カルディナ(リベンジ)・思い出
思い出1
最近、どうにも他の海賊にお宝を持ってかれることが増えてね。心機―転ってとこ!
海賊仲間のツテをたどって、信頼できる情報屋を見つけてさ。文字通り、お宝情報を手に入れたの!
…………
数日後……
「……確かなの?」
「ああ。例の地図を手に入れた同業者が、女海賊と密会した。
おまけに昨日、宝島の方角へ向かう船の目撃情報があったのさ。」
「追ってみる。」
思い出2
<宝が眠るという島の遺跡に挑むカルディナだったが――>
「あーもう、邪魔ッ!
……チッ! 相手にしてらんない!
はあっ、はあっ……! あれは……!」
<遺跡の奥にあった広い空間。数十歩ほど先の台座に置かれていたのは――>
「やっりイ! 宝箱はっけ~ん!これでこそ高い金払ったかいがあったってものよ!」
<カルディナが台座へ歩み出そうとした、その時――>
「危ない! 動かないで!」
「!? こんな所に人が……?アンタ、一体!?」
「私はレーナ。あなたを助けに来た。」
「!!? ……何を言って――」
「10秒でいい。見て。」
<レーナと名乗る少女が、丸めた紙クズを台座の方へ放り投げると――>
「……紙が、燃え上がった……?」
「古典的な炎上トラップ。すぐ解除する――」
<そう言いながら、レーナは台座に近づき――>
<宝箱から大粒の宝石を取り出し、手際よくバッグにしまった。>
「ご苦労様。」
「……は?」
「全部、デタラメ。特殊な紙を燃やしただけ。」
「ちょっ!?……そのお宝、返しなさいよ!」
「お断り。」
「!!」
<突如、白煙が立ち上り、またたく間に部屋をおおっていく……!>
「しまった!?ゲホッ、ゲホ、ゲホっ……!」
「またね。」
「ゲホッ、ま、待ち…な………!
ゲーホッ、ゲホ、ゲホっ……!ハアッ、ハアッ……!
くっそぉ……!……油断、してたぁ……!」
思い出3
<カルディナがひどくいらだった様子で広げた宝の地図をにらみつけている……>
「……くっそお……次こそは、次こそは絶対……!」
「かるでぃなーっ!!!」
「わわわわっ!?」
<五分後……>
おそらく向こうは、略奪専門のトレジャーハンター。面倒なのに目をつけられたよ……!
このキャトラさんが編み出した奥義を授けるわ。修得すれば、その子を振り切れるかも。
信じられないかもしれないけど、よーく見てて。最初の構えは、こう――
! この構えって、もしかして……!
(猫にしかできないやつ……!)
キャトラ・ステップ!!
思い出4
<カルディナとレーナが目前の財宝を狙い疾走している――!>
「今度こそ……譲らないッ!
邪魔するんじゃないよっ!!」
「はっ。」
「! これは……!」
「じゃあね。」
「……ちょっと、待ちなさい!」
「お断り。」
「そうじゃなくて!」
<カルディナはレーナにおおいかぶさる様にして飛びかかる!>
「な……!
<次の瞬間――>
<遺跡の天井が激しい音を立てて崩落し、財宝ごと前方の通路をふさいだ――>
「……!」
「危ないとこだった……アンタ、大丈夫かい?」
「……なぜ助けた。」
「……え?」
「私は敵。なぜ助けた。」
「…………
他人の命を犠牲にしてまで宝を手に入れるつもりはない。……それだけよ。何か文句ある?」
「待ってて。」
<レーナはカルディナに背中を向けてかがむと、紙を取り出して何かを書きつけ始めた。>
「ちょっと……アンタ何してるのさ?」
「はい。」
「……えっ、ちょ……これ……手紙?」
「またね。」
<レーナはカルディナの目をじっ、と見つめたかと思うと、遺跡の出口へ走り去った……>
「……なによ、アイツ……?
……えーっと……
……『拝啓 女海賊様におかれましては一層ご隆盛のこととお喜び申し上げ――
えっ!? なにこれ……めっちゃ長い……!」
思い出5
でも、ね……
…………
……
<カルディナが一人、星空を見上げるようにして立っている。>
ああ、主人公かい。……嫌な夢を見て、眠れなくてね。
……燃える船の上で父さんが、アタシを守るために、魔物たちと戦ってる夢さ。
夢の中でアタシはいつも、泣き叫ぶことしかできないんだ。父さんは死に物狂いで戦ってるのに。
……宝を返してもらう話、迷ってるんだ。申し出に甘えていいのかって。
その金で父さんに会えたとして、父さんはアタシを立派な海賊って認めてくれるのかな?
……なんて、ね。
思い出6 (友情覚醒)
この光は……主人公、また、アタシに……?
そうだね。アタシは……最後まで戦い抜きたい。父さんのように。
もう一度、あの子に挑んでみるよ。……もし、駄目だったとしても――
…………
……
「……本当にやるの?」
「ええ、もちろん。この先に最後のお宝があるわ。それを賭けて勝負しましょ?
アタシが負けたら、横取りされた宝はゼンブ、アンタのものでいいよ。」
「私は別に……」
「これはアタシのケジメでもあるの。だから、お願い。」
「……わかった。」
「よし。……それじゃあ……いくよッ!」
<合図と共に、2人は火球のように駆け出す!>
「ふうっ……!!」
(! 早い。攻撃の衝撃を利用して前に移動してる……)
「……負けない。」
<二人は足もとすらさだかに見えない遺跡を疾駆する!>
「――見つけた!
<カルディナの視線の先に、大きな宝箱が――>
「たあああっ!!」
<カルディナは頭から宝箱に突っ込む!>
「譲らない。」
<レーナが握り込んでいた<ソレ>を力強く引くと――>
「――ぐああっ!!?」
<カルディナは宝箱の数歩手前で地面に叩き付けられるように倒れ込んだ。>
<レーナはその隙に宝箱に駆け寄り、入っていた金のティアラを素早くバッグの中にしまった。>
「……!アタシの足に、糸が……!?いつの間に!」
「極細の<ナノフィラメントカーボンワイヤー>。並走した時、仕込んだ。」
「またアタシの、負けね。」
「……ごめんなさ――」
「アーッハッハッハ!!
あー、すっきりした。最高に楽しかったよ。とーっても、勉強になった。
宝は、アンタのものさ。……またどこかで会えたら、次こそアタシが勝つからね。」
「……うん。また、いつか。
! あ、そうだった。これを渡しておかなきゃね――
…………
……
<カルディナは水平線の、そのずっと先を見つめている――>
(でも、いつか必ずレーナに勝ってみせる。そしたら、父さんにもっと近づける気がするんだ――
……父さん。アタシ負けた。だけど、恥じてなんかないよ。全力で戦ったんだもん。)
…………
……
「ほォ……それで無口な嬢ちゃんにもついに、文通相手ができた、ってことかよ!」
「そう。」
「ハッ! 珍しい宝があるとか言って現れやがったと思ったら、その話がしたかっただけだろ! ああン!?
やることがオメエの父ちゃんと同じだぜ! 親子そろって無口で不器用な海賊だ、マッタクよォ!
……まァ、いい。その女、近いうちにオレに紹介しろ。嬢ちゃんが認める程の腕利きだろォ?
間違いなくオレの海賊団に、ふさわしい人材だろうよォッ!
ケハハハハハハハハァ!」
誇り高き女海賊
その他