間に合うさ。
余裕ぶっこくわねえ?
……俺はな。
この時間が、なんとも言えず大好きなんだよ……!
開場直前の、誰もいない客席!バタバタしている受付まわり!静まり返った舞台上!
そうだよ、受付は準備してるんだから邪魔しないでよ。
客電のみの薄暗闇の劇場内を歩いているとな…………なんかこう……
……なんかこう……!なあ……!やっぱり、本番って、楽しいなぁって……!
うるさいわねえ。もっと集中してなさいよ。
ははは!この方法も一つのやり方なのさ!
よし!本番前の、最後の発声練習だ!
ア、エ、イ、ウ、エ、オ、ア、オ!
レザールさん!外にはもう、待ってるお客様がいるんですよ!
――な!!!なんだって!!!
レザーーーーール!!!このバカヤロウ!楽屋で大人しくしてろー!
さーせーーーーーーん!!!
まったく……あの男は、何をはしゃいでいるのか……
でも、なんだかわくわくするね♪公演の本番直前って♪
…………
それでは、開場しまーす!よろしくお願いしまーす!
よろしくお願いしまーす!
あっ!もうお客さんが続々と……
こ、これは……!
満員御礼ねっ!
破滅級:初日開演
最終話 客出し・お見送り
本日はご来場、ありがとうございましたー!
公演はあと三日続きます!お席まだまだございますので、是非、もう一度、今度は違う席で観ていただいたりですね。
お友達を誘って頂いたりすると、大変ありがたいです!
ぜひとも、ですね!満員御礼で、打ち上げで美味しいお酒を飲ませてください!
それでは、本日は本当に、ありがとうございましたー!
すごい拍手!初日は大成功ね!
結構トチったりしてたけど、まあそれもナマっぽかったわよね!
レザールさん、すごいね。代表してあいさつまでして。
主役じゃあなかったけどね。存在感だけはあるヤツだからねえ。
…………
……
見事であったぞ。冥界の颶風よ。
不死者の帝王か!よくぞ来てくれた。
うむ。
しかし、まだ上があるな。
上とは?
よいか。笑い声は起きずとも、客たちはニヤニヤして観ている場合がある。
沈黙を怖がるな。嵐の前の静けさと思え。
肝に銘じておこう。
うむ。
あー!悪い王子なのだー!
がおー!食べちゃうぞー!
あはは~♪逃げるのだ~♪
いい物語だったわ。
ありがとうございます!
機会があったら、私も踊らせてくれない?
是非ともお願いします!主宰に話しておきますね!
ふふ。千秋楽まで、無事に終えられることを祈ってるわよ。
今日はお世話になりました!また呼んでください!
いいお芝居だったわ。これからが楽しみな劇団ね。ただ、集客はもっとがんばるのよ。全ステージ満員になるくらいに。
なんか……よかったわね!
うん。みんな笑顔で帰ってる。私まで嬉しくなるわ♪
お前たち。本当に助かったぞ。ありがとう。礼を言う。
いいえ、レザールさん。私たちの方こそ、貴重な経験をさせてもらいました♪
そう言ってもらえると救われる。
あ、当制のみなさん、ありがとうございました~♪
受付もスムーズでよかったです♪良かったら、残りの公演も手伝ってくれませんか?
いーよ♪
ありがとう、キャトラ。
じゃあ、次は明日ね。今日はどこに泊まればいいかな?
え……?……とま……る……?
え?どうしたのよ?
……すまんがウチの劇団に、そこまでの予算は……
ええっ!?
そうだ!シャグランのテントではどうだ?
ぎにゃー!そんなら飛行島に帰るー!
すまん、交通費も、その、あの…………………な?
ぎにゃー!別にいいけどさー!
もっと有名になりなさーい!この貧乏劇団がー!
ウチが売れるのは時間の問題さ!
ぎにゃー!な~んか、そーうまくはいかない気がするわー!
その他