フローリア(ギャラクティカ)・思い出
フローリア・レクランセ CV:東城日沙子 草花の声を聞く事ができる庭師。 その瞳で、自身の生きるべき道を見すえる。 |
思い出1
<贋作の太陽>から解放された、聖なる花の乙女――フローリア。
療養を終えたいま、彼女は久しぶりに飛行島へとやってきていた。
それでもほんのわずかに、意識だけは残っていたんです。
……依り代にされるなんて……さぞ、お辛かったでしょう……
……ですから、少しでも元気になっていただきたくて、お花をお贈りしようと思っているのです。
まあ、もうじゅーぶんゆっくりしたとおもうけど……ゆっくりに限界はないからね! ――ムゲンゆっくりよ!
……だから、その……
思い出2
草や木のささやき……花たちの産声や歓声……歌声。
あんなにもにぎやかだった私の世界は、いまでは、もう……
……いまにも飛びそうになるわずかな意識の中で、私は希望の光を見失わないようにしていました。
いつかまた聞けるであろう草花の声と、それから――スイレンの人。
……生きて戻って来られただけでも、感謝せねばなりません。
そして私は、生きねばなりません。命を懸けて救ってくださった、皆さまの為にも。
ですが、わからないのです。……生きるべき道が、私には、見えなくなってしまったのです……
……スイレンの人……アシャクァトルさんの事よ。
思い出3
はあ、はあ……――退きなさい!
次から次へと……どうしましょう……
く……!
vガアアアアアアッ!
v…………
v…………
……この香りは……スイレン?
vグォォォォォォッ!
…………
(スイレンの、人…………何て、辛く、悲しい声……)
***
ここで私は……あなたと出会った。
フローリアは、草木が生い茂る鬱蒼とした森を歩く。
それから私は、あなたを追い求め……再会し……そして――
時代の終わりを告げに来た……
あの時……薄れゆく私の意識に流れこんできた声……
――あなただと、すぐにわかりました。
民の命で生き永らえる貴様に、中天はくれてやれぬ。
――その台座ごと! この牙で噛み砕いてくれよう
悲願を果たしたあなたは、そのまま、何処ともなく去ってしまった……
あなたの声。あなたの気配。そして……スイレンの香り。
彼女は瞳を閉じたまま、幾つもの枝葉に遮られた小さな天空を見上げる。
もはや、会うことは叶わないのですね。
思い出4
kおかえり、フローリア。
kええ。クジョウの用事は終わったから。
調子はどう? ……体の方は、もうすっかり大丈夫みたいね。
私を<太陽と蛇の民の里>へ、連れていってもらえませんか?
k……あなたは、行くべきだと思ってるのね?
kわかったわ。連れてってあげる。
kさ、あなた達も準備して。
k(イヤな思い出しかないのに、行きたがっている。きっと、何か理由があるはずよ)
k少しずつだけど、里は良くなってきているの。……わかる?
k……ねえ、フローリア。草や花の声は、まだ……?
荒れ果てた地を、フローリアは歩く。
……どうも。
青年は軽く会釈をすると、彼女の横を通り過ぎた。
k心に負った傷を癒やすには、時間がかかるわ。
何事か考えていたフローリアだったが――
k……フローリア?
時間はかかるかもしれない。乾いた大地に花を咲かせるのは、簡単なことじゃないから。
でも……簡単じゃないからこそ、やらなければ、と……
k……わかった。
kあなたは私の親友。断るわけないでしょ。
こうして一同は、里の大地を思い思いに耕し始める。
高く昇った太陽が、彼らを容赦なく照りつけていた――
思い出5
フローリアは、耕した土の再生を試みた。
不純物を取り除き、丁寧にふるいにかけ、腐葉土や堆肥などを混ぜる。
種をまくまでに、ずいぶんと時間がかかった。
――日々は矢のように過ぎてゆく。
ええ。かわいそうですけど、こうしないと元気に育ってくれませんから……
彼女は、<声>が聞こえないまま、花たちの世話を続けている。
里の民は、そんな彼女を、どこか不思議そうな目で見ていた。
……花を、育てているの?
……咲くかしら?
……そう。
――また、時が経つ。
kフローリア、心配するのはわかるけど、一晩中ここにいるつもり?
そう、ですね……
フローリアは、ついたばかりの小さなつぼみを、優しく撫でる。
移ろいゆく時が、そのつぼみを、少しずつ大きくしていった――
そして……
<太陽と蛇の民の里>は、生命の輝きに満ちた。
kおめでとう、フローリア。
……花たちの声は聞こえないけれど……彼らは、きっとよろこんでいるはずです。
思い出6 (友情覚醒)
k……見て。
里の民達が、花畑へと集まってくる。
彼らは美しく咲いた花々を呆けた表情で見ていたが、やがて――
kフローリア。私も、あなたに見て欲しい。
あなたがたくさんの愛情を注いだ花たちを見る、彼らの顔を。
フローリアはゆっくりと目を開ける――
…………
kあなたにしか出来ない事よ、フローリア。……本当に、すごいと思う。
あの……
ありがとう。
世界には、こんなにも綺麗なものがあるんだって、教えてくれた。
だから……ありがとう。
少女は泣いていた。
途端に熱いものが込み上げてくる。その瞬間――
ありがとう!
フローリアの世界は、豊かな音の色彩に満ちた。
こんなに綺麗に咲かせてくれて、ありがとう!
あなたのおかげよ、フローリア――
みんなが喜んでくれて、わたしはとってもうれしい!
聞こえてる? フローリア!
みんなの声……! いっぱい!
……ありがとう……ありがとう……!
***
私にしか、できないことを……
フローリアは里の民を見つめる。また少し心を取り戻した、彼らのきらめく瞳を。
k……もう、大丈夫なのね?
…………
花畑の一角に咲く純白の花に、フローリアは歩み寄る。
そっと撫でると、大好きな香りがふわりと漂った。
遠くの方から何かが応えたような気がして、彼女は空を仰ぐ。
瞳に映った青く美しい中天は、フローリアを、どこまでも優しく包んだ。
その命、草花とともに
その他