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フローリア(ギャラクティカ)・思い出

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

フローリア・レクランセ CV:東城日沙子
草花の声を聞く事ができる庭師。
その瞳で、自身の生きるべき道を見すえる。


思い出1



<贋作の太陽>から解放された、聖なる花の乙女――フローリア。

療養を終えたいま、彼女は久しぶりに飛行島へとやってきていた。


皆さまには本当に、ご心配をおかけしてしまいました。

ホントよっ! ……でも、戻ってきてくれて、よかった……

キャトラさん……ありがとうございます。

お体の方は、大丈夫なんですか?

はい、すっかり良くなりました。

そーいや、あの一件のあと、カスミと一緒にいたんだったわね。

カスミにも、すっかり世話になってしまいました。

カスミさん、いまはどこに……?

別のお仕事があるとかで、クジョウの島へと帰っているみたいです。

あの子もナカナカ忙しいわねえ。

ところで……クローさんの居場所はご存じありませんか?

あれ……アンタ、クローのこと知ってたんだっけ?

<贋作の太陽>に捕われた時に、私は心と体を支配されてしまったのですが……

それでもほんのわずかに、意識だけは残っていたんです。

あ、それで……

彼のことについては、カスミが教えてくれました。

……依り代にされるなんて……さぞ、お辛かったでしょう……

……ですから、少しでも元気になっていただきたくて、お花をお贈りしようと思っているのです。

そっか……アイツ、いまはたぶん、どこか旅にでてると思うわよ。

飛行島にも、いつか来てくれると思いますが……

そうですか……いつかお会いできれば良いのですが。

……とにかく、ゆっくりしていってください。ここは安全ですから。

ムゲンゆっくりよ!

まあ、もうじゅーぶんゆっくりしたとおもうけど……ゆっくりに限界はないからね! ――ムゲンゆっくりよ!

ムゲンゆっくり?

フローリア、アタシがムゲンゆっくりのごくいを教えてあげるわ!

……だから、その……

ふふ……ありがとうございます。

…………



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思い出2



…………

(フローリアさん……やっぱり、元気ないね)

(体の方は、もう大丈夫みたいだけど……)

…………あの、フローリアさん。

……皆さま。いらっしゃったのですね。

……なにか、悩んでない?

…………私たちでよければ、その……

……私は……

<声>が、聞こえなくなってしまったのです。

草や木のささやき……花たちの産声や歓声……歌声。

あんなにもにぎやかだった私の世界は、いまでは、もう……

そんな……どうして……?

……ひょっとして、捕われていた時に……?

邪悪な気に、長い間当たりすぎていたようです。

……いまにも飛びそうになるわずかな意識の中で、私は希望の光を見失わないようにしていました。

いつかまた聞けるであろう草花の声と、それから――スイレンの人。

……生きて戻って来られただけでも、感謝せねばなりません。

そして私は、生きねばなりません。命を懸けて救ってくださった、皆さまの為にも。

ですが、わからないのです。……生きるべき道が、私には、見えなくなってしまったのです……

……どうすればいいのかな……

……たぶんだけど、草や花の声が聞こえないのは、心の問題もあると思う。

……スイレンの人……アシャクァトルさんの事よ。

…………アタシたちに、なにかできることはあるかな……

…………


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思い出3



はあ、はあ……――退きなさい!

次から次へと……どうしましょう……

く……!


vガアアアアアアッ!

!?


v…………

助けてくださったのですね。……ありがとうございます。

v…………

お名前は……あなたのお名前は、何と……?

……この香りは……スイレン?

vグォォォォォォッ!

あ、待って! 待ってください!

…………

(スイレンの、人…………何て、辛く、悲しい声……)


 ***


あの時のことは、今でもよく覚えています。

ここで私は……あなたと出会った。

フローリアは、草木が生い茂る鬱蒼とした森を歩く。

それから私は、あなたを追い求め……再会し……そして――

 時代の終わりを告げに来た……

あの時……薄れゆく私の意識に流れこんできた声……

――あなただと、すぐにわかりました。

 民の命で生き永らえる貴様に、中天はくれてやれぬ。

 ――その台座ごと! この牙で噛み砕いてくれよう

悲願を果たしたあなたは、そのまま、何処ともなく去ってしまった……

あなたの声。あなたの気配。そして……スイレンの香り。

彼女は瞳を閉じたまま、幾つもの枝葉に遮られた小さな天空を見上げる。

もはや、会うことは叶わないのですね。


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思い出4



ただいま帰りました。

遅かったわね。……どこいってたの?

ちょっと、森にお散歩へ。

kおかえり、フローリア。

カスミ……? 来ていたの?

kええ。クジョウの用事は終わったから。

調子はどう? ……体の方は、もうすっかり大丈夫みたいね。

……あのね、カスミ。それから、皆さまも。

私を<太陽と蛇の民の里>へ、連れていってもらえませんか?

……里へ?

なんでまた……

k……あなたは、行くべきだと思ってるのね?

うん……

kわかったわ。連れてってあげる。

カスミさん?

kさ、あなた達も準備して。

 (カスミ、大丈夫なの? あそこは、フローリアにとってイヤな思い出しかないし……)

k(イヤな思い出しかないのに、行きたがっている。きっと、何か理由があるはずよ)

(……そうですね……)

…………

k少しずつだけど、里は良くなってきているの。……わかる?

うん。張りつめていた嫌な空気が、いまは感じられない。

k……ねえ、フローリア。草や花の声は、まだ……?

……たとえ聞こえるようになっていたとしても、ここは……とても静かなんだろうね。

荒れ果てた地を、フローリアは歩く。

こんにちは。

……どうも。

青年は軽く会釈をすると、彼女の横を通り過ぎた。

里のみなさんも、少しずつ心を取り戻しているのですが……

k心に負った傷を癒やすには、時間がかかるわ。

はやく、みんなに笑顔が戻ってばしいんだけどね……

…………

何事か考えていたフローリアだったが――

k……フローリア?

生きる道がわからなくとも、私にできることはさっとあるはず。そう思ったから、ここへ来たの。

時間はかかるかもしれない。乾いた大地に花を咲かせるのは、簡単なことじゃないから。

でも……簡単じゃないからこそ、やらなければ、と……

フローリアさん……

花たちの声が聞こえなくとも、私はこの手で、彼らを愛することができます。だから……

k……わかった。

カスミ。……手伝ってくれる?

kあなたは私の親友。断るわけないでしょ。

ありがとう。

主人公、私たちも!

アタシも頑張っちゃうわよ!

皆さまも……ありがとうございます。

こうして一同は、里の大地を思い思いに耕し始める。

高く昇った太陽が、彼らを容赦なく照りつけていた――



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思い出5



フローリアは、耕した土の再生を試みた。

不純物を取り除き、丁寧にふるいにかけ、腐葉土や堆肥などを混ぜる。

種をまくまでに、ずいぶんと時間がかかった。

――日々は矢のように過ぎてゆく。


芽が出てよかったですね、フローリアさん。

いまやってる作業は、<間引き>っていうんだっけ?

ええ。かわいそうですけど、こうしないと元気に育ってくれませんから……

彼女は、<声>が聞こえないまま、花たちの世話を続けている。

里の民は、そんな彼女を、どこか不思議そうな目で見ていた。

……花を、育てているの?

ええ、そうです。

……咲くかしら?

きっと。

……そう。

――また、時が経つ。

…………

kフローリア、心配するのはわかるけど、一晩中ここにいるつもり?

……もし、嵐が来たらと思うと、中々離れられなくて……

いちおう、風よけもつくったし、きっと大丈夫よ。

そう、ですね……

フローリアは、ついたばかりの小さなつぼみを、優しく撫でる。

移ろいゆく時が、そのつぼみを、少しずつ大きくしていった――

そして……

<太陽と蛇の民の里>は、生命の輝きに満ちた。

kおめでとう、フローリア。

カスミのおかげよ。本当に、ありがとう。そして、皆さまも。

……花たちの声は聞こえないけれど……彼らは、きっとよろこんでいるはずです。

……やっぱりまだ……

キャトラさん。もう、いいのです。もう……私は……


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思い出6 (友情覚醒)



k……見て。

里のみなさんが……

里の民達が、花畑へと集まってくる。

彼らは美しく咲いた花々を呆けた表情で見ていたが、やがて――

kフローリア。私も、あなたに見て欲しい。

あなたがたくさんの愛情を注いだ花たちを見る、彼らの顔を。

……うん。

フローリアはゆっくりと目を開ける――

…………

kあなたにしか出来ない事よ、フローリア。……本当に、すごいと思う。


あの……

あなたは……

ありがとう。

世界には、こんなにも綺麗なものがあるんだって、教えてくれた。

だから……ありがとう。

少女は泣いていた。

私……

途端に熱いものが込み上げてくる。その瞬間――


ありがとう!

フローリアの世界は、豊かな音の色彩に満ちた。

こんなに綺麗に咲かせてくれて、ありがとう!

あなたのおかげよ、フローリア――

みんなが喜んでくれて、わたしはとってもうれしい!

聞こえてる? フローリア!

……聞こえてるよ……!

みんなの声……! いっぱい!

……ありがとう……ありがとう……!


 ***


私、やっと……見つけることができたような気がします。

私にしか、できないことを……

フローリアは里の民を見つめる。また少し心を取り戻した、彼らのきらめく瞳を。

カスミ。今まで心配かけて、本当にごめんね。

k……もう、大丈夫なのね?

うん。今までずっと見えなかったもの……それをこれから、この目でちゃんと見ようと思う。

…………

花畑の一角に咲く純白の花に、フローリアは歩み寄る。

そっと撫でると、大好きな香りがふわりと漂った。

私はあなたを――信じています。

遠くの方から何かが応えたような気がして、彼女は空を仰ぐ。

瞳に映った青く美しい中天は、フローリアを、どこまでも優しく包んだ。

さようなら、スイレンの人――




その命、草花とともに

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